破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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今回は違う話を予定していたのですが
諸事情でこういうものを出すことにしました

また可能性として更新頻度が不安定になると思われます


その119、いつかどこかは語らず-1 かの国

 

 

 目の前に水晶球がある。

 いや。

 水晶玉、のようなもの。

 

 どのような材質で、誰がどう作ったのか――

 そのへんは、まるでわからないようだった。

 

 ある蚤の市(フリーマーケット)で、気まぐれに買ったもの。

 特に興味関心があったわけでもない。

 期待していたわけでもない。

 

 ただ。

 

「うーん。よくわからんというか、何をおっしゃっているのか、今ひとつわからないですね。すみませんねぇ」

 

 と。

 ボロンはあちこち弄りまわしながら、首をかしげていた。

 

 彼女が映したのは、何とも判別のつかないモヤモヤとした風景。

 例えるなら、絵の具をパレットの上でかき回しているような。

 

 無数の色。

 絵の具であれば、色を多く混ぜれば黒に近づく。

 

 だが?

 そこでは、混ざり合いながらも黒にはならない。

 無数の色が溶け合うようでいながら、ひとつにならない。

 奇妙なものだった。

 

 ――ふうん?

 

 カーシャはひとり、水晶玉を見つめていた。

 

 しばらくすると――

 

「……?」

 

 半透明な水晶の奥。

 そこに、何かが動いたような気がした。

 

 光の反射。

 映ったカーシャの姿。

 そういったものではない。

 何か、別の……。

 

 かと思えば?

 ボソボソと、小さな声が聞こえてくるような――

 

 ――幻聴かしら?

 

 静かに、耳を澄ましてみる。

 集中。

 

「――……ちょっかいを出すには遠く。無視するには近すぎる」

 

「いや。一部の『天然ポータル』で、こっちにつながっている部分がある」

 

「無視するには少々危ない」

 

「あそこの連中は、ひ弱で平和ボケしてるようなのばかりだがな」

 

「そういう先入観は危険だ」

 

「いかにも。多少の事前知識は有れども、実物は初対面なわけだから」

 

 意味不明な会話だった。

 ただ、口調や雰囲気からすると、

 

 ――貴族? いえ、宮廷???

 

 

 ・  ・  ・

 

 

「油を寄越せだ?」

 

「端的に言えば、そういう要求をしておりますね」

 

「見返りはなんぞや。魔法も使えん連中だぞ」

 

「代わりに、優れた非魔力技術が多くあります。兵士は少ないですが練度も高く、武器の威力も相当なものです」

 

「火薬武器だけで、大型ドラゴンを倒した報告もありますな?」

 

「そりゃあすごい!!」

 

「ただ、かなりの出費だったようで。威力が高い分、武器のコストも高いようです。人件費も同様ですね」

 

「金については、うちも似たようなもんだが」

 

「参考までに……。向こうの有する非魔力戦車は、一台作るにあたり10億ジュラほどかかるとか」

 

「うちとほぼ同じだな?」

 

「だが、魔導技術ではないため、モンスターへの効果は薄まる」

 

「それでも、中間体ドラゴンを討ったのは凄まじい。油断はならんぞ?」

 

「……話を戻すが、連中は油が欲しいと言ったな」

 

「石の油。石油と向こうでは言っています」

 

「うまいこといったもんだ」

 

「確かに、ありゃ料理には使えんからな」

 

「彼らの文明を支えるのは、その石油である。これは確実です」

 

「つまりは、連中の首根っこをつかんでいるわけか――」

 

「だが、わざわざ手間暇をかけるのもな」

 

「飯の問題はどうしているのかな?」

 

「かなり危ぶまれてはいますが……。モンスターの食用化を急ピッチで進めているようです。向こうは牧畜が一般的です」

 

「贅沢なもんじゃないか」

 

「いえ。転移前の世界ではモンスターが存在せず、家畜を狙う獣も少数だったようですね。むしろ、世話をすることに費用がかかる」

 

「出現するダンジョンへはどう対処している?」

 

「基本、国が管理して一般人には入れないよう封鎖しているようです。まだモンスターが出てきたケースは少数ですが、時間の問題でしょう」

 

「それに火薬武器で対抗すると?」

 

「ダンジョンでか。跳弾が危険だな」

 

「規模によっては、持ち込む武器や兵士の数も制限されるか」

 

「いやいや。その兵士自体が少ないのだろう? 詰むんじゃないか?」

 

「で――見返りだが」

 

「カガク。いわゆる非魔法技術ですが、それを提供すると。一部ですが、参考の資料です」

 

「……ほおお? こりゃすごい。すごいが……モンスターやら、こっちの自然環境を考慮してないのじゃないか?」

 

「向こうにすれば、こっちは未知の場所ですから。そこはやむを得ないかと」

 

「そんな忖度(そんたく)、こっちがする必要あるのか?」

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 男が歩いている。

 かなり目立つ格好だった。

 いわゆる、スーツにネクタイ。革靴。

 地球ではフォーマルな服装だが、ヤオアムトでは非常に目立つ。

 

「Aさん、どうも」

 

 男に、エルフの美少女が挨拶をした。

 銀髪に赤い瞳。

 ヤオアムト宮廷に仕える魔導士ユオン・キナ。

 

「話はうまくまとまるようですよ」

 

「それは嬉しい限りです」

 

「しかしですねえ……」

 

 美少女エルフは、ちょっと困った顔で――

 

「あれだけ巨大な転送魔法陣(ポータル)を作るのには、それなりの予算と時間がかかりますが。いえ、それもありますが、根回しがかなり大変でしたよ」

 

「ご尽力いただきありがとうございました」

 

 Aは頭を下げる。

 丁寧で、よく()()()()動作だった。

 

「まあ、こちらはこちらですが……。今後、交流も盛んになるとは思います」

 

「ええ」

 

「しかし……。正直、かなり困難と申しますか、問題も大きいですねえ。おわかりでしょう?」

 

「はい」

 

「この国と、あなたがたでは、常識もあり方も違う。そちらにも皇帝がおられますが――。政治には関わっておられない」

 

「はい。国の象徴と定められております。国政に関すること、政治的決定権、発言力は一切持ちません」

 

「この国でも、王が全てを決めて支配する……。いえ、名目上はそうなっていますが、実際はそうではない。多くの大臣・官僚などの意見が影響する。……ここだけの話、ここだけの話ですよ? 王がお飾りであっても、政治は十分に機能する。ですが、そうであっても、王がまったく関わらないというのはできないですよ。構造としてそうなっている。人心だって離れますしねえ」

 

「……ええ」

 

「ですから、『象徴』というのが今ひとつ飲み込めない。それでは、王とか皇帝というより巫女や司祭だ。政治ではなく、宗教の部類になってくる」

 

「それは、私の口からはうまくご説明が……。少々難しい話にもなりますので」

 

「いえ。わかっておりますよ。しかし、やはりそこは改めて認識していただきたいと――。場合によっては、そちらの皇帝陛下と直談判する、なんて可能性もなくはないので……」

 

 

 

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