破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その52、ワシロー王家・伝説の戦士

 

 

 

 

 

 

「やっぱ、兵隊が多いよなー」

 

 城下町を歩きながら、マコネはつぶやく。

 今は、礼服ではなくいつもと同じ――

 ではないが、ラフな服装。

 

「冒険者みたいな人も、見かけませんねえ」

 

 となりを歩くバッキーは杖を手にしている。

 だが、やはり地味な服を着ていた。

 

「やっぱこういう場所だと、あんまり歓迎されないんだろ。なんだかんだ言っても、ヤクザもんだし」

 

「そうなんですかねえ……」

 

 あれやこれやと話すうちに――

 

「ン?」

 

 マコネは立ち止まって、何かを拾う。

 

 ――また変なモノひろったのかな……?

 

 バッキーはちょっと不安な気持ちで、マコネが拾ったものを見る。

 

 ーー? なにこれ?

 

 一瞬、貝殻かと思ったが――

 八角形をしている。

 金属製らしい。

 

「魔法ゴマか。こっちでもやるんだな」

 

 マコネはそれを見ながら、面白そうな顔をした。

 

「なんですか、それは?」

 

 バッキーは質問したが、マコネは別の方向を向く。

 そこには、数人の子供が微妙な顔でバッキーたちを見ていた。

 みんな、手に紐を持っている。

 さらによく見ると――

 その足元で、マコネが拾ったのと同じようなものが転がっていた。

 

「おー、やってんな? ちょっと紐貸せ」

 

 マコネは図々しく近づくと強引に紐を奪い、拾ったものへ巻き付けて、

 

「でりゃ!!」

 

 地面で、金属製のそれは高速で回り出す。

 

「ああ、これコマだったんですか」

 

 納得の言ったバッキーは、

 

 ――あ、そういえば似たようなもの、子供の頃見たなあ。男の子が遊んでたっけ? あっちはなんか専用の回す道具使ってたような……。

 

「すげー……!」

 

「見たことないぞ、こんな速いの」

 

 警戒していた子供たちの眼は、一気に驚きと尊敬に変わった。

 

「マコネさん、すごいですねえ」

 

「あー、ゴトクのすすめっつーか。これやると、色々強くなるんだとさ。素早さかと身の軽さとか」

 

「はええ……。そんな効果が?」

 

「こいつを強く、速く回すには魔力の調整つうか操作ができないとダメ。やってるうちに、自然とそのへんが身につくんだと」

 

 ――魔法のある世界ならではだなあ。ん?

 

「じゃ、魔法が使える下地はあったんじゃないですか」

 

「まあな。けど、魔力がある程度使えるから、すぐ魔法が使えるもんじゃねー。あくまで基本の基本、そのまた基本さ。おいらがやってたのも、どっちかっつーと気晴らし」

 

 マコネは猫みたいな笑顔で言って、子供に紐を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのヒト(・・・・)は今頃どうしてるんかなあ?」

 

 馬面の中年冒険者。

 ジロはジョッキを飲み干してから言った。

 

 臨時パーティーを組んでのクエスト。

 それを無事終えた後――

 相棒? である、黒髪半エルフ魔導士ネイテク。

 その男と、軽く酒を飲んでいる途中のことだった。

 

「どうって、まあ普通にやってるんじゃないですか? あのヒトにとっての、でしょうけど」

 

 ネイテクはつまみの干し肉をかじりながら応える。

 

「外交官の護衛とは、出世したというのか、何というか。元公爵令嬢で、それなりにマナーも常識も知ってるのでちょうど良い部分もあるんでしょうね。それと」

 

「それと?」

 

「一種の威嚇というか圧力目的ですね。こっちには、こんだけヤバいのがいるんだぞ、と」

 

「あー、それは怖いわ」

 

「単にドラゴンを倒すだけじゃない。あっさり瞬殺できるんだから、一種の大量破壊兵器みたいなもんですから」

 

「ドンヨリする話やね……」

 

「まあね」

 

 ネイテクは軽く笑って、

 

「しかし、ワシロー王国ですか。色々と噂も聞きましたね。お家騒動みたいな。周辺の国で、色々妙な話とか」

 

「色んな所で、色んなゴタゴタがあったとか、それが解決されたとか」

 

「解決したんなら、ええんとちがうか?」

 

「そうなんですけど。ん~。何かこう、ヒロイックというか冒険譚的な匂いがあるんですよねえ」

 

 と、ネイテクは片眼鏡(モノクル)をいじっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鬼里(おにさと)立丸(たてまる)

 16歳の高校2年生。

 

 周りから、調子が良いとかバカだけどムードメーカーとか。

 いつもうるさい陽キャとか。

 相手によって評価は色々の男子。

 

 顔つきは良いと言える。

 イケメンという雰囲気ではないが、その分親しみやすい。

 明るいが、ひとからイジられやすいキャラ。

 

 運動神経は良いが、勉強のほうはイマイチ。

 こんな感じの、わかりやすい少年。

 

 その朝。

 立丸は大あわてで、自転車を全力でこいでいた。

 

 ――やべェ、やべぇ……!!

 

 ゲームのやりすぎて寝坊。

 まったくもって――

 実に、ありきたりな理由で遅刻しようとしている。

 

 その途中だった。

 

「は……?」

 

 いきなり。

 目の前に、何かが立ちふさがった。

 向こうの景色が透けて見える。

 

 ――幻覚? 錯覚?

 

 巨大な鎧のようなナニか。

 

 それが、真正面から――

 立丸に向かって突っ込んできて、

 

 

「うわああああっっ!?」

 

 

 周りはキラキラと虹色で(おお)われた。

 光の洪水に押し流されていく。

 何かが――

 燃え上がる炎のような感覚が体中を走っていく。

 得体のしれない、感じたこともない力。

 

 そして。

 

 誰かが、自分を見ているような気がした。

 

 

 

 

 

 【暗転】

 

 

 

 

 

「ぐえっ!?」

 

 立丸は地面に投げ出されてうめいた。

 上には、青い空。

 急いで起き上がると――

 

「え゛っ!?」

 

 どこか廃墟……というより、大昔の遺跡みたいな。

 見たこともない場所だった。

 周りは草と樹木ばかり。

 山の中だろうか。

 

 ――なんだよ、これ。夢っていうか……異世界?

 

 軽く自分の頭を小突きながら、立丸は立ちすくんだ。

 頭に感じる、軽い衝撃と痛み。

 

「夢じゃないし……? なんかのイタズラか?」

 

 どっかで隠し撮りでもしてんのか?

 

 色んな可能性を考えているうちに、気づく。

 

「あっ」

 

 すぐ近くに、女の子がいた。

 

 アニメみたいなピンクの髪に、緑の眼をした――

 まさに美少女。

 お姫様みたいな雰囲気の女の子。

 そんな()が、地面にへたりこんでいる。

 

「あの、えーと」

 

 日本語、通じるのか?

 

 と思ってしゃべった途端、

 

 ――あれ? 俺って……。

 

 意味はごく自然にわかる。

 だが、明らかに日本語ではない言語。

 立丸はそれを話していた。

 

「俺の言葉、わかるよな?」

 

 そんな疑問に、少女は何度もうなずく。

 

「俺は、鬼里立丸って言って。それから日本人で――」

 

 とりあえずは、自己紹介。

 そう思っていた時――

 

 キァァァァァアアア!!

 

 耳を裂くような、鋭い叫びが空気を揺らした。

 

「いけない……!」

 

 女の子が、ピンクの髪を揺らして立ち上がった。

 つられるように顔を上げた立丸は、

 

 ――なんだぁ!?

 

 何か大きな、黒い影。

 それが、上から向かってくるのを見た。

 

「あぶねぇ!!」

 

 立丸は叫びながら、女の子を抱き寄せて地面に転がる。

 ほとんど、反射的な行動だった。

 

 ゴウッ……

 

 その上を、何かが通りすぎる。

 

 ――なんなんだよ……!

 

 立丸は、奥歯を噛んで空高く行くモノを睨んだ。

 混乱と腹立たしさを同時に感じながら――

 

 鳥のような。

 獣のような。

 見たこともない、巨大な獣。

 

「グリフィン!」

 

 女の子が震える声で叫ぶ。

 

 ――グリフィンって。ファンタジーとかに出るアレか!?

 

 立丸は、あまりのことに笑いそうになった。

 空から地上を見る怪物。

 それが、自分たちを狙っているのは嫌でもわかる。

 

「ジョーダンだろ、いきなりモンスターの餌になるなんて……」

 

 立丸がつぶやいた時、

 

「……これを!」

 

 女の子が、何かを立丸の胸に押しつけた。

 銀色に輝く、メダルようなもの。

 

 そして。

 

 女の子は目を閉じて、何か詩のようなものを口ずさみ始める。

 まるで。

 魔法の呪文を詠唱しているような――

 

 ドクン

 

 立丸の胸が、燃えるように熱くなった。

 

 ――これって。

 

 放り出される前、虹色の中で感じた〝力〟。

 それが、全身へと広がった。

 

 同時に――

 

 赤い閃光が、メダルからあふれ出す。

 グリフィンはその光にひるんで、攻撃を中断して再び上昇。

 

 ルビーを思わせる光の粒子が広がり、何かを形づくる。

 

「うおぅっ」

 

 立丸はおかしな声をあげ、それを見上げた。

 赤い装甲と銀の翼を持った――ロボット。

 大きさは6メートルはある。

 呆然としているうち、立丸と女の子はロボットへ吸い込まれていく。

 

「マジか、これ……」

 

 ロボットの内部で、立丸はつぶやく。

 乗り込むというよりは、身にまとう感覚。

 ロボットの手足が、自分のものとなったような。

 

<気をつけて! グリフィンが来ます!>

 

「えっ!?」

 

 女の子が叫ぶ声。

 立丸は反射的に頭をかばった。

 

 身を守るロボットの腕を、グリフィンの爪が襲う。

 軽い衝撃。

 しかし、痛みはない。

 

「この、クソモンスター!!」

 

 立丸の意思に合わせて、ロボットはその腕でグリフィンを殴り飛ばす。

 

「なんだ、なんかわからねーけど、すげえ……!」

 

<がんばってください! このマギドルなら勝てます!>

 

「マギドル? ロボットの名前……? いや、それよりもお前、どこにいるんだよ!? 声はするけど……」

 

<私は今、マギドルの頭脳となって一体化しています! サポートしますから、どうか戦ってください!>

 

「わっかんねー……。なんか、ぜんっぜんわかんねえけど……こうなりゃ、ヤケクソだああああああ!!!」

 

 開き直りというやつかもしれない。

 立丸は獣のように叫んで、赤いロボット……マギドルと共に走り出した。

 

 

 

 これが、始まり。

 

 

 1年近く前のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤い鎧の戦士――英雄の伝説か」

 

 用意された部屋の中。

 カーシャは本を読みながらつぶやく。

 ワシロー王家に伝わる伝承や神話に関するもの。

 出版もとはヤオアムトだが、内容は実に詳細だった。

 

 ――勇者召喚は、わりとどこにでもある……。これもそのひとつなのだろうけど。

 

 少しちがう。

 

 ――伝わっている内容がある程度事実なら、確かに厄介なモノね。

 

 この国にとっても。

 他の国にとっても。

 

 そう考えながら、カーシャは本を読み進める。

 他はあまり、興味のないものばかりだったが、

 

 ――まあ暇つぶし? いえ、教養になるのかしら。

 

 教養。

 そんな単語を思い浮かべた自分に、カーシャは少しだけ笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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