破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

67 / 357
その58、ロボット対怪獣?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1年前――

 

 

「えーと、クーク……」

 

「クーク・ハッタ・ヤギオーナです。でも、親しいヒトはクーと呼びます。勇者様も、どうかそうお呼びください」

 

「そ、そか。じゃあ、クー?」

 

「はいッ」

 

 ――うおおっ! な、なんかいいぞ、これ!? さすがは異世界!!

 

 内心感動しつつ、というよりあからさまに態度に出して――

 ガッツポーズまでしている男子高校生を、

 

「?」

 

 クークは若干不思議そうに見ていた。

 

「えーと、じゃあ俺は、鬼里立丸っていうんだけど」

 

「おにゅさて・たてぃーま?」

 

「ああー。やっぱ発音ムズカシイか? でも、俺は普通に話せてるんだけど……。まあいいや」

 

「は、これは失礼をいたしました、勇者様」

 

「いやあ、勇者……じゃなくって、立丸? お互い名前でさ」

 

「はい! タティーメィ、タティームル……タテ、マル様?」

 

 クークは試行錯誤しながらも、何とかそれらしい発音。

 

「うん、オッケイ!」

 

 グッと親指を立てる立丸。

 微笑みを返すクーク。

 

 と、同時に。

 

 グウゥ……

 

「うえっ?」

 

 盛大な腹の音に、立丸は自分で驚く。

 

「あ……。いきなり力を使って、お疲れになったようですね」

 

 くすりと笑うクーク。

 

 気づけば。

 いつの間にか日暮れが近づこうとしていた。

 

 

 

 そして夜。

 

「へえ、便利なもんだなあ?」

 

 立丸はクークの用意した非常食を食べながら、感心する。

 

 クークの持っていた非常用の魔導テント。

 ヤオアムトから輸入されたもので、周辺を小規模な結界で覆う。

 獣やモンスターを近づけず、あるいは認識させない。

 

「けど……」

 

 食べたものを飲み込んでから――

 立丸は座ったかたちになっているマギドルを見上げた。

 赤い装甲は、全て灰色になっている。

 

「これ、どうしたんだ?」

 

「……それは、魔力が尽きてしまったのです」

 

 クークは少しうなだれて言った。

 

「え? じゃあどこか補給? とか?」

 

「補助や自己修復などの最低限のものは周囲の魔素を吸収することで補給できます。ただ……」

 

 クークは、ジッと立丸を見つめて、

 

「戦闘などに使用する魔力は、通常のものではダメなのです。乗り手である勇者の持つ魔力でなければ」

 

「じゃあ、俺が乗れば全部解決?」

 

「そうなのですが……」

 

「だったら、なんも心配いらないじゃん」

 

 単純な解決法に立丸はわらったが、

 

「ですが、よろしいんですか?」

 

「え。なにが?」

 

「この先、あなたには様々な敵と、私たちが討とうとするバシラ・カーサとの戦いに巻き込む……。いいえ、先頭に立っていただかねばなりません」

 

「あー……」

 

 立丸はさすがにひるんだ。

 さっきはほとんど勢いとヤケクソだったが、

 

 ――きっと、何度もああいう戦いをするわけか……。

 

 正直拒否するという選択も浮かんだ。

 

 しかし。

 

 クークの横顔。

 動きやすそうだが、女の子らしい服装。

 服の上から感じ取れる華奢な肉体。

 

「ですが、もし。一緒に戦っていただけるなら、どんな報酬でも! たとえ、私の身を捧げても!」

 

 真剣な顔で叫ぶ女の子。

 目には、涙が浮かんでいる。

 声も体も、健気に震えていた。

 

「わかった! この勇者にまかせなさい!」

 

 同情やらときめきやら、欲望やら下心やら。

 色んなものがごちゃ混ぜになって立丸を動かした。

 

「あ、ありがとうございます! タテマル様!!」

 

 両手を組んで身を乗り出すクーク。

 その体を、立丸はがばっと抱きしめた。

 

「ひゃん!?」

 

 可愛く悲鳴をあげるクークへ、

 

「なら、君は俺のものだよ? いいね?」

 

「は、はい……」

 

 クークは頬を染めて、うなずく。

 

 ――いよぉし!

 

 あっさりと進むラッキーイベント。

 思春期の欲望を爆発させ、それに歓声を上げるエロ男子。

 

「緊張しないで、俺も初めてだから……!」

 

 自慢にもならないことを言いつつ――

 立丸少年は、勢い任せで高貴な少女に覆いかぶさる。

 場の勢いというか。

 色んな意味で思考がバカになっていたのか。

 

 そして。

 まあ。

 

 なるようになったわけではある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在――

 

 

 

 ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!

 

 終わることのない連射。

 内部へと叩きこまれる破壊的な魔力の塊。

 

 ――ヤベェか……?

 

 状況を観察しながら、マコネは顔を歪めた。

 

 ――いやでも……。

 

 その時思い出したのは、カーシャの顔。

 異常な戦闘力を誇る、悪逆令嬢と言われた女。

 

 ――姐さんと、同じ修業をしたってんなら、あるいは――

 

 マコネがそう思った時、

 

「痛いな」

 

 マクニオが言った。

 その巨大な手が、マギドルの頭部をつかむ。

 攻撃された部位から、煙が上がった。

 

 しかし、

 

「今のは、痛かった。冗談抜きで痛かったぞ」

 

 メキメキ……

 メキリ……

 

 つかまれた頭部がきしみ、

 

<きゃあ……!?>

 

「クー!? この、デカブツ……!!」

 

 内部に響くクークの叫び、立丸はマギドルの腕を必死で動かす。

 

 ガッ!

 ガッ!

 ガッ!

 

 つかまれたままだが――

 重たい打撃を何度も何度もマクニオへ叩きつけた。

 

「今さらじゃあ、あるが……」

 

 マクニオは打撃を受けながらも、マギドルを離さない。

 そのまま、前へと進み始める。

 

「ここじゃ物が壊れる。外へ行こうぜ?」

 

 マギドルを押しやり、バシラ邸の外へと押しやっていった。

 

 そして。

 

 外へ出た直後、

 

 ドゴッ

 

<ぎゃ!?>

 

「うわあああ!?」

 

 マクニオはマギドルの胸部を蹴りつけた。

 砂煙をあげながら、赤い巨人はゴロゴロと転がっていく。

 

「まあ、これくらいのなら……けっこう出くわしたな」

 

 つぶやきながら、マクニオはマギドルへ近づいていった。

 

「……こんな隠しボスがいたとはな……! 大ピンチってやつか……?」

 

 立丸は苦痛に顔を歪めて、それでも笑う。

 肉食獣のような笑み。

 血が、額から流れる。

 

「だけど……こういうので勝ってこそ、勇者だぜ!!」

 

<タテマル様……>

 

「すまない、クー。もうちっと、一緒にふんばってくれ!」

 

<……はい!>

 

「ふうん。ガッツがあるんだな」

 

 マクニオは立ち上がってくるマギドルを見て、

 

「勇者の使う戦士。というか、勇者の装備する鎧だな。確かに伝説だ」

 

「てめえに、今からその伝説の一部になってもらうぜ! 勇者の、モンスター退治だ!!」

 

 ゴオオオオッッ!!

 

 立丸の叫び。

 マギドルの翼が輝き、全身から蒸気が噴き出していく。

 

 そのように見えた――

 少なくとも、その様子を見ている周囲からは。

 

 マギドルの腕から巨大な刃が伸び、光を噴き出していく。

 強大な魔力の奔流。

 

「手強いモンスターをぶっ倒して、伝説を作る!!!」

 

「……」

 

 マギドルから響いてくる立丸の声。

 それを聞いているのか。

 あるいは、いないのか。

 マクニオは拳を鳴らすような動作をしている。

 

「とっとと、くたばりやがれ!!!!」

 

 ギュオッ!!

 

 爆発するような魔力。

 それを推力として、マギドルが走る。

 いや、低空を飛んでいた。

 

 収束された魔力が輝き、光の刃が大上段から――

 

 

「それは断る」

 

 

 淡々とした言葉。

 マクニオはそれを言いながら、刃をつかんだ。

 ゆるやかに落ちるゴムボール。

 それをキャッチするような気軽さで。

 

 ベキリ

 パリン……

 

 マクニオはそのまま、光の刃を握りつぶした。

 砕けた破片が、魔力に戻って大気に消えていく。

 

 立丸が――

 クークや仲間と共に冒険を重ねてきた勇者。

 その。

 ありったけの魔力と気合を込めた必殺の一撃。

 

 しかし。

 それはマクニオにとってはその程度だったらしい。

 

「お前さんたちは、まあ多分大した冒険をしてきたんだろうが」

 

 若干同情するような声。

 マクニオはそんな声で言いながら、

 

「世の中、というか〝地獄〟には――」

 

 大きく禍々しい両手が、マギドルの頭部をつかんだ。

 

「それ以上にヤバいことがたくさんある」

 

 そして、

 

 ゴッ

 

 鈍く、残酷な響き。

 重たい頭突きが、マギドルを打った。

 

 ミシリ

 

 伝説の、赤い巨人の頭部へひびが入って砕けていき、

 

 ズン……

 

 6メートル近い巨体が、仰向けに倒れていった。

 

「が……あぁ…………」

 

 マギドルの内部。

 顔を真っ赤に染めた立丸は、白目をむいて動かなくなった。

 死んでは、いない。

 だが――

 

<タテマル様……! タテマル様……!! 勇者様!!!>

 

 クークの叫びだけが、虚しく響く。

 

 

 

 

 

 

 

「これは、喜ぶべきことなのか……」

 

 バシラは複雑な思いでその結果を見ていた。

 

 ヤオアムトのモンスターテイマー。

 それが操るモンスター。

 これの奮戦によって、最大の脅威は(たお)された。

 確かに。

 ひとまず自分たちは敗北はなくなったわけである。

 

 だが。

 

 ――他国の者によって、ワシロー王家に伝わる伝説が討たれた……。

 

 それも、赤子の手をひねるように。

 実にあっさりと。

 

 マギドルの凄まじい攻撃を真正面から受けて、

 

 ――あのモンスターはまるで動じておらん……。

 

 楽観的に考えれば、

 

 ――そのように、見せておるだけかもしれんが。

 

 そういった思考が極めて危険なのは、バシラもよく理解していた。

 

「ぬ?」

 

 しかし、男の思考はすぐに打ち切られた。

 

 突如。

 外で戦っている者たちが、血煙を上げて倒れ始める。

 それも、襲撃してきた賊徒ばかりが。

 

 ――これは、誰ぞが……。

 

 守りをかためる部下の誰か。

 バシラはそのように思ったが、

 

 グシャリ

 

 また、賊徒の1人が虫けらのように潰された。

 比喩ではない。

 文字通り、ほぼ原形をとどめずに砕けちって、

 

「なん……と……」

 

 バシラはうめき、思わず弓を取り落しそうになった。

 

 青い髪をした、軍服姿の乙女。

 ヤオアムトから、外交官の護衛――

 そのような名目で訪れた者。

 

 彼女は、まるで小枝でも振るうように黒い剣を走らせ、

 

 メギッ

 グチャッ……

 

 賊徒たちをただ殺戮していく。

 息を切らせず、表情も変えずに。

 まったく。

 何でもないことのように。

 

 ――何という怪物……。

 

 バシラの眼には――

 マギドルを倒したモンスター以上の怪物に見えた。

 いや。

 そうとしか思えない。

 

 あのモンスターは、異形の姿ながらどこか人間臭さを感じさせた。

 だが。

 カーシャという乙女には、それがまるで感じられない。

 少なくとも、戦っている現状では。

 あまりの情景に、

 

 数十人いた賊徒。

 気づけば、それは指で数えられる程度に減っていた。

 

 

 

 

 

「姐さん?」

 

 物陰から這い出してきたマコネは、カーシャに呼びかけた。

 

「来る意味は、あまりなかったかもね」

 

 マコネを振り返りながら、カーシャはカーラナーガを振るう。

 ビュッと、赤黒い血が周辺を飛び散った。

 

 と。

 

 いつの間にか持っていた小剣。

 おそらくは、乱戦のうちに誰かが落としたものだろうが。

 それを、無造作に投げた。

 

 ゾムッ

 

 刃は賊徒の1人へと飛ぶ。

 頭をまともに貫かれ、相手は声もなく絶命した。

 

「さて」

 

 カーシャは破壊された防壁の一部から、外へと出る。

 

「おっとと……」

 

 あわてて。

 転がるようについていくマコネ。

 

「姿にふさわしいご活躍だったようで」

 

 倒れたマギドルの前。

 その前に立っているマクニオへ、カーシャは声をかけた。

 

「真正面からそう言われると、照れるな?」

 

 マクニオの返事に軽く肩をすくめ、

 

「逃げるべきだったわね」

 

 カーシャは別の方向に向かって、冷たい声で言った。

 

 そこには、ガイストが新しい剣を手に立っている。

 

「本当に、おっしゃるとおりだね……」

 

 ガイストは、どこか諦めた顔で笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。