破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「あー、こりゃすぐに中央から回収班が来るね」
ギルド支部の一室。
痩身のネクロマンサー……ミゾイは並べられたものを見て、
「異世界っつっても、説得力あるよ」
並べられた衣服。
小物。
その他様々な道具類。
「ふむ? なるほど、なるほど……」
同席しているネイテクは、白い手袋をつけた手で、小物の一つをつまむ。
「確かに。優れているのはわかりますね」
つまんだのは、小さな板。
というか。
21世紀の地球人ならすぐにわかるもの。
いわゆる、スマートフォン。
――ジロさんが持っていたのと、同じ。あるいは極めて近いものだ……。
「ただ、あくまで推測ですが? このレベルの品物なら、中央はすでに確保しているんじゃないですかね?」
確かに、異なる技術体系。
だが、現在ヤオアムトで使われている魔道具。
似たような……。
あるいは、応用したと思われるモノ。
――すでに、多数存在している。そうじゃないかと思っていたが、こういったものを解析・研究した成果だったのか……。
「だから余計にさ。おそらくだがね」
「ああー……」
フェイスベールの下で笑うミゾイに、ネイテクはうなずき、
――技術なんてどうしたって、流出していくものだけど……。それを早めたいわけもないか。とはいえ……。
「でも、これがどういうものか理解、あるいは解析できる技術や知識。そんな人材がどれだけいますかね?」
「あんまり、いないだろうね。いたとしても、たいてーは変人扱いされてるだろうさ」
ミゾイは肩をすくめて、衣服を手に取る。
やはり、ネイテクと同じく白手袋をはめた手で。
「この服にしたって、合成の繊維が使われてるようだけど。そっくり模倣するならともかく、応用と改良をして量産できるのはヤオアムトくらいさ。今のところはね」
「錬金術の技術ですか」
「そ。まあ、そちら方面は専門外だからうまくは言えないけど」
ミゾイは服を戻してから、
「ギルドも駆除を急ぐだろうね。こんなもんまで持ってやがるんだから」
視線を落とした先には――
自動式拳銃。
「火薬武器ですか。こりゃまた……」
「発展途上の田舎なら、かなりの脅威になる。こいつはもう弾を撃ち尽くした後だが……」
「でも、補給できる弾丸はあるんですかねえ? 備蓄があったとして……」
「連中がそれを作れる技術があるかもしれない。もし、工場なんかが一緒に来てたら厄介さ」
「そりゃまあ……」
「だけど? 報告じゃあんまりこいつを使わなかったようだけど。かなり身体能力に自信があったらしいよ」
「ふむ。
「さて。ンじゃそろそろ、うちのお姫様と打ち合わせしとくかねえ」
ミゾイは伸びをしてから、手袋を脱いだ。
バイナの冒険者用宿泊所。
その特別室にて。
「――で、ゾンビの発生場所はここだよ」
ミゾイは言った。
魔導タブレットに映し出される地図。
マーカーが点滅している地点は――
「古城の跡地だが……大昔、周辺には死体がたっぷりと埋められたそうだ」
「死体だらけね、このへんは――」
そう言うカーシャに、
「時代はいくらか違うがねえ? バイナ前は戦場跡だけど。こっちは元々城下町があった場所さね。けど、疫病のせいでみんな逃げ出した。その前に、捨てられた死体がゴロゴロ転がってたらしいよ。1000年ほど前のことさ」
「ふーん」
「
ガジカは爪を磨きながら、地図を見ている。
鋭く伸びた爪も、瞳と同じく赤い。
「それにしたってさ? あんだけのゾンビを生み出して、しかも操るってんだよ? かなりの魔力……いや、魔石が要るんじゃないか?」
「いるねえ。魔法に関しちゃ、あらかじめ魔法陣やら魔石を準備して術式を正確に組んでおけば、できないこたぁない。感染型ゾンビも1~2体造れば、後は相手さえいれば増やせる……」
そこで、言葉を切ったミゾイへ、
「博識なネクロマンサーさんには、何か心当たりがあるんじゃなくって?」
「あははは。博識ってわけじゃないさ。専門分野ってだけ。で、心当たりは……あるよ」
「おいおい、あるんなら早く言っとくれよ!」
体を乗り出すガジカ。
これにミゾイは片手をあげて、
「疫病で街が滅びるより、もっと前。さらに200年ほど前――」
そう言った。
「ああ。そういえば、おとぎ話にあったわね。人間の死体を掘り返し、皮をはいでコートや仮面を作った男」
「私も聞いたことはあるけど。え? あれってホントにあったのか?」
カーシャとガジカがそれぞれ反応する。
「実際どこまでが本当で、ガセか。そりゃわかんないさ。だが、実際その頃の領主がかなり有能な魔導士だったのは確かだね。処刑されたことも含めて。ただ、公式記録じゃ処刑理由は反乱となってる」
「……」
カーシャは無言で聞いていたが、
「無くもないわね」
ハッキリと、そう言った。
「単に危険な魔法だけなら、記録を誤魔化すことはない。でも、醜聞となるなら」
「別の理由をでっちあげて首チョンパってことも、かい?」
ガジカは、やや遠慮がちにカーシャに問う。
「当然」
カーシャはなんでもないように言って、
「ねえ、専門家にお聞きするけど、
「そりゃ無理だね」
ミゾイは軽く手を振ってみせた。
「だいたいが……死人に関わる魔法なんぞ、自分から関わるヤツのほうが少数なのさ」
「墓掘り人足や首切り役人なんか、たいてーは嫌がられるだろ。下手すりゃアンデッドと同一視される」
ガジカも、何か思い出したのか嫌な顔をした。
「とはいえ、何かと必要な職種でもある。その分実入りも悪くはない。嫌われ賃ってヤツさね」
そんなミゾイの言葉に、カーシャは下唇を指でなでつつ、
「でも――いないわけじゃない。たとえば……」
「うん。例としては、死んだ者を生き返らせるとかねえ」
ミゾイは微妙な顔をした。
「反魂の術というやつかしら? 話には聞いたことがあるわ」
「昔ばなしには、あるよ。けど、そんなモノたやすく使えるもんかね。私らが使ってる亡霊は、死人の残骸みたいなものさ。下手すりゃあ切り落とした髪や爪だ。死人の情報はあるけれど、さて、それが本人かというと……」
「素人がやって、トンデモナイことになった。そういうのはチョイチョイある」
と、
「その、トンデモナイことが起こった可能性がある……か。そして、処分された」
「だけど、その始末が不完全だった。失敗した魔法やら魔道具が跡地に残ってたと、そんなトコだろうねえ」
ミゾイの苦笑に、
「迷惑な話ね」
カーシャはつまらない顔をしただけ――だった。
「――で、それがあの古城というわけ?」
高い崖から、カーシャは下を見おろした。
周囲には霧がたち込めている。
月光の下。
古城……というよりは、ほぼ半壊した瓦礫の山。
周辺には、ハウンドグールの群れがいる。
そして。
餌食となっているゾンビも。
「あれ、わざわざどうにかする必要あるの?」
「別にゾンビだの犬っころを相手にしなくってもいいさ。突っ込んでいけば、すぐに出迎えがあるよ」
カーシャが言うと、ミゾイは杖を手に笑う。
魔杖。
ドクロに、2匹の蛇が巻きついたデザイン。
「こいつらが、プラーガを見つけてくれる」
ミゾイの杖から、3つの人魂がわいて出てきた。
「それに、今は夜の夜中。連中の時間だ」
「なるほど」
声がした。
その直後には、カーシャの姿はない。
「行動が早いのはけっこうだねえ」
ミゾイは言いながら、滑るように移動を始める。
「ホントに、真正面から突っ込んでった……」
呆れた声が霧の中に響く。
ガジカの声だった。
声ばかりではない――
赤い瞳をした少女の顔が、うっすらと霧に浮かんでいた。
「なんとかなるだろ。私らは、その間に奥を調べなきゃねえ」
――言ったとおり、というわけね?
邪魔なものをどけながら、古城跡を歩いていたカーシャ。
周辺には、不気味な呼吸音と気配。
そして、眼。
気配はすぐに形となって姿を現して、
グチャリ
ポキン
ミシミシ……ベキ
潰れて、灰となっていった。
隠れているつもり――
闇に紛れているつもりなのだろうが、
――わかりやすい。
場所も、動きも。
事前にわかりやすく、
しばらくして、
カチリ
聞きなれない音と、自分を撃ってくる殺気。
カーシャはそれを感じながら、動いた。
キュン……
ババババ
炸裂するような音と、火花。
火薬の臭い。
狙ってくるもの。
動きながら連射するもの。
そういったものに、カーシャは石を投げ、あるいは瓦礫を蹴りつける。
――火薬武器。このレベルは初めて見る。
威力や脅威も、理解はできた。凄まじい速度も。
だが、
――やっぱり、わかりやすい。
そして、
パン
その1つをカーシャは腕で防いだ。
明確すぎるほどの殺傷力、衝撃。
でも。
命中した弾丸は、カーシャの皮膚も肉も貫通することはなく――
地面に落ちた。
そして、また一方的な殺戮が。
テストとしてやってみました:本作で興味のある部分
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サブキャラの過去など
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世界観など
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令嬢時代カーシャの関係者など
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他の国など