破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「――刃傷事件?」
「そうです、そうです」
カーシャの声に、ユオンは訳知り顔でうなずいた。
ワシロー国王別荘にて。
国王へマクニオを【紹介】した後。
カーシャたちは、別荘内の庭園に戻っていた。
マクニオは、庭園で一番大きな
そこへ腰を下ろして動かない。
眠っているのか。
それとも。
黙っているだけなのか。
「するてーと、なにかい? おーざっぱにまとめると……」
カーシャの横で話を聞いていたマコネ。
猫みたいな――今は男装少女はのびをしながら、
「その、大公っておえらいかたが、王宮内で王様を斬りつけた。で、その一家は取り潰されちゃったと。で……」
潰された一家の、生き残り?
そいつらが
話のあらましを要約した。
「はい。実にわかりやすいですね。1年前のことです」
パチパチと拍手をするユオン。
そんな仕草も絵になっていた。
まさに天使か女神のごとき美少女ぶり。
「ついでに、大公家に残された妹君のほうは現在行方不明。ま、逃走中ですね」
「取り潰し。つまり完全な廃爵ね。当然の結果でもあるし、軽くても
こうなってもおかしくない。
カーシャは手刀で首を叩き、斬首のジェスチャー。
「しかしよ? その大公さんはなんでンなことしちゃったんだ? フツーに考えたらさあ?」
「ええ。大問題になるのはわかってるはずだし……」
同意を求めて自分のほうを向いたマコネに、バッキーもうなずく。
「さてさて。深い事情まではわかりませんが……。元から王家と大公家は微妙な関係だったんです」
「ああ、聞いたことがあるわ。旧来は、今の大公家にあたる血筋。それが王位についていたとか」
カーシャがそう言うと、
「さすが事情に通じていらっしゃる」
「……社交界では、そんな
どうせよくわかっているくせに。
ニコニコするユオンへ、カーシャは冷ややかな視線。
「ほんじゃ、今の王様? その一族が前の王様から国をとっちゃったのか?」
「どっちも、源流は同じ血族だがな」
「「え?」」
いきなり響いた言葉に、マコネとバッキーは振り返った。
樹木の根元に座ったまま、
「現王家は、元は王族から分かれた公爵家だ。それが1代前、現国王の父の代に取って代わったんだよ」
語ったのはマクニオだった。
「はい。私も記録で読みました」
ユオンは面白そうに元・人間だというバケモノを見た。
「俺も話でしか知らんが、その時代に隣国との戦争があった。この時に、大公家の先祖は戦死したのさ。それから、公爵の――現国王の父に支持が集まった。王太子も病弱だったそうでな」
「そんな人物が、よく嫡子に選ばれたわね」
マクニオの説明に、カーシャは疑問を口にした。
「さてね? 何か裏事情や陰謀があったのか、そこまでは知らんよ」
「はあ。それで確執があったんですねえ……?」
バッキーはうなずきながら、
――そう言えば、似たような話をどっかで聞いた? いや、読んだかな? ああ、これって……。
鍋島猫騒動だ。
転生前に、妖怪関係の本で知った知識。
大名家が、家臣に家督を奪われたという話。
そこから生まれた化け猫の怪談。
――こんな感じだったかなあ?
バッキーは
「だけど、それにしたって? いきなり刃物で斬りかかるなんて……」
「そりゃ次期国王の問題だろうさ」
マクニオは肩をすくめる。
「王太子はいる。だが、さほど人望のあるおかたじゃないんでな。若き大公に王位を……そういう声も少なくなかった」
「ンーな時に、王宮での刃傷事件か。アハハ、そりゃ裏がありますと言ってるようなもんだ」
マコネが皮肉をこめてケラケラ笑った。
「裏があったとして、王家やその一派のやったことだとも、言い切れないけれど」
カーシャは、その青く美しい髪をいじりながら淡々と言って、
「現王家の政権が続いたほうが好ましい。都合が良い。そういうのが、国内外にいてもおかしくはない。そうよねえ?」
ユオンを見た。
「はい」
あっさり肯定する美少女エルフ。
「しかし……」
マコネはマクニオを振り返りながら、
「お前さん、ずいぶん詳しいな?」
「――俺はこの国の生まれだからな」
「ほーん」
カーシャはマコネとマクニオのやり取りを聞きながら、
――ということは、まあ……。反乱勢力を、援助してる連中がいても不思議はないか。
音もなく、鼻でせせら笑ってから
――人望のない王太子か。どんな男かしらねえ。似たような立場だった者として……。
興味があるわ。
と、好奇心をくすぐられた。
その夜――
――あ~あ……。
外交官を迎える宴の場。
その舞台となっている館。
正門の前で、マコネは眠そうな顔をしていた。
カーシャやバッキーがパーティーへ参加している間。
館の警備を助けるため、ここで待機する羽目に。
「あのう、私も警備のほうを行きましょうか?」
などとバッキーは言っていた。
性格的に、ああいう華やかな場は苦手なのだろう。
しかし、
「ダメ」
カーシャに一蹴されて、同行させられていた。
――マナーとかよくわからんところに行くのは遠慮したいけどよ。退屈なもんだよなあ。
と、野良猫風味の男装少女があくびを嚙み殺している頃――
「お会いできて、まこと光栄でございます王太子殿下」
カーシャは令嬢時代より身についた動作で、挨拶を行っていた。
「これはこれは……。ご活躍は、この国にも聞こえております」
そう返す王太子。
名を、ビノーミ・ワシロー。
――へえ、なるほど。
淑女の仮面をかぶりながら、カーシャは眼前の人物を観察。
王族らしい育ちの良さはうかがえる。
温厚そうと言えば聞こえはいいが――
――頼りない感じの男ね。見た目的には。
そういう印象だった。
――聞いた話では、武芸でも学識でも目立つものはなし。地味で、才気走ったところもない。
「わたくしも、殿下のお人柄はうかがっております。多くのかたがたに、慕われておられると」
つまり。
何事にもひとまかせ。
ほとんど、周りにやらせているということだが。
「いやあお恥ずかしい」
王太子は微笑して、
「おかげで、民にも笑われております。良きにはからえ、と笑いのネタにされておりまして」
ぬけぬけと言った。
――鈍感なのか、
令嬢であった頃のカーシャなら、
――こんな話を聞けば、激昂してたわね……。この
と、
――む。
王太子の背後。
そこへ見える絵画へ気づき、カーシャは視線を送った。
なにか、神話か伝説の1シーンを描いたものか。
「ああ、あれですか?」
王太子は絵を振り返り、嬉しそうに笑った。
「失礼。あまりに見事なもので……つい目を奪われました」
「そう言っていただけるとは、実に嬉しい。よろしければ、あの絵についてお話ししましょうか?」
「はい。是非とも」
絵は、戦場に立つ巨大な戦士を描いたもの。
人間というよりも――
赤い鎧を着た、ゴーレムという印象。
背には、銀の翼がある。
ビノーミ王太子殿下の説明によれば――
かつてワシローを救った巨大な戦士。
英雄と共に悪竜や、邪悪な
その名を、
「マギドル」
そう王太子は語った。
少し離れた場所。
カーシャと王太子のやり取りを見ている、2人の少女。
「ひとたび動き出せば、あらゆる敵を粉砕するという無敵の戦士」
王国に危機があれば、王家の血を引く者の呼びかけに応え――
「英雄と共に、危機を救う……。ワシロー王家の伝承では、そうあります」
ユオンは訳知り顔で説明していた。
王太子も、カーシャに同じようを語っている。
「はあ……」
絵を見上げるバッキーへ、
「もしもこんなのが復活すれば、反乱を成功させることも可能、かも? そう、たとえ少人数でも」
声をひそめ、ユオンは言った。
「いや、ちょっと……」
場にふさわしくない話題に、バッキーがあわてると、
「アハハハ。あるわけないじゃないですか、そんなの。お話ですよ、お話。あるいは、大昔のことが大げさに伝わっただけとか。よくある、よくある」
酔っているのか、ユオンはいつもより高いテンション。
ヘラヘラとした笑顔。
「やめてくださいよ。その……すっごいフラグっぽいセリフ……」
バッキーはものすごく嫌な顔で、ユオンの笑顔を見ていた。
ワシロー王都から離れた、ある山岳地帯。
「マギードル、今日もサンキューな」
黒髪の少年が、赤い巨人を見上げて笑っていた。
赤い鎧をまとった巨人の戦士。
大きさは、6メートル近くある。
汚れもあるが、それ以上に輝く金属の光沢。
ワシロー王家に伝わる、伝説の戦士。
英雄のみが従えられる無敵の巨人。
その姿をもしバッキーが見れば、
「え? ロボット???」
そう言うのは、間違いなかった。
巨人を見上げる少年のそばには――
1人の少女がいた。
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人