破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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https://kakuyomu.jp/works/16818093082887030996

 ※毎度で恐縮ですがカクヨム版のほうもどうかよろしく

 今回もチェックが甘いかもしれません
 誤字脱字があったらすみません……


その117、悪魔が来りて嘘をつく-22 鳴く牛。鳴く雌鶏。そして口笛を吹くメイド

 

 

 今回の仕事――

 これについて、ゴトクは考える。

 

 ――まあ、結局のところ……。

 

 王位簒奪を企む王妃をどうにかするまでの見張り。

 これ自体はカーシャの役割。

 ゴトクは基本そのサポート。

 主に情報収集だが、

 

 ――まさか、王族のアレコレについてまで調べるとはなぁ……。

 

 シーマ国王妃。

 血縁的には、やや遠いが一応王族の流れを汲む。

 王妃として選ばれたのも、

 

 ――まあ、順当だわな。

 

 こういう人物だった。

 美貌と才気で評価される人物ではある。

 

 ただし――

 上辺はとりつくろっているが、

 

 ――亭主……。王様への侮りは問題か。

 

 シーマの国王。

 賢王とは言えない。

 かといって、断じて暗君や暴君ではない。

 全体的に見れば、善政を敷いている。

 

 ――ヤオアムトに比べれば、毒気が足りないがな。

 

 現・ヤオアムト国王。

 モーリ・ホース・ヤオアムト。

 子どもの絵本に出てきそうな風貌の『王様』。

 パッと見の雰囲気は、シーマ国王と似ている。

 

 ――しかし、ありゃなあ……?

 

「よきにはからえ」

 

 と。

 何かにつけ、重臣に丸投げしているようなイメージだが、

 

 ――話を探る限り、なかなかの古狸だぜ。

 

 威厳やカリスマを以て従えるタイプではない。

 だが。

 のらりくらりと……。

 どこか、つかみどころがない。

 

 ――平時でも乱世でも、のらりくらりと生き延びていくタイプだよ、ありゃあ。ちゃっかりとてめえの財産はキープしてな。

 

 一方で、

 

 ――シーマの王様。ちょいっとなあ? 魔王軍が暴れてる、こんな世の中じゃ今ひとつ頼りにならんか。かといって、それなりの能臣がいるから、そうそう破綻するとも思えん。王妃様がバカをしなければ、だがよ。

 

 ゴトクは、思い返す。

 年齢に似合わない美貌と若々しさを持つ王妃の姿。

 

 ――まあ、カーシャお嬢様に比べるとだいぶ落ちるが……。アレは例外だしな。それはさておき……。

 

 王妃は水面下で自身の派閥、勢力を持っている。

 欲得ずくをのぞいても、従おうとする連中はそれなりにいるわけだ。

 

 ――しかしねえ? あの王妃様は……。

 

 押しが強い。

 我が強い。

 権力を振るえる程度には優秀だ。

 人心を掌握もできる。

 すごいといえば、すごい。

 しかし――

 

 ――なまじ優秀なだけに勘違いしたか……。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「女の敵か――」

 

 カーシャは腕組みをしてつぶやく。

 

 酒場の片隅にて。

 同席しているリブオは、

 

「……はあ、まぁ」

 

 おっかなびっくり。

 まさにそういう態度で首をすくめた。

 

「別に怒ってはいない。まあ、ある意味でそうだからな」

 

「あ、そうなんすね」

 

「罪深い男であること。それに変わりはないからな」

 

「はぁ」

 

「一緒に行動していても、女心をくすぐる所作がうまい。いや、無意識なのかもしれぬが」

 

「それって」

 

「計算ではない。天然だ」

 

「ナチュラルボーン・ドンファンっすか」

 

「そう呼ぶには、少し毒気が足りぬがな。だが、それがいいのだろう」

 

「ふうん……」

 

「で?」

 

「はい?」

 

「他にもあるのだろう、噂だの逸話が」

 

「えーと。それは、一緒にいるおねえさんのほうが知ってるんじゃないかな、と」

 

「バカを言え。いつどこで、どんな女をくどいたか聞けというのか?」

 

「あ……」

 

「嫉妬して詰め寄れる立場ではない。これでも、分際はわきまえているつもりだ」

 

「はあ……」

 

 リブオは、困った顔で汗をぬぐった。

 

 ――まあ、ある程度わかるつもりではあるけど。

 

 カーシャがわかっていること。

 それは――

 グシオという男は、女に極めて弱いということだ。

 

 基本。

 女を傷つける、女が傷つくことを厭う。

 

 しかし。

 同時に、黒い獣性や凶暴性を身に秘めている。

 それは表面上はまずわからない。

 だが、戦闘での暴れぶりを見れば嫌でも覚ってしまう。

 その相反する危険性が、女の心をくすぐり、虜にするのだろう。

 

 ――ルーブに足りなかったのは、その凶暴性と獣性か……。といっても、まあ……。

 

 グシオは、戦闘面以外では欠落だらけの人物だ。

 貴族社会でやっていける素養は低い。

 よくいえば純粋。

 悪く言えば、幼稚なバカだ。

 

 ――同時にバカ正直な善人といえばそうでもあるか。少なくとも、そういう側面はあると。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 その時――

 シーマ国王妃は、ひとりで個室にいた。

 もちろん?

 外にはお付きの侍女が控えてはいるが……。

 

 ――やっぱり、可愛いわねえオルマは。

 

 写真。

 技術面の問題で、シーマではまだ普及の遅い技術。

 それで映されたものは、天才魔導師ことオルマ・ボログの姿。

 王妃とよく似た顔立ちの、美しい少女。

 

 ――魔法だけじゃなくって、才気も十二分だし、カリスマもある。今から教育すれば最高のプリンセスになるわ。

 

 写真をなで、ため息を吐く王妃。

 

 ――できれば写真なんかじゃなく、本物のあなたをなでたいわ。できれば、前線で戦わせるなんて今すぐやめさせたいけど。

 

「姫君が姿を見せるだけで兵たちの士気は上がりましょう。それが稀代の英雄と共にあればなおさらに」

 

 こういった軍人の意見と、オルマ自身の強い希望。

 

 ――無理にやめさせることは、かえって良くない事態になりそうね。

 

 そういった判断で現状がある。

 

 ――まあ、代わりに全力でサポートをするわけだけど……。

 

 グシオのパーティーに対する支援。

 人材・物資・予算。

 様々なものが可能な限り用意されている。

 

 ――やはり、あの子しかいないわね!

 

 将来シーマを背負って立つのは、オルマである。

 王妃の中では決断されていた。

 

 ――長男だって悪くはないのだけど、国王(あのひと)に似たのねえ。どうも頼りないわ。

 

 と。

 王妃はひとりでうなずいている。

 

 ――夫となるのがあの英雄なら、合格だものね。あの子の花婿になるには、そこらの男ではダメ! つり合いがとれないもの。あの子には、オルマには変な見合い結婚なんかさせられないんだから。

 

 王族の婚姻は家同士、国同士のつながりが基本。

 むしろ、それ以外の事情などない。

 あった場合、かえって厄介なことになる。

 

 この場にカーシャがいれば。

 王妃の心情を知ったとすれば。

 そう言っただろう。

 

 ――残念なのは、他の女も色々引っ付いてきてることだけど……。ま、そこは男の甲斐性ということで大目に見ましょう。どうせ正妻になるのはオルマしかいないもの。

 

 こういう具合に――

 王妃は密かに計画を練り続けていた。

 

 

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