破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「いやあ~~……! ほんま助かりました!」
ジロはホッとした顔で、冷えた麦湯を飲んでから言った。
バイナの冒険者食堂。
モンスターを殺した後、カーシャたちはそこで休んでいる。
運んでいったモンスターの死体は、ギルドに引き渡した。
ミゾイはギルドでの対応をしているため、この場にいなかった。
「あ~。やっぱりコイツだった。……にしても相変わらずえげつないねぇ……」
タイガー・トラッシュの死体を見て、うなずいていた。
――休むほど、つかれていないのだけど。
連れてきた冒険者どもは青息吐息。
「……で。そのヴァンパイアはなに?」
赤いメッシュの少年が、横の吸血鬼少女を肘でつつく。
少女は、注文した毒蛇の血を飲んでいた途中。
「え!? あ、ああ……」
気づいた少女はオタオタしながら、
「あたしは、ガジカ。ガジカ・バーバ。こっちはクガヤ」
少女は親指で横の少年を指して名乗った。
「クガヤ・ナイト……です」
少年は恐縮しきった顔。
「吸血鬼が、よく昼間からウロついてるわね。しかも、街の外を」
「……しょーがなかったんだよ。あたし以外にネクロマンサーがいなくってさあ」
ガジカは口をぬぐいながら、言い訳がましく語りだす。
あたしは、見ての通り冒険者。
んで。
魔導士職でネクロマンサー。
クラスは
知ってるだろうけど、しばらく前からこのへんでゾンビどもがわき始めた。
そいつらを追ってハウンドグールどもな。
ハウンドグールってのは……。
フツー、ゾンビども食い尽くせばどっか行くんだけどさ。
ゾンビどもはなかなか減らない。
おかげで、街道は使えなくなるわ、一般人は街の外に出られないわ。
もー、さんざんだよ。
軍隊が出てくりゃ、ゾンビなんざすぐに片づくんじゃないかと思うんだけど。
ここらを治めてる領主様ってのが、国軍と仲悪くってさあ。
自治権とかなんとか小難しいこと言って、基地の撤去まで言ってるらしいやね。
よくわかんねーよ、あたしにゃ学がないのさ。
そんでも、ほっとくわけにもいかねーってんで?
原因を調べてみようとなった。
できるだけゾンビやハウンドグールどもを駆除した後に。
冒険者総出でね。
ところがだよ。
ちょっと前の夜だ。
あの広い野っぱらでさ、モンスターが暴れまわった。
おかげってのもおかしいけど、それでゾンビどもは追い散らされたんだ。
だけどねえ。
その後もゾンビは出やがるし、それを追っかけてハウンドグールも寄ってくる。
あのトラヒヒ……ああ、タイガー・トラッシュってのかい?
そいつもあちこちで暴れててさ。
しかもだよ?
魔法でも、使い魔でも見つけにくいんだ。
おかげで今日まで正体がわかんなかったんだなあ。
わかってりゃどんな大金つまれても、領主の命令でも断ったのに……。
理由だって?
じゃ教えておくけど……。
クソ忌々しいトラヒヒの稲妻は、
そのせいで霧にもなれない、獣にもなれない。空も飛べない。
ブザマに走って逃げるしかなかったんだよ……。
語り終えてから、ガジカは一気に毒蛇の血を飲みほした。
「なかなか苦労をなさったようね」
ガジカの顔を見ながら、カーシャは言った。
「ああ、ホントだよ。おまけに、一緒にいった連中はクソの役にも立たないし……!」
ヴァンパイア少女は、忌々しげな顔でクガヤの頭をはたく。
「今まであのモンスターは出なかったの?」
「……だったら、とっくによそへ行ってるよ。命がいくつあっても足りやしない」
ガジカは、ガックリと肩を落とす。
――まあ……。自分たちの天敵がいる土地なんて、長居したくないか。当然と言えば当然。
ある程度のことを飲み込んだカーシャは、
「しかし……ナーロッパに
「ヌエ?」
ジロのつぶやいた言葉に反応する。
「あなた、アレを知ってるの?」
「いやいや! そういうわけでもないんやけど……。話には聞いたことあるだけで、見るのンは初めてですわ」
.
中年男は、バタバタと手を振って言った。
「……大体、昔ばなしちゅうか、空想ちゅうか。現実にいるわけないし」
その後、ボソボソと何事かをつぶやいて。
「聞いたことがありますね。他の大陸にいるモンスターが時々こっちへ渡ってくることがあると……。外来種ってヤツですね」
ネイテクがそう説明。
「けど、トラヒヒはずっと昔からいるぜ?」
「ふむふむ。なら、亜種ってことかも」
ガジカの意見にネイテクは別の説を言った。
「私は、あんなモンスターは知らなかったけれどね」
腕組みをしながら、カーシャは言う。
「わりとマイナーなモンスターですから。身を隠すのもうまいので確認できないことが多いんです」
――そんなものかしら。ま、モンスターのことなんて熱心に学んだわけでもなし。驚くことでもないか。
自分は、クエストをこなすだけ。
そう思った時、
「……」
カーシャは、首を後ろへと回した。
同行したネクロマンサーが近づいてくる。
「確認されたモンスターは、まだいるよ?」
「今度はなに? また珍しいモンスターでも紹介していだけるのかしら」
「珍しいかどうかは、土地によりますがねえ――」
ミゾイは1枚の紙を机に置いた。
「……これも、初めて見るわね」
見たところ、図鑑の一部をコピーしてきたものらしい。
イラストと説明文。
毒蛾の羽を持った羽毛のない鳥。
ごくシンプルに説明すれば、そういう姿だ。
「このモンスター、あなたたちは知っているの?」
カーシャは冒険者たちを見まわした。
――なんじゃ、コレは……? プテラノドン? それに蛾みたいな羽って。気色わるぅ。
ジロはげんなりした顔。
「オンモラキじゃねーかっ!? ジョーダンじゃねーっっ! こんなん出るって知ってたら絶対受けてねーぞ、こんなクエスト!!」
強烈な反応をしたのは、ガジカだ。
「はい?」
ジロはガジカを見る。
「ンだよ、オッサン」
ガジカは鋭くジロを見返す。
「いやいや! そういうわけやないのよ!」
「そういうわけってなんだよ」
「このモンスター、ジロさんも知ってらっしゃるんですか?」
仲裁するようにネイテクが言う。
「コイツは知らんけど、オンモラキっちゅう名前は聞いたことがな? 名前だけで他はぜんぜん知らんけど」
ジロは、
――確か妖怪アニメに出てきたヤツやで……。鳥みたいで、死体とか関係してたような。
「……アンデッドの発生した場所に出現しやすい。他の特徴として」
「好んで、吸血型モンスターを捕食する……だねぇ」
説明文を読むカーシャに応えるように、ミゾイが言った。
吸血。
その言葉に、一同は思わずガジカを見た。
「なに見てんだ!! あたしらはモンスターじゃねえ!」
ヴァンパイアの少女は、両手でテーブルを叩いた。
「この場合、正確にゃあ吸血型生物全般だねえ。蚊とか
ミゾイは苦笑して説明した。
「もっとも、蚊やアブも血を吸うのはメスだけ。しかも産卵時だけですから。ダンジョンから出てきた吸血型モンスターを常食してるらしいです」
と、ネイテクも補足。
「そんなつまんねー講釈はどうでもいいのっ! 問題はねぇ、あたしらを
怒りのおさまらないガジカの様子に、
「クソヒルってなんや?」
「いわゆる、プラーガのことですね」
ジロがこっそりネイテクに質問すると、
「いや余計にわからん。そのプラーガってなに?」
「伝染型のヴァンパイア……っていえば怒られますけど」
ネイテクはギロッと睨んできたガジカに言い訳するように、
「吸血型の種族で、国によってはモンスターに分類される場合もあります。かなり攻撃的かつ排他的。他の種族、特に人間を蔑視する傾向が強い」
「それ……ヴァンパイアとおんなじやないの?」
「喧嘩売ってんのか、オッサン!!」
ガジカは椅子を蹴倒して、殺気立った目でジロを睨む。
「ひぃ! すんません!」
「似た特徴はありますが、違う種族ですよ」
ネイテクはまたも苦笑して仲裁するように、
「ヴァンパイアという言葉はですねえ。吸血食性の種族を乱暴にまとめちゃった感じになってるんです」
「ムカつく話だよ!」
「あなたがたが少数派だったり、敵対勢力になってる地域ではしょうがない部分もありますね」
「リーダー、どうしてますかね……?」
「そらいつも通りだろ」
マコネとバッキーはネビズへ帰る途中。
【冒険者の卵】たる子供らを引き連れて――
「けど、もうちょっとあの子たちの装備を整えてあげたらどうでしょ?」
バッキーは子供を振り返りながら言った。
装備しているのは、棍棒や石槍といった自作のものばかり。
「いらねーよ。あれで十分戦える相手とだけやってんだ。欲しけりゃ自分で稼いで買うさ。ゴトクのところなら多少値引きしてくれる」
「そういうもんですか……」
「おーよ。ああいうのが作れなきゃ、この先やってけねえ。クエストでいっつも武器があるとは限らねーからな」
「あー、なくしたり壊したりしますもんね」
「そういうこと。おっと……」
「え? うわ……」
門の近くに、人間が吊るされている。
といっても正門ではない、主に冒険者などが出入りする小さなものだが。
正確には人間の死体だが。
「くだらねー悪さして、見せしめになったアホだな。久しぶりに見た」
「初めてアレ見た時はドン引きでしたよ……」
「単に殺すだけじゃ効果が薄いってな。アレ見て足洗うヤツも多いぜ」
そして。
後ろの【卵】たちも、無残な光景に真っ青になるのだった。
テストとしてやってみました:本作で興味のある部分
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サブキャラの過去など
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世界観など
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令嬢時代カーシャの関係者など
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他の国など