破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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※カクヨム版です
 色々変わってる部分もあるの、ぜひ読んでみてください!
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その117、悪魔が来りて嘘をつく-13 (いぬ)

 

 

「……ええと。それじゃあご案内します」

 

「うむ。よろしく頼む」

 

 カーシャは青年……ルーブの案内で歩いている。

 『予備』として参加する遊撃隊――

 ある冒険者パーティーのいる場所へ向かって。

 

 試験は、見事合格したが、

 

「ちょっと、一般の量産機でやってもらうのは難しいので……」

 

 とのことで。

 

「でも、実力は最高ランクだ。人材を遊ばせるのももったいない、と言えばアレですが……」

 

 前線で戦い、各地へ援軍として飛ぶ遊撃隊……。

 グシオのパーティーに加わることとなった。

 

 シーマ国、そしてギルド直接の『命令』である。

 冒険者登録している以上、その義務があるわけだ。

 

 ――ふうん?

 

 カーシャはチラリと横の青年を観察する。

 まだ少年と青年の間。

 そんな印象を受ける。

 少し色白の、一見地味だが、やはり整った顔の美青年だ。

 

 ――社交界なら、ご婦人方の人気者となるでしょうに。

 

 わざわざ、

 

「英雄が数多(あまた)の女を侍らせる……」

 

 こんなパーティーに所属する意味は、

 

 ――ないわねえ? 恋は盲目。恐ろしいものだわ。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「え……」

 

 カーシャが紹介された時――

 パーティーの女たちは露骨に嫌な顔をした。

 そして、

 

「グシオ、また……」

 

「すぐにそうやって……」

 

 アヴァータスとオルマは、グシオを睨んだ。

 他にも、似たような目つきの女ばかり。

 

 そう、女ばかり。

 

「グシオよ、これからはよろしく頼む。なに、気軽に前衛に出してくれればいい」

 

 カーシャは軽く胸を叩き、グシオを見た。

 

「あ、ああ。よろしくな。頼りにさせてもらうよ」

 

 グシオは困った顔で笑う。

 この時、いつもの兜は脱いでいた。

 

 ――あどけない。

 

 そう言える素顔は、ある意味ルーブよりも少年的だ。

 

「うむ。貴公には借りがある。それを返すまで離れるつもりはないぞ。いや、返したとしても……」

 

 と。

 カーシャはちょっとうつむき、目をそらす。

 ……かと思えば、チラリとグシオを見つめていく。

 

「グシオ、浮気者――!」

 

 うるさい声が響き、何かが黒い英雄の周辺を飛び回った。

 

 ――妖精(フェアリー)

 

 半透明の、トンボに似た羽。

 全体的に白桃色の少女だった。

 手のひらサイズの――

 

「いや、そんなんじゃないから!」

 

 あわてて弁明するグシオに、

 

「何が、そんなんじゃないですか!?」

 

 オルマが顔を膨らませて詰め寄る。

 

「そ、そうだよ!」

 

 これにアヴァータスも参加し始めた。

 

 ――まるでお遊戯会ね。

 

 カーシャの奥にある冷たい視線。

 誰もそれに気づくことはなかった。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 それから――

 何日かが過ぎていった。

 

 この間、特に魔王軍の出現も……。

 少なくとも近隣ではなく、パーティーはダンジョンや大型モンスターへの対処にあたっていた。

 

 その間も、補助や支援に奔走していたルーブだったが……。

 特に注目する者は、誰ひとりもいなかった。

 

 時々パーティーの間をウロチョロして……いるように思われたらしい。

 

「あれ、ルーブくんいたの?」

 

「ルーブさん、そこにいられると邪魔です」

 

 女たちからの扱いも()()()()なものである。

 

 ――愚か。

 

 ルーブの行動に対して、カーシャが抱く感想はその一言だった。

 そして、

 

「ルーブ、お前はなぜここにいるのか?」

 

 カーシャはいきなりそんな質問をした。

 あえて。

 敬称もつけず、一方的に見下した態度で。

 

「……え?」

 

 いきなりの言葉に、ルーブは驚く。

 何も言わずに、ただカーシャを見つめるだけ。

 

「全体的な指揮はアヴァータスが、魔法全般はオルマが、索敵などはあの妖精が。それぞれふさわしい専門の者がやっている。全体の補助も別の者がな。肝心の主戦力は言うまでもない。さて……」

 

 ルーブ・ルーブ・ターニオ。

 お前は何をもって立つのだ?

 剣も魔法も、全てが中途半端。

 典型的な器用貧乏というヤツではないか。

 なんでもこなせるが、なにもできぬ。

 ただ雑用をやって、アヴァータスに尻尾を振るだけか?

 それで、彼女の心がお前に行くとでも?

 情けないとは思わぬか。

 恥とは思わぬか。

 

 優しさのない、冷たい言葉。

 ルーブは反論できずに、ただうつむき震えるだけだ。

 握った拳が震えている。

 

「いてもいなくても変わらぬ。それでは雑兵以下だ」

 

「そ、そんなことは……!」

 

「ないと言えるのか? このパーティーで、お前を評価して必要とする者がどれだけいるか」

 

「……!」

 

 カーシャの言葉に、ルーブは目を見開いて――

 ルーブは今度こそ絶句した。

 本人にも自覚があったのだろう。

 

 もっとも――

 

 ――まあ、いてもらわねば困るのは確かだけど。

 

 皮肉なことに……。

 こうして冷酷な言葉を投げるカーシャこそ?

 ルーブをもっとも評価している。

 

 ――全体の微妙な調整。軍隊で言えば副官か。アヴァータスは天才肌だけど、その分周りが見えにくい。正式に軍を動かせば、活躍もするが凡ミスも多いでしょうねえ?

 

 有事の時には確かに有用であり、大いに働くだろう。

 だが全体の整備、さらに対外的な部分の補助はできない。

 いや、そういう視点が欠けている。

 

 グシオに至っては、

 

 ――強いだけの田舎者ね。

 

 よく言えば、根っこは純朴な少年である。

 凄まじい戦闘力を持っていても、一般的な雑事には頼りないもの。

 

 このへんは他のメンバーにも言える。

 みんな専門分野では一流だが、組織として見れば――

 

 ――何かあれば脆さを露呈することでしょう。

 

 その点、華々しさのないルーブは……。

 

 ――ヤオアムトでは、確実に後方で歓迎されるタイプね。

 

 時として――

 ヤオアムトは好戦的で野蛮だと揶揄される。

 

 だが。

 王家の家訓には、

 

「最強の武器は兵站である」

 

 というものがある。

 

 過去。

 強力なドラゴン。

 あるいは敵国との戦争でも、その部分で勝ってきた。

 

「前線が十全に戦うには物資が必須である」

 

 当然と言えば当然の話なのだが……。

 

 ――まあ、そんなことはどうでもいいか。

 

 カーシャはジッとルーブを見つめてから、横を通り過ぎる。

 

「健気だな」

 

 まるで。

 忠実な『(いぬ)』。

 

 すれ違いざまに、そんな言葉を残して――

 

「…………!!」

 

 ルーブは立ち尽くしたままだ。

 だが。

 その背中には何とも暗く、冷たいものがあった。

 

 ――さて。これでどうなるか……。

 

 カーシャはチラリとそれを見てから、肩をすくめた。

 

 

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