破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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最近なかなか余裕をもって書けないのが困りもの


その117、悪魔が来りて嘘をつく-29 暗い予感と『暗い結果』

 

 

 ――何だ?

 

 ドラグーンを飛ばす途中――

 グシオは嫌なものを感じた。

 

 何がどうとか……。

 ハッキリとしたことは言葉にできない。

 

 しかし、

 

 ――こういうのは、不吉な予感っていうのか?

 

 引き返すべきか。

 そんな迷いが生じる。

 

 ――だけど……。

 

 カーシャをこのままにしておけない。

 

 また、

 

 ――ドラゴンまであんな死体になってるとは……。単独で、それも生身でできるわけがない。じゃあ、他に誰かが……?

 

 巨大な兵器か。

 それとも、未知の軍勢か。

 

 いずれにしても――

 恐ろしい何かが、破壊と死をもたらした。

 それは確かだ。

 

 ――このまま引き返して……。

 

 グシオは唇を噛んで、覚悟を決めた。

 いずれにしろ、中途半端になる。

 そういう気がしたのだ。

 

 ――今は、カーシャを助ける……!

 

 もう手遅れかもしれない。

 だが、最低でも顔を見るまでは、

 

 ――無事でいてくれ……!!

 

 グシオは、最後に魔力補給をして、タンクを捨てた。

 

 どこまでも続く、殺戮の痕跡(あと)

 それは、グシオのドラグーンを古城の影へと導いていく。

 古城の周辺には、今まで以上の死体が散らばっている。

 

 ――いや、何だこれは……?!

 

 まるで。

 巨大な爆薬で吹き飛ばしたような……。

 そうとしか思えない死体ばかりだ。

 

 ゴブリンやオーガだけではない。

 ドラゴン種まで半分ミンチとなった死体がある。

 

 ――本当に……何が起こった……!?

 

 否が応でも高まる不安。

 それを押し殺しながら、グシオは古城に降りていく。

 周辺には、破壊されたドラグーンが骸をさらしている。

 

 城内。

 そこもやはり、死体だらけだった。

 

 しばらく城内を歩いていると――

 

「……」

 

 気配。

 それを察知して、グシオは足を止めた。

 

「残ってるヤツはいませんよ」

 

 少年の声。

 

 ゆっくりと振り向くと――

 そう年の変わらない、やや年下だと思われる少年。

 目立たない、シーフのような服装をしていた。

 

「誰だ」

 

「ただの偵察員ですけどね」

 

 少年は困った顔で、バンダナで覆った頭を掻いている。

 

「生き残りは、みんな逃げちゃいました。ま、非戦闘員ですね。残った兵力は全滅。文字通りみんな死にました」

 

「貴様」

 

「僕がやったんじゃありません。やったヒトは――」

 

 少年は斜め横を指して、

 

「この城から、東にある小山にいます。首魁……魔王もそこにいますよ」

 

「……お前は誰だ」

 

「だから、単なる偵察員です」

 

「……!」

 

 いきなり――

 

 グシオは物も言わずに斬りかかった。

 少年はあっけなく左右に分断される。

 即死だ。

 

 しかし――

 

「……っ」

 

 真っ二つになったのは、小さな藁人形(わらにんぎょう)だ。

 もう、相手の気配はどこにもない。

 

「……逃げたか」

 

 それとも。

 初めから()()はここにいなかったのか。

 

 いずれにしろ、

 

 ――他にも、手がかりはないか?

 

 魔王がいるという小山。

 そこに、

 

 ――カーシャもいるのか……?

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「来たようね――」

 

 カーシャは立ち上がり、薄く笑った。

 

「何だと?」

 

 ムゼカはハッとして、カーシャを睨む。

 

 これと同時に――

 爆発音と、大きな振動。

 それが、洞窟内を揺らして、小石や埃を下へと落としていく。

 

「じゃあ、後はあなたがたの戦いになるわ」

 

 ムゼカの横を通り過ぎながら、カーシャを肩をすくめる。

 

「別の刺客が来たわけだな……」

 

 立ち上がり、ムゼカはゆっくりと歩き出す。

 

「ええ。勝てれば良し、負ければそれまで」

 

 カーシャは首だけでムゼカを振り返り、目を細めた。

 

「……負ける気はない」

 

「でも自信満々、というわけでもなさそうねえ」

 

 短い槍のようなものを手にするムゼカ。

 両端のうち、ひとつには刃。

 もう一つには、目玉のような宝珠がついている。

 

「安心するんだな。負けて死にかけたとしても、命だけはどうにかしてやるよ」

 

 黒猫が―――

 宙に浮いた座布団の上でケラケラ笑う。

 

「……そいつはありがたいな。涙が出そうだ」

 

 ムゼカは、ギロリと黒猫を睨んだ。

 

「私を救ったとして、どうする。従順な兵士にでもするのか? それとも、苦しんでのたうつ様を見て酒を飲む道化か?」

 

「どっちかといえば、後者だが――」

 

 黒猫は身を揺すって笑い、

 

「正確にいうと、俺が勝手に楽しんでることさ。あんたらを捻じ曲げて、こねくり回して化け物に変える。そいつは、お偉方が始めたこと。俺は単なる使いっ走りだよ」

 

「お偉方?」

 

 そう言ったのはカーシャだった。

 

「つまり、俺たちのボスだぁね。個人か、それとも複数いるのかは知らん。俺は何となく複数いると思うが」

 

「バケモノになった私を解き放って、何の意味があるというのかしら?」

 

「だから知らんよ。しかし、同じようなことをしている連中は他にもいるだろうよ」

 

「まあ、あんたと議論しても意味はなさそうね……」

 

 カーシャはそのまま、去っていく。

 

「では、魔王陛下。健闘を……祈ってもしょうがないかしら? じゃあ、せいぜいがんばって」

 

「……」

 

 ムゼカは応えない。

 ただ、目を閉じて息を吐いただけ。

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「来たか」

 

 杖か、それとも槍というべきか。

 とにかく、得物を手にムゼカは振り返る。

 

 黒衣の男が、そこに立っていた。

 

「お前が、魔王か」

 

「貴様らは、そう呼んでいるな『英雄』よ」

 

「カーシャはどこだ」

 

「……あの女か」

 

 ムゼカは、思わず顔をしかめた。

 ひどく厭そうな顔である。

 

 ――……?

 

 妙な反応だと思いつつ、グシオは剣を抜く。

 

「私の知ったことではない。探したければ、どこでも探すがいい」

 

 言った後――

 ムゼカは静かに得物を持ち上げるが、

 

「む……?」

 

 先端の宝玉が、淡く輝き出す。

 

「この反応。資質があるらしいと情報にはあったが、ドラゴン使いの血統を濃く受け継いでいるようだな……」

 

 ムゼカは笑う。

 ひどく捨て鉢な笑み。

 

「……だとすれば、なんだ」

 

「皮肉な気もするが……。よいさ、貴様を討てば、戦力の立て直しもやりやすかろう」

 

「……できると思うのか」

 

「さあな。だが、やらんわけにもいかぬ」

 

「ほざくな……!!」

 

 そして――

 

 ……。

 ……。

 …………。

 

「にゃおう」

 

「……!?」

 

 唐突に響く、場に不似合いな鳴き声。

 それと同時に、

 

「なんだ!?」

 

 倒したばかりの相手――

 『魔王』の体は、暗闇の中に沈んでいく。

 

 グシオは、思わず捕まえようと手を伸ばす。

 だが。

 

 一瞬の遅れ。

 『魔王』は闇に消え、もうどこにも見えなくなっていた。

 

 呆然としているグシオへ、

 

「グシオ殿」

 

「……っ!?」

 

 振り返ると……。

 カーシャが岩陰に立っていた。

 血で黒く汚れた姿で――

 

 




https://kakuyomu.jp/works/16818093082887030996
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