破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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 ※カクヨム版でございます。
  こちらもどうぞ御贔屓に!!


その117、悪魔が来りて嘘をつく-18 過去で未来

 

 

「さよなら――でも、大好き」

 

 それが、アヴィーが言った最後の言葉だった。

 

 魔王軍を支えるもの。

 無数のドラゴンを操る魔道具・ドラゴンオーブ。

 それを破壊するために、アヴィーは自爆魔法を使った。

 

 他に方法がなかったのか。

 それはわからない。

 

 『魔王』の根城。

 砕けていく巨大な要塞を、どうやって逃げたのか。

 

 大勢が死んだ。

 その中で、どれだけのことができたのか。

 

 自爆。

 そういう名前だが、アヴィーが吹き飛んだわけではない。

 少なくとも、肉体は――だが。

 

 魂を魔力に変換して、暴走を引き起こして目標を砕く。

 代償として、アヴィはただ生きているだけとなった。

 

 何も言わない。

 一歩も動かない。

 こちらが与えなければ、水さえも飲まない。

 呼吸をすることさえ、怪しかった。

 

 何故。

 どうして、自分が――

 

 語られた真実。

 だが、語ったのは誰だ。

 

 グシオ・ダムテ。

 アヴァータス・タリワ・ジャービック。

 ふたりは、古い竜使い(ドラゴンテイマー)の血統だという。

 

 グシオは父から。

 アヴィータスは母から。

 それぞれが、遠い一族の流れを汲んだ者同士。

 だから惹かれたのか、子どもの頃から。

 

 しかし。

 力の薄れた今では、もう成体竜を操れる力はない。

 

 それでも――

 ドラゴンの因子を利用したヒト型兵器・ドラグーン。

 これを巧みに操ることはできる。

 

 だからなのか。

 グシオは初めて乗ったはずのドラグーンを、たどたどしくも操れた。

 そして、未熟で危なっかしい戦いを経ながら、生き残っていった。

 犠牲を払いながら。

 

 だけど、それでも。

 戦争に終わりは見えなかった。

 

 いつまで続くのか。

 お互いに疲労や疑問が生まれ出す。

 

 そんな中。

 魔王はある発見をして、圧倒的優位に立つ方法を見つける。

 

 魔王軍にとって……。

 ふたりの存在は重要極まるものだった。

 

 グシオとアヴィータス。

 その魂と肉体を素材にして、ドラゴンオーブを完成させること。

 

 成体竜を自在に操れれば、戦争などあっという間に片がつく。

 魔王にとっての、正義を実現できる。

 

 ふたりは狙われ、生贄とされた。

 結果として、それは失敗したが――

 

 天才魔導師オルマ。

 彼女を中心とした仲間の尽力。

 

 それで魔王の計画は寸前で止まった。

 しかし、未完成とはいえドラゴンオーブはそこにある。

 

 これを砕くために――

 アヴィータスは死んだ。

 

「何が勇者(ヒーロー)だよ」

 

 死にかけた体で、グシオはつぶやいたような気がする。

 

 ――好きな女の子ひとり、守れないんじゃないか。

 

 ドラグーンを操れる。

 それだけで、自分を特別視していた。

 

 だが。

 それは幻想だった。

 

「これが未来か!?」

 

 グシオは叫んでいた。

 

 そうだよ、と。

 黒い影は肯定する。

 

 流れ込んでくる知識、体験。

 もうひとりの『自分』。

 

 このままいけば、いずれそうなる。

 

「だったら、止めなくっちゃダメだろ!?」

 

 こぶしを握る。

 

 そうだね、と。

 黒い影はうなずいた。

 

「絶対に、あんな未来にはさせない!!」

 

 虚空の上に拳を突き上げ、グシオは叫んだ。

 

「がんばってください、グシオさん」

 

 見えない奔流。

 遠くで聞こえたオルマの声。

 

「私は、あなたが――……」

 

 ――え。何て言ったんだ、オルちゃん。

 

 振り返ろうとする。

 そして。

 

「……!??」

 

 暗転。

 その中で、グシオは跳ね起きた。

 

「……夢か」

 

 グシオは頭を振った。

 ありきたりなつぶやきをこぼしながら、苦笑する。

 

 何度見たかわからない、未来の記憶・体験。

 苦しみと悲しみに満ちたモノ。

 それは、未来の自分と共に胸にある。

 

 一体となって溶け合い――

 もはや完全にひとつのものだ。

 

「はああ……」

 

 グシオは大きく息を吐いた。

 水差しを取ろうと、体を動かす。

 

「――また、夢を見たんですか」

 

「ああ……」

 

 きれいな声。

 応えてから、グシオは硬直する。

 

「……ん?」

 

 ハッとして、ベッドの毛布をめくった。

 そこには、オルマが横になっている――

 当たり前のような顔で。

 

「お、お、お……オルちゃん!?」

 

 とびのくグシオへ、

 

「ゆうべは、お楽しみでしたね」

 

 身を起こしながら、オルマは頬を赤らめて言った。

 爆弾発言。

 

「えええええ!?」

 

「おぼえてないんですか、ひどいです」

 

「そ、そんな……。お、俺は」

 

 グシオは思わず頭を抱えた。

 

「冗談です」

 

「え?」

 

「すみません。ぐっすり眠ってるグシオさんのところに、お邪魔してしまいました」

 

「お、お邪魔って……」

 

「乙女ですから。大胆になります」

 

「はああああ……」

 

 グシオは脱力して、うなだれた。

 

「別に、ホントに()()()()()()かまいません。いえ、ウェルカムです」

 

「あの……」

 

「グシオさん」

 

 熱を帯びた視線。

 少女の眼差しが、グシオに注がれてる中――

 

「あああーーーーーーーーーー!!」

 

 けたたましい声が飛んだ。

 

「オルマ、抜け駆けした!!」

 

 キラキラと羽を輝かせ、妖精(フェアリー)のクロロが部屋を飛び回る。

 

「グシオ!」

 

「ちょっと、何事?!」

 

 そこへ――

 アヴィーを始め、仲間たちが部屋に飛び込んできた。

 

 パッと見『事後』。

 そんな部屋の様子を見て、

 

「むう、正妻はオルマ・ボログで決まりか」

 

 金髪の美しい乙女。

 カーシャが爆弾を放り投げた。

 さらに、

 

「いや、グシオ――貴公は小柄な女が好みなのか? これは困ったな……」

 

 私は大女に属するゆえ。

 

 などと。

 自分の体格を見ながら言った。

 

 確かに。

 カーシャはナーロッパ基準の女性としては、高身長になる。

 ヤオアムト地域でも、背の高いほうになるのだが。

 

「ふざけないで! グシオはロリコンじゃないよ!?」

 

 アヴィーが必死で叫んだ。

 本当に必死である。

 

「いや、別に幼女趣味などとは言っておらぬ。それにだ、オルマは若いとはいえ、嫁入りしてもおかしくない年頃ではないか?」

 

「はい。いつでも準備はできてます」

 

 オルマは勝利宣言のように言って、

 

「ですよ? グシオさん」

 

 そっとグシオのそばに寄り添う。

 やはり、当然のような顔。

 

 空気は、荒れた。

 女たちの怒声と、それをなだめる男の情けない声。

 完全に修羅場の図だった。

 

 ――あきれたね、どうも。

 

 宿の外。

 高めの塀。

 

 その前で、ゴトクは頭を掻く。

 行商人の姿である。

 

 ――あの英雄さん、魂がふたつある。いや、ふたつ分持ってるのか。なるほど、だからバケモノじみた強さを持ってると……。

 

 まあ。

 本物のバケモノに比べたら、可愛いもんだが。

 

 心の中でつぶやき、その場を去った。

 行商人として――

 

 

 

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