破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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うーん
今回は伏線ばかりになってしまった……
もっとサクサク進めないと




その53、嵐の前?

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまーっと」

 

「どうも」

 

 ノックの後。

 返事を聞いてから入ってきたマコネ。

 それに続くバッキー。

 

「なかなか充実したお散歩だったようね」

 

 読み終わった本をベッドに置きながら、カーシャは振り返った。

 

「まあ、美味そうな食い物は色々あったよ」

 

 マコネはニッと、猫みたいな笑み。

 それから。

 あちこちの屋台などで買ってきたものを机に置く。

 

「兵隊がウロウロしてるのを除けば、まあフツー?」

 

「へえ」

 

「けど……。あんまり景気は良さそうでもなかったかな」

 

「でしょうね」

 

 カーシャは淡々とそう返す。

 

「リーダーは、なにかご存じなんですか?」

 

 買ってきた食べ物を机に並べながら、バッキーが言った。

 

「ご存じというほどのものではないけど――」

 

 カーシャはお茶の準備をしながら、

 

「ワシローの景気が悪くなってるのは、前に聞いたわ。社交界でも噂になってたから」

 

「はえー……」

 

「ワシローは小国だけど、経済も技術力も悪くはない。ヤオアムトとの貿易もあるし、国庫にはけっこうお金があるでしょうね」

 

「じゃあ……」

 

 バッキーの疑問に、

 

「そりゃ税金が高いからよ」

 

 カーシャは即答した。

 

「ヤオアムトから性能が良い魔道具が入ってきてるから、貴族なんかは使用人を減らしてるの。コストカットと言ってね」

 

「なるほど、そういう。でも、ヤオアムトじゃそういう話は聞きませんよ? 魔道具ならずっと流通してるのに」

 

「貴族や金持ちは魔道具じゃなく、ヒトを使いたがるんだよ」

 

 と、マコネが笑った。

 買ってきた食べ物をほおばりながら。

 

「料理にしろ、掃除にしろ。庭の手入れにしろ。使用人を雇ってやらせるのが優雅とされるのよ。それだけ余裕があるという見栄にもなるしね」

 

 カーシャはお茶を茶器に注ぎながら、

 

「どれだけ便利な魔道具があってもね。非効率そのもの」

 

「けど、その見栄がないと仕事なくなる連中も多いからなー」

 

「ふ~ん……。そういうもんなんですね」

 

 よく知らなかった文化や考えに、バッキーはうなずくばかり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少しだけ、戻る。

 

 夜――

 ちょうど、カーシャたちが歓迎の宴に参加していた頃。

 

「もうすぐ、王都に到着するはいいが……。本気でやるつもりなのかね?」

 

 河原でたき火をしていた男が言った。

 若くはない。

 中年と言える外見だった。

 体は鍛えられ、あちこち古傷がある。

 手入れされていない赤銅色の髪と、無精ひげ。

 用心深く剣を手にしている。

 

「今さら何をぬかすか」

 

 応えたのは、灰色の三角帽子にローブ。

 杖で燃える枯れ木をつついていた。

 いかにもという、魔法使いの姿。

 そんなスタイルをした、白ひげの小柄な老人。

 

「大体じゃな……」

 

 魔法使いはひげをなでつつ、

 

「わしらは王家に牙をむこうと言うのではない。その背後におるバシラ・カーサを討つのじゃ」

 

 バシラ・カーサ。

 ワシロー国の財務大臣。

 

「それで、相手が納得してくれりゃいいがね」

 

 男は皮肉げに笑った。

 

 その時――

 

「王都は兵隊があちこちで見張ってるわさ」

 

 笑みを含んだ女の声。

 

 闇の中から、一匹の白猫が出てくる。

 ただ。

 普通の猫ではない。

 後ろ足で立って歩き、サイズにあったカバンを肩にかけている。

 

「お前……」

 

 男が嫌な顔をした。

 

「地獄の使者か。なんのようじゃ?」

 

 魔法使いは、穏やかな声。

 しかし、白猫に向ける視線は鋭い。

 

「歓迎されてないようだけど、良いことを教えてあげに来たんだわさ」

 

 白猫は、カバンから小さなをキセルを取り出して、

 

「ふう」

 

 口から火を吐き、タバコを(くゆ)らせた。

 

「ヤオアムトから来た役人。そいつにくっついて腕利きが来てるわさ。警護の助っ人をするようだね」

 

 煙を吐きながら、白猫はクスクス笑う。

 

「ヤオアムト?」

 

 男はつぶやき、魔法使いは無言ながら不審の表情。

 

「しかも」

 

 白猫はキセルを男へ向けて、

 

「あんたと同じモンだね。つまりは」

 

 〝黄泉がえり〟さ。

 

 と、白猫は言い放った。

 

「おいおい……」

 

 男の顔に、嫌な汗が浮かび出した。

 

「いたのは、第8層。つまりは最下層だわさ。阿鼻地獄(アヴィーチ)悪意者の地獄(マレボルジェ)。言い方は色々だけど、ヤバさの上にヤバを何重にもかさねたところだわさ」

 

「嬉しいお知らせだな。感激で涙が出そうだ」

 

 不快そうな表情で返す男に、

 

「せいぜい、死なないよう注意するだわさ。じゃ」

 

 白猫はキセルをくわえて、闇に消えていった。

 

「〝黄泉がえり〟か。お前さんを見るまでは、半信半疑じゃったが……」

 

 魔法使いの声に、

 

「同じだといっても、俺は一番浅い第1層にいただけだ。過ごした時間も知れてる。だが……」

 

 男は悩まし気に頭を掻きながら、

 

「前にあのクソ猫が言ってたが……下に降れば降るほど、時間もきつさもバカみたいに増えていく。その最下層にいたってんだから、並大抵の相手じゃあないぜ」

 

「むむむむ……」

 

 考え込んでしまった魔法使い。

 それに対して男は、

 

「どうするね、ジィサン? あのお嬢ちゃんとガキには遠くに逃げろ、とご注進するのがベストだと思うが……」

 

 苦笑してから、

 

「三十六計逃げるにしかず、だ」

 

「? なんじゃね、それは?」

 

 男の言い回しに魔法使いは思わず妙な顔。

 初めて聞くものだったからだ。

 

「昔の知り合いが言ってた言葉さ。ヤバい時にはとにかく逃げて、安全を確保しろって意味らしい」

 

 言った後、男はどこかあきらめたような顔で、

 

「とはいえ……。あのお嬢様が納得するかどうかは、だな」

 

「クークお嬢様……。今すぐ連絡がとれればのう」

 

「仮に今連絡できても、野暮なことになるかも、だぜ」

 

「む?」

 

「夜中に先の不安たっぷりの若い2人。やることは決まってらぁな。タダでさえ、ヤリたいざかりだ」

 

 そんな男の言葉に――

 魔法使いはあきれた顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また同じ頃。

 

 

 宴の会場を後にして――

 

 ユオンは自分の部屋で休んでいた。

 机に水差しを置き、肘をついたかっこうで目を閉じている。

 だが。

 眠ってはいない。

 

<やはりというか、まあヨロシクナイ感じですねえ>

 

 ユオンは念話で上司へ語る。

 

<お金はある。あるけど、使いどころが見当はずれ。というか、まあ……。使ってすらいないかもですね>

 

<その割に、国王陛下はお悩みとの報告だが?>

 

 念話の相手――

 ラージ・トーザ侯爵は、ゆったりと口調で言った。

 

<自国の景気が悪くなって、喜ぶ為政者なんていませんよ>

 

<当たり前だな>

 

<同じように頭を悩ませているかたは、けっこうおりますね>

 

<だが、国庫の金は動かんか>

 

<はい。王族も貴族も、そのお金で贅沢三昧……というのなら、わかりやすいですが。そうでもないので>

 

<……財務大臣を務めるバシラ・カーサ殿は有能だと聞く>

 

<実際それはその通りですね。宮廷内でもかなりの力を持っています。また、王家の立場を堅固にするために尽力しているとも。王太子殿下のバックについて、後押しをされているようで>

 

<もう回りくどいことはいい。ハッキリと結論を言え>

 

<ワシローが斬りつけられた事件は、このかたが黒幕ですね>

 

<本当にハッキリ言ったな?>

 

 ククク、と。

 トーザ侯爵は笑ったようだ。

 

<このかたにとっては、自分が担ぐビノーミ殿下が王になってもらわないと困る。そのために、大公殿下は邪魔ですからね。アレコレと陰で仕込んで、相当精神を追い詰めたようです>

 

<それが爆発しての、刃傷事件か>

 

<はい、そうなんです。ま、バシラ殿にすれば現王陛下がいなくなれば、晴れて自分の担ぐビノーミ殿下が王位に就く。失敗しても邪魔な大公家は排除できると。どっちにしてもオッケイだったんでしょ>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇夜の道。

 

 そこを、白猫は歩いていた。

 

「うにゃ?」

 

 つぶやき、白猫は足を止める。

 

「こりゃまた思わぬところであったわさ」

 

 闇の中で輝く白猫の眼。

 その先には、笑みを浮かべた銀髪の美女が座っていた。

 

 野獣のような獰猛な笑い。

 

 長いウェーブの銀髪。

 エルフの特徴である長い耳。

 顔にはいくつもの傷が走っている。

 しかし、傷は美貌をまったく損なわせていない。

 背が高く、女ながらガッシリとした肉体。

 

「これから、ワシローの揉め事でも見物しようってのか?」

 

 エルフは言った。

 

「うんにゃ。これからまた仕事だわさ。これでも忙しくって」

 

「商売繁盛でけっこうだな」

 

「それで、お前さんはどうされるのかな?」

 

「仕事上ながら、それなりに縁のあった連中だ。最後まで見届けるさ」

 

「ハッピーエンドになるかな?」

 

「知らん。だが、あの〝黄泉がえり〟の女がいる上に……あのクソババァがひかえてるんだ。勝てる見込みはほぼないな。物事に絶対ってもんはないが……」

 

「クソババァって、ユオンさん、エルフとしてはそこまで年じゃないわさ」

 

「あっちは祖母で、こっちは孫。だからババァであってんだよ」

 

「ゴーギャ、年長者はもっと敬わないといけないだわさ」

 

「うるせえな」

 

 名前を呼ばれたエルフはうるさそうに、

 

「敬うような相手かよ。どーせロクな死にかたしねえヤツだ」

 

 と、言い捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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