破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「これはまた――」
地下倉庫。
そういうには、あまりにも広い。
「ダンジョンというほどでもないけれど……地下施設に近いわね」
歩きながら、カーシャはつぶやく。
「あんた、この暗がりで良く平気だなあ?」
後ろに続くガジカは驚いた声で、
「ヴァンパイアやネクロマンサーならともかく、暗視魔法も使ってないだろ?」
「夜目はきくほうだから」
「そういうレベルかよ……」
などと言ううちに――
「……」
カーシャは足を止めた。
前方に、微かな灯り。
そしてより一層強くなる血の臭い。
「おっと……? どうやら、すぐそこらしいや」
ガジカが闇の中で笑う。
「死体もたくさんあるね、こりゃあ」
そうミゾイが言ってる間に、
「おいおいおい……」
スタスタ進んでいくカーシャに、ガジカはあわてる。
「いくらなんでも、ちょっと無防備……」
ヴァンパイア少女が言いかけたと同時に、
ベキッ
グチャ
ボゴッ
ドロ……
メキン
内臓が破れ、骨が砕ける。
そういう音が地下通路に響き渡った。
闇を見通す
――体中に目があるのか? じゃなきゃ、未来予知でもしてんのかよ???
カーシャの動きは、そう思わせるものだった。
「ま、おかげでこっちは楽ができるってもんさね」
ミゾイは苦笑しながら死体となった敵を観察して、
「どうやら、相手はお前さんたちの宿敵らしいよ?」
目を細めて、ガジカを振り返った。
「……ッチ」
ガジカは不快そうに舌打ちして、死体を踏みにじる。
粉砕された死体は、どんどん灰と化していった。
「プラーガだねえ」
「
――要するに。
ここは、プラーガの隠れ家らしい。
カーシャはあちこちを見ながらそう判断した。
正解かどうかはわからない。
だが、多数のプラーガがいることは確かだった。
――あるいは、食堂。食料庫でもあるのかしら?
潰されたプラーガたちが灰になっていく横で――
カーシャは吊り下げられた人間の死体や、血液をため込んだ容器。
そういったものを観察していく。
見て気持ちの良いものではない。
かといって嫌だとか、怖いというものでもない。
――〝
再生して襲ってこないだけ、はるかにマシだ。
そうこうしているうちに、また声と気配が近づく。
カーシャはすぐに〝食堂を〟出て、駆除を再開した。
――それにしても……?
これがプラーガか、とカーシャは思った。
見た目は人間とほぼ変わらない。
肌の色もだ。
灰色であるヴァンパイアのほうがまだわかりやすい。
――あとは……。
牙。
開いた口には、鋭い犬歯が見える。
――で、その力は。
人間よりも強い。
壁を這いまわる。
頑強な肉体。
これに人間を同種に変える能力があるなら、
――知恵がある分、ゾンビよりも厄介ね。
それは間違いない。
――でも、それだけでもある……。
強いことは強い。
しかし、あくまで【素人の人間】に毛の生えた程度でしかない。
少なくともカーシャから見れば。
逃げるという選択を取らないだけ、ずっと潰しやすい相手でもあった。
とはいえ……。
仲間が虫けらのように潰されていく光景――
それは嫌でも現実を思い知らされるものだったらしい。
ネズミを狩るつもりだった猫が、相手が虎だと理解する。
プラーガたちは、潮が引くように逃げ出し始めた。
――逃げるか。まあいいけど。
地下通路は思いのほか広い。
つまり。
動きやすいのも助かった。
さらには、
「灰になるのも、都合が良い」
つぶやいて、カーシャは
前後左右。上下。
大よそが片づくと、次は隠れているものを処分していく。
「さてと……」
気配が感じられなくなったのを確認してから、カーシャは止まった。
カーラナーガを肩に担ぎ、周辺を見まわす。
灰が雪のように広がっている。
とりあえず、見つけられたものは全て駆除した。
――まあ、取り逃がしがいるかもしれないけど。それは後ということで。
ネクロマンサーたちと合流するため、引き返す。
「やっぱり、ここね」
カーシャはある部屋に入り、言うともなく言った。
いわゆる地下牢。
何人もの人間が捕まっていた。
最初確認した時は、とりあえずプラーガの駆除を優先したわけだが、
「で……」
入口の鍵が壊されているが、中の人間は1人も出てこようとしない。
牢の前では、ガジカが1人の女を捕まえていた。
片手で首をつかみ、吊り上げている。
その赤い瞳には怒りと憎悪が燃え上がっていた。
「やっぱりプラーガが紛れ込んでたわけね」
横のミゾイに言った。
「わかってたら、ついでに始末してくれりゃ手間がはぶけたんだがねえ?」
「あんな手の込んだマネしてるのなら、逃げるよりもスパイでもするんじゃないかと思って。それに」
「それに?」
「かげんを間違うと、他の連中まで潰しちゃうから。私は別にそれでもいいけど」
カーシャのとんでもない言葉に、牢内の人間たちは絶句して震え上がった。
「ああー、そりゃ困るねえ……。うん、お気づかい感謝するよ」
ミゾイはうなずいてから、ガジカのほうを見た。
「おい、クソヒル……。こんな場所に棲みついて何してンだよ、ええ? ずいぶん好き勝手やってるじゃねえか、コラ」
「ガガ……」
女は苦しそうにうめいていたが、
「あんた……何なのよ、人間に味方して……ヴァンパイアのくせに」
「質問してるのはこっちだ、ボケ!!」
叫んだ瞬間、ガジカの手が獣のように変化する。
獣毛に覆われて、刃物のような
「ヴァンパイアだあ? ヴァンパイアだからどうだってんだよ!? てめえらクソヒルどもにアレコレ言われる筋合いはねえ!! それとも何か!? あたしらとお友達のつもりか!! うす汚ねえヒルもどきの分際でッッ!!!」
ガジカの叫びと同時に、女は喉を握りつぶされた。
ゴボゴボと血が流れていくが、死んではいない。
「やれやれ、あんなコトする必要もないのにねえ?」
ミゾイが肩をすくめる。
「
「なら、殺してもいいわけ?」
「というか、殺したほうが話を聞きやすい」
カーシャの問いに、ミゾイは目を細めた。
「ガジカ・バーバ。邪魔だからどきなさい」
カーシャは静かな声でヴァンパイア娘に言った。
「……!?」
ガジカはゾッとしたような表情で振り返りながら、飛びのく。
ピン
瞬間――
何かが捕まっていた女の胸を貫いた。
「……ッ!!」
女は目を見開くと同時に、灰となって崩れ落ちる。
「これも、効くようね」
カーシャは言いながら、灰をまさぐり――
一枚の銀貨を拾い上げた。
銀貨を指で弾き、女の心臓に打ち込んだのである。
「銀かい」
「ええ。まあ、心臓を潰しても良かったけど。ちょっとした好奇心ね」
「なるほど。さて、後はこっちの仕事と言いたいけど……」
ミゾイは牢の人間を見ながら、
「とりあえずこっちのほうを何とかせにゃダメだねえ」
そして――
「なーんか、妙なことになったもんだなあ……」
バイナのギルド支部。
そこを出ながら、ガジカは首をかしげた。
あの後。
バイナから応援を呼んだカーシャたちは、生存者をギルドナイトに任せて一時帰還。
それから。
支部の地下室で、死んだプラーガの魂を呼び出した。
カーシャが銀貨を打ち込んだ女。
その灰を、ミゾイは持ち帰ったのだ。
「まー、話を要約すると、だ」
魂を
「このプラーガたちはどっか遠い場所から転移してきた。で、向こうの流儀で好き勝手やってるらしい。地元じゃあいつらは食物連鎖の頂点で、人間を餌にしてイキってたようだねえ」
「はっ! プラーガが? どっかの小島にでも住んでたのかよ?」
ガジカの嘲笑にミゾイは、
「さてねえ。あなたも同業なら知ってるだろ? 亡霊から情報を得るのはこれでなかなか難しいもんさ」
「まあね……。あんたほどの腕でもそうなんだから……」
「で、おそらくだがあっちにはグールハウンドをはじめとした天敵がいなかった。だからかなり繁栄できたんだろうさ」
「そりゃけっこーなこった。けど、そんな天国からどーしてこんなアブネーとこに来たんだよ?」
「……」
「なンだよぅ?」
「遠出のゲートってのは、知ってるよねえ?」
「――相当の遠距離、たとえば大陸間移動も可能な転送ゲート。あるいはもっと遠く……」
ミゾイの言葉に、カーシャが応えた。
「そうさ。どうやら、連中はそれを通ってやってきたようだ」
「いや、だけどさあ? そんなモン造るのにも維持するのも、ンで使うのにもかなりの金やら労力がいるだろ?」
「特に魔力――それを補うための魔石がいるわね」
ガジカに続いて言ってから、
――魔石? そういえば……。
エルフのテロ組織が、大量の魔石を保有していたという噂。
それに、以前にエルフのアジトでそれらしいものを見た。
カーシャは、思い出しながら口を閉じて――
「誰かが、あちら側かこちら側かは知らねーけど、でかい遠出のゲートとこしらえたヤツがいるってことか……」
道を歩きながら、ガジカはつぶやく。
「なんにしろ、迷惑な話ね」
カーシャはそう言ってから、
「……」
空を見上げた。
日はまだ高い。
しかし――
微かに遠雷の音がしていた。
テストとしてやってみました:本作で興味のある部分
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サブキャラの過去など
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世界観など
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令嬢時代カーシャの関係者など
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他の国など