破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「それで、どうにかなりそうですか? キマイラを召喚っと……」
「まあな。ゴトクが手伝ってくれて早めにね。……えーっと、装備カードで鉄の牙」
「けど、いいんですかねえ? 王宮が正式に召喚した勇者でしょ、一応。……キマイラに魔法をプラスして特殊ブレス」
「その王宮が暗にやってくれと言ってるんだよなあ。……あー。防御壁発動ね」
「なるほどねぇ。ま、ヒーダの亜人も正体わかったようだし、魔王も始末できたし。んんー、ここで罠をしかけて……」
ギルドマスターとミゾイ。
両者はカードゲームをしながら、雑談を交わしていた。
ボード上にカードのキャラクター映像が浮かび、戦う様子が見える。
「あれって結局なんだったのかねえ」
「やっぱ魔法で造り出した新種だったようです。王宮のほうで始末したり残骸を回収したようだけど、何の役にも立ちませんねえ……。力まかせに暴れるだけが取り柄。後は、無駄に長時間交尾できるくらい?」
「精力絶倫ってやつかい」
「すごいように思えますか?」
「男としちゃ憧れるものがあるかな」
「ははっ。男は皆殺しで、女は犯す。けど、そりゃ完全に勝利した後の話ですよ」
「そうだなあ。俺なら、喜んで腰振ってるところを奇襲かな?」
「奇襲にヤラれてる女を無視して高火力の魔法。あるいは火攻めってのもあります」
「非情だなあ」
「少なくとも、国軍ならそういう手段に出ると思いますよ。わざわざ手間かけて危険を
ミゾイは皮肉に笑った後、
「そういえば、あの御令嬢――暇してるようですねえ」
「依頼するほどのクエストもないしなぁ」
「よっしゃ! そのまま引きつけろよオッサン!!」
「うおおっ……! き、キショッ!!」
這い寄ってくる巨大イモムシを、ジロは大盾を構えながら防いだ。
同じモンスターが、あちこちで蠢いている。
「何でこんなところに、こんなもんがおンねん!?」
大柄な中年男は半泣きになって叫んだ。
片手で
場所はネビズの街から離れた丘。
冒険者たちは、必死でイモムシを倒していく。
「説明は後だ、タコッ! タンクの仕事しろ!!」
マコネはすばやく駆け回りながら矢を放つ。
ピギギイイイイィィィ!
矢が刺さった途端、イモムシはのけぞった。
刺さった部位からジュウジュウと煙があがる。
「……******!!」
後方からは、杖を構えたネイテクが魔力の弾丸を連射。
正確にイモムシたちを撃ちぬいていく。
「うぐぐぐ。***!!」
ネイテクの横でバッキーは、短い呪文を唱える。
現れるのは――
魔力で編まれた、半透明の蛇。
それがイモムシに殺到。
あちこちにからみついて、動きを鈍らせていった。
怒鳴り声や悲鳴の飛び交う戦闘の後――
「やれやれ……。なかなかしんどいな、やっぱ前衛で攻撃できるヤツがいるか」
マコネは汗をぬぐってから、
「けどよ? バッキーの妨害魔法だ。あれでだいぶ楽になったぜ」
「あはは……。まあ、練習したんで」
照れくさそうに笑うバッキー。
その横で、
「はあ~~~。たまらんなぁ、毎回毎回……」
「しょうがないですね、ジロさんの適性はタンクなので」
げっそりとした中年男に、
どういう経緯で、こうなったかというと。
「腐肉あさりの駆除なあ?」
掲示板に表示されているクエストを見ながら、マコネは言う。
「丘のほうに出てきてんのか。んー……」
「腐肉あさりって?」
バッキーの質問にマコネは、
「あー、でっかいイモムシだよ。死骸をあさるんでそう呼ばれてる」
「それは、ちょっと嫌ですねえ……」
「数もけっこういるってか。んんーー……けど、他に手頃なのがないんだよな」
「人を襲うんです、よねえ?」
「餌がなくなりゃフツーにな。弱ってるヤツ、動きの鈍いヤツなら――ヒトだろうが、獣だろうが関係ねえ」
「うわー……」
「それ以上に、街道なんかでウロウロされたらすげー邪魔だぜ。物や人の行き交いが遅れるんだよ」
「なるほど……」
「とはいえ、他は中堅か初心者向けばっかりだしなあ。ん?」
どうしたものか、と困り顔だったマコネは、
「おーい、そこのオッサンとエルフ」
ある2人組に話しかけた。
「バタムで会ったよな。こっちに来たのか?」
「おー、あの時の。またお会いしましたね。今日カーシャさんは?」
隣の中年男・ジロは辛気臭い顔をしている。
それから、あれこれ話した後。
臨時パーティーを組むことになった次第。
「こんな場所に腐肉あさりがいるってことは……。近くでダンジョンが制覇されたって話は聞かんですから……【寿命】でしょうねえ」
手をかざして周囲を見ながら、ネイテクは言う。
「なんじゃ、それ」
ジロがたずねると、
「前に言ったかもしれませんが、ダンジョンというやつは色んな所にランダムで出現するんですよ。で、ほっとくとそこから色んなモンスターが外へ出てきちゃうと。浅い階層から順番にね」
ネイテクは、聞き取りやすい声で答える。
「まるで雑草やんけ。ちゅうか地下迷宮が自然に出てくるってなんやねん……」
「さあて。それはよくわかってません。確かなのはモンスターがわき出すことと、色んなアイテムや宝もあるってことです。で、ダンジョンが制覇されると、そこにいたモンスターやアイテムが地上に吐き出されます」
ダンジョンは制覇する後こそが肝要で。
「制覇する偉業を達しても? その後、吐き出されたモンスターに襲われて全滅……。そういう危険性もありますので」
説明するネイテクに、
「……はあああ!?」
ジロは言葉を失った。
「街中にダンジョンがわいたせいで、放棄された街もありますね。あ、ダンジョンにも寿命がありましてね? それが尽きると、やっぱりアイテムやらモンスターが吐き出されると」
「いや、それ……。ムチャクチャやんけ……」
「まあ自然災害みたいものですよ」
「……ひええ」
横で聞いていたバッキーは、
「あの、私も前に聞きましたけど、その割にはドラゴンとかレベル高いモンスターってあまり見ませんね」
「ダンジョンにも個性といいますか、それぞれ難易度がありまして。ドラゴンがいるようなのはあんまり出現しないんです」
ネイテクは笑いながら手を振った。
「あれ、カーシャ……さん?」
その声に、カーシャは視線だけを向けた。
シーフのトクベー。
カーシャといくらか縁のある少年が、こっちを見ていた。
後ろには、仲間の獣人娘たちもいる。
ある喫茶店のオープンテラス。
「はー……。ここにも、こんな店があるんだ」
初めて来た時、バッキーはそんな感想を述べていたが。
カーシャはそこで、猫のゴトクと向かい合って座っていた。
両者の間には、チェスのボード。
バッキーいわく、
「なんか、魔導士とかヒーラーとか……知らない駒があるんですね。ルールも色々ちがうし」
ということだった。
「忙しそうね」
カーシャは言った。
「あ、はい。ちょうどクエストの帰りで」
「へえ。そう」
カーシャは目をボードに向けたまま、気のない返事。
獣人娘たちは少しムッとなるが、狐のタロザが無言で制する。
「あのぉ、チェスをされるんですね」
「お酒を飲んでるよりいいわ。どうせ酔えないもの」
言った後だった――
カーシャは顔を上げ、ある方向を見た。
トクベーも同じ方向を振り向く。
「誰ですかね? 高ランクの冒険者?」
先頭を青い鎧を着込んだ若い男。
少年と青年との間という感じか。
その左右には戦士と魔導士。どちらも若い女。
後ろを、眠そうな眼をしたエルフの美少女がチョコチョコとついていく。
と。
男は目ざとい感じで、トクベーを見たようだ。
「――?」
知り合いでこんなヤツはいたか? と、トクベーは不思議に思う。
「よぉ、元気そうだな桂」
「はい?」
いきなり覚えのない名前で呼ばれ、トクベーは不審で顔をしかめた。
――かつら? 日本語……だよな……たぶん。それで、えーと……?
シーフの少年は古い、多分前世の記憶をたぐってみる。
最初はある程度は覚えていた……気がする。
が。
その後の生活で、そんなモノに構っている暇はなくなった。
ただでさえ
それはドンドンぼやけていって。
今では
そもそも。
5歳からの色んな記憶や経験と混ざり合って、
――どこまで当てになるか、怪しいんだよなあ……。見た感じ、日本人っぽい? ……のか? じゃ前世の知り合い? あー、すると今の僕は前世とあんま変わらない顔なんだ?
「ずいぶんかっこ良くなってるじゃねえか? 女まで連れて」
「はあ……?」
この男は、何故にこうなれなれしいのか。
――あんた誰ですか?
トクベーがそう言いかけた時、
「これはこれは。勇者様ではありませんか」
珍しく感情を、それも
「え。勇者???」
トクベーはカーシャと男を交互に見比べる。
「てめぇ……!」
カーシャに気づいた男は、憎悪に顔を歪めて身構えた。
「おやおや。他にも以前お見かけしたお顔が揃っていらっしゃる」
カーシャは挑発するように
造り物めいた笑顔で。