破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
※カクヨム版です
こっちもよろしく!
※今回は余裕がなくってロクにチェックしてません……
よろしければ誤字など教えていただけると助かります
「つまりっすね――」
リブオはスプーンを手に語る。
「動きは数年前からあったわけですよ。動きが活発になったのはここ1~2年なんですけど」
「なるほど。それまでは散発的なものだったというわけか」
冒険者ギルドの食堂。
カーシャはそこでリブオの話を聞いていた。
「その割に、のんきなようだが? あまり戦時下とは思えん」
ギルドの様子を見ながら、カーシャは肩をすくめた。
「まあ、そこは文化的というか思考のアレというか……」
リブオは残ったスープを飲み干してから、
「ようするに、冒険者が冒険しながら魔王軍と戦い、やがては敵の根城に乗り込んでですね?」
「魔王を討つと?」
「まあ、そうです」
「ふむ。とすれば、勇者にならんとする連中があちこちにいるわけか」
「だいたいそういう感じですね」
「聞いた話では、あちこちの国にドラゴンが攻めてきているのだろう? それを倒せる勇者は大勢いるのか?」
「いるわけないじゃないっすか」
「だろうな」
「そこで、ドラグーンですよ」
「うむ。確かにアレならドラゴンにも対抗できるか。む? とすれば、各国にドラグーンがあると?」
「まあ、そうっすね。ヤオアムト製みたいな高性能じゃありませんが、数はそれなりです」
リブオはうなずいて、
「魔王軍が出てきた当初に、魔法技術の高い国でドラグーンの量産技術が開発されたんですよ」
「量産? しかし――」
「はあ。確かにドラグーンってすごい金かかるじゃないですか、造るにも維持するのにも。だけど、その新技術は特殊な合金や
「ほお……。なるほどな。それで」
カーシャは顎を撫でて感心する。
「あー、でも。黒炎さんのドラグーンは特別性ですからね、期待も乗り手も。だから、アレを基準に考えられると膝カックンされますよ?」
「む。そうか、そうだ。うむ」
「確かにドラグーンはドラゴンに対抗できますけど、対抗イコール必殺とはいかないじゃないですか。確実に仕留めるには数や武装はいるわけでして」
と。
リブオは酒をグラスに注ぐ。
「飲みます?」
「遠慮する。それで?」
「はい。それでまあ、ドラゴンもあちこちに出るけど。中間体まで成長した個体って少ないんですよね。ん-、せいぜい? 幼体と中間体の間くらいで」
幼体はそのまま、人間で言う幼児程度。
中間体は13歳くらいに相当する。
それらの間となれば、5歳から10歳の間になるのだろう。
子どもだ。
「若いというか幼いドラゴンか。なるほど、それなら比較的対抗はしやすいな。もっとも、生身では危険極まる相手だが」
「それに、高性能の機体となれば乗り手も高性能じゃなきゃ、性能を出し切れませんから。まあ凡人が扱えるドラグーンはそれなりなんですよ。空飛べないタイプも多いですし。あ、こないだうちで整備してたのもそうですね」
「飛べない? それはまた」
「でも、ドラゴンだって全部が空飛ぶわけじゃないですよね」
「なるほど。確かに――」
うなずきながら、
――魔王が死んだら、次は国同士で戦争や軍拡競争が始まるでしょうね。
内心で皮肉な笑みを浮かべていた。
と、
「あ、そうだ。カーシャさんもドラグーンの乗り手に応募してみますか?」
「……何を言っている。私はそんな訓練など受けたことはないぞ」
「いえ。今のドラグーンは、基本イメージすれば素人でも動かせる操縦システムが一般化してるんですよ」
「それはすごい! いや、量産よりもすごいのではないか?」
この発言――
それは演技もウソもない、カーシャの本心だった。
「そうっすね。だけど、動かせるのと戦えるのは違いますから」
「ふうむ。では……」
「はい。カーシャさんみたいな熟練の戦士なら、少なくとも地上戦では活躍できると思うっすよ」
「面白いな」
カーシャは金の髪をかき上げ、微笑した。
「今ちょうど、新規の乗り手を募集してますね」
「折良く、という感じだな。情報感謝する」
カーシャは1枚の金貨と、数枚の銀貨を置いて立ち上がった。
・ ・ ・
――ふむ。さすがにいないわねえ?
広い整地には大勢の人間が集まっていた。
種類は色々だ。
いかにも、という冒険者風。
城の歩兵という人間。
市内の腕自慢庶民という男。
女性もけっこう多い。
カーシャもその中のひとりなわけだが――
最初の試験は、小型ゴーレム相手の模擬戦。
半数以上がここで落ちた。
次は、
「これはまた……」
重い強化装甲をつけて走る。
その重量も大変だが、
――装甲の手足を操るのは、なかなかコツがいるものねえ?
この試験で、ほとんどが不合格となった。
残った人数は、20にも満たない。
「――最終試験の準備ができるまで、1時間の休憩とする」
こういうわけで。
カーシャは周辺を歩きながら、半分物見遊山の気分だった。
その途中、
――おや?
準備に向けて大勢の人間が走り回る中――
ある人物に目が留まった。
――ふむ。アレは確か、最初に英雄殿に会った時……。
同じように、動き回っていた人物。
きれいな顔をした青年である。
「失礼。少しおたずねしたいのだが……」
カーシャは近くの者に声をかけた。
どうやら、宮廷から派遣された文官らしい。
文官の中でも若手というか、
――下っ端という風情ね。
カーシャはそのように見てとった。
「あそこの御仁は、どのようなかたで?」
「彼ですか? 準備とか色々あるのでその手伝いにきてくれたかたです。例の勇者パーティーのメンバーですね」
「ほう。勇者の……」
「いやあ、手際が良いというか何というか、おかげで助かってますよ。さすが勇者パーティー、優秀なかたぞろいなんですねえ」
「ふむ――」
眼を細めて青年を観察するカーシャは、
――なるほど、これは……。
確かに才気はある。
優秀な官僚候補なのだろう。
――ただ、やはり。冒険者という感じではないか。私が上司か、親族であれば……。
英雄のパーティーなどに参加はさせない。
スプーンに包丁の役目をさせるようなものだ。
――本来なら、宮廷で多くを学ぶべき時に……何をしているのやら。
愚か。
カーシャが青年に感じたのは、蔑みと微かな苛立ち――
そして。
心からの、憐れみだった。