破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「確かに――」
大したものだと、カーシャは思う。
人魂の案内で瓦礫を調べた結果。
地下へと、続く隠し扉を見つける。
まるでダンジョンのようで。
あるいは、ダンジョンを模倣したのかもしれない。
大がかりな、魔法実験場跡地。
しかも――
――簡単に奥に入れないようになっている……。
万が一、ここに踏み込まれても、
「【敵】がたどり着く前に、逃げられると」
カーシャは、さっきまでプラーガだった灰を踏みしめながらつぶやいた。
――ついでに、証拠隠滅の準備もできるかしら?
複雑な通路。
隠し扉や、ダミーの部屋。
まるで迷路。
人魂の案内があっても、何度も迂回せざるを得ない。
そういう構造だった。
ただ――
ドゴッ
カーシャは、邪魔な壁や扉を蹴り破りながら迷うことなく進む。
建築素材――
その多くは、魔法技術で造られた合金。
――銀や黄金を使ったものか。確かにかなりの硬さね? それに……。
衝撃を分散、あるいは無効化させる特性。
価値のある貴金属だが、合金の素材としても非常に有能だった。
様々な他の金属と合わせることで、驚くようなものとなる。
物理はもちろん、魔力耐性も備えたそれは――
簡単に破壊できるものではない。
当然。
それにも、限界がある。
だから破壊も可能だった。
少なくとも、カーシャには。
進んでいくたびに、プラーガが牙をむく。
あるいは、火薬武器の歓迎。
中には屋内で爆弾を投げてくる者もいた。
――けど、この場所なら動き回らずにすんだ。
カーシャは壁などの残骸を投げつけ、あるいは盾として進み続ける。
3メートル近くある、分厚い特殊合金の壁。
――案外、使い勝手が良いわね?
本来外敵からの守りとなるはずもの。
皮肉なことに……。
それが、迎撃の妨げとなっている。
――それにしても?
このプラーガという連中は、どうもおかしい。
戦いかたというのか。
これがどうにも、
――まあ、そこはヒトのことを言えないけど……。
身体能力と数。
あとは死角や暗闇からの不意打ち。
厄介なのは確かだ。
だが、人間であっても経験や訓練を積んだ者なら十分対処できる。
まして相手の戦い方がわかればなおさらだ。
目や耳に頼らずに相手を捕捉する魔法や技。
そんなものは、いくらでもある。
つまるところ、
――こいつらの危険性は、戦闘能力じゃない。そういうことか。
疫病のように、同族を増やす感染力? にある。
「そうなると、まとめて焼却処分ということになるのかしらね?」
かなりの確率で、中央はその命令を出すだろう。
カーシャはそんなことを考えながら、プラーガを灰に変えていく。
「何なんだ……! 何なんだよ、あいつは!?」
拳銃を手にした男が、牙をむいて怒鳴った。
ガチガチと歯を鳴らす。
顔は恐怖で引きつっていた。
「あ、あんな化け物がいるなんて……。コミックじゃないんだぞ!?」
プラーガ。
この世界ではそう呼ばれるが、【故郷】ではヴァンパイア――
あるいは新人類。
自分たちをそう呼んでいた。
服装で、異邦人とわかるだろう。
「だから嫌だって言ったのに!」
ローブを着た、魔導士の女たちが泣き声をあげた。
やはり、プラーガである。
「あのドラゴンスレイヤーが、ゾンビぐらいでどうにかなるわけないって!」
「オンモラキまで寄ってきたじゃない……!!」
「あいつら、吸血種族を餌にするのよ!?」
魔導士たちは――
銃を手にしたプラーガたち……いや、【来訪者】を罵った。
「もう、ヤだ! 死にたかないわ!!」
1人が背中を向けて逃げ出した。
しかし。
タタタタ……
「ぎゃん!」
その体に数発の銃弾が撃ち込まれた。
魔導士は転がるが、死んではいない。
「な、何がシンジンルイよ! プラーガなんかになって、最悪じゃない!」
撃たれた魔導師は憎悪のこもった眼を来訪者たちを睨む。
「あんたらが……どんな楽園から来たか知らないけどね、ここじゃタダの少数種族なのよ! それも、あちこちで嫌われてる!!」
「黙れ、ビッチ!!」
叫ぶ魔導師の頭に、銃弾が撃ち込まれた。
「ガ、ギギギ……」
痙攣して震えるが、やはり死なない。
首を切られる。
心臓を破壊される。
日光を浴びる。
それらがなければ、彼らは基本死なない。
あるいは、完全に焼却されるか――
「おやまあ……」
陰でその様子を観察するミゾイは、気の毒そうに笑う。
「プラーガに血を吸われて、同族にされたか……。そんならそれで、とっとと逃げればいいのに」
「嫌でも従わされたんだろ」
ミゾイを包む霧。
ガジカが蔑むように言った。
「力のあるプラーガは、自分で同族に変えた相手を服従させる。そんな能力があるらしい」
「そりゃあまた……」
「かわいそうだが、ああなったもんはしょーがない」
「だねえ」
ミゾイは軽く首を振ってから、
「*********……」
魔杖を握って呪文を唱える。
「……ひ!?」
魔導士の1人が、魔力を感じ取って魔法を展開――
する前に、大きな何に踏みつぶされた。
「あ……」
そのつぶやきは、誰のものだったか。
3~4メートルを超える高い天井。
それを隠すように、巨大なモノが立っていた。
青く燃える、巨大な骸骨。
「スケルトン・ゴーレム……!?」
叫んで魔法を放とうとする魔導士。
だが。
魔法が発動する前に、骨の足が踏みつけた。
骨がまとっている青い炎。
それが魔導士の体を内部から焼いた。
当然、心臓も。
「うわあああああああああ!!」
悲鳴が走り、銃器が火花を散らした。
巨大な骸骨は撃ちやすい的だが――
弾丸が命中し、破損した箇所。
そこは見る間に再生する。
痛みも心もないゴーレムは、這うような姿勢になってプラーガたちをつぶし始めた。
ただ。
巨体ゆえに動きは制限される。
が。
運良く、逃げ出した生き残りたちを霧が包む。
ザシュ
ビッ
刃物となったコウモリの翼。
それが逃げるプラーガたちの足を切り落とす。
「ギャッ!?」
転倒するプラーガの1人が振り返ると、
「……え?」
霧の中に、灰色の手が浮かんで――
誰かの落とした拳銃を手にしていた。
キュン
弾丸が、正確にそいつの心臓を撃ちぬく。
「ハハハハハ。コツがわかれば、意外と使えるじゃないか?」
冷笑と共に、ドクロの顔を持つ人魂が霧の中を泳ぎ始めた。
やがて。
そこには、床を覆いつくすほどの灰が……。
「専門外の魔導士に、
灰になったプラーガたち。
それらを横目に、ミゾイはつぶやく。
あちこちから、様々な書類や魔道具、書物などを集めながら。
「大して腕も経験もない。その上専門でもない。ンな連中に、よくこんなことさせたもんだよ」
ガジカはあきれた顔で言った。
部屋中央に描かれた魔法陣。
「よく暴発事故が起きなかったな?」
「さっきの話からして、魔導士連中は断ったんだろうね。当然だけど」
「だけど、命令するほうはその危なさがわかんねー」
「怖いよねえ、知らないってえことはさ?」
「そういや、ドラゴンスレイヤーのお姉さんは? 向こうも静かになってるけど」
ガジカの言葉通り――
入口方面から聞こえていた銃声や破壊音が消えている。
悲鳴もなかった。
「むン? あああ……」
ミゾイは目を閉じてから、ため息を吐くように、
「人魂の案内で、連中の本拠地? へ行ったようだねえ」
「……これは」
足を止め、カーシャは少しだけ唖然となる。
木々や岩などが何かに押し出されたような、おかしな光景。
それがしばらく続いた後。
――街?
見つけたのは、街。
そうとしか思えない場所だった。
しかし、カーシャが実物でも画像でも見たことのないモノ。
あえて言うなら、
――国軍の施設に少しだけ似ている?
灯りはあるが、全体的に薄暗い。
墓場や廃墟のような雰囲気だが、明らかに住民がいる気配。
――それと。
闇に紛れているが、監視も……いや番兵もいるようだ。
おそらくは、
――火薬武器もかなり、いや標準装備かもしれないわね。
さて、どうするかと考えていたカーシャだが、
「……」
あることを思い出し、
取り出したのは、精密な角笛のペンダント。
カーシャはそれを無言で見つめてながら、
――あと、一度くらいは使えるか……。
そう思いながら、ペンダントに指で触れた。
チィィィン
と。
音のない音色が、周辺に広がっていく。
周辺は静寂のまま。
しかし、いくらか時間がたってから、
ルルルルル……
シュウシュウ……
生臭い呼気とうなり声。
それらが、あちこちから響き出す。
さらに、
「へえ……」
カーシャは意外そうに、ある方向を見る。
ズシリズシリと、大きな生き物が近づいていた。
それを先頭にして、呼び集められたモノたちは、【遠国】の街へと殺到していく。
テストとしてやってみました:本作で興味のある部分
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サブキャラの過去など
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世界観など
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令嬢時代カーシャの関係者など
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他の国など