破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その60、戦う理由???

 

 

 

 

 

 

 

 

 大使館にて――

 周りは厳重な警備でガッシリと固めている。

 ワシローをはるかに超える水準の魔導士。

 それに装備と武力をプラスした騎士。

 まさしく。

 アリ一匹入る隙間はない。

 だが、それでも外交官たちはひたすら気をもんでいる。

 

 そんな中、

 

「向こうじゃ、だいぶ派手なことになってるようですねえ~」

 

 魔導タブレット。

 それに映るバシラ邸の様子を見ながら、美少女エルフはのんきに言った。

 

 ――リーダー、相変わらずすごい……。

 

 バッキーはカーシャの戦いを見ながら、ため息をつく。

 凄惨なグロ画像の連続だが、もう慣れ切ってしまった。

 

 ――しかし、ロボットまで出てくるなんて昔の男の子アニメみたい……。

 

「いやあ、しかしまあ難儀なことで……。財務大臣も今後大変ですよ、これは」

 

 まるで面白いものでも見るような感想。

 ユオンの不謹慎な言葉に、バッキーもドン引きする。

 

 しかし。

 ふと気になることも――

 

「でも、聞いた話だと大臣はそんなひどいヒトってわけじゃなさそうですね。汚職してるわけでもなさそうだし。あ、でもやたら娯楽を規制するってのは嫌だけど……」

 

「汚職に関しては、むしろ一番縁の遠いかたですね。娯楽に関しては、本人がクソ真面目なもんだから、建前というかお題目を本気で実践してるんでしょうね。そこが困りものでもありますが。そも、政事(まつりごと)なんてものは、白を黒と言いくるめながら、国をどうにかしていくもんなので」

 

 ユオンは画面内で、物見窓のバシラをクローズアップして言った。

 

「ツバキ・フルイ。あなたの故郷にはいませんでしたか? 個人としては善人でも、致命的に為政者に向かないってタイプのかたが」

 

「……ああ~~」

 

 ユオンの言葉に、バッキーはちょっと納得してしまう。

 そういう政治家は心当たりがないのでもない。

 

 ――ん? なんか、すっごいきれいな日本語発音?

 

 バッキーが、疑問に感じかけた時、

 

「とはいえ、このかたが亡き大公を追い詰めにかかっていたのも事実ですが」

 

「えーと。やっぱりその、政治的なアレで?」

 

「それしかないですよ。大公の抱えていた大望というか、構想? それが相いれなかったわけです。これさえなければ……」

 

 逆に、大公派になっていた可能性も、ゼロじゃないですねえ。

 

 そうユオンは笑った。

 

「はあ……。一体どんな? その大公もちゃんとしたヒトだったんですよね?」

 

「ちゃんとした――まあ、そうですね? で、その構想って言うのが、カンタンに言えば【みんな仲良く】ですかね? 互いにを尊重しあい、認めあい、協調する。それがなによりも大切だ、と」

 

「いや、普通に良いことじゃないですか」

 

「そう。少なくとも、同じ国内、国民同士。大きく広げて、同種族の間なら」

 

 ――ン?

 

 バッキーは一瞬よくわからなかったのだが、

 

「それって、もしかして人間の他に獣人とかヴァンパイアとか」

 

「はい。エルフなんかも含めて」

 

 諸々(もろもろ)の、知性種族がみな平等になって生きる。

 

 と、ユオンは指を立てて言った。

 

「ははあ……。それはまた、確かに理想ですね?」

 

「言葉だけならね」

 

 バッキーに対して、ユオンは皮肉な顔で笑った。

 

「ですが、同種族間だって揉め事が絶えないのに、そんなものがうまくいくもんですか。中には、互いに憎み合ってるパターンもよくあるんですよ。人間とエルフ、ヴァンパイアとプラーガ。他にも色々……」

 

「確かに……」

 

「おまけにそれぞれ文化や流儀、崇める神様も違う。むしろ、うまくいくほうがオカシイ、不自然です」

 

 ――前世というか、地球でも、そういう問題はあったもんなあ……

 

 ここだっておんなじか。

 

 バッキーは納得する反面、夢もロマンもないなと思った。

 

「特に、です。大公殿下はエルフと接触やお話し合いをたびたびしておられたようで。過去の怨恨は遠くに流して、これからはお互い仲良くやりましょうと。こんな感じで」

 

 ユオンは、明らかにバカにした顔。

 

「つまり、そのへんを財務大臣は受け入れなかったと」

 

「ええ。あのかたも、そのへんはわかっておられましてねえ?」

 

 

『あなたは、エルフを手助けするために国の資産を使えとおっしゃるか!? 何という愚かな……! ご自分の財産で行いくだされ、と言いたいが……。それすらも、利敵行為ですぞ!? あの傲慢な種族が本気で融和などするとお思いか!!』

 

 

「こんなんだったそうで」

 

「ありゃあ……」

 

「はぐれ者のエルフとして意見を申し上げれば……。相手のエルフは、うまく利用してやれとしか思ってませんよ。下手すると国を奪われる危険だってある。仮に本気だとしても間違いなく少数派。下手すりゃ個人レベル。同族が納得なんかするものですか。裏切り者扱いで殺されますね、ほぼ100%で」

 

 ユオンは指を振りながら冷笑した。

 

「……」

 

 バッキーは何とも言えない。

 

 ――正直、どっちもトップに立ったら困るヒトだよねえ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――バケモノ……。

 

 目の前にいる女を見て、女騎士は震えが止まらなかった。

 金髪に、(みどり)の瞳。

 凛々しさを伴った美貌。

 武術で鍛えこんだ肉体。

 物語の女騎士がそのまま現実になったような。

 

 だが。

 その顔は恐怖で引きつっている。

 止まらない震えで歯を鳴らしていた。

 

 名は、ティア・ブリッツ。

 

 ブリッツは、ワシローでも長く続く騎士の家柄。

 大公家――

 密かに旧王家と呼ぶ血統に代々仕えてきた。

 いつか、現王家から王冠をとり返す。

 仕える主家を玉座へ。

 それを密かに願い、そのために働いてきた。

 ティアも、例外ではない。

 

 国王を害した罪状から、死罪となった若き大公。

 そこに陰謀があったことは――

 王太子派と大公派、どちらもわかっていたこと。

 

 誰かが言った。

 

「こうなってしまっては、主家が再び玉座に戻ることはできまい」

 

 むしろ、その願いと目標があったために、

 

「このようになった……」

 

 とも言える。

 

 主家の無念を晴らすべく――

 野に潜み、計画を練り、そして決行した。

 

 しかし、現実はあまりにも残酷。

 

 ――勇者殿……。

 

 ティアは必死で、震える体を無理に動かして壁の外へ、

 

「っく……」

 

 倒れたマギドルの姿に、女騎士は涙を流す。

 

 そして。

 

 ジリジリと。

 ガイストはカーシャに追い詰められていた。

 

 ――せめて、助太刀を……。

 

「やめとくんだね」

 

 上から、声がかかる。

 ティアは不意を突かれて動きを止めた。

 見上げれば――

 マギドルのそばに立つモンスターが、ティアを見ていた。

 

「お前が行っても無駄死にするだけだ。死にたいのなら止めないが」

 

 だが。

 そんな会話をしている間に、

 

 ガギィン!

 

 金属の砕ける音。

 そして。

 ガイストの体が、転がりモンスター……マクニオの足元にぶつかる。

 

「まいったね……。ジィサンが見たら卒倒するかもな……」

 

 半分以上が砕け散った剣。

 その柄を握ったまま、ガイストは力なく笑った。

 

「まさか、ずっと下層にいた相手とぶつかるとは」

 

 あんた、運がなかったな?

 

 ガイストを見おろして、マクニオが言った。

 

「まったくだね……。加勢でもしてくれるかい?」

 

 ガイストは体を起こしながら、マクニオを見る。

 

「おいおい。成り行きとはいえ、お互い敵同士だぞ?」

 

「そりゃそうだ……」

 

 ガイストは苦笑しながら、立ち上がる。

 

「せっかくの腕前だけど、武器が悪かったわね」

 

 カーラナーガを手に、カーシャが歩み寄ってきた。

 

「そりゃ買いかぶりだ。むしろ、こいつはとんでもない名剣らしいんだがね……」

 

 破壊された剣を持ったまま、ガイストはカーシャを見る。

 

「……」

 

 カーシャは無言。

 ただ、ガイストーーいや、その後ろにあるマギドルを見ていた。

 そばに、金髪の女騎士が駆け寄っている。

 マクニオは知らん顔。

 むしろ、カーシャとガイストの戦いに興味があるようだ。

 

 マコネは抜け目なく戦場から消えている。

 と。

 

「ぎゃっ……」

 

「うわあ……!」

 

 壁の向こう。

 バシラ邸では断末魔の叫びが響いていた。

 

「おい! こっちゃ全員たたっ斬られたぜ? 残ってるのはそっちの2人だけだ!」

 

 壁の穴から顔をのぞかせ、マコネが叫んだ。

 

「……そういうことらしいわ」

 

 カーシャは、改めてガイストを見る。

 

「だな……」

 

 ガイストは笑った。

 どこか、すがすがしさを感じさせる笑み。

 

「さえない最期になるわね」

 

「なぁに、そんなモンなら地獄(むこう)でさんざん味わったさ」

 

「なるほど」

 

 皮肉を投げかけ、それに返ってきた答え。

 カーシャは納得し、わずかにうなずいた。

 

 ――本当に、さえないよなあ……。

 

 額から流れる血。

 それをぬぐう余裕もなく、ガイストは死を(おも)った。

 かすんだ視界。

 疲労の重なった肉体。

 

 その中で、ガイストはいつか――

 老魔法使いと話した会話を思い出す。

 

 

 ――。

 

 

「話を聞いた感じじゃあ……もう勝負はついちまってるんじゃないのか?」

 

「そうじゃの……」

 

「仮にあんたらが仇? を討ったとして。それでお家が再興するかね。それどころか、正真正銘の大逆人として死罪だ。それに何の値打ちがある?」

 

面子(めんつ)、誇り。色んな、厄介なモノが絡み合っておるのよ。少なくとも、国王陛下に牙をむく気はない、今となってはな」

 

 その返答に、ガイストは大きく嘆息した。

 

「どうせならよ、あのお嬢様と、勇者とかいうガキな。あいつらぁどっかに逃がして、血筋を残すってのが無難なところじゃないのか?」

 

「ああ」

 

「おいおい……。ああ、じゃなねえよ、ジィサン。あんたは老い先短い立場だから死なばもろともでもいいだろうよ。だが、一党には若いもんだっているじゃねえか。そいつらも道づれにするのか?」

 

「まったくその通りじゃよ。しかし、彼らはもはや老いぼれの小言なんぞで止まらぬ。せめて、仇敵たるバシラを討たんかぎりな。それは……」

 

「あのお嬢様も同じかい?」

 

「哀しいことにの」

 

「バカだねぇ……」

 

「そうじゃな。だが、わしにできるのは、同志ができる限り生き残れるようにするだけじゃ」

 

 決意と諦め。

 度し難いものがごった煮となった答え。

 

「お嬢様入れて、45人。俺と勇者のガキを入れても47人か? そんなもんで……」

 

 ガイストはなおも言いかけたが――

 

 結局、口をつぐんでしまった。

 冷静に見えて……。

 大公派の騎士たちは一種の狂騒状態なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ちなされええーーーーーーー!!」

 

 いきなりの声。

 それに、朦朧としていたガイストの思考は再起動した。

 

「あ、あなたは何をしておられるのか!? それに、そのような姿に……!!」

 

 ――ジィサン?

 

 その場の注意は、突如現れた老魔法使いに集中した。 

 

「何言ってんだ、ジィサン……?」

 

 老魔法使いの眼。そして、声。

 それは、異形のモンスターへ――

 マクニオへ向けられていた。

 

 

「マクニオ・ワイオク殿おおおお!!」

 

 老魔法使いの叫び。

 それに対しマクニオはわずかに首をかたむけ、頭を掻いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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