破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
<現状を大まかに整理してみると、問題点はふたつだ>
<魔王軍と、王位継承問題>
<そうだな。魔王軍は……ちょいと厄介なことになってるが、根城はある程度わかった。頭を潰せば、先はわからんが当面の危機は回避できる>
<英雄グシオ殿でなんとかなるのかしら?>
<やり方次第だな。手っ取り早い方法は少数精鋭で殴り込み、魔王を殺す。ついでに施設やら何やらを潰す>
<シンプルね>
<だが、それだけに難しい。向こう様だってバカじゃない。周辺はガチガチに固めてるぜ>
<でも偵察は情報を送ってきてるのよね?>
<腕が良いからな。単独なのもかえっていい。あと、一般的な魔法とは術の系統が違う点もいいな。相手からすると、ひどくわかりにくい>
<しかし、勇者が乗り込むとなれば話は別だ。ドラグーンを持っていかにゃあならんし。輸送できる飛行艇はそう早く飛べない。少なくとも、英雄殿が乗るドラグーンよりも遅いのは確実だ>
<そうねえ……>
<あんただって、今やまがりなりにもドラグーンに乗っている。問題点はわかるだろう?>
<と、なれば。仮に単体で乗り込んでも、ある程度は大暴れできるでしょうけど。どうしたって長続きはしない。大ざっぱになる可能性も高いから、肝心の魔王を取り逃がすかもしれない、か……>
<ああ。そこんところを、忍術使いのヤツがうまく誘導できればいいが。うまくいったとして――>
<古代竜>
<そいつが向こうの最大戦力だ。いや、自由に操れんとしても、近くでボコスカ戦争やってみろ。刺激されて起き出してくるわな>
<さて、そうなってしまえば>
<そうだよ。敵も味方も、英雄も魔王もあったもんじゃあねえ>
<大災害ね>
<ああ>
<けれども、まあ――私には関係のないことだわ。ナーロッパが滅びようがどうなろうが、知ったことじゃないもの>
<……>
<なに?>
<いや、それはあんたの自由だが>
<本拠地への突貫となれば、あんたも参加するんだろう?>
<そうね。そうなるわね>
<だったら、否が応でも古代竜とぶつかる危険性があるぜ?>
<そうなったなら、それはそれで仕方がない>
<……勝てる見込みは?>
<ない>
<だったらとっとと逃げてもいいんじゃないのか、分の悪い勝負だぜ>
<そうね>
<なら>
<ふむ。少し、気が変わったわ>
<トンズラかい>
<いえ>
<……どうすると?>
<魔王を殺す>
<いや、何でそうなるんだよ。あんたの仕事は……>
<ええ。また別ね。それはそれでキチンとこなすわ。命があればね>
<死ぬかもしれんのだぜ。あんたのやり方に合うのかよ>
<面倒臭くなった……では、ダメ?>
<……おい>
<で。魔王のお城――その詳しい場所を知りたいわ。できれば案内人が欲しいわね>
<わかった。何とかしよう>
<大変にけっこう>
<だが、本当にどういう風の吹き回しだ……?>
<そうねえ……。元々、会ってみたいとは思っていたのよ、魔王陛下とね。ほら、前の時はあくまで裏方だったでしょう?>
<前……? あああ……。あのテロエルフか>
<そうそう、アレ>
<会ってもビックリドッキリする相手じゃないと思うぜ?>
<でしょうね、けど? 魔王と呼ばれる存在。ま、世界を闇で覆う邪悪の権化……なんてのは、おとぎ話とわかっているけど。同じように悪者って詰られる者同士……。面白い話ができるかもしれない>
<酔狂だな>
<じゃあ、準備をヨロシク>
<わかった。いや、もしかすると雇い主にとっても良いタイミングかもしれん……>
<おやまあ。だったら、なおさらにけっこうじゃないの>
かくして――
そういう次第となったわけで。
・ ・ ・
「ふう、やれやれ」
カーシャは、ほぼ大破したドラグーンを見ていた。
先ほどまで自分が乗っていた高速飛行型。
というか……。
「地上型の、それも安い量産型を無理やりに仕立て上げたもんだ。途中で吹っ飛んでも、責任はもてん」
一応自分の専用機として、それなりにカスタマイズされた機体。
リブオも、大いにその専門技術を振るった。
が。
しかし――
「もういっか」
どの道、使い潰すか途中で放り捨てる予定だった。
それがちょっとばかり早まっただけである。
カーシャとしてはそういう理屈だ。
さて。
無理やりな改造を施されたそれは、もはや鎧でも乗り物でもない。
ヒト型をしたミサイルのようなものだった。
これを高速で目的地目指して発進させた。
高高度をほぼ直進である。
当然、まともに稼働するわけがなかった。
途中で機体は崩壊して、カーシャはそのままひょいっと脱出。
そして、今に至る。
「さて……」
カーシャは手にした特別製の魔導ナビを見た。
まだ相当の距離がある。
――落ち合う場所はこっちで、これくらいか……。
ゴトクが用意したものは、正確で使い勝手が良かった。
わかりやすく、最短距離を表示している。
「まあ、なんとかしましょう」
カーシャはひとりつぶやき、地を蹴った。
大きく跳躍し、着地して走り、また跳ぶ。
それを繰り返しながら、高速で目的地へ移動していった。
――おやおや。
途中途中で……。
空中を飛ぶドラグーンを見た。
群れを成すモンスターもだ。
――そういえば、他のモンスターも操れるんだったわね。
邪魔者を排除しながら、カーシャは思い出す。
「ドラゴン・ホルンの応用だな。種をまたいで作用させるから精度はあんまり良くないが……。ま、暴れさせるだけなら十分だ。何体死のうが惜しくもない。寡兵で悩む連中にとってはありがたい道具だぜ」
と。
ゴトクはそのように語っていた。
――まあ、全部殺す必要もない。これは助かるわ。
とにかく進行に邪魔な相手だけを潰す。
カーシャにとっては、羽虫を追い払うようなものだった。
やがて――
「こっちです」
暗がりの中。
目立たない服装をした少年が、小さく手を振っている。
シーフ職の少年・トクベー。
「今回は、お世話になるわ」
カーシャは片手を上げて、静かに近づく。
といっても……。
その後ろには破壊されたドラグーンや、モンスターの死骸が散乱しているわけだが。
「場所は、あそこですね」
「なんとまあ」
どこかの岩屋にでも潜んでいる。
カーシャはそう思っていたのだが、
「ずいぶん立派なお城ね?」
「パッと見は、完全な廃城ですけど、地下に本拠地が造られてます。で……」
トクベーは古城の奥――
やや小さな岩山部分を指した。
「あの地下に古代竜が眠ってます。くれぐれも……」