破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

311 / 357
https://kakuyomu.jp/works/16818093082887030996
※カクヨム版です
 こっちもよろしく!


※今回は余裕がなくってロクにチェックしてません……
 よろしければ誤字など教えていただけると助かります


その117、悪魔が来りて嘘をつく-11 お前もドラグーンに乗らないか?

 

 

「つまりっすね――」

 

 リブオはスプーンを手に語る。

 

「動きは数年前からあったわけですよ。動きが活発になったのはここ1~2年なんですけど」

 

「なるほど。それまでは散発的なものだったというわけか」

 

 冒険者ギルドの食堂。

 カーシャはそこでリブオの話を聞いていた。

 

「その割に、のんきなようだが? あまり戦時下とは思えん」

 

 ギルドの様子を見ながら、カーシャは肩をすくめた。

 

「まあ、そこは文化的というか思考のアレというか……」

 

 リブオは残ったスープを飲み干してから、

 

「ようするに、冒険者が冒険しながら魔王軍と戦い、やがては敵の根城に乗り込んでですね?」

 

「魔王を討つと?」

 

「まあ、そうです」

 

「ふむ。とすれば、勇者にならんとする連中があちこちにいるわけか」

 

「だいたいそういう感じですね」

 

「聞いた話では、あちこちの国にドラゴンが攻めてきているのだろう? それを倒せる勇者は大勢いるのか?」

 

「いるわけないじゃないっすか」

 

「だろうな」

 

「そこで、ドラグーンですよ」

 

「うむ。確かにアレならドラゴンにも対抗できるか。む? とすれば、各国にドラグーンがあると?」

 

「まあ、そうっすね。ヤオアムト製みたいな高性能じゃありませんが、数はそれなりです」

 

 リブオはうなずいて、

 

「魔王軍が出てきた当初に、魔法技術の高い国でドラグーンの量産技術が開発されたんですよ」

 

「量産? しかし――」

 

「はあ。確かにドラグーンってすごい金かかるじゃないですか、造るにも維持するのにも。だけど、その新技術は特殊な合金や魔力機関(エンジン)なしでも数が揃えられるんです」

 

「ほお……。なるほどな。それで」

 

 カーシャは顎を撫でて感心する。

 

「あー、でも。黒炎さんのドラグーンは特別性ですからね、期待も乗り手も。だから、アレを基準に考えられると膝カックンされますよ?」

 

「む。そうか、そうだ。うむ」

 

「確かにドラグーンはドラゴンに対抗できますけど、対抗イコール必殺とはいかないじゃないですか。確実に仕留めるには数や武装はいるわけでして」

 

 と。

 リブオは酒をグラスに注ぐ。

 

「飲みます?」

 

「遠慮する。それで?」

 

「はい。それでまあ、ドラゴンもあちこちに出るけど。中間体まで成長した個体って少ないんですよね。ん-、せいぜい? 幼体と中間体の間くらいで」

 

 幼体はそのまま、人間で言う幼児程度。

 中間体は13歳くらいに相当する。

 それらの間となれば、5歳から10歳の間になるのだろう。

 子どもだ。

 

「若いというか幼いドラゴンか。なるほど、それなら比較的対抗はしやすいな。もっとも、生身では危険極まる相手だが」

 

「それに、高性能の機体となれば乗り手も高性能じゃなきゃ、性能を出し切れませんから。まあ凡人が扱えるドラグーンはそれなりなんですよ。空飛べないタイプも多いですし。あ、こないだうちで整備してたのもそうですね」

 

「飛べない? それはまた」

 

「でも、ドラゴンだって全部が空飛ぶわけじゃないですよね」

 

「なるほど。確かに――」

 

 うなずきながら、

 

 ――魔王が死んだら、次は国同士で戦争や軍拡競争が始まるでしょうね。

 

 内心で皮肉な笑みを浮かべていた。

 

 と、

 

「あ、そうだ。カーシャさんもドラグーンの乗り手に応募してみますか?」

 

「……何を言っている。私はそんな訓練など受けたことはないぞ」

 

「いえ。今のドラグーンは、基本イメージすれば素人でも動かせる操縦システムが一般化してるんですよ」

 

「それはすごい! いや、量産よりもすごいのではないか?」

 

 この発言――

 それは演技もウソもない、カーシャの本心だった。

 

「そうっすね。だけど、動かせるのと戦えるのは違いますから」

 

「ふうむ。では……」

 

「はい。カーシャさんみたいな熟練の戦士なら、少なくとも地上戦では活躍できると思うっすよ」

 

「面白いな」

 

 カーシャは金の髪をかき上げ、微笑した。

 

「今ちょうど、新規の乗り手を募集してますね」

 

「折良く、という感じだな。情報感謝する」

 

 カーシャは1枚の金貨と、数枚の銀貨を置いて立ち上がった。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 ――ふむ。さすがにいないわねえ?

 

 広い整地には大勢の人間が集まっていた。

 種類は色々だ。

 

 いかにも、という冒険者風。

 城の歩兵という人間。

 市内の腕自慢庶民という男。

 

 女性もけっこう多い。

 カーシャもその中のひとりなわけだが――

 

 最初の試験は、小型ゴーレム相手の模擬戦。

 半数以上がここで落ちた。

 

 次は、

 

「これはまた……」

 

 重い強化装甲をつけて走る。

 その重量も大変だが、

 

 ――装甲の手足を操るのは、なかなかコツがいるものねえ?

 

 この試験で、ほとんどが不合格となった。

 残った人数は、20にも満たない。

 

「――最終試験の準備ができるまで、1時間の休憩とする」

 

 こういうわけで。

 カーシャは周辺を歩きながら、半分物見遊山の気分だった。

 その途中、

 

 ――おや?

 

 準備に向けて大勢の人間が走り回る中――

 ある人物に目が留まった。

 

 ――ふむ。アレは確か、最初に英雄殿に会った時……。

 

 同じように、動き回っていた人物。

 きれいな顔をした青年である。

 

「失礼。少しおたずねしたいのだが……」

 

 カーシャは近くの者に声をかけた。

 どうやら、宮廷から派遣された文官らしい。

 

 

 文官の中でも若手というか、

 

 ――下っ端という風情ね。

 

 カーシャはそのように見てとった。

 

 

「あそこの御仁は、どのようなかたで?」

 

「彼ですか? 準備とか色々あるのでその手伝いにきてくれたかたです。例の勇者パーティーのメンバーですね」

 

「ほう。勇者の……」

 

「いやあ、手際が良いというか何というか、おかげで助かってますよ。さすが勇者パーティー、優秀なかたぞろいなんですねえ」

 

「ふむ――」

 

 眼を細めて青年を観察するカーシャは、

 

 ――なるほど、これは……。

 

 確かに才気はある。

 優秀な官僚候補なのだろう。

 

 ――ただ、やはり。冒険者という感じではないか。私が上司か、親族であれば……。

 

 英雄のパーティーなどに参加はさせない。

 スプーンに包丁の役目をさせるようなものだ。

 

 ――本来なら、宮廷で多くを学ぶべき時に……何をしているのやら。

 

 愚か。

 カーシャが青年に感じたのは、蔑みと微かな苛立ち――

 そして。

 心からの、憐れみだった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。