破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
※カクヨム版です
色々変わってる部分もあるの、ぜひ読んでみてください!
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「……ええと。それじゃあご案内します」
「うむ。よろしく頼む」
カーシャは青年……ルーブの案内で歩いている。
『予備』として参加する遊撃隊――
ある冒険者パーティーのいる場所へ向かって。
試験は、見事合格したが、
「ちょっと、一般の量産機でやってもらうのは難しいので……」
とのことで。
「でも、実力は最高ランクだ。人材を遊ばせるのももったいない、と言えばアレですが……」
前線で戦い、各地へ援軍として飛ぶ遊撃隊……。
グシオのパーティーに加わることとなった。
シーマ国、そしてギルド直接の『命令』である。
冒険者登録している以上、その義務があるわけだ。
――ふうん?
カーシャはチラリと横の青年を観察する。
まだ少年と青年の間。
そんな印象を受ける。
少し色白の、一見地味だが、やはり整った顔の美青年だ。
――社交界なら、ご婦人方の人気者となるでしょうに。
わざわざ、
「英雄が
こんなパーティーに所属する意味は、
――ないわねえ? 恋は盲目。恐ろしいものだわ。
・ ・ ・
「え……」
カーシャが紹介された時――
パーティーの女たちは露骨に嫌な顔をした。
そして、
「グシオ、また……」
「すぐにそうやって……」
アヴァータスとオルマは、グシオを睨んだ。
他にも、似たような目つきの女ばかり。
そう、女ばかり。
「グシオよ、これからはよろしく頼む。なに、気軽に前衛に出してくれればいい」
カーシャは軽く胸を叩き、グシオを見た。
「あ、ああ。よろしくな。頼りにさせてもらうよ」
グシオは困った顔で笑う。
この時、いつもの兜は脱いでいた。
――あどけない。
そう言える素顔は、ある意味ルーブよりも少年的だ。
「うむ。貴公には借りがある。それを返すまで離れるつもりはないぞ。いや、返したとしても……」
と。
カーシャはちょっとうつむき、目をそらす。
……かと思えば、チラリとグシオを見つめていく。
「グシオ、浮気者――!」
うるさい声が響き、何かが黒い英雄の周辺を飛び回った。
――
半透明の、トンボに似た羽。
全体的に白桃色の少女だった。
手のひらサイズの――
「いや、そんなんじゃないから!」
あわてて弁明するグシオに、
「何が、そんなんじゃないですか!?」
オルマが顔を膨らませて詰め寄る。
「そ、そうだよ!」
これにアヴァータスも参加し始めた。
――まるでお遊戯会ね。
カーシャの奥にある冷たい視線。
誰もそれに気づくことはなかった。
・ ・ ・
それから――
何日かが過ぎていった。
この間、特に魔王軍の出現も……。
少なくとも近隣ではなく、パーティーはダンジョンや大型モンスターへの対処にあたっていた。
その間も、補助や支援に奔走していたルーブだったが……。
特に注目する者は、誰ひとりもいなかった。
時々パーティーの間をウロチョロして……いるように思われたらしい。
「あれ、ルーブくんいたの?」
「ルーブさん、そこにいられると邪魔です」
女たちからの扱いも
――愚か。
ルーブの行動に対して、カーシャが抱く感想はその一言だった。
そして、
「ルーブ、お前はなぜここにいるのか?」
カーシャはいきなりそんな質問をした。
あえて。
敬称もつけず、一方的に見下した態度で。
「……え?」
いきなりの言葉に、ルーブは驚く。
何も言わずに、ただカーシャを見つめるだけ。
「全体的な指揮はアヴァータスが、魔法全般はオルマが、索敵などはあの妖精が。それぞれふさわしい専門の者がやっている。全体の補助も別の者がな。肝心の主戦力は言うまでもない。さて……」
ルーブ・ルーブ・ターニオ。
お前は何をもって立つのだ?
剣も魔法も、全てが中途半端。
典型的な器用貧乏というヤツではないか。
なんでもこなせるが、なにもできぬ。
ただ雑用をやって、アヴァータスに尻尾を振るだけか?
それで、彼女の心がお前に行くとでも?
情けないとは思わぬか。
恥とは思わぬか。
優しさのない、冷たい言葉。
ルーブは反論できずに、ただうつむき震えるだけだ。
握った拳が震えている。
「いてもいなくても変わらぬ。それでは雑兵以下だ」
「そ、そんなことは……!」
「ないと言えるのか? このパーティーで、お前を評価して必要とする者がどれだけいるか」
「……!」
カーシャの言葉に、ルーブは目を見開いて――
ルーブは今度こそ絶句した。
本人にも自覚があったのだろう。
もっとも――
――まあ、いてもらわねば困るのは確かだけど。
皮肉なことに……。
こうして冷酷な言葉を投げるカーシャこそ?
ルーブをもっとも評価している。
――全体の微妙な調整。軍隊で言えば副官か。アヴァータスは天才肌だけど、その分周りが見えにくい。正式に軍を動かせば、活躍もするが凡ミスも多いでしょうねえ?
有事の時には確かに有用であり、大いに働くだろう。
だが全体の整備、さらに対外的な部分の補助はできない。
いや、そういう視点が欠けている。
グシオに至っては、
――強いだけの田舎者ね。
よく言えば、根っこは純朴な少年である。
凄まじい戦闘力を持っていても、一般的な雑事には頼りないもの。
このへんは他のメンバーにも言える。
みんな専門分野では一流だが、組織として見れば――
――何かあれば脆さを露呈することでしょう。
その点、華々しさのないルーブは……。
――ヤオアムトでは、確実に後方で歓迎されるタイプね。
時として――
ヤオアムトは好戦的で野蛮だと揶揄される。
だが。
王家の家訓には、
「最強の武器は兵站である」
というものがある。
過去。
強力なドラゴン。
あるいは敵国との戦争でも、その部分で勝ってきた。
「前線が十全に戦うには物資が必須である」
当然と言えば当然の話なのだが……。
――まあ、そんなことはどうでもいいか。
カーシャはジッとルーブを見つめてから、横を通り過ぎる。
「健気だな」
まるで。
忠実な『
すれ違いざまに、そんな言葉を残して――
「…………!!」
ルーブは立ち尽くしたままだ。
だが。
その背中には何とも暗く、冷たいものがあった。
――さて。これでどうなるか……。
カーシャはチラリとそれを見てから、肩をすくめた。