破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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 ※カクヨム版もよろしく!


※今回もちょっと誤字チェックが大雑把になりました……。
 よければ誤字脱字など教えていただけるとありがたいです。
 どうぞよろしく……!


その117、悪魔が来りて嘘をつく-20 思惑と思惑

 

 

 ルーブは忙しく動き回っていた。

 文官たちの手伝い――

 半分は書類仕事。

 補助は補助だが、その諸々には様々な機転や能力が必要とされる。

 

 青年の働きぶりを見て、宮廷の文官諸氏は、

 

 ――もどかしい……。

 

 と。

 大いに助けられながらも、やや悶々としていた。

 何故か?

 

 その仕事ぶりが良いだけに。

 見識があるだけに。

 

 ――何でこんな()()()()みたいな立場なんだ……。

 

 ――正式に文官のひとりになってくれれば……。

 

 そういう面で、非常にもどかしかった。

 

 また人間性も奥ゆかしく、でしゃばった所がない。

 いわゆる、好人物。

 

「これは良い」

 

 と。

 文官たちは、そんな評価をした。

 

 一方でルーブのほうは、

 

 ――これでいいんだろうか?

 

 そんな焦りを感じつつも、

 

 ――今の僕は、自分の能力を十分に活かせている。

 

 こういう想いもあった。

 

 パーティー内では、ろくな活躍もできない。

 嫌われてもいないが。

 いや、それ以前の問題だ。

 存在を認知されていない。

 

「あら。いたの、ルーブくん。そこいたら邪魔よ?」

 

 そんな言葉は何度も聞いた。

 まるで透明人間。

 

 向こうに悪意はない。

 当たり前という認識なのだ。

 なので。

 余計にたちが悪い。

 

 何をしようが目に入らない。

 評価や好悪の対象ですらない。

 

 ――何なんだよ、これは。

 

 少し離れて見ると、嫌でも自覚させられた。

 

 ――僕は何をやってる。何をやってた?

 

 必死でアヴィーを補佐している。

 つもりだったが、

 

 ――そうじゃなかったらしい。

 

 では、何のためにパーティーにへばりついている?

 

 ――それは。それは……。

 

 何度自問自答しても、答えは同じ。

 

 ――アヴィーが、アヴィータスって女の子が好きだから……。

 

 最初に出会った頃。

 まだ子供の頃。

 

 ルーブにとって……。

 アヴィーを最初に見た時の衝撃は忘れられない。

 多分、生涯忘れることはできないのだろう。

 少なくとも、()()そう思っている。

 

 まるで、

 

 ――天使、いや小さな女神みたいな。

 

 彼女を中心に世界が輝いて見えた。

 

 初恋。

 いまだに燃え続けている恋。

 

 ――彼女のそばにいたい。

 

 ――彼女のためなら何だってしてあげたい。

 

 心からそう思える相手だった。

 

 しかし――

 現実はどうか?

 

 アヴィーは、グシオに夢中だ。

 仕方がない。

 相手は世に名だたる英雄。

 

 もはや、勝負にもならない。

 

 ――なのに……。僕は。

 

 考えるたびに、自己嫌悪がわき上がる。

 惨めな気分になる。

 離れてみると、余計に強烈だ。

 

 ――未練がましく、ひっついて。後を追いかけて……。

 

 それでいいのか?

 

 考えないようにしていたこと。

 だが。

 最近は嫌でも葛藤が強くなってきた。

 

 悩みを愚痴にして話したこともある。

 

「男を磨けよ」

 

 無責任で曖昧な返答。

 

 ――だけど、何だよ男を磨くって……!

 

 今思い出せば、ひどく腹立たしい。

 

 だが。

 しかし。

 

 最近知り合ったカピオ・ヘアーロングの答えは明白だった。

 

「そんなのは簡単だ。仕事で示せばいいのだよ」

 

「仕事、ですか……」

 

「その通り」

 

 聞き返すルーブに、カピオは洗練された所作と笑顔で語る。

 

 そして――

 

 だが、どこでもどんな仕事でもいいというわけではない。

 自分の能力を活かし、かつ正当な評価を受ける。

 そういう場所でなければな。

 

 カピオはそう言って、肩を叩いた。

 

 これにより……。

 ルーブの迷いはさらに大きくなっていた。

 

 魔王軍に対する遊撃隊として結成されたはずの小隊。

 入れ替わりや新規加入を経て、今や勇者パーティーと呼ばれている。

 

 だが。

 自分があそこにいる意味などあっただろうか。

 

 ルーブの心は、大きく傾きつつあった。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「少しばかり、たずねたいのだが――」

 

「……なんですか?」

 

 小規模な戦闘が終わった後だった。

 カーシャはオルマを呼び止め、

 

「先日、あなたがこの国の王族であることが明らかになった」

 

「それが何か?」

 

「うむ。つまりあなたは姫殿下と呼ばれるべき立場だ。そのあなたと、グシオ殿との婚姻が噂されているという。真偽をおたずねしたい」

 

「え」

 

 率直な質問。

 オルマはこれにギョッとしたが、

 

「噂は、私も聞いてます。でも、具体的なことは別に……」

 

「しかし、その気がないというわけではなかろう」

 

「当然です。どんな立場や身分に至って、私はグシオさんのそばにいます!」

 

 オルマは、

 

「ふんスッ!」

 

 という感じの鼻息を出す。

 よほどの決意であるらしい。

 

「む、そうか。いや、それは良いとしてだ。そうなった時のビジョン、見通しはあるのか?」

 

「どういう意味です?」

 

「グシオ殿が何らかの爵位を授与されるのは間違いなかろう。そうなれば、あなたと婚姻はまず間違いなく進められるだろう。その際だが……」

 

「何なんです?」

 

 少し苛立たし気にオルマはたずねた。

 

「ではハッキリと言おう。側室は何人まで迎える予定であろうか?」

 

「……は?」

 

 この質問に――

 オルマは唖然とした。

 

「な、何を言ってるんですか!? 新婚早々そんな……! いえ、まだ結婚してませんけど……」

 

「そちらこそ何を驚く。天下に名だたる英雄。それも上流貴族の一員となるのだ。側室がおらぬのは、むしろ不自然であろう」

 

「そんなの……!」

 

 オルマは顔を真っ赤にするが……。

 まともな反論ができないようだった。

 

「だって……。ぐ、グシオさんが他の、それも大勢の女性(ひと)となんて……」

 

「む。嫌か?」

 

「当たり前です!」

 

 大声で断言するオルマに、

 

「だが、貴族となるからには、そういったことも避けては通れぬぞ。イヤだキラいだと叫んでいれば、立場は悪くなる。下手をすればおかしな邪推をされかねん」

 

「……それ、あなたが側室、愛人におさまりたいからじゃないですか?」

 

 オルマが向ける疑惑の眼差し――

 これにカーシャは、

 

「それもある」

 

 あっさりうなずいた。

 

「肯定しないでください!!」

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 さて。

 カーシャとオルマがくだらないことを話している横で――

 

「何話してるのかしらね、あのふたり」

 

 ドラグーンを整備していたオッカはひょいとカーシャたちのほうを見る。

 

「さあね。どうせロクデモナイことしか言ってないわ、あの女」

 

 そう言ったのは、エルフ系の美女だった。

 

「よほど虫が好かないようね、あの女騎士さんが」

 

 オッカがからかうと、

 

「好きになれるわけないでしょう。あの目つき……。典型的なヤオアムト(づら)よ。好戦的で暴力的で……。血を見ずにはいられないって顔つきよ」

 

 

 

 

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