破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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https://kakuyomu.jp/works/16818093082887030996

 ※カクヨム版です
  チョコチョコ改訂部分があるので読み比べてみてください


その117、悪魔が来りて嘘をつく-16 魔導技師オッカ

 

 

 

「景気は良さそうだな」

 

「へへへ。おかげさまで――」

 

 カーシャの言葉に、リブオはちょっと笑った。

 目の前には、やや小柄なドラグーンがある。

 青い装甲をした、どこか獣みたいな形状。

 

「ざっと見だが、これは一般的なものというより……ヤオアムトのものに近いようだな」

 

 ドラグーンの装甲をなで、カーシャは言った。

 

「そうっすね。乗るというより、着こむというんですか。なかなか値は張りますけど、性能だけは保証しますよ」

 

 リブオは汚れた顔を服でぬぐい、親指でドラグーンを指す。

 

「調整が出来ましたんで、ちょっと着てみてくださいよ。あ、力入れ過ぎないように」

 

「わかった」

 

 カーシャが近づき、背中を向けると――

 周辺の機材と連動して、ドラグーンのパーツがカーシャに装着されていく。

 

 足から胴体。

 腕、最後に頭部。

 完全に装着すると、4メートルほどの青い巨人が立ち上がっていた。

 

「飛行能力は、ないようだな」

 

 カーシャは装甲越しに言った。

 ()()()()とドラグーンの指を動かしながら――

 魔導スピーカーで声が拡大される。

 

「そこまではね……。正直、不具合が出たら、乗り捨てて逃げたほうが安全ですよ? あなたの場合……」

 

「整備技師の言葉か、それが」

 

 カーシャのあきれ声に、

 

「だって、あなたが考えなしに振り回すと、機体が悲鳴を上げてオシャカになるんすよ。どういう身体能力してるんすか」

 

「鍛えたからな」

 

「フツーはアマゾネスや大型獣人でも、そんなことにはならないんすけどね。そもそも、あんたは人間族でしょ」

 

「一応な」

 

「一応?」

 

「血統的に、サキュバスの系譜でもある」

 

「あー、そっか。ヤオアムト辺りのかたでしたね。あっちはやたら魔法に強いのが多いですよね、種族関係なく……。あ、森エルフやオークは別かな」

 

「そんなことはどうでもいい。テストはどこまでしていいのだ?」

 

「あー、そうっすね。とりあえず、歩いたり……。そのへんのものを持ち上げてみてください」

 

 と。

 リブオは空のコンテナを指す。

 コンテナのサイズは、

 

「ドラグーンなら両手でつかみ、上げ下ろしできる」

 

 という感じである。

 

「……基本的だな」

 

「それができないと、話にならないっすからね」

 

「わかった」

 

 そういうわけで――

 

 ドラグーンは工場の前を歩き回った。

 あるいは、コンテナを持ち上げて、下ろす。

 これを何度か繰り返した。

 

「ああ~~……。なるほど、なるほど?」

 

 テスト後。

 リブオは小柄な体でドラグーンの上を這い回り、

 

「実戦で使うには、アレコレと強化とか補強が要りますねえ……」

 

「そうか」

 

「さっきは乗り捨てろと言いましたけど、最低限は有効に使って欲しいんで。……別に、自分のじゃないからどうでも良いけど、技師としてはね」

 

「ふうん。そういうものか」

 

「はい。そういうものっすね」

 

 リブオはカーシャに背を向けたまま、作業を開始する。

 

「乗ることにはなったものの、私は生身で戦うほうが向いているな」

 

「そうかもしれませんけど」

 

 リブオは振り返り、

 

「いくらおねえさんでも、生身でドラゴンとまともに戦ったら死にますよ」

 

「ドラゴンと言っても色々だ。災害クラスの中間体、まして成体のドラゴンなどめったにいるものか」

 

「そりゃそうっすけど、幼体のうちは群れてるパターンもありますかね。そうなると、ヤバいですよ?」

 

「……む」

 

 リブオの言葉に、カーシャは少し黙った。

 それから、

 

「――ドラゴンと言えば……。魔王軍もドラゴンを使うことが多いようだな」

 

「そうなんすよ。だからボコスカやられてるんです。まあ、幼体というか子どもばっかりですけど、それでも下手なモンスターよりずっと脅威ですから」

 

「ドラゴンを操る。厄介な敵だ」

 

「ええ。早く何とかしてくれないと、商売も上がったりですね」

 

「軍需で儲けているのではないか、お前は?」

 

「おねえさん、商売ってのは結局はある程度平和が担保されないと成り立たないんす。それに、魔王軍はところ嫌わずでしょ? 戦場の外からのんきに銭儲けとはいきませんって」

 

「なるほど。道理だ」

 

 そんな会話の途中。

 ふらりと、人影が工場内に入った。

 

「お仕事進んでる?」

 

 ブラウンの髪と、ブラウンの瞳。

 髪を背中で束ねた女。

 作業服を着ており、勝ち気そうな目つき。

 

「……あなたも、本格的にドラグーン乗りか」

 

 女は、腕組みをしてドラグーンを見やった。

 

「オッカ」

 

 カーシャは振り返り、女の名前を呼んだ。

 

 魔導技師オッカ。

 勇者パーティーでは後方支援に回り、主にドラグーンと魔道具の整備を担当。

 基本戦闘には出ず、後衛どころか留守番組である。

 

 ただ、グシオのドラグーンは様々な意味で特別製。

 整備するのさえ、相手を選ぶ。

 オッカは、その貴重な人材のひとり。

 

「あれ。オッカ女史、お手伝いにでも来てくれたんすか?」

 

 リブオは女に気づくと、からかうように言った。

 

「あいにく私の担当じゃないし、あなたも他人にいじくられるのは嫌でしょ?」

 

 肩をすくめるオッカ。

 

「まあ、そうっすね」

 

 リブオは頭を掻いてから、また作業に戻っていった。

 

「――新参者のオモチャを見物に来たというところか?」

 

 カーシャは腕組みをして、オッカを見る。

 

「どうかしらね。ここの技師にも興味はあったし……」

 

 オッカは工場内を見回して、そう答えた。

 

「女ふたりがしゃべっていても、整備士の気が散るだろう。場所を変えぬか」

 

「いいわよ」

 

 ふたりの女は工場を出ながら、

 

「しかし、またひとり厄介な女が増えたわ」

 

「ライバルが増えたと?」

 

「できれば、戦友が増えて欲しいのだけど。難しいものね」

 

「なるほど。確かに難しい」

 

 オッカの言葉に、カーシャは少し笑う。

 それから、

 

「オッカ技師」

 

「なによ」

 

「あなたは、グシオ殿をどう見る?」

 

「それは、男として?」

 

「惚れているのはみんな知っている」

 

「みんな、ね……。最近入ったばかりなのに、よくわかること」

 

「それほどわかりやすいということだ」

 

「む……」

 

 オッカはわずかに赤面した後、

 

「最初は、とんでもないドラグーン乗り。そうとしか見なかった」

 

「そうか。まあ、私とて似たようなものだ」

 

「顔だって……可愛いほうだとは思うけど、すごい美男子ってわけじゃない。だけど、気がつけばどんどん惹かれていった」

 

 オッカは空を見上げて、静かに言った。

 その先には、グシオの顔が浮かんでいて……。

 

「空を見上げて誰かを思い出すな。縁起が悪い」

 

「何よ、それ」

 

 カーシャの言葉に、オッカはムッとした。

 

 

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