破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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いつも感想をくださる皆様、本当にありがとうございます

おかげさまで張り合いが出て執筆の気力がわいてまいります!


その41、ゾンビもののお約束とはなにか

 

 

 

 

「感染型?」

 

 自分が狩ったタイガー・トラッシュたちの前。

 カーシャはミゾイを振り返った。

 

「街からは遠くだけどねぇ、わりと大き目の村で確認されたとの報告さ」

 

 冒険者ギルド・バイナ支部。

 その2階から、ミゾイは顔を出してそう言った。

 

「ずいぶん性質(たち)の悪いのが発生したわね」

 

「まったくねえ」

 

 ため息交じりで返答するミゾイ。

 

「やっぱ、そういうのもおるんやなあ」

 

 感染型ゾンビの情報。

 それを聞いたジロは妙な気分でうなずいた。

 

「ほう。やっぱり、ということはそちらのお国にも?」

 

「いや、これもフィクショ……まあ、わしも聞いただけで」

 

 興味深い、とたずねるネイテクにジロはモゴモゴと返答。

 

「最初から気になってたんですが……。あなた、話に聞くばっかで本物と出会ったことぜんぜんなかったんですね?」

 

「そりゃまあなぁ」

 

「ご同郷のヒーラーさんもそうですが。かなり平和な土地だった、というのはやはり本当らしい」

 

「信じてなかったんかい」

 

「そういうわけでもありませんが……。ダンジョンの発生は島々でも、別大陸でも確認されてる現象ですから。そういう地域もあるのか――と。ま、好奇心です」

 

「ホンマかいな」

 

「もちろん。あなた、出会った当初は混乱してわめくは、体調崩して寝込んだりお腹くだしたり。ハッキリ言って話が聞きにくい状態でしたから」

 

「お前、慣れた後は変な鎧着せたり無理やり肉盾(タンク)にしたり、こき使ってたやんけ!?」

 

 不満を口にするジロへ、

 

「私ぁ別にあなたの保護者でもなんでもありませんから。かかった手間やお金は返してもらうのが筋でしょ? あなた無一文だったし、働いてもらうしかありません」

 

「ぐっ……。反論しづらいことを」

 

「しづらい? 反論の余地がないと言ってほしいですな」

 

 ――感染型ゾンビか。

 

 カーシャの知るところでは、

 

『人間を襲うが、わずかな部分しか食べない』

 

『極端な例では噛みついて絶命させただけで終わる』

 

『襲われた人間は適切な処置をしない限り、同じく感染ゾンビとなる』

 

「こんなところかしら?」

 

 カーシャが知っている知識をしゃべると、

 

「その他にも――」

 

『一般のゾンビと同様、動きは緩慢である』

 

『しかし、人間並あるいはそれ以上の機敏さで動くパターンもある』

 

『積極的ではないが、人間以外の動物も襲う』

 

『襲われた犬や牛などがゾンビ化する例も確認されている』

 

「……と、まあ。こういう情報もあるねえ」

 

 説明したのはミゾイだった。

 

「面倒なものね。それで?見つかった感染ゾンビはどういうパターンなの?」

 

「感染することを除けば、動きは緩慢だってこと。それに……」

 

「他になにか?」

 

「はぁ。感染型はねえ、自然発生することはほとんどないのさ。つまり、人為的に作り出されるってこと」

 

死霊魔術師(ネクロマンサー)に?」

 

「幸か不幸か、私ぁその(すべ)を知りませんけど。大体そんな制御の難しい厄介なもの、作る理由もよくわからんのでねぇ」

 

「と、いうことは――」

 

「つまり今回の一件、人為的に引き起こされた可能性大ってわけ」

 

「そう」

 

 苦笑気味のミゾイへ、カーシャは気のない返事。

 

「なら。そういったところは専門家にお任せするわ。私はただ、駆除対象を殺すだけだから」

 

「あはは。ゾンビは死体だけどね」

 

「じゃ、叩き壊すと言い換えましょう。大枠が決まったら教えてちょうだい」

 

 私は街を観光でもしてくるから。

 

 カーシャはそう言いながら席を立って――

 

 ジロとクガヤに向かって軽く(あご)をしゃくりながら、

 

「こいつらは、今必要なのかしら?」

 

「あ~~……。この場では、あんまり役には立たない、か。そっちのエルフさんはいてもらうと助かるね」

 

 ミゾイはジロたちをちょっと見てから、ネイテクに視線を移す。

 

「一応、私も魔導士の端くれってわけですか」

 

「そういうこと」

 

 片眼鏡(モノクロ)をいじるネイテクに、ミゾイは目を細めた。

 

 笑っているのが、フェイスベールごしでもわかる。

 

「けっこう。その2人、案内しなさい」

 

 当然のような顔で命令するカーシャ。

 

「ええ……」

 

「な、なんで……」

 

 困惑と不満を顔にだす中年と少年にカーシャは、

 

 チャリン

 

 金貨を4枚――それをテーブルの上に置いた。

 

「それぞれに2枚ずつ。終わったら後金を払うわよ」

 

 ということで。

 

 あっという間に話は決まった。

 

 

 カーシャが2人を率いて去った後、

 

「さてお嬢様? ネクロマンサー同士でやるべきことを考えようじゃないか」

 

 ガジカと同じテーブルについた。

 

「ンだよ……。あいつら、割のいい小づかい稼ぎしやがってさ」

 

 ヴァンパイア少女はブータレながら、テーブルに顎をのせ、

 

「なんだって私がオンモラキの出るクエストに……。魔女のババァの呪いか?」

 

 妙な言い回しをした。

 

 

 

 

 

「考えてみれば――」

 

 先導させながら、カーシャは言った。

 

「あなたとも妙な因縁があるわね。えーと……」

 

「わしは塩谷長治郎言います」

 

 ジロは振り返って、本名をフルネームで言った。

 バイト代をたっぷりもらっているのため、愛想が良い。

 

「シャーヤ・チョージェ……? 言いにくい名前だこと。バッキーとおんなじ」

 

「あ、みんなからジロさん言われてます」

 

「ふーん。ジロね」

 

「はいはい」

 

「あなた、あのはぐれエルフとあちこち行ってるの?」

 

「そーですねえ。一か所へ留まるっちゅうのはないです。あんまり(つよ)ないですから、日銭仕事探して……です」

 

「なかなか大変なものね」

 

「そーなんです。この年で知らん土地に放り出されてるでしょ? もう難儀なことばっかで」

 

 今までの苦労を思い返して、中年男はしみじみと言った。

 

 ――こんなのは、前の私なら鼻で笑って小銭でも投げればいいほうだったわね。こいつも運がいいのか悪いのか。

 

 カーシャはそんなことを思いつつ、

 

「そっちのあなた」

 

「は、はい」

 

 一瞬ビクリとして、クガヤは若干おびえた態度で振り返った。

 

「あなたは、獣人。いえ、人狼?」

 

「え? そうです……。けどなんで……」

 

「匂い。いえ、気配かしら。人間じゃないことはわかってた」

 

「へえ……。すごい」

 

 クガヤは目を丸くする。

 

「人狼がヴァンパイアとつるむことは多いと、聞いたことはあったけど」

 

「そうっすね。そういうことは多いです。昔からって感じで」

 

 ポリポリと頬を掻き、人狼少年は言った。

 

「俺もガキの頃から冒険者ってわけじゃないんですけどね。前は旅回りの一座にいたんです。けど、客入りが悪かったり色々あって、解散しちゃって。そんで伝手(つて)からガジカさんのとこで……」

 

「やっぱりお前も苦労しとるんやなぁ……」

 

 ジロジロはしみじみとうなずく。

 

「しかし、若いんやから希望は捨てたらあかんで?」

 

「はあ……」

 

 クガヤは若干迷惑そうに、おざなりな返事。

 

「あなたは先細りの人生だものね」

 

「……そうなんですわ。って、絶望的なこと言わんでくださいよ!?」

 

 カーシャの容赦ない意見にジロはツッコミを返した。

 

「ま。あなたも〝赤い地獄(あそこ)〟に行ければいいかもね。私以上に強くなって帰れるかもしれなくってよ。運が良ければ」

 

「いやあ……あんまり運には自信ないです」

 

「そのようね」

 

 ――もっとも。あそこに行くこと自体が幸運とは言えないけど。

 

 あの世界で――

 普通(まとも)な感性や感情など保てるはずもない。

 大体、

 

 ――私も、自分がどれだけまともかわかったものじゃない。いや、マトモじゃないのはわかりきったことか……。

 

 カーシャは内心苦笑してから、

 

「悪くすれば、日常生活を送るのさえ難しくなるかもしれないわね」

 

「戦争帰りでPTSDになった兵士みたいですねえ……」

 

「ぴーえす? なに?」

 

「ああ、いえ。あれ? あんまりよく知らんで言ってましたわ。まったくお恥ずかしい」

 

「知ったかぶりってわけ?」

 

「ズバリ言いますなあ。実際そうなんやけど」

 

 ジロはきまり悪げに苦笑した。

 

「大雑把に言うたら、しんどい目にあってそれがずっと傷になってる、ような感じやったと思いますけど」

 

「ふーん」

 

 カーシャはどうでも良さそうに返しながら、

 

 ――傷は傷でも心の傷か。ありふれた話ではあるわねえ?

 

 

 

 

 

 

 ネビズ近くの小さな草原。

 

「ふむふむ……」

 

 タロザは肩に乗った仔狐(こぎつね)へ耳を傾けてから、

 

「どうやらバイナのほうで、紅吸(べにすい)がでてるようどす」

 

 そう仲間に言った。

 

「紅吸いうたら、生き血を吸って仲間を増やす連中じゃったかのう?」

 

 金砕棒を布でふきながら、キューモが顔を上げた。

 

「昔、どっかの国で聞いたことあるなあ。けど、ヤオアムトじゃぜんぜんだ」

 

「ここは、ヴァンパイアたちがけっこういる」

 

 トクベーの疑問に、メッカイが答えた。

 

「ヴァンパイアと紅吸、死ぬほど仲が悪い」

 

「悪いというよりは、ヴァンパイアはアレらを死ぬほど嫌って殺したがってるんどす。同じ仲間や思われるんがえらくお嫌いなようで」

 

「ほうか。うちは興味がないけえ知らんかった」

 

「近い種族じゃないの?」

 

「似てる部分はいくらかおますけど……せやから、余計に不愉快なんとちがいます? 肉親や同族の争いはぜんぜんちがう相手よりも憎しみが増すとも言いますから」

 

「ふーん……」

 

 ――そういうもんなのかな。

 

 トクベーは思いながら、バイナのある方角を見た。

 

 

 

 

 

 





感想の中で自分では気づいてなかった点を指摘されたりして、驚いたりなるほどと思うこと多々あり
これも非常にありがたいです

テストとしてやってみました:本作で興味のある部分

  • サブキャラの過去など
  • 世界観など
  • 令嬢時代カーシャの関係者など
  • 他の国など
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