破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
まさか、こういう形で問題になるとはねえ?
今さらっていえば、今さらですが。
謝罪と賠償――? いえ、説明ですか?
ああ、なるほど。
そうでしょうねえ。
今になってゴチャゴチャ言われても、困りますよ。
ん~。
しかし、この【写真】はショッキングだったのかなあ、ニッポンには。
はあ。
**でのアレですねえ。
いきなり、大きな街レベルで転移してきたアレ。
冒険者ギルドもちょっと困ってましたよ。
統治するのに、人手がいるとね。
支配下に入った、ケーサツですか? アレもねえ……。
はあ、まあ。
どうというモノではないです。
ギルドの基本ルールを守らず、それでいて、うまくやっている的な思考をしていた連中ですね。
若いのも多かったです。
ニッポン人は全体的に、管理しやすかったんですが、たまにそういうのも混じっていると。
ええ、はい。
ギルドナイトなんかには、従順な顔をしていたようです。
ま、それはいいんですけど。
基本ルールは守ってもらわなければいけない。
示しがつきませんから。
ああ、そうですねえ。
はい。
ひ弱なのを何人か捕まえて、便利に使っていたというか。
まあ、こき使ってのほぼタダ働き。
暴力沙汰・面倒ごともポロポロと。
そうですね、はい、ええ、はいはい。
ギルドは怒ってました。
当然ですねえ。
良いとか悪いとか、道徳の問題じゃないですから。
つまりは、ギルドの命令に従えるか――
そういうことです。
隠れてやればいいってものじゃない。
そういうのから、どんな問題が噴き出すかわかりませんからねえ。
というか。
過去に何度か問題になったので、今みたいな基本ルールができたわけで。
で、そのなめくさった連中を、何人か殴り殺して見せしめに?
そうです、そうです。
高台からぶら下げているところですね、ブランと。
それをニッポンが問題視してると。
けど、あの時はニッポンなんかどことも知れないわけのわからん場所でしたし。
ヤオアムトは自国の法やルールでやったにすぎんのですが。
・ ・ ・
日本人への弾圧・虐殺ですか……。
ええ、もちろん調べました。
**年前に転移してしまった不幸な街ですね。
今ではもう完全に、とまではいきませんが同化しつつあるようで。
え。
それは当然冒険者です。
よほどの例外がない限り、流民は一代で正式な国民にはなれませんから。
そうですね。
差別的で非人道的ですよ。
というか、
しかしながら、それで何がどうこうできるわけでもない。
あと……。
殺されたのは、いわゆる反社会的な人間が中心ですね。
全員がそうではありませんが、ギルドの基本ルールを守らなかったため、のようです。
ああ。
正式な一般国民に危害を加えてはならない。
ものを盗んではいけない。
路上を汚したり、路上で騒いだりしてはいけない。
クエストの報酬は正当に分配しなければいけない。
その他諸々の犯罪行為をしてはならない。
まあ……ルールというか常識的なことですね。
そうです。
彼らはそれを守らなかった。
例え同じニッポン人、あるいは転移者同士であっても、それは適用されるんです。
でも、彼らはそれを理解していなかった。
ギルドに頭を下げていれば、あるいは賄賂を贈っていれば見て見ぬふりをしてくれる。
そう思っていたのでしょう。
ええ。
そうはなりません。
冒険者たちの、秩序・治安の悪化はギルドの責任となります。
まして、『はした金』でそれを見逃したなどとなれば――
責任は重大だ。
現場で働くギルドナイトはなおさらでしょう。
新参者のチンピラになめられた、コケにされた。
ギルドナイトはそのように受け取ったでしょうね。
だからこそ、懲罰は苛烈を極めたのです。
リンチを受けて殺された後、さらし者?
そんなものは、優しいものですよ。
あっという間に意識は朦朧として、恐怖も痛みもわからなかったでしょうから。
しかし、中心人物たちへの罰は凄まじかったようです。
見せしめですからね、ギルドを侮るとこうなるぞ、お前たちは身分はこういうものだぞ、と。
この場合は……。
『鉛飲み』ですね。
ええ、読んで字のごとく鉛を無理やり飲まされるのです。
いえ。
固体でありません。
熱されてドロドロに溶けた鉛を、特殊合金の
当然無理やりです。
ええ、残酷ですよ。
拷問などというレベルではありませんね、確実に死にますから。
これは周囲に見せつけるための刑なので、残忍で恐ろしいほど良いとされる。
しかしながら、こんな刑を受けるのはよほどの場合だ。
普通なら労役でこき使われるだけですみますから。
・ ・ ・
女がいる――
その女は、犬ほどのモンスターに餌をやっていた。
「結局さあ。暇人なんだろ? その騒いでる連中はさ」
目の前には、『スーツ姿』をしたニッポン人らしき男。
「あたしゃ、うちのクソガキどもを育てるのに忙しくって、サキュバスのことだの、モテない男のズリネタだの、絵にかいたガキや女のことなんか、気にかけている暇はねえよ」
そう言って、紅い髪をした猫のような女は笑った。
――。
「……おや」
気がつくと、水晶は砂のように崩れていた。
残るは、わずかな残骸だけ。
触ってみるが、別に何ということもない。
魔力は欠片も感じなかった。
――なに、今のは。
幻影。
あるいは、ただの夢。
――それにしては、妙に真に迫ったものがあったけど……。
顎を撫でながら、カーシャは思考にふける。
――私が一瞬見たのは、未来の話か。それとも、もっと遠い
マルチバース。
以前に、バッキーがそんなことを言っていた気がする。
――それ自体は、別に不思議でもないけれど。
異世界から召喚される勇者とか何やら、などという存在もいる。
今さらおかしいとか、どうとか、騒ぐことでもないだろう。
「その異世界ってのがなあ……」
ゴトクはある時、妙な顔で言っていた。
「正直、時とか次元を越えた遠いどこかってのは、違うかもしれん。この世界は、半分どころか5分の1だってわかっちゃいないんだ。異世界みたいなところが、世界のどっかにあっても不思議じゃない」
と――
「どっちにしろ」
カーシャは自嘲的に微笑んだ。
――私が考えることではない、か。