破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「は~~……。立派なものですねえ」
バッキー、屋敷の中庭で言った。
心からの称賛。
様々な草木が揺れている美しい庭だった。
小鳥が枝の上で鳴いている。
雰囲気や造りは、ヨーロッパ式のものよりも日本庭園に近い。
屋敷自体も見事な造り。
しかし、それほど大きくもない。
またキンキラとしたわかりやすい派手さもない。
全体的に落ちついた造作。
「んー、ちょいイメージとちがうよなあ?」
となりのマコネは小声で言った。
「王様の別荘だってのに、なんか地味っつーの?」
「こういうのが好みなんですよ、きっと」
「まー、じーさんだしな」
苦笑するバッキー。
頭を掻くマコネ。
と――
コツン
「あン?」
マコネはいきなりかがみこんで、
「なんだコレ?」
汚れた何かを拾い上げる。
小さく、平たい石。
泥をふいてみれば、きれいに磨かれているようだ。
うっすらとした緑色。
さらに、表面に文字らしきものが。
「あ、呪文石ですね」
石を見せられたバッキーは、即答した。
「呪文石ってーと、使うと魔法が使えるようになるっつーアレかい?」
「はい」
バッキーはうなずきながら、
――最初聞いた時は、ゲームみたいだなーと思った……。
暇な時。
ゴトクからもらった魔道具のカタログを読んで知った。
一回きりの使い捨てアイテム。
使用者に、基礎的な魔法を与えるもの。
「けど、その基礎的な部分が与えるというか覚醒? その資質があるヒトへ、基礎中の基礎を書きこむって感じです。適性がない人には、タダのきれいな石ですね」
あと、ある程度魔力の制御ができるヒトじゃないと意味ないです。
と、バッキーはカタログから得た知識を語る。
「ほえー、初めて見た。けど、なんでそんなもんが転がってたんだろうな?」
マコネがつぶやいた時、
フワリ
少女の手。
その上で、呪文石は淡く光って、
「あれ?」
砂となって崩れた。
「やべ」
マコネの言葉と同時に、その手にパチリと電撃が起こる。
「いてええ!?」
「マコネさん!?」
バッキーは、急いでよろめくマコネを抱きとめる。
「クッソ……。毒蜂に刺されたみてーだ……」
マコネがつぶやいて手のを開く。
手のひらには、獣の顔――
それを模したようなマークが刻まれていた。
「モンスターテイマー……」
マークを見て、バッキーはつぶやく。
「みてーだな」
「マコネさん、魔法の才能が?」
「さーね。でも、そういうヤツはわりと多いだろうさ」
「え。そうなんですか?」
「お前だって知ってるだろ。専門の魔導士じゃなくっても、カンタンな魔法なら使えるヤツをさ」
「そういえば……」
と、バッキーは思い返す。
魔法と剣を同時に使うタイプ。
そういう冒険者もけっこう見かけた。
「だったら、ゴトクさんとかに教えてもらったらいいのに」
「知ってるだろ、魔法の修業っつーのはめんどくせーの」
「そりゃそうだけど……」
バッキーも、治癒魔法以外が使えるようになるまで時間がかかった。
――かなり反復練習したもんねえ……。
「うるさいわね?」
2人が騒いでると、
「うえっ?」
いつの間にか、カーシャが立っていた。
2人とは別にテラスのほうでお茶を飲んでいたのが。
「また変なことをしでかしたのかしら」
カーシャはマコネの手をつかみ、モンスターテイマーの印を見る。
「ずいぶんと、変な話だこと」
事情を聞いたカーシャは顎をなでつつ言ったが、
「でもま。納得はできるか」
「そーなの?」
マコネがいつも以上に猫っぽい顔になると、
「先月、ここへ爆弾が投げ込まれたそうだから」
「ふぁっ!?」
バッキーは思わず、アヒルのような声を出した。
「その時、物置の一部が吹っ飛んだそうよ。壊れたもの、紛失したものも多かったと聞くから……そのうちの、1つじゃない?」
「え、それってまずいのでは?」
バッキーは顔色を変えた。
国王の別荘にあるもの。
それを、知らないとはいえ勝手に使ってしまったわけだから。
「呪文石はそれなりの値段はするけど、一国の王が宝物とするほどじゃないわ。古いモノなら、それだけ性能や効果も劣るし」
「うーん。でも……」
「庭に転がってそのままだった。つまり、捜索もその程度だったということ。大事なものだったら物置なんかじゃなく、宝物庫にしまうわよ」
カーシャはパタパタ手を振った。
「けど。それにしたって、物騒ですよね……」
まだ顔色の良くないバッキーの言葉に、
「何度か、似たようなことがあったようね。それぞれ場所はちがうけど」
カーシャは嫌な事実を語った。
「カンペキ、テロ行為じゃないですか」
「そうよ」
「おいおいおい……。それってさあ、やっぱ噂の」
「どうかしら。それに見せかけた別の相手かもしれない。反乱勢力を利用して、都合のいいところを奪おうとしてるかもね?」
マコネの言葉に肩をすくめた後、
――ヤオアムトがそれをしてても不思議はないけど。
一方で、マコネは――
「んー」
印に刻まれた手を振りながら、何度か首をひねり、
「こんな感じか?」
少し目を閉じてから、印のある手を突きだした。
そこへ――
魔力が収束して、マコネの前に青白い渦が現れる。
「あ、できた」
のんきなマコネに、
「え! ちょっと、いきなり使っちゃうんですか……!?」
最初は、ドッジボール程度のサイズだった。
それが何かに引き裂かれるように――
どんどん大きく広がっていき、
「こ、これってモンスターを召喚しちゃったんですか!? そんな初心者がいきなり……」
「いや……試してみたら、こうなっちゃって……。え、いや、こんなにあっさりこうなったりするのか!?」
騒ぐバッキー。
あわてているマコネ。
そんな2人をよそに、
――大きなものが来る。初心者の使った召喚魔法では、ごく小さな鳥か獣しか呼べないはず……。でも、これは。
明らかに、人間以上のサイズ。
そういうものが現れる前兆だった。
やがて。
呼び出されたモノは、巨体を揺らしながら渦から出てきた。
「モンスターっていうか……カイジュウ!?」
バッキーが叫ぶ。
――カイ・ジュウ? また妙な言葉。
カーシャはそう思いながらも、召喚された生き物から目を離さない。
2~3メートルはある巨体。
巨大な鎧を思わせる体。
鋭く巨大な爪。
凶悪な牙の並ぶ
蜘蛛みたいな複数の眼。
先端に刃のような棘のある長い尾。
そして何より。
全身から感じられる、血と腐肉が焼け焦げたような臭い。
――……こいつ。
カーシャの肉体から、微かに黒いものが浮き上がり出した。
「なんだこりゃ……」
マコネは驚きながらも、印のある手を突きだしたまま。
「んー」
そいつは、キョロキョロと周辺を見ながら、
「あー、なるほど。モンスター召喚の魔法か」
と、言った。
「「しゃべった!?」」
マコネとバッキーはほぼ同時に同じ言葉を叫んだ。
「いや、そりゃしゃべるさ。この姿じゃあ、まあ驚くか」
「またお会いしたわね」
のんきに言っているそいつへ、カーシャは低い声で言った。
「偶然だなあ」
そいつはカーシャに対して、世間話のような口調。
「知り合い?」
マコネがカーシャを見ると、
「一度会っただけ。でも、思わぬ再会になった」
「そうだな」
「……こいつ、なんだよ。どこの、どういう種族なんだ?」
「知らない」
マコネの質問に、カーシャはそっけなく首を振るが、
「でも、召喚に応じてきた以上あなたのモンスターになるわね」
「えー……」
色々図太いマコネだが、さすがに困惑で腰が引けている。
「変なことになった。いらん好奇心だったか」
そいつはしゃがみこみながら、パタパタ尻尾を動かした。
「お前、ナニモンだよ。獣人とも思えねーし」
「何かって聞かれると、見ての通りバケモノとしか言えんが」
「召喚されたっつっても。おいらに従う……って感じじゃなさそうだがよ」
「あー、魔法で呪縛だの制御されてるわけじゃない。やって来たってだけだ」
笑みを含んだ返事に、マコネは大きなため息。
「そうかい、そうかい……。そりゃあようこそおいでになった。で……おいらぁ、マコネ。あんたは?」
「ふむ。なるほど、名前もあったな」
と、兜のような頭を掻いて、
「マクニオだ」
「なんか、フツーの名前だな?」
「そうかね」
「じゃあこれもお尋ねしたいね。おいらたちは、全員人間族だ。あんたは――」
「人間だよ、元はな」
元・人間。
その返事に、カーシャはピクリとなる。
「色々あって、というか、短絡的なことを考えて実行した結果、こうなった」
マクニオと名乗る怪物は、肩をすくめて両手のひらを上に向けた。
「まさか、悪魔に魂を売ったとかいうオチじゃねーだろうな?」
「似たようなもんだな」
「
「色々あってな。時間がたつと一生の恥でも他人事みたいになったりもする」
「そういうもんかい」
「俺の場合はな」
マコネはしばらく頭を抱えていたが、
「どうしたもんかね、この状況……」
カーシャに尋ねた。
「さてさて……」
青い髪の乙女は、腕を組んで考える。
さほど、良い考えが浮かぶわけもない。
ないのだが――
「そ、そのモンスターはいったい……」
ワシロー国王と、その侍従たちが驚き戸惑っているので、
「私の従者であるモンスターテイマーが使うモンスターでございます。陛下」
カーシャは膝をつきながら、そう説明する。
「聞けば、陛下のお命を狙い不埒な輩がいるとのこと。少しでも守りの助けとなれば、そう愚考してこれなるモンスターを召喚させた次第。きっとお役に立ちましょう」
「そ、そうかの? いや、これはありがたきお心づかい……」
国王はなんとか笑顔を作りながら、
「時に、これはいかなるモンスターかね?」
この質問に対し、
「――
カーシャは、息を吐くように適当なことを言った。
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人