破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
そも、主人公が救いようないんだけど……
※改稿しました
バシラ邸で繰り広げられた騒動。
それを見ている途中で、
「…………」
ユオンは、バッキーに魔導タブレットを押しつけるようにして――
そのまま座り込んでしまった。
肩がプルプルと震えている。
一見泣いているように、後ろからは見えなくもない。
が。
――笑いこらえてる……。
そこまでウケるようなことなのか。
バッキーは疑問であったり、引いてしまったり。
「一体なにがどうなってンの……?」
あのモンスター……マクニオ。
彼がもと・人間で、貴族の出だった。
そして。
メイドさんに片思いをして。
ふられて。
それを噂してた相手に逆切れして。
怒った父親に幽閉された。
――しかも廃嫡って……。
その伯爵というのは、それほど公明正大だったのか。
息子であっても。
相手が使用人の平民であっても。
悪事は悪事と裁く。
そんな人物だったのか。
――……。あれ? でも、なんだろ?
違和感があった。
これこれこうだ、と具体的な言葉にはならない。
だが。
バッキーは、どうも納得しづらいものを感じていた。
と。
「お笑いですが……さほど珍しいことでもないですよ」
ユオンは起き上がりながら、バッキーの心を見透かすように言った。
笑いのために出てきた涙をふきながら。
「え?」
「慈善事業を大々的に行っていたり、篤志家で知られるかた。そういうのが家族にはムチャクチャやったり、とんでもない暴君だったり? 案外よくあるんですよ?」
ククク。
小さく笑いつつ、エルフは語る。
「え? どういうこと?」
「さて。まあ、ワイオク伯は善政はしかれてたんでしょうが、子育てには失敗されたようですねえ。自業自得かもしれませんが」
奥歯に物が挟まったような言い方。
そんなエルフの態度に、バッキーは、
――そういえば……?
差別や社会悪への反対運動で知られていた著名人。
その人物が、家庭内で凄まじいDVを行っていた。
こんな話をバッキーも聞いたことはある。
前世での、話ではあるが。
「他には、そうですねえ」
と、ユオンはようやく落ちついたのか、
「なまじ善行とか、徳や善、真義、そういうものを学んだり、実践している……と思っているかたは、自分が多少の悪を行っても許されると思うこともあるんですよ。いや、こんだけ〝正しいこと〟をしてるんだから、
偏見に満ちたユオンの意見。
とはいえ。
バッキーは、それを何とか自分の中で飲み込もうと――
あれやこれやと考えながら、
――ええと。けっこうがんばって運動したり、筋トレしたりしたから、次の日はちょっとくらいカロリーとりすぎてもいいだろ、みたいな? いや、ちがうのかな……? ちがうよね、たぶん……。
「はあ」
某貴族の恥部やら不始末やら。
意図せずにそれを聞く羽目になったカーシャは、ため息をつく。
――もういい。
心の中で、何かのスイッチが切り替わってしまった。
「後は、お前らで勝手にやるがいい」
カーシャは冷たく言い捨てる。
それから。
カーシャはそのまま背を向けた。
その足で、マコネをつかんで小脇に抱えて、
「え、ちょ……姐さ……」
あわてるマコネを無視して、カーシャはつい、と上を見上げる。
その先には、バシラ・カーサの顔。
「ぬぅ……」
カーシャの視線。
それを意識した瞬間、バシラは弾かれたように後ずさっていた。
いや。
飛びのいた、というほうが的確。
――なんという殺気……。
その姿や動きを遠目から見てさえ、戦慄した。
明確な恐怖と感じる相手が自分へと意識を向ける。
――これほど、恐ろしいものだったとは……。
バシラは、ゾッと汗を流した。
まるで滝のような量。
大臣職に抜擢されるまで、所領を治めるべく日々働いていた。
その中では、文字通り修羅場を体験したこともある。
一度や二度ではなかった。
他国からの流民や、素性のしれぬ連中。
これらが野盗となることは珍しくない。
そういった者たちの討伐に、自ら加わることもよくあった。
自分の手で、斬ったことも。
が。
目にしている乙女の前では全てが無。
そんなものは、何の意味もなさなかった。
バシラの状態を観察してから、カーシャが軽く息を吐く。
そして。
トン、と跳躍。
ひと飛びで、物見窓から中へと入った。
バシラは声もない。
「――バシラ・カーサ財務大臣殿」
カーシャは淡々とした、事務的な声で言った。
「賊徒の襲撃と見たので加勢したけれど、どうやら内政問題である様子。なので、私たちはこれで手を引きましょう。後は、ご
「え? いや、いいのかい?」
小声でたずねるマコネに、
「本来、私たちの仕事は外交官殿の護衛。これ以上首を突っ込むのは内政干渉になりかねない。おわかり?」
では。
カーシャは、静かに別れの礼を取って。
脇にマコネを抱えたままだが。
その後。
窓から出ていった。
「……!」
バシラは急いで窓から外を見る。
だが。
どこにもカーシャの姿はない。
「勝手にやれ、と言われてもな」
俺は一応、テイムされたモンスターなんだが――
マクニオはつぶやきつつ、
「まあ、そういうことなら……」
――これ以上は無意味だな。
体のサイズを元に戻して、去ることに決めた。
――さて、この場合はあのチビ助、あいつのところに行くのが筋か。それとも、どこか別の場所に行くのがいいか……。
迷っているうちに、マクニオはふと顔を上げて、
「ん?」
物見窓からこちらを見ているバシラ・カーサの顔。
――ああ、そういえば。このオッサンだったか。
マクニオは、クルリとフーリィたちを振り返った。
「関係ない、ということで手を引いてもいいが。放置すると、またさっきの……マギドル、伝説の戦士だったか? アレを引っ張り出して大暴れするだろうな。そうなると……」
あんたらは見事本懐をとげられはするわけだ。
大して意味のない行為だとしてもな。
マクニオは手を広げてそう言いながら、
「面白くない、というほどじゃないが。あまりしっくりとこないのでね。俺は、〝
「な、なんですと……」
顔色を変える老魔法使いに、
「あのなぁ、ジィサン。しっかりしろ、変なクスリでもやってるのか? あんなもんベラベラ話したところでこっち側につくわけねえだろ? 恨みつらみが残ってたら、火に油を注ぐようなもんだぞ」
ガイストは肩をつかんで、手かげんをしつつ揺すった。
「大公家の屋敷は、焼き払われておったよ……」
膝を崩して、フーリィはそんなことを言い出した。
「そういやあ、さっき……」
――わしには、確かめねばならんことがある。
フーリィはそう言ってた。
宝剣を渡された後、一時別れたのだが、
――ンなことしてたのかよ。こんな時に……。
「知ってはおった。知ってはおったが……実物を目の当たりのするのは、あまりにも、あまりにも……」
大公家の屋敷。
それは、大公派――現在そう呼ばれる旧王家の支持者たちにとって聖地とも言えた。
もともとは王家の別荘であったものに、増築・改築をしたもの。
いつか、主家を王位に戻す。
それを誓い合った場所。
老魔法使い・フーリィにとっても……。
思い出とかそういう言葉では言い尽くせぬ場所だった。
「あんたなぁ、ショックなのはわかるが、もうちょっと状況考えろ!」
ガイストは強引に老魔法使いを引っ張り上げ、
「目の前に、とんでもないのがいるんだぞ! 時と場合を考えて
興奮のためか、ムチャクチャなことを叫んだ。
「前から、エキセントリックなとこがあるじい様とは思っていたが、興奮するとワケわからなくなるんだな?」
対応に困る。
目の前の騒動……いや、醜態か、
そんな声音で、マクニオは言った。
「っとに……」
ガイストはマクニオを見ながら、ゆっくりと前に出た。
「なあ、殺られる前にひとつ聞きたいんだが」
「時間稼ぎか?」
「まあ、そうだ」
「正直に言うのかよ!?」
少しだけ、驚いた声のマクニオ。
「あんた、向こう側につくってことだが、あの大臣さんに恩でもあるのかい?」
「恩というほどものは、ないよ」
それは――
マクニオが顔を出した社交界でのこと。
あれこれの理由から、そういった場所には縁遠かった。
が。
どうしても、顔を出さざるを得ないこともある。
いざ出ていけば。
表か裏の違いはあっても、物笑いになるのは毎度のことだったが――
ある場所でのこと。
そこは色んな派閥が出席して王宮での舞踏会だった。
案の定、というのか。
マクニオは嘲笑される羽目になったが、
「男子たる者が何を小娘のごとき真似をしておるか!」
離れた場所からマクニオを見て笑いあっている連中。
これに、厳しい叱責を与えた者がいた。
バシラ・カーサ。
当時まだ大臣職について間もなく――
が。
その時からすでに、煙たがられている人物でもあった。
「コソコソとつまらぬことを、スズメのごとくしゃべくって、女々しいにもほどがある!!」
ある意味。
まったく空気の読めない言動ではあった。
こういうところが、煙たがられる要因でもあったろう。
――とはいえ。あちらにとっては俺ごとき軟弱な輩も、説教の対象ではあったろうがね。というか、あの時? 俺がどこの誰か知らなかったと思うぞ。顔をあわせたのも初めてだったしな。だが、それはそれとして……。
多少なりとも、胸がすく気持ちにはなったな。
マクニオは思い返しながら、密かに思った。
――あの時の若造……。
バシラも、マクニオのことを思い出していた。
実際、マクニオの推測は正しかった。
時間と機会があれば、説教を垂れていただろう。
また。
バシラは、マクニオの顔は知らなかった。
ワイオク家に、引きこもりの馬鹿者がいる。
そんな話を小耳にはさんだことがある程度だ。
当時も日々仕事で忙殺されていたので、自分でも完全に忘れていた。
「飴玉いっこもらった程度のことだが、そちらからは飴玉すらもらったことがないんでね」
「じゃあ、しょうがねえよなあ……」
ガイストは力の抜けた笑みで、剣を構え直す。
――どうやら、ジィサン……。察するところ、あんたら、色々おろそかになってたようだぜ。特に足元とかな。
「で、やるのかね?」
マクニオは、わずかに身をかがめた。
「ああ」
「義理堅いな?」
「言ったかどうかも忘れたが……抜けるには深入りしすぎてね」
「まあ、お互いにくだらん身の上だ。死ぬのも生きるのも……」
殺すのも。
自然な流れかもしれんなあ。
パキパキ
と。
マクニオは戦闘態勢に入っていく。
「死んでもらおうか」
人語を話す魔獣は言った。
「そいつは、こっちこそお願いしたいね」
ガイストは殺気を感じながら、残る気力でオーラを限界まで集中し始めた。
いつも感想ありがとうございます!
これのおかげで書こうって気力がわいております!
感謝!
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人