破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その40、吸血鬼も色々である

 

 

 

 

「いやあ~~……! ほんま助かりました!」

 

 ジロはホッとした顔で、冷えた麦湯を飲んでから言った。

 バイナの冒険者食堂。

 モンスターを殺した後、カーシャたちはそこで休んでいる。

 運んでいったモンスターの死体は、ギルドに引き渡した。

 

 ミゾイはギルドでの対応をしているため、この場にいなかった。

 

「あ~。やっぱりコイツだった。……にしても相変わらずえげつないねぇ……」

 

 タイガー・トラッシュの死体を見て、うなずいていた。

 

 ――休むほど、つかれていないのだけど。

 

 連れてきた冒険者どもは青息吐息。

 

「……で。そのヴァンパイアはなに?」

 

 赤いメッシュの少年が、横の吸血鬼少女を肘でつつく。

 少女は、注文した毒蛇の血を飲んでいた途中。

 

「え!? あ、ああ……」

 

 気づいた少女はオタオタしながら、

 

「あたしは、ガジカ。ガジカ・バーバ。こっちはクガヤ」

 

 少女は親指で横の少年を指して名乗った。

 

「クガヤ・ナイト……です」

 

 少年は恐縮しきった顔。

 

「吸血鬼が、よく昼間からウロついてるわね。しかも、街の外を」

 

「……しょーがなかったんだよ。あたし以外にネクロマンサーがいなくってさあ」

 

 ガジカは口をぬぐいながら、言い訳がましく語りだす。

 

 

 

 あたしは、見ての通り冒険者。

 んで。

 魔導士職でネクロマンサー。

 クラスは(レア)。こっちのクガヤはHN(ハイノーマル)だよ。

 

 知ってるだろうけど、しばらく前からこのへんでゾンビどもがわき始めた。

 そいつらを追ってハウンドグールどもな。

 

 ハウンドグールってのは……。

 

 フツー、ゾンビども食い尽くせばどっか行くんだけどさ。

 ゾンビどもはなかなか減らない。

 おかげで、街道は使えなくなるわ、一般人は街の外に出られないわ。

 

 もー、さんざんだよ。

 

 軍隊が出てくりゃ、ゾンビなんざすぐに片づくんじゃないかと思うんだけど。

 ここらを治めてる領主様ってのが、国軍と仲悪くってさあ。

 自治権とかなんとか小難しいこと言って、基地の撤去まで言ってるらしいやね。

 よくわかんねーよ、あたしにゃ学がないのさ。

 

 そんでも、ほっとくわけにもいかねーってんで?

 

 原因を調べてみようとなった。

 できるだけゾンビやハウンドグールどもを駆除した後に。

 冒険者総出でね。

 

 ところがだよ。

 

 ちょっと前の夜だ。

 あの広い野っぱらでさ、モンスターが暴れまわった。

 おかげってのもおかしいけど、それでゾンビどもは追い散らされたんだ。

 

 だけどねえ。

 

 その後もゾンビは出やがるし、それを追っかけてハウンドグールも寄ってくる。

 あのトラヒヒ……ああ、タイガー・トラッシュってのかい?

 そいつもあちこちで暴れててさ。

 

 しかもだよ?

 

 魔法でも、使い魔でも見つけにくいんだ。

 おかげで今日まで正体がわかんなかったんだなあ。

 わかってりゃどんな大金つまれても、領主の命令でも断ったのに……。

 

 理由だって?

 

 じゃ教えておくけど……。

 クソ忌々しいトラヒヒの稲妻は、ヴァンパイア(あたしら)の力を封じやがるんだ。

 そのせいで霧にもなれない、獣にもなれない。空も飛べない。

 ブザマに走って逃げるしかなかったんだよ……。

 

 

 

 語り終えてから、ガジカは一気に毒蛇の血を飲みほした。

 

「なかなか苦労をなさったようね」

 

 ガジカの顔を見ながら、カーシャは言った。

 

「ああ、ホントだよ。おまけに、一緒にいった連中はクソの役にも立たないし……!」

 

 ヴァンパイア少女は、忌々しげな顔でクガヤの頭をはたく。

 

「今まであのモンスターは出なかったの?」

 

「……だったら、とっくによそへ行ってるよ。命がいくつあっても足りやしない」

 

 ガジカは、ガックリと肩を落とす。

 

 ――まあ……。自分たちの天敵がいる土地なんて、長居したくないか。当然と言えば当然。

 

 ある程度のことを飲み込んだカーシャは、

 

「しかし……ナーロッパに(ぬえ)がおるなんてなあ、どうなっとんねん」

 

「ヌエ?」

 

 ジロのつぶやいた言葉に反応する。

 

「あなた、アレを知ってるの?」

 

「いやいや! そういうわけでもないんやけど……。話には聞いたことあるだけで、見るのンは初めてですわ」

.

 

 中年男は、バタバタと手を振って言った。

 

「……大体、昔ばなしちゅうか、空想ちゅうか。現実にいるわけないし」

 

 その後、ボソボソと何事かをつぶやいて。

 

「聞いたことがありますね。他の大陸にいるモンスターが時々こっちへ渡ってくることがあると……。外来種ってヤツですね」

 

 ネイテクがそう説明。

 

「けど、トラヒヒはずっと昔からいるぜ?」

 

「ふむふむ。なら、亜種ってことかも」

 

 ガジカの意見にネイテクは別の説を言った。

 

「私は、あんなモンスターは知らなかったけれどね」

 

 腕組みをしながら、カーシャは言う。

 

「わりとマイナーなモンスターですから。身を隠すのもうまいので確認できないことが多いんです」

 

 ――そんなものかしら。ま、モンスターのことなんて熱心に学んだわけでもなし。驚くことでもないか。

 

 自分は、クエストをこなすだけ。

 そう思った時、

 

「……」

 

 カーシャは、首を後ろへと回した。

 同行したネクロマンサーが近づいてくる。

 

「確認されたモンスターは、まだいるよ?」

 

「今度はなに? また珍しいモンスターでも紹介していだけるのかしら」

 

「珍しいかどうかは、土地によりますがねえ――」

 

 ミゾイは1枚の紙を机に置いた。

 

「……これも、初めて見るわね」

 

 見たところ、図鑑の一部をコピーしてきたものらしい。

 イラストと説明文。

 毒蛾の羽を持った羽毛のない鳥。

 ごくシンプルに説明すれば、そういう姿だ。

 

「このモンスター、あなたたちは知っているの?」

 

 カーシャは冒険者たちを見まわした。

 

 ――なんじゃ、コレは……? プテラノドン? それに蛾みたいな羽って。気色わるぅ。

 

 ジロはげんなりした顔。

 

「オンモラキじゃねーかっ!? ジョーダンじゃねーっっ! こんなん出るって知ってたら絶対受けてねーぞ、こんなクエスト!!」

 

 強烈な反応をしたのは、ガジカだ。

 

「はい?」

 

 ジロはガジカを見る。

 

「ンだよ、オッサン」

 

 ガジカは鋭くジロを見返す。

 

「いやいや! そういうわけやないのよ!」

 

「そういうわけってなんだよ」

 

「このモンスター、ジロさんも知ってらっしゃるんですか?」

 

 仲裁するようにネイテクが言う。

 

「コイツは知らんけど、オンモラキっちゅう名前は聞いたことがな? 名前だけで他はぜんぜん知らんけど」

 

 ジロは、

 

 ――確か妖怪アニメに出てきたヤツやで……。鳥みたいで、死体とか関係してたような。

 

 曖昧(あいまい)な記憶をたどるが、とくにめぼしいものはない。

 

「……アンデッドの発生した場所に出現しやすい。他の特徴として」

 

「好んで、吸血型モンスターを捕食する……だねぇ」

 

 説明文を読むカーシャに応えるように、ミゾイが言った。

 

 吸血。

 

 その言葉に、一同は思わずガジカを見た。

 

「なに見てんだ!! あたしらはモンスターじゃねえ!」

 

 ヴァンパイアの少女は、両手でテーブルを叩いた。

 

「この場合、正確にゃあ吸血型生物全般だねえ。蚊とか(ひる)、チスイコウモリ。あとアブとか」

 

 ミゾイは苦笑して説明した。

 

「もっとも、蚊やアブも血を吸うのはメスだけ。しかも産卵時だけですから。ダンジョンから出てきた吸血型モンスターを常食してるらしいです」

 

 と、ネイテクも補足。

 

「そんなつまんねー講釈はどうでもいいのっ! 問題はねぇ、あたしらを糞蛭(クソヒル)どもと一緒くたにするってことだよ!」

 

 怒りのおさまらないガジカの様子に、

 

「クソヒルってなんや?」

 

「いわゆる、プラーガのことですね」

 

 ジロがこっそりネイテクに質問すると、

 

「いや余計にわからん。そのプラーガってなに?」

 

「伝染型のヴァンパイア……っていえば怒られますけど」

 

 ネイテクはギロッと睨んできたガジカに言い訳するように、

 

「吸血型の種族で、国によってはモンスターに分類される場合もあります。かなり攻撃的かつ排他的。他の種族、特に人間を蔑視する傾向が強い」

 

「それ……ヴァンパイアとおんなじやないの?」

 

「喧嘩売ってんのか、オッサン!!」

 

 ガジカは椅子を蹴倒して、殺気立った目でジロを睨む。

 

「ひぃ! すんません!」

 

「似た特徴はありますが、違う種族ですよ」

 

 ネイテクはまたも苦笑して仲裁するように、

 

「ヴァンパイアという言葉はですねえ。吸血食性の種族を乱暴にまとめちゃった感じになってるんです」

 

「ムカつく話だよ!」

 

「あなたがたが少数派だったり、敵対勢力になってる地域ではしょうがない部分もありますね」

 

 

 

 

 

 

「リーダー、どうしてますかね……?」

 

「そらいつも通りだろ」

 

 マコネとバッキーはネビズへ帰る途中。

 【冒険者の卵】たる子供らを引き連れて――

 

「けど、もうちょっとあの子たちの装備を整えてあげたらどうでしょ?」

 

 バッキーは子供を振り返りながら言った。

 装備しているのは、棍棒や石槍といった自作のものばかり。

 

「いらねーよ。あれで十分戦える相手とだけやってんだ。欲しけりゃ自分で稼いで買うさ。ゴトクのところなら多少値引きしてくれる」

 

「そういうもんですか……」

 

「おーよ。ああいうのが作れなきゃ、この先やってけねえ。クエストでいっつも武器があるとは限らねーからな」

 

「あー、なくしたり壊したりしますもんね」

 

「そういうこと。おっと……」

 

「え? うわ……」

 

 門の近くに、人間が吊るされている。

 といっても正門ではない、主に冒険者などが出入りする小さなものだが。

 正確には人間の死体だが。

 

「くだらねー悪さして、見せしめになったアホだな。久しぶりに見た」

 

「初めてアレ見た時はドン引きでしたよ……」

 

「単に殺すだけじゃ効果が薄いってな。アレ見て足洗うヤツも多いぜ」

 

 そして。

 

 後ろの【卵】たちも、無残な光景に真っ青になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

テストとしてやってみました:本作で興味のある部分

  • サブキャラの過去など
  • 世界観など
  • 令嬢時代カーシャの関係者など
  • 他の国など
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