破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
カーシャは、高台の上に座っていた。
見ているのは――
先ほど探っていた廃村の方向。
そろそろ日没の時刻。
まだ遠雷の音は止まっていない。
確かな情報など何もなかった。
ただ。
予感はある。
もうすぐ、大きな戦闘が起こると――
――それはいつか……。
そう思いながら座っていたカーシャは、視線を後ろへ送った。
「おーい、カーシャ……さん?」
大きな声。
翼を持った者が、近くに飛んでくる。
「何事か、あったようね」
カーシャは降り立ったその相手に言った。
「あー、あった! やばいというか、えらいことになってるみたいだ!」
ガジカ・バーバ。
身軽に飛んでいた。
「感染ゾンビの群れが、こっちに向かって進んでるってさ! しかも、統率されてだぜ?」
ガジカはあわてた声で叫んだ。
翼が霧のように変化して、灰色の腕に戻る。
「数がいればいるだけ、ハウンドグールもやってくるわね」
「当然だろーな」
ガジカは肩をすくめる。
「それと、もうすぐ日が沈む。夜に街の周辺でこんな騒動が起これば、みんなあわてるでしょうね」
「? あー、っていうか、ギルドはもうあわててるよ」
「ギルドのほうも、対処するためにギルドナイトや冒険者たちを招集する」
「だから、なんだよ……」
カーシャの物言いに、ガジカは少しイラだったが、
「――
「まあ、大なり小なり注意はゾンビのほうへ行くでしょうね。で、手強い相手に夜襲というのはよくあるけど……」
「夜型の種族には、さらに都合が良いよな……」
「そう、たとえばあなたたちの嫌いなプラーガもね」
カーシャは言ってからゆっくりと立ち上がる。
「で……あなたが、ここを攻めるならどういう手を使うのかしら」
夕焼けから、静かに夜へと移行していく中――
街の周辺はゾンビとそれを襲うハウンドグールで大混戦となっていた。
中には、ゾンビ犬なども交じっている。
だが人間以上の脅威になるそれも、ハウンドグールは無関係に襲いかかっていた。
ゾンビがどれだけ引っ掻き、喰いつこうが――
ハウンドグールにはまるで効果がない。
寄ってたかって食い尽くすと、次の獲物を狙い始める。
バイナへ近づくゾンビの群れ。
これも途中で襲われ、数を減らしていく。
「なんか、変な感じやなあ……」
見張り台から見おろすジロは、微妙な顔でつぶやいた。
世界を死者が覆いつくした世界。
映画やゲームでは使い古された場面。
だが。
――ここやと、そんな風にならんのか……。いやまあ、そうなっても……。
圧倒的多数で増殖し続けるはずのゾンビ。
その脅威も、ある種のモンスターからすれば餌にすぎない。
――そういえば……。
ジロは思い出す。
熊が人を襲う獣害事件は時々目にした。
しかし。
ゾンビ発生世界で、ゾンビが人にしか感染しない場合は……。
逃げもせず、動きも緩慢な人間。
それは、少し学習した猛獣からすれば人間以上に容易い獲物だ。
が。
そこを、
「ちょっと! 何をボーッとしてるんですか!?」
いきなり、頭をはたかれる。
「この非常時に、哲学なら後にしてくださいよ!」
魔法を繰り出しながら、ネイテクが怒鳴った。
「あ、すまん」
ジロは謝りながら、ペットボトルほどの筒をつかんだ。
それを、目の前に設置された機械――いや、魔道具へ入れる。
レバーを引くと、
ボシュッ!
光の弾丸が飛び出す。
そして――
壁外のゆっくりと降下して、破裂。
淡い水色の光。
それが雪のように降り注いだ。
光の粒を受けたゾンビは、煙を上げながらもがいて――
動かなくなる。
それが、何度も何度も繰り返されていくのだ。
「……聞くの忘れてたけど、これなんなン?」
「旧式の魔導砲ですよ、小型の。よくこんなもんがまだあったなあ……」
「えーと、つまり魔法を弾に込めて撃つ道具?」
「理解が早いですね? まあ、そうです。これの場合、50回分くらい詰められてるかな?」
「ごじゅっ……!」
見れば、他の台からも同じようなものが発射されているようだ。
「ああいうゾンビは魔力耐性もほぼゼロですからね。はは、何ならただの火薬武器でもいけますよ」
――火薬なあ?
ジロは、旅の途中で何度か猟銃のようなものを手にした人間も見た。
猟銃というか――
――まさに銃やったけどね……。
「ああいう火薬武器は、許可がないと所持も使用もできません。魔法よりも扱いが難しいし、管理も整備もいりますし。便利っちゃあ便利です。ただ、威力はあるけど大型モンスターにはあんまり効かないし……。ましてドラゴンに、ねえ……」
とのことだった。
「まったく効かないわけじゃないですけど、ヘタに手負いにさせたおかげで余計被害を出したケースも多いですよ」
聞いた話から推測すると、
『ヒグマのような大型猛獣に対し、38口径の拳銃で立ち向かうようなもの』
らしい。
――この世界のモンスターって、うわ……5、6メートルなんて当たり前やん?
それが、魔力の影響でさらに頑強となっている。
半端な火器では、かえって被害を拡大させるだろう。
――現代兵器で無双……ちゅうのは難しいやろなあ。
バイナが感染型ゾンビ発生で大わらわになっている頃――
喧噪の隙間をぬうように、蠢く一団があった。
ゾンビもハウンドグールもいない。
そのため、手薄になった場所。
攻めるには絶好の箇所へ、這うようにして迫ってくる者。
「――おい」
それに、上から声がかかった。
「……!」
顔を上げるその顔へ、
グシャ!
足が叩きこまれた。
顔を粉砕されて転がる胴体に、
「おらぁ!」
鋭い槍の穂先が、正確に心臓を貫く。
急所へ一撃を喰らって、そいつは見る間に灰と化していった。
「なかなか素敵な真似をしてくれるじゃないか、ええっ!?」
短槍を振るった者。
それは、銀のツインテールに赤い目の少女。
「ここはなあ、うすら汚ねえクソヒルどもの来るところじゃねえ! とっととゴミだめに失せやがれッッ!!」
殺意をこめた叫びが、闇の中に響く。
赤い瞳が輝き、燐光を放った。
「お前は――」
影の群れ。
プラーガと呼ばれる者たちがざわめいた。
「お前は、ヴァンパイアか!?」
「なんで仲間が俺たちを襲う!」
怒りと困惑の混ざり合った声と顔。
それを浮かべた夜の怪物が、ガジカを取り囲みだす。
「ああ、そうだよ。正真正銘のヴァンパイアだ!」
言いながら、ガジカは片腕を振るった。
腕が巨大な翼に変わり――
刃物のように夜怪たちを引き裂いていく。
さらに。
バシュム!!
翼から、魔力が散弾となって敵を撃ちぬいていった。
ある者は引き裂かれて転がり、ある者は心臓を撃たれて灰になる。
「******……!」
同時に、呪文を唱えながら突き出した槍を振るう。
穂先から、無数の人魂が泳ぐように飛び出した。
人魂の先には
それらが、襲撃者たちの心臓を狙って飛び交い出す。
「ガッ……!?」
「……ぎゃああああ!?」
「ぴいいい!!」
くぐもった声。
甲高い叫び。
ともかく。
襲撃者たちは色んな悲鳴を上げながら灰と化していった。
人魂は、1人を殺すと次、さらにまた次と攻撃を繰り返していく。
襲撃者は逃げたり叩き落とそうとするが――
「ぎゃん!」
「ゲボッ……」
背中から心臓を食い破られる。
腕を焼かれてのたうち回る。
ガジカに反撃する者は、槍で突かれ、翼で引き裂かれた。
あるいは、
「おらぁ!!」
刃を仕込んだ靴のつま先で、心臓をえぐられた。
「なんで……」
下半身を潰された1人が、這いずりながらガジカを見上げて、
「なんで……人間、旧人なんかに……。俺たちは、進化したヴァンパイア……」
「わけわかんねーことほざくな、クソビルが!!」
ガジカは不快そうに、そいつの心臓を槍で突き刺す。
「てめーら、自分がヴァンパイアとでもいうつもりか!? 霧になれない、獣にもなれない。ちょっと日の光を浴びたらすぐ死んじまう……そんなヴァンパイアがどこにいる!!」
「な……!?」
「え……!? え……!?」
ガジカの叫びに、襲撃者たちは困惑していた。
「ヴァンパイアだってんならなあ!? 今すぐ霧になって消えてみせろ! 狼かコウモリになってみろよ!」
吸血鬼の少女はせせら笑って、
「できねーよなあ? お前らにできるのは
「……」
カーシャは、やや離れた場所でガジカの声を聞いていた。
――ふーん……。ヴァンパイアとプラーガでは、そこまで違いがあるわけね。同じなのは食性だけか。
灰になった死骸から足をどけつつ、周辺を見る。
心臓を潰したプラーガたちの死体。
もうすでに灰となっているが、
――けど、こいつら魔法も使っていなかった? ヴァンパイアは魔力も秀でているはずだけど……。ああ、そこもちがうのかしら? けどまあ……。
プラーガという種族は、独特の気配や臭気がある。
おそらく魔法で探知しやすい。
わかる者なら、見ただけで見破るだろう。
――バイナクラスの街をどうにかできる戦力とは思えない。まだ、他に別動隊がいる……?
テストとしてやってみました:本作で興味のある部分
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サブキャラの過去など
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世界観など
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令嬢時代カーシャの関係者など
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他の国など