破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
――ファンタジーっぽいかな?
ワシロー王都。
バッキーは大使館の部屋から、外を見ている。
――ヤオアムトは、ファンタジーというか、ナーロッパ? 的ではあったけど……。色々文明というか技術というか。
ラジオやテレビ、映画のようなもの。
新聞。
さらには――
自動車。
飛行機。
時には、地球のそれより上かもしれない技術。
そんなものがいくつも、あった。
画像などでしか知らないが、
――首都はもっとすごそうだよねえ……。
ファンタジー的な要素を含みつつ、未来都市のような印象もあった。
――行ってみたいけど、難しいのかなあ。1人だと怖いし。
過去のいきさつや経歴から、カーシャは王都やその周辺には行けない。
行けるとしても、かなり難しく制約もある。
本人も、
「別に行く気もないし。まあ、あなたが旅行したいのなら自由だけど」
そっけなかった。
一方で、このワシローは、
――魔法はあるし、ネビズにあったものも見かけるけど。色んな所で未発展、っていうのはおかしいかな? だけど、いかにも剣と魔法の世界って感じだし。
そこは楽しかったりする。
するのだが――
「なんか、えらく兵隊が多いよなーここ」
となりにやって来たマコネが言った。
「ん……」
同意見だったので、バッキーは軽くうなずいた。
王城もそうだったが、王都はあちこちに兵士が歩いている。
何かを警戒するように――
「戦争の準備でもしてるンかな?」
「えー……」
物騒なことを言うマコネに、バッキーは困惑。
「――ある意味では、そうでしょうね」
椅子に座り、本を読んでいたカーシャが言った。
「へ?」
「はえ?」
振り返るマコネとバッキー。
「反乱というか。王の暗殺をもくろむ連中がいるらしいわ」
「マジですか?」
血生臭い話に、バッキーはさらに困惑。
「それだけなら、どこの国でもあることだけど」
――当然、
「お家騒動というやつですかねえ」
きれいな声が部屋に響いた。
「なんだぁ!?」
マコネが叫んで見た先には、エルフの美少女ユオン・キナ。
「いつの間に入って来たんだよ……」
「ノックを忘れるほど、急いでたのかしら」
カーシャは本を閉じ、冷たく言った。
「これは失礼を。で、まあ? やたら兵士が多いのは先ほどミズ・カーシャが言われたとおりでして」
現王を倒して、王冠と玉座を奪おうという一派がいるのです。
と、ユオンはにこやかに言った。
「そんな時によくも連れてきたものね」
「いえいえ。名高いドラゴンスレイヤーたるあなたがいれば、外交官も守れると。王宮ではそう判断されたのですよ」
「……」
「まー、他にも理由はございまして。ドラゴンを何匹も
「ワシローへの、圧力になるというわけ?」
「簡潔に言えばそうです」
「ふん。そんなことをしなくっても、十分圧力はかけられると思うけれど?」
「ん-。かける相手はこの国というよりもですね」
「ひょっとして、さっき言ってた王様を狙ってるヤツらかよ?」
もったいぶっているユオンへ、マコネが眉をひそめて言った。
「おお!
「けっ」
マコネは唾を吐きそうな顔。
カーシャは軽く息を吐いて、
「もしも、反乱勢力がことを起こせば――後ろにいるヤオアムトが動く。そういうことかしら」
「はい」
「やれやれ」
――面倒な。
断ったほうが良かったかと、軽く後悔するカーシャだった。
「あのー、でも……」
黙ってやり取りを見ていたバッキーが、
「この国って、ヤオアムトとは付き合いが長いんですか?」
「まあ、わりと?」
カーシャは色々思い返しながら、
「魔導兵器とか技術書……色々売りつけてはいたかしら」
「ぶっちゃけ親分子分みたいな関係ですね」
と、肩をすくめるユオン。
「ヤオアムトが拡大路線してた頃には、軽く戦争にもなりましたよ。すぐ終わったけど。けっこう前ですかね」
「それいつです?」
「200年くらい前でしたね、確か」
バッキーの疑問に、ユオンはあっさり言った。
「にひゃ……」
絶句するバッキー。
「その当時、私はいませんでしたが。歴史書で勉強しました。一時期軍が駐留してたこともあったけど、予算の関係で撤退してますよ。それより国土のインフラとかを重視したそうで」
「ははあ……」
「とはいえ。まだ親分子分は続いてまして。内乱やらが起きたら知らん顔はできません。大使館だってあるし」
――なんだろう? 日本とアメリカみたいな関係? ちょっとちがう?
バッキーは考える。
だが。
あまりそういったことに詳しくもなかったので、考えるのをやめた。
「まさか、その反乱者を私に殺せというんじゃないでしょうね」
カーシャは露骨に嫌そうな顔でユオンを見る。
「結果的にそうなれば、軍を動かす必要もないので王宮としては大助かりだと思います。戦争するよりずっとよろしい。犠牲者も少なくてすむし」
「はーん……」
そのへんを聞いて、マコネは少し納得顔。
「戦争になりゃ嫌でも巻き込まれて死ぬヤツがでるしな」
「しかも大勢、ですね」
ユオンは人差し指を立てて、マコネへ笑いかけた。
「あのでも、疑問なんですけど……」
バッキーはちょっとだけ首を突きだして、
「その、なんかあったらヤオアムトが出てくるのはわかってるんですよね? そんなの、王様狙ってる人たちもわかってるんじゃないですか? 下手すると……」
「テキトーな建前で、ヤオアムトに攻められるか」
カーシャは指でこめかみあたりをなでて、そう言った。
「ですね。だけど、やめる気配はないのでこういう現状になってるわけで」
アハハと、ユオンは笑った。
「それとも――」
カーシャは天井を見上げて、
「戦争になっても、どうにかなる当てでもあるのかしら」
ズシリ、ズシリ
と。
バケモノは人の通わぬ山道を進んでいた。
――ワシローか。
懐かしい。
そう思うべきなのかと、バケモノは思う。
自分がこうなって、赤い地獄へ落ちて。
地上での時間はごくわずかだろう。
――なんというのかなあ。
異形となった自分の体。
それを見おろしながら、首をかしげる。
憎んで。
妬み、怨み呪った。
自分が得られない幸福とか、喜びとか。
それをごく当たり前に享受している者たちを。
ただ見ているしかない、永久に手にできない自分。
連中はそんな自分を見下して嘲笑い、さもなくば無視する。
虫けらのような存在として扱われた。
だからこそ。
そんな連中への復讐を望んで。
連中が楽しんでいる幸福を破壊してやりたくて。
こんな姿に身を変えた。
ヒトであること。
そんなものが、何になるのだと。
――ただなあ。
生きながら地獄にいる。
そう思っていた。
が。
あの赤い世界へ放り出された時、
――甘かった…………ッッ!!!
自分のいた場所が、ぬるま湯のごときものだと。
嫌でも思い知らされて――
無限と思える時を過ごした。
バケモノとなって得た力は、ほとんどアドバンテージにはならなくて。
何度も何度も何度も。
殺されて、殺して。
それだけを繰り返して。
いざ、こうして戻ってみても。
――まあ、何ということもないわなあ。
嬉しくはないが、哀しくもない。
復讐というのも今さら、
――あんまり、なあ。
知ったことではない。
やれば、できるのだろう。
しかし。
――だから、どうだというのかなあ?
とはいえ、こうして生まれた場所へ戻っているのも、
――それなりに、ヒトらしいものが残ってるのかもな。
バケモノの顔でちょっと笑い、進んでいく。
――まあ、戻っても特にすることもないが。
したいこともない。
――でもなあ、なんだ?
一応ちょっと見するくらいは良かろう。
そんなことを思いつつ、バケモノはゆっくりと進んでいった。
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人