破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その57、バシラ邸の戦いと観戦者たち

 

 

 

 

 

 

 

<タテマル様! 相手の手の内がまだわかりません、まずは……>

 

「様子見かよ。まだるっこしいけど……」

 

 マギドルはすべるように後退しながら、

 

「【クー】の頼みなら、しょうがねえ!!」

 

 刃を鞭に変えて、マクニオを打った。

 普通とは違う。

 岩を砕く破壊力プラス――

 内部へ衝撃を送り込む特別仕様。

 

 ――こいつなら、いくら表面が硬くたって……平気じゃあいられないぜ!

 

 過去。

 

 いくつかの冒険。

 その中で、頑強な装甲を持つタラスクと遭遇した時。

 マギドルの刃も、魔力弾も――

 タラスクの装甲には無意味だった。

 

 何度も叩き落とされ。

 何度も潰されそうになって。

 

「こいつでどうだああ!!」

 

 起死回生を狙った、刃からハンマーに換えての攻撃。

 だが。

 ハンマーも、ボールのように丸まったタラスクに破られた。

 この時使ったのが、衝撃を内部へ打ち込む特殊鞭。

 それが勝利に導いた。

 

 立丸は、ここに来るまでの戦いを思い出しつつ――

 鋭い目でマクニオを観察した。

 

「……」

 

 マクニオは打たれっぱなしだったが、

 

「こういう武器か」

 

 つぶやきながら、鞭をつかみとった。

 

「なにぃ!?」

 

<まさか!?>

 

 立丸も、クークも驚きの声。

 

 たとえ打たれなくても――

 鞭はそれ自体が強烈な振動、そして衝撃を生み出している。

 なのに、マクニオは応えた様子もない。

 

 どころか、

 

「うああ……!? はなせ、このヤロッ……!」

 

 つかんだ鞭を引っ張り、そのままマギドルを引き寄せ始める。

 

「バシバシ響いたけど、泣くほどでもないな?」

 

 そんなことを言いながら。

 

「コノヤロッ……!」

 

 立丸は、そこであえて逆らわず、

 

「吹っ飛べ、カイジュウウウ!!」

 

 逆に――

 マギドルをマクニオへと突撃させる。

 巨人の腕に巨大なガントレットをまとわせて。

 

 ゴッ……!!!

 

 強烈な破壊力と衝撃。

 それを合わせたもった打撃が、叩きこまれた。

 

 ――おいおいおい……!?

 

 マコネは一瞬身を乗り出しかけたが、

 

「こいつはなかなかキツい。まともに喰らったら、さぞ痛いだろうな」

 

 マクニオは片手でマギドルの拳を受け止めて言った。

 やはり、のんきな声。

 そして――

 

「一方的に殴られっぱなしはかなわん」

 

 マギドルをつかんで振り回す。

 

「ぎゃ!?」

 

「ひいい!?」

 

 それが巻き起こす風圧で、周りのものがどんどん吹き飛ばされていった。

 

「こ、この野郎……!」

 

 マコネは身をかがめながら、好き放題のマクニオを睨む。

 

「うわあああ!?」

 

<きゃああああああああ!?>

 

 そして。

 マクニオは、内部で少年少女が悲鳴をあげているところを、

 

 ブン

 

 ドゴォ……!

 

 マギドルをバシラ邸の壁に叩きつけた。

 

<……! た、タテマル様!?>

 

「ってえ……! なんてパワーだ。怪獣のことだけはあるぜ」

 

 立丸は強がりを言いながら、何とかマギドルを起こさせる。

 

「おい、こら、てめえーっ! マクニオ! 周りの迷惑考えて動けよ!!」

 

 一方で。

 

 マコネは実に抜け目なく――

 被害のない場所へ移動しながら怒鳴った。

 

「そりゃ悪かったな」

 

 マクニオは体についた埃を払いながら、気のない返事。

 やる気があるのか、ないのか。

 よくわからない態度だった。

 

<マクニオ……?>

 

 マギドルの中で、クークの(いぶか)しげな声。

 

「おい、どうしたんだ?」

 

 立丸はその声に妙な顔になった。

 マギドルの態勢を立て直しながら、

 

「あの怪獣、なんか知ってるのか?」

 

<い、いえ。気のせいだと思います。それより、気をつけて!>

 

「うわ!」

 

 立丸たちが一瞬、他に気を取られている間――

 マクニオはどんどん接近していた。

 

「っの、野郎ぉぉ!」

 

 マギドルの刃が、容赦なくマクニオの胸部を薙ぐ。

 だが、

 表面には、微かな傷。

 それだけで、マクニオは微動だにしない。

 

「まだまだまだああぁぁーーー!!」

 

 ガガガガガガガガガガ!!

 

 マギドルは近距離から魔力弾を撃ちまくる。

 さながら。

 戦闘ヘリから掃射されるチェーンガンのごとし。

 衝撃波と爆風が周辺を揺らして、他を近づけさせない。

 

「うっわ……! とんでもねえ真似しやがる!」

 

 地面に伏せながら、マコネは忌々しそうに毒づく。

 

「てめえが……コッパミジンになるまで………」

 

 立丸はうなった。

 猛獣のように牙をむいて――

 エネルギーを燃やし、マギドルへと注ぎ込みながら。

 

「絶対に……!」

 

 再び、マギドルの刃が稲妻のように輝く。

 今までの数倍以上にエネルギーをこめて。

 

「止まらねええぞお!!!」

 

 ドグッ!!

 

 刃が、マクニオの胸部を貫いた。

 そこから、魔力弾を直接叩きこんでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バシラ邸で、派手な戦闘が繰り広げられている中――

 カーシャは不意にそれから視点をずらして、

 

「……」

 

 闇夜を移動している気配を目で追った。

 さらに。

 また別の方向から近づいてくる気配。

 カーシャに近づいてきてはいない。

 

 だが。

 

 

 

 

 

「始まってるか……。おいおい、なんだよアレは……」

 

 ガイストは手をかざして、巨大な怪物・マクニオを見る。

 

 ――この臭い……。同じ〝黄泉がえり〟が他にもいやがったのか!?

 

 額から流れる嫌な汗。

 それをぬぐって、なお進み続けたが、

 

「なかなかの見世物だ。お前も、そう思うだろ?」

 

 前方で、バシラ邸を見ている女がいた。

 

「けど。今さらお前が助太刀したって、状況は変わらんぜ?」

 

 振り返るのは、ウェーブの銀髪をした女。

 顔に傷のあるエルフ――

 

「ゴーギャ・キナ……」

 

「フルネームで呼ぶのかよ」

 

 と、エルフはガイストを見て笑う。

 

「まあ事情があれどあいつらに関わってきたが、もうすぐ終わるな」

 

「……かもしれねえや」

 

 ガイストは言いながら、わずかに腰を落とす。

 

「剣もなしか。あるのはせいぜいナイフくらいか?」

 

 ――見抜いてやがる……。

 

 隠して持っているナイフを意識しながら、ガイストは苦笑した。

 

「お前も腕はそこそこだろうが……。哀しいかな、あいつの敵じゃあない。同じ〝黄泉がえり〟でもな。過ごした階層、そして時間が大いに違う」

 

 ゴーギャという名のエルフは、品定めするようにガイストを見た。

 

「そうらしいな……」

 

「なあ、お前? あいつらにそこまでする義理や何かがあるか? せっかくまともなうちに〝地獄〟から帰ってこれたんだ。何も無駄死にすることはない」

 

「そいつぁ、もっともな話だ。反論の余地がねえ」

 

 ガイストは困った顔で頭を掻く。

 

「でも、逃げないんだなあ? なんで?」

 

 ゴーギャは腰に手を当てて、顔を突きだした。

 

「わからんなあ……」

 

「あ?」

 

「よくわからんのだよ、こんな年になっても。自分のことがさ」

 

「そうかい」

 

 ゴーギャは、ふうと小さく息を吐いて姿勢を正し――

 

「あんたはどう思う?」

 

 その声に、

 

 

「部外者が横からどう言ってもね」

 

 

 静かに、優れた楽器のような美しい声。

 カーシャは闇の中から音もなく進み出た。

 

「やっぱりあんたか……」

 

 ガイストは、カーシャを見て笑う。

 あきらめたような、あるいは開き直ったような……。

 何とも言い難い、不思議な笑み。

 

「……あなた」

 

 カーシャは、ガイストよりもゴーギャへ強い視線を送る。

 

 ――似ている。

 

 まるで異なるタイプだが、顔の造形や雰囲気。

 

「知ってる顔、って目つきだけど。俺はあんたと面識はないぜ?」

 

 シルバー・ウェーブのエルフは笑う。

 口から牙を思わせる犬歯がのぞいた。

 

 ――知らない、とは言わないのね……。

 

 カーシャは少し目を細め、ゴーギャを見る。

 

「ユオン・キナ。そういう名前の知り合いがいるけど、同じ名字ね」

 

「なるほど、聞いてたか」

 

 ゴーギャはチラリとガイストを見てから、

 

「お察しの通り。俺はあいつの血縁だよ。ハッキリ言えば孫だ」

 

 ドカッと地面に腰をおろした。

 

「孫……。エルフだものね」

 

「で、あなたがたはあの賊徒たちの仲間?」

 

「少なくとも、こっちはな」

 

 ゴーギャはガイストを親指で指す。

 

「俺のほうは……色々世話を焼いたり、取引をした間柄だ。興味もあったしな。主に、あの赤いヤツに」

 

「それはそれは……」

 

 カーシャは、遠目に見た赤いゴーレムを思い出す。

 

 ――いや、ゴーレムというより……。

 

 魔導アーマー。

 ヤオアムトでは、その最高クラスとしてドラグーン・アーマーがある。

 空中を高低自在に飛び回り、武装次第では強力な火力を持つ。

 対ドラゴン種を想定されている兵器。

 

「あんなのがたくさん造られたら、かなりの武力になるだろうなあ? 造って運用、維持できるだけの金やもの、ヒトがいればの話だが」

 

「それでも、兵力に加えれば切り札や圧力にはなるでしょうね」

 

 ゴーギャの言葉に、カーシャは意見を返す。

 それから、

 

「あなたはどう思われるかしら?」

 

「悪いが俺には学も教養もなくってね。そういうムズカシイこたぁわからん」

 

 話をふられたガイストは、苦笑して首を振る。

 

「あまり詳細は語りたくない、か。もっともだけど」

 

 カーシャは男の態度に、率直な感想。

 

「といっても、ありゃ欠陥品だがよ」

 

 くくく。

 

 と――

 ゴーギャは、イタズラを成功させた悪童(ワルガキ)のように(わら)った。

 

「あのご大層な鎧は、肝心の動力源がねえ。だから、操縦者の魔力でほとんどを補わんとダメ。それに、細かい補助をするヤツが同化してないと武装やらがまともに使えない。ダメだろ?」

 

「……それが本当ならね」

 

 と、カーシャは腕組みをする。

 兵器のことは専門ではないし、よく知っているわけでもない。

 だが、ある程度のことは、色んな場所で学んだ内容の中に入っていた。

 

 ――聞いた通りなら、ドラグーンのものよりだいぶ劣る。というより……。

 

 マギドル。

 あるいはそれに類する何か。

 ドラグーン・アーマーはそういったものを改良・発展させた兵器。

 こんな推測が、カーシャの頭によぎった。

 

「あなた……何がしたいのかしら」

 

「答える義理があるとでも……っと、言いたいけど、そう睨むなよ。あんたとケンカしたら命がいくつあっても足りない。そうだな、このまま大公殿下の残党が全滅。ついでに困った財務大臣が討ち死に……とはいかなくても、引退してくれりゃ嬉しいね」

 

 そんなことを言いつつ、ゴーギャはまた笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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