破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

57 / 357
一般オリのランキングに入っとる……

ありがてぇ……!
読んでくれてる皆さん、ホントにありがてぇ……!


その48、国外へとおもむきながら思い出すこと

 

 

 

 

 

 

 

 ――いや、なんだこの状況。

 

 と、マコネは考えていた。

 

 国の使用する大型魔導飛行船。

 王族や貴族が使う代物。

 きれいというか、思い切り見栄を張ったような外装。 

 そして内装。

 静かに低空を飛行するその中で――

 

 ――やっぱ落ちついてんなあ? 慣れてるのか?

 

 カーシャのすぐそばに座っている。

 

 青い髪の麗人の左右。

 野良猫みたいな小娘。

 地味な黒髪のヒーラー。

 

 ――まあ、うまい具合に引き立て役? になってる?

 

 着なれない、礼服。

 しかも男ものを着たマコネは、隣のカーシャを見た。

 

 カーシャは、黙って本を読んでいる。

 こっちはパンツスタイルながら女ものの服。

 

 ――つうか、軍人みてーな感じだなー。

 

 バッキーは女もので、いかにもヒーラーらしい白を基調とした礼服。

 そばに、杖も置いていた。

 こっちもかなり緊張しているようだ。

 

 

 

 カーシャがバイナから帰って数日後――

 

「外交官の護衛として、同行してもらいたい」

 

 そんな要請が、ギルド本部を通して王宮から来た。

 

「あそこだって、一枚岩じゃない。色々思惑があったりするんでしょうね」

 

 カーシャはそんなことを言っていたか。

 こうした経緯で――

 マコネとバッキーは、カーシャの従者……そういう役割で同行することに。

 

 ――なんか裏がありそうっつーか。なけりゃ不自然なだな、コレ。

 

 少し離れたより、豪華な造りの場所。

 大きな座席で、外交官が仮眠をとっていた。

 

「船酔いはされてませんか?」

 

 おかしな現状に、マコネが頭を悩ませていると、銀髪のエルフが話しかけてきた。

 にこやかな、愛想の良い表情。

 

 ――こいつ……。

 

 銀髪のツインテール。

 【勇者】のパーティーの一人。

 また、調査員としてやってきたりもした。

 

 ユオン・キナ。

 

 今回の訪問に、マコネにはよくわからないお役目で同行する。

 

 カーシャと会った際には、

 

「おお、ミズ・カーシャ! またお目にかかれて光栄です」

 

 と、大仰な挨拶をして、

 

「いやあ、私に化けた悪党を成敗していただいたそうで、まこと感謝にたえません。今回の旅も、何とぞよろしくお願いいたします」

 

 そんなことを言って――

 

「……どうも」

 

 対するカーシャの眼は、冷たかった。

 それがもう。

 横で見るマコネでさえ、背筋が凍るほどに。

 

 ――だけど、こいつはヘラヘラと流してやがった。鈍い? ンなわきゃねえよな。

 

 王宮で使われてる魔導士が、その程度察せないはずがない。

 

「冒険者とか、民間でも王宮にスカウトされる連中もいる。そういうのは、確実即戦力で使われるヤツだ。信用の高さもいるがな。腕力にしろ魔法にしろ、ズバ抜けた上澄みだ」

 

 いつか、猫のゴトクがそんなことを言っていた。

 

「皆さん、何かお飲み物でもご用意しましょうか? アルコール抜きの強壮飲料(コーディアル)がおすすめですが」

 

「――ありがとう」

 

 カーシャは本を閉じて、声だけを返した。

 

 

 

 

 

 

 

 ――ワシローか。

 

 ヤオアムトと国交のある国の1つ。

 同じように冒険者ギルドがあり、勇者召喚などを行うこともある。

 

 ――もっとも、ヤオアムトとはスタンスはちがうようだけど……。

 

 技術的にも、財力的にも、そうたやすくできるものではない。

 

 ――でも、異世界ねえ? ああ、そういえばあの馬面(うまづら)の男……。

 

 カーシャは、顔の長い中年冒険者を思い出した。

 

 ――あいつも、異世界から来た、そんなことを言っていたような?

 

 いや、それ以前に、

 

 ――死ねば、【世界】をまたいで生まれ変わり、死に変わる。そういうこともある?

 

 カーシャは、横でコーディアルをチビチビ飲んでいるバッキーへ意識をやる。

 

「ああ、そういやさ? じゃない……えと、お噂によれば?」

 

「?」

 

 不慣れな言葉で不器用に話しかけるマコネ。

 

 ――従者という役回りだったわね、そういえば。

 

 仮に、もいくら親しかろうが、

 

 ――従者が、主に友達みたいな口をきくのはありえないもの。

 

「なにかしら」

 

 カーシャは小声で返した。

 それへ、マコネはヒソヒソと、

 

「……あのさ、バイナのほうでペルーダが出たって話だけど。アレも退治されたのか?」

 

「……。ああ、私ではないけれど」

 

「ン? あ、そっか軍隊が近くにいたのか」

 

 マコネは勝手に納得した。

 バイナのほうで国軍が領主を拘束。

 その話から、推測したらしい。

 

 ――私じゃない。それは確か。

 

 カーシャは目を閉じて、あの時を思い出す。

 

 

 あの、プラーガの首魁が捕えられた後――

 

 

「……!」

 

 カーシャは街のほうから、奇妙な気配を感じた。

 だが、ペルーダの咆哮が消えている。

 というよりも――

 怪物の断末魔の咆哮。

 それが聞こえた、とするべきなのか。

 

 ――なに?

 

 気にかかり、街へ戻ってみたところ。

 その途中でこちらに走ってくるレッサードラゴンが何匹も見えた。

 飛びかかってくるそいつらを、虫のように叩き潰しながら急ぐ。

 

 ――こいつら?

 

 獲物を狙った。

 そういう感じではない。

 群れで狩りをするというレッサードラゴン。

 なのに、まるで連携が取れていない。

 

 目についたものを反射的に襲った。

 

 そんな印象。

 

 

 

 

「……」

 

 燃える中に、死体となったペルーダが転がっていた。

 どうやら心臓をえぐり出されたらしい。

 

 状況からして、手早く、あっさりと殺された。

 そこは確実。

 

 ――どこ……?

 

 離れていく気配。

 それを、カーシャは追った。

 

 ――これは……!

 

 追ううちに、気配がどんどん強くなるのが分かった。

 いや。

 気配というよりも、

 

 ――臭い?

 

 感覚としては、そっちのほうが近い。

 実際、どこまで物理的な嗅覚と関係するかはわからないが。

 

 距離が縮まり、臭いはより明確に。

 

 そして――

 

 見つけた。

 

 

 暗い木々の下。

 ドラゴンの心臓を担いだ大きな影。

 2メートルをはるかに超えた体。

 横のサイズも大きく、巨大な手足。

 突き出た顎と凶器のような牙。

 獣毛はない。

 しかし、鱗もないようだ。

 

 ――モンスター。でも、この臭い(・・)は。

 

 焼け焦げた、腐った血と肉の香り。

 息もできない煙。

 足を痛めつける焼けた大地。

 死んで、生き返り殺し合う亡者。

 無数に現れ、襲いかかるバケモノ。

 

 苦痛と殺戮。

 終わりのない戦闘。

 死ぬたびに味わう、決して慣れることのない絶望と恐怖。

 

「驚いた」

 

 異形の影は、その姿に似合わない流暢な言葉で言った。

 

「あんたは同類(・・)だな?」

 

「そちらもね」

 

 カーシャは応えた。

 

 あの赤い地獄を体験した者。

 それに染みついている臭い。

 多分、永遠にとれないであろう悪臭。

 

 ――ヒト以外も、あそこに行くの? いや、あそこから這い出したバケモノ?

 

 後者は明らかにちがうと、カーシャもわかっていた。

 明らかに、気配が異なるのだ。

 

「その姿からすると、だいぶ有利だったのかしら」

 

「こんなのは、大して役に立たない。あんたもよくわかってるだろ?」

 

 苦笑した声で異形は言った。

 

「そうね」

 

 慣れて、適応した者。

 それからすれば、地上のモンスターはネズミにも等しい。

 仮にミノタウロスの力と耐久性を持っていたとして――

 

 ――バケモノや、先輩がた(・・・・)からすれば一瞬で潰せる。

 

 しばらく。

 睨み合いが続いた。

 

「あんたは見たこともない美人だけど、会って嬉しい相手じゃないな」

 

「お互いにね」

 

 仲間意識。

 そんなものはない。

 

「でも――」

 

 カーシャは言う。

 

「ここで争う理由もない」

 

「へー」

 

 淡々としたやり取りの後。

 互いにゆっくりと距離を取って――

 

 そのままになった。

 

 ――アレが、あの後どうしたのか。

 

 大暴れしているわけではない。

 少なくとも、人目に付く場所では。

 そうなっていれば、騒ぎにならないはずがないのだ。

 

 ――ドラゴンの心臓は、餌にするため持っていった……のでしょうね。

 

 自分と同じ境遇の存在。

 どれだけの戦闘能力があるのか。

 そこは、まったくわからない。

 

 ただ――

 

 ――退治しようとすれば、大きな被害が出るでしょうね。

 

 そこだけは、おそらく確実。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――うう~~~ん……。すごいなあ、コレ?

 

 バッキーは冷や汗をかいていた。

 

 目の前で行われていく挨拶やら、歓迎の場やら。

 すみっこで控えているだけ――

 とはいえ、

 

 ――緊張でおなか痛くなりそう……。話しかけられたりしませんように……。

 

 そういう可能性は低いだろうと思いつつ――

 うつむき気味のバッキー。

 

「ようこそおいでなされた」

 

 目の前で――

 外交官と、ワシロー王がにこやかに挨拶をかわしている。

 両者の内心がどうなのかは、バッキーの知るところではないが。

 

 ――まあ、たぶん? 裏というか中身? では、色々あるんだろうなあ。

 

 そんなことを思うヒーラー。

 

 バッキーの見たところ、ワシロー王は、

 

 ――痩せたおじいちゃんって感じだよね。でも、あんまり体調良くないみたい? 仕事が忙しいのかなあ。

 

 あるいは、心労の重なることでもあるのか。

 

 ――王様っていうのも、大変なんだろうね。きっと……。

 

 外では、かなり警戒が厳重だった。

 この国でも、トラブルがあるようだ。

 

 

 

 ――ワシロー王か。

 

「こちらが、ヤオアムトで名を馳せるドラゴンスレイヤーで」

 

 そんな風に紹介され、カーシャはそれらしい挨拶をしながら、頭を下げる。

 

 ――噂では、王族同士の揉め事で悪い噂もあるようだけど。

 

 その手の争いは、単純に白か黒か決められるものではない。

 

 ――実際、中身は世評と正反対というパターンもあるし。私の場合は、世評だったかしら?

 

 カーシャは、その場に合った笑みを作りながら、そんなことを思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。