破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
今回は伏線ばかりになってしまった……
もっとサクサク進めないと
「ただいまーっと」
「どうも」
ノックの後。
返事を聞いてから入ってきたマコネ。
それに続くバッキー。
「なかなか充実したお散歩だったようね」
読み終わった本をベッドに置きながら、カーシャは振り返った。
「まあ、美味そうな食い物は色々あったよ」
マコネはニッと、猫みたいな笑み。
それから。
あちこちの屋台などで買ってきたものを机に置く。
「兵隊がウロウロしてるのを除けば、まあフツー?」
「へえ」
「けど……。あんまり景気は良さそうでもなかったかな」
「でしょうね」
カーシャは淡々とそう返す。
「リーダーは、なにかご存じなんですか?」
買ってきた食べ物を机に並べながら、バッキーが言った。
「ご存じというほどのものではないけど――」
カーシャはお茶の準備をしながら、
「ワシローの景気が悪くなってるのは、前に聞いたわ。社交界でも噂になってたから」
「はえー……」
「ワシローは小国だけど、経済も技術力も悪くはない。ヤオアムトとの貿易もあるし、国庫にはけっこうお金があるでしょうね」
「じゃあ……」
バッキーの疑問に、
「そりゃ税金が高いからよ」
カーシャは即答した。
「ヤオアムトから性能が良い魔道具が入ってきてるから、貴族なんかは使用人を減らしてるの。コストカットと言ってね」
「なるほど、そういう。でも、ヤオアムトじゃそういう話は聞きませんよ? 魔道具ならずっと流通してるのに」
「貴族や金持ちは魔道具じゃなく、ヒトを使いたがるんだよ」
と、マコネが笑った。
買ってきた食べ物をほおばりながら。
「料理にしろ、掃除にしろ。庭の手入れにしろ。使用人を雇ってやらせるのが優雅とされるのよ。それだけ余裕があるという見栄にもなるしね」
カーシャはお茶を茶器に注ぎながら、
「どれだけ便利な魔道具があってもね。非効率そのもの」
「けど、その見栄がないと仕事なくなる連中も多いからなー」
「ふ~ん……。そういうもんなんですね」
よく知らなかった文化や考えに、バッキーはうなずくばかり。
時間は少しだけ、戻る。
夜――
ちょうど、カーシャたちが歓迎の宴に参加していた頃。
「もうすぐ、王都に到着するはいいが……。本気でやるつもりなのかね?」
河原でたき火をしていた男が言った。
若くはない。
中年と言える外見だった。
体は鍛えられ、あちこち古傷がある。
手入れされていない赤銅色の髪と、無精ひげ。
用心深く剣を手にしている。
「今さら何をぬかすか」
応えたのは、灰色の三角帽子にローブ。
杖で燃える枯れ木をつついていた。
いかにもという、魔法使いの姿。
そんなスタイルをした、白ひげの小柄な老人。
「大体じゃな……」
魔法使いはひげをなでつつ、
「わしらは王家に牙をむこうと言うのではない。その背後におるバシラ・カーサを討つのじゃ」
バシラ・カーサ。
ワシロー国の財務大臣。
「それで、相手が納得してくれりゃいいがね」
男は皮肉げに笑った。
その時――
「王都は兵隊があちこちで見張ってるわさ」
笑みを含んだ女の声。
闇の中から、一匹の白猫が出てくる。
ただ。
普通の猫ではない。
後ろ足で立って歩き、サイズにあったカバンを肩にかけている。
「お前……」
男が嫌な顔をした。
「地獄の使者か。なんのようじゃ?」
魔法使いは、穏やかな声。
しかし、白猫に向ける視線は鋭い。
「歓迎されてないようだけど、良いことを教えてあげに来たんだわさ」
白猫は、カバンから小さなをキセルを取り出して、
「ふう」
口から火を吐き、タバコを
「ヤオアムトから来た役人。そいつにくっついて腕利きが来てるわさ。警護の助っ人をするようだね」
煙を吐きながら、白猫はクスクス笑う。
「ヤオアムト?」
男はつぶやき、魔法使いは無言ながら不審の表情。
「しかも」
白猫はキセルを男へ向けて、
「あんたと同じモンだね。つまりは」
〝黄泉がえり〟さ。
と、白猫は言い放った。
「おいおい……」
男の顔に、嫌な汗が浮かび出した。
「いたのは、第8層。つまりは最下層だわさ。
「嬉しいお知らせだな。感激で涙が出そうだ」
不快そうな表情で返す男に、
「せいぜい、死なないよう注意するだわさ。じゃ」
白猫はキセルをくわえて、闇に消えていった。
「〝黄泉がえり〟か。お前さんを見るまでは、半信半疑じゃったが……」
魔法使いの声に、
「同じだといっても、俺は一番浅い第1層にいただけだ。過ごした時間も知れてる。だが……」
男は悩まし気に頭を掻きながら、
「前にあのクソ猫が言ってたが……下に降れば降るほど、時間もきつさもバカみたいに増えていく。その最下層にいたってんだから、並大抵の相手じゃあないぜ」
「むむむむ……」
考え込んでしまった魔法使い。
それに対して男は、
「どうするね、ジィサン? あのお嬢ちゃんとガキには遠くに逃げろ、とご注進するのがベストだと思うが……」
苦笑してから、
「三十六計逃げるにしかず、だ」
「? なんじゃね、それは?」
男の言い回しに魔法使いは思わず妙な顔。
初めて聞くものだったからだ。
「昔の知り合いが言ってた言葉さ。ヤバい時にはとにかく逃げて、安全を確保しろって意味らしい」
言った後、男はどこかあきらめたような顔で、
「とはいえ……。あのお嬢様が納得するかどうかは、だな」
「クークお嬢様……。今すぐ連絡がとれればのう」
「仮に今連絡できても、野暮なことになるかも、だぜ」
「む?」
「夜中に先の不安たっぷりの若い2人。やることは決まってらぁな。タダでさえ、ヤリたいざかりだ」
そんな男の言葉に――
魔法使いはあきれた顔になった。
また同じ頃。
宴の会場を後にして――
ユオンは自分の部屋で休んでいた。
机に水差しを置き、肘をついたかっこうで目を閉じている。
だが。
眠ってはいない。
<やはりというか、まあヨロシクナイ感じですねえ>
ユオンは念話で上司へ語る。
<お金はある。あるけど、使いどころが見当はずれ。というか、まあ……。使ってすらいないかもですね>
<その割に、国王陛下はお悩みとの報告だが?>
念話の相手――
ラージ・トーザ侯爵は、ゆったりと口調で言った。
<自国の景気が悪くなって、喜ぶ為政者なんていませんよ>
<当たり前だな>
<同じように頭を悩ませているかたは、けっこうおりますね>
<だが、国庫の金は動かんか>
<はい。王族も貴族も、そのお金で贅沢三昧……というのなら、わかりやすいですが。そうでもないので>
<……財務大臣を務めるバシラ・カーサ殿は有能だと聞く>
<実際それはその通りですね。宮廷内でもかなりの力を持っています。また、王家の立場を堅固にするために尽力しているとも。王太子殿下のバックについて、後押しをされているようで>
<もう回りくどいことはいい。ハッキリと結論を言え>
<ワシローが斬りつけられた事件は、このかたが黒幕ですね>
<本当にハッキリ言ったな?>
ククク、と。
トーザ侯爵は笑ったようだ。
<このかたにとっては、自分が担ぐビノーミ殿下が王になってもらわないと困る。そのために、大公殿下は邪魔ですからね。アレコレと陰で仕込んで、相当精神を追い詰めたようです>
<それが爆発しての、刃傷事件か>
<はい、そうなんです。ま、バシラ殿にすれば現王陛下がいなくなれば、晴れて自分の担ぐビノーミ殿下が王位に就く。失敗しても邪魔な大公家は排除できると。どっちにしてもオッケイだったんでしょ>
闇夜の道。
そこを、白猫は歩いていた。
「うにゃ?」
つぶやき、白猫は足を止める。
「こりゃまた思わぬところであったわさ」
闇の中で輝く白猫の眼。
その先には、笑みを浮かべた銀髪の美女が座っていた。
野獣のような獰猛な笑い。
長いウェーブの銀髪。
エルフの特徴である長い耳。
顔にはいくつもの傷が走っている。
しかし、傷は美貌をまったく損なわせていない。
背が高く、女ながらガッシリとした肉体。
「これから、ワシローの揉め事でも見物しようってのか?」
エルフは言った。
「うんにゃ。これからまた仕事だわさ。これでも忙しくって」
「商売繁盛でけっこうだな」
「それで、お前さんはどうされるのかな?」
「仕事上ながら、それなりに縁のあった連中だ。最後まで見届けるさ」
「ハッピーエンドになるかな?」
「知らん。だが、あの〝黄泉がえり〟の女がいる上に……あのクソババァがひかえてるんだ。勝てる見込みはほぼないな。物事に絶対ってもんはないが……」
「クソババァって、ユオンさん、エルフとしてはそこまで年じゃないわさ」
「あっちは祖母で、こっちは孫。だからババァであってんだよ」
「ゴーギャ、年長者はもっと敬わないといけないだわさ」
「うるせえな」
名前を呼ばれたエルフはうるさそうに、
「敬うような相手かよ。どーせロクな死にかたしねえヤツだ」
と、言い捨てた。
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人