破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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今回の話……
一種のざまぁ系になるのかしらん?

※改稿しました


その61、マクニオ・ワイオク

 

 

 

 

 

 

「姿を消された……。そのように聞いたが、どうしてそのようなことに! ワイオク家の誇りを忘れられたか!?」

 

 叫ぶ老魔法使いに、

 

「ふうん。こりゃあ意外な展開だなあ」

 

 ポリポリ。

 そんな音がしそうな仕草で頭を掻く。

 

「あ、あなたのお父上は、ワイオク伯は善政をしかれ、領民に慕われたかたであったのに……。なぜ、あなたは!?」

 

「名君の子が、名君になるとは限らん。そもそも、俺は家の恥だったからな。あんたも醜聞は耳にしているだろ?」

 

「む……」

 

「そうだなあ? メイドに岡惚れして振られた。その噂をしていた他のメイドを八つ当たりで殴った。で、これに激怒したワイオク伯殿は、バカ息子を廃嫡。おまけに、世の迷惑にならんように幽閉した、と……」

 

 こんなところだろ、世間に出回ってる話は――

 

 マクニオは肩を揺すってせせら笑う。

 

「では、真実は違うと?」

 

「別に間違ってはいないよ。まあ大体はな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マクニオ・ワイオク。

 

 ワシローでも古く続いた貴族の家。

 派閥としては、大公派に属する。

 マクニオは、その嫡子として生まれた。

 

 家柄は良し。

 物質的には、何不自由ないものと言えた。

 

 しかし。

 

 マクニオの容姿は、決して褒められたものではなかった。

 また生来の吃音症であり、社交界でも物笑いの種。

 武術や馬術も、人並み以下。

 

 このようなマクニオには、まともな交友関係は皆無。

 まして。

 恋愛ごとは、絶望的だった。

 

 成長に従い、両親も彼を疎んじ始める。

 いつしか。

 嫡子の座もなくなりつつあった。

 

「もっとしっかりした子を、親戚から養子に迎えては?」

 

 このように進言する者。

 また、両親もそれに乗り気となっていた。

 

 こういった環境下で、ヒトがまっすぐ健全にすごすのは難しい。

 

 時々物語で語られる――

 

「姿は醜くとも、心の美しい主人公」

 

 そんなものは、虚構だとマクニオは思っていた。

 周辺から蔑まれ、友情も恋も得ることがない。

 これで天使や聖人みたいな心であるなら、

 

 ――それこそ、異常者だ。

 

 密かに持っていた持論である。

 

 両親や、親族。

 周辺の貴族たち。

 それらが、マクニオに軽侮の態度だったのは詳しく語るまでもない。

 が。

 侮蔑的な扱いは、そこにとどまらない。

 使用人たちも、明確に蔑まれるマクニオを嘲っていた。

 さすがに、面と向かって態度に表すことはない。

 しかし。

 その裏にある視線や感情は嫌でもわかってしまう。

 

 当然。

 

 怒りを爆発させることもあった。

 しかし、それで咎められたのはマクニオのほうで、

 

「身分を笠にきて、横暴なふるまいなどするものではない!」

 

 父親はマクニオに罰を与えた。

 

 鞭で打つ。

 暗い部屋に閉じ込める。

 食事を与えない。

 

 そんなマクニオに、唯一親切にしてくれる者がいた。

 

 イヌオ。

 

 ワイオク家に仕えるメイド。

 マクニオと年の近い、素朴ながら可愛らしい娘だった。

 

 他から得られない気づかい。

 優しさ。

 思いやり。

 

 これはマクニオにとってある意味劇薬だった。

 効きすぎた薬は、

 

「彼女を妻に迎えたい」

 

 と父親に申し出るという――

 色んな意味で無茶な行動をさせた。

 

 しかしながら。

 これがうまくはいかなかったわけで。

 

 

 イヌオはそれを断った。

 

「身分がちがいます」

 

 もっともらしい理由ではある。

 それも確かにあったのだろう。

 が。

 もっと根本的な部分では、イヌオには結婚を約束をした相手がいた。

 これもまた、ありきたりな話。

 

 父であるワイオク伯は怒り、

 

「権力ずくで若い娘をどうこうしようなどと、けしからぬ」

 

「恥を知れ」

 

「そのようなことを(うつつ)を抜かす暇があれば、学問や武術に励むべきではないか」

 

 大体、こういう説教をした。

 説教というより、実質は罵倒である。

 

 

 こんなことが、噂にならないわけもなく。

 

 傷心で病みかけていたマクニオは、

 

「まったく、あのボンクラ様は色気ばっかりあってしょうがないわ」

 

「いくら仕事でも、アレのそばにいるのは本当に嫌」

 

「イヌオちゃんは本当に可哀そうよね、あんなのに同情したばっかりに。嫌な目にあってさ」

 

「でも良かったじゃない、無事にやめられて。それに、お祝い金だってたくさん」

 

「あら、慰謝料ってやつじゃない? あんなのに言いよられたんだもの」

 

 口さがない、メイドたちの話を聞いてしまった。

 

 その後、マクニオは我を失う。

 怒りにまかせた、しかし、しょぼくれた暴走。

 メイドを近くにあった棒切れで殴りつけたわけだが――

 

 結果としてメイドは頭に傷を受けた。 

 だが。

 死んだわけではない。

 治療が早かったおかげでその後無事に治ったという。

 

 

 その蛮行にワイオク伯は怒り、

 

「お前のようなものは、永久に人前へ出ないでよろしい!」

 

 マクニオは日のささない地下牢に幽閉された。

 

 

 そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「といってもだ。外からわからん内情っていうものもあるさ」

 

「なんと情けないこと……」

 

「で、フーリィ(おう)。今さらそんなことを(のたま)って、何がどうなる?」

 

 大体あんたとちゃんと話したのは、今が初めてだぞ?

 

 興奮している老魔法使いの名前を言いながら――

 マクニオは呆れたような、困ったような声で返す。

 

「その姿は、闇の魔法を使われたのですな……」

 

 首を振りながら、老魔法使い・フーリィは進み出てきた。

 

「まあ、見ての通りだな」

 

 肩をすくめ、両腕を広げながら、マクニオは首を傾ける。

 

「魔導をそのようなことに使われるとは……」

 

「失敗といやあ失敗だったか? しかし、あれだ。コレだけが原因でもないが……。別に今さら意趣返しをしようと腹でもない。そっちからすると逆恨みだろうがね。どっちにしろ、ないんだから問題ないだろ?」

 

「ふざ……ける、な」

 

 暗い怒りに満ちた声。

 それを吐き出しながら、女騎士ティアが立っていた。

 

「ん?」

 

 マクニオが顔を向ける。

 

 女騎士の足もとには、少年と少女が倒れている。

 マギドルは粒子状になって消えていき――

 その赤い粒子は、少年の右腕でブレスレットの形に。

 

 ――ああやって、普段は携帯しているわけか。

 

 横で観察していたカーシャは、密かに感心した。

 

「クーク様を、お嬢様や勇者殿をこのような目にあわせ、何を白々しい……!」

 

「あー、そりゃあまあ、なんだ? 成り行きというか、巡り合わせというか」

 

 怒りを向けるティアに、マクニオは淡々としていた。

 日常会話でもしているような――

 

「結果的にそうなったんだから、仕方ないだろ? 敵対する理由はなかったが、別に味方する義理もない」

 

「貴様ァア……! 亡きお父上に、ワイオク伯に今の言葉を言えるか!?」

 

「言えるよ」

 

 マクニオは、あっさりと言った。

 

「ものの本で読んだが……。世の中には、親に粗略にされて育った者が、それでも親の愛情や称賛を得たいと無為な奉仕をする例もあるそうだが。それに比べるとずいぶん健全だと思わないかな?」

 

 とはいえ、親子と言えど結局は他人だし。

 親になったら一様に、賢者や大人物になれるわけもなし。

 

 マクニオは学問の講義でもするように語って、

 

「そこもまあ理解してるから、恨み言は言わない。かといって、恩返しとか孝行する気もない。本人はもう死んでるんなら、なおさらな」

 

「詭弁ばかりを、よく並べ立てるものだな……! 横恋慕で恥をさらし、あげく身勝手な八つ当たりで目下の者へ殴りかかる。それを咎められて、意趣返しだと!? どこまで腐っている!!」

 

 剣を構えるティアに、

 

「どう受け取るかは、そっちの勝手だがね。あと聞き忘れてたんだが、お前さん、誰だ?」

 

「!!!」

 

 ギョッとした後、ティアは激昂の表情となる。

 馬鹿にされたと思ったのだ。

 

「……いや。ああ、そうか。ブリッツ子爵家の」

 

 ウンウン、と。

 マクニオはうなずいた。

 

「………~~~!!!!」

 

 もはや。

 女騎士は何も言わなかった。

 ただ。

 剣を構えて、一直線に走る。

 純粋に相手を斬ることだけ。

 それしか、頭になかった。

 

 だが。

 

 ゴロン

 

「なっ……!?」

 

 途中。

 ティアはひっくり返り、転がっていった。

 

「あんたじゃあ無理だよ。お嬢様たちと、逃げたほうがいいぜ」

 

 いつの間にか。

 ティアの剣を奪ったガイストが、片膝を突きながら構えていた。

 逆手の剣を後ろに、背後で隠すような型。

 

「こいつは、痛いな」

 

 マクニオがため息をついて――

 右手のひらへささったモノを引き抜いた。

 黒いオーラで覆われた、半身が砕けた宝剣。

 

「ご同輩らしいが、疲れてる分そっちが不利だな?」

 

 傷を受けた手を握ったり、開いたり。

 獲物を狙う獣のような動作で、マクニオはガイストを見る。 

 

「ご謙遜だね。こっちが万全でも不利だったろうぜ」

 

 ガイストが笑う。

 手にした、ティアの剣が黒く染まっていく。

 

「聞いておりますれば、まるで、全てを悟ったかのような言い草ですな」

 

 ガイストの横で、老魔法使い・フーリィが並んだ。

 

「おいおい、ジィサン。っていうか、あんたの本名さっきので知ったぜ?……」

 

 困った顔のガイストを無視し、

 

 

「あの1件からすでに人の道を捨てられていたか……」

 

 

 フーリィは、嘆息と共に言った。

 

 ――なんだぁ……? まだ何かあるのかよ。いや……。

 

 女がらみか?

 

「ああ」

 

 マクニオは何かを思い出したように、少しだけ上を向いてから――

 

「あのメイドが原因だと? その根拠(エビデンス)は?」

 

「この期に及んで、そんな戯言(ざれごと)を……!」

 

 フーリィは叫び、杖を地面に突き刺した。

 

 瞬間。

 地割れのような光が地面に走る。

 そして、マクニオの足元へ、

 

「これは……」

 

 地面の光は、魔力の鎖となってマクニオを縛りあげた。

 

「マクニオ殿……。亡きワイオク伯に代わり、あなたを冥府へお送りしまする」

 

「まいったねえ」

 

 老魔法使いにマクニオは肩をすくめて、

 

 ――地獄は嫌というほど経験したんだがなあ。まあ、いいか。

 

「いやあ、すまん。ついからかってみた。あのメイドの1件な。アレが原因だってのはその通りだよ」

 

 言いながら、老魔法使いの魔法をたやすく引きちぎった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――馬鹿馬鹿しい……。

 

 つきあいきれない。

 カーシャはそんな気分で、茶番劇を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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