破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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とりあえず、これでワシロー編は終わり
色々反省点もありますけど
面白がってくださったら嬉しいです





その64、「プロレスやれよ」

 

 

 

 

 

 

 

「なん、だと……」

 

 最大出力の攻撃。

 それを何度受けても、マクニオはこたえていない。

 この事実に、立丸は何かが冷たく、固まっていくような。

 不気味な感触をおぼえていた。

 

「そんな……! まさか……。効いてないのか!?」

 

 ティアが顔を蒼白にする。

 

「まさか……!?」

 

 老魔法使いも、自分の目を疑っていた。

 

「そのご同輩とやる前なら、わからんがね」

 

「……」

 

 マクニオの視線を受け、ガイストは額から汗を流す。

 

「あれで活を入れられたよ。しばらくのんびりしてたせいで、平和ボケしてたな」

 

「そいつは、失敗だったな……」

 

「さてね」

 

 マクニオは肩を小さく揺すった。

 それから自分の顎をつかんで、首を動かす。

 

 ガッ……

 

「ぬぉ……っ」

 

 いきなり。

 マクニオの大きな手が、ガイストの顔面をつかんだ。

 

「見たところ、こっちに来る前にもかなり消耗したな。相手は、ヤオアムトの美人さんか?」

 

「……! ………!」

 

 しゃべることも、逃げることもできないガイスト。

 それに、マクニオは観察するような目つきで言った。

 

「ガイスト!」

 

 ティアが叫んだ瞬間、

 

 ゴウ

 

 黒い火炎。

 それが、女騎士ティアと老魔法使いフーリィを焼き尽くす。

 一瞬だった。

 痛みどころか、何が起こったかも理解できなかっただろう。

 

「これで、とりあえず大公派は全滅か。まあ、協力者もあちこちいたんだろうが」

 

 火炎を吐いた口で、マクニオは平静な声。

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

 そこへ、立丸が走った。

 さっき以上の――

 いや持てる魔力を、気力を、全て注ぎ込んだ一撃。

 その赤い拳と腕。

 

 ガシ

 

「お前は、確かに強い。愛の力っても本当なんだろう。勇者と呼ぶにふさわしい。認めるよ」

 

 言いながら、マクニオは立丸の拳を受け止めていた。

 片手で。

 しかし。

 ジュウジュウと、つかんで防いだ手、腕が焼けていく。

 あちこちに、ひびが走った。

 

「だが、俺のほうが強いんだよ。残念ながらな」

 

 マクニオは同情するように言って、

 

 バゴムッ!!

 

 呆然としている立丸を、地面に叩きつけた。

 地面が裂けて、土が吹き飛ぶ。

 少年の体は、土の中へめり込んでいた。

 

 すると。

 弱々しい光の粒子が、立丸の体。

 正確には、装着された装甲部分。

 それからあふれ出していく。

 

 横に、死人のような顔でボロボロになった少女が横たわって――

 

 ズン……

 

 灰色となった赤い巨人が、うつ伏せに倒れる。

 巨人はゆっくりと崩れ、灰となっていった。

 

 すなわち――

 

 立丸は。

 勇者は全ての武器を失った。

 

 

「う……ぐ…………」

 

 

 それでも。

 

 立丸は、血まみれになりながら這いあがってくる。

 

「……お前も、災難だったな」

 

 マクニオは立丸にそう言った。

 同時に、両手でガイストの体をつかんで、

 

 メキ、メキメキ……

 ベキン……

 ブチリ……

 

 その肉体を、丁寧に破壊していく。

 子供が虫を握りつぶすように。

 

「~~~~………!!」

 

 そして、ガイストは放り出された。

 

「あんたが一番厄介なんでな。しばらく動けなくなってもらう」

 

 

「決着か……」

 

 バシラは、自分でも整理のできない感情で息を吐いた。

 奇妙な気分。

 ただ。

 全身の力が抜けきったような疲労感がある。

 

 

 遠巻きに取り囲んでいたバシラ邸の騎士たち。

 彼らは、ゆっくりと、慎重に距離を縮めていく。

 

「ふう」

 

 マクニオは、頭を掻きながら立丸たちから離れていく。

 

「まあ、後はそちらの仕事だよ。じゃあな」

 

 手を振りながら、マクニオは去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 カーシャは、すでに遠くなったバシラ邸のほうを振り返った。

 光。

 強い光が、夜空を突き刺すように伸びている。

 

「どうなってんだろうな?」

 

 抱えられたまま、マコネが言った。

 

「さあね。なにが、どうなっていようと――」

 

 私たちには、もう関係ない。

 

 そう言って、カーシャは再び走り出す。

 

 妙な気分だった。

 あのモンスター。

 

 ――マクニオ・ワイオク。

 

 あの男が、過去どんな人間だったのか。

 それはわずかに聞いた話から、推測するしかない。

 ただ。

 奇妙な親近感。

 あるいは、わずかな同族嫌悪のようなもの。

 

 ――似た者同士だったのかもしれない。

 

 そして。

 過去がすでに虚無に近くなっていることも。

 呪縛から解放されているとも、言えるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終幕はさえなかっただわさ」

 

「――」

 

 光のない夜道に響く声。

 人家のない場所を目指していたマクニオは、振り返った。

 

 懐かしい。

 ただ。

 あまり歓迎したくない臭い。

 

 カーシャやガイスト。

 あの同輩たちと同じような臭い。

 

 ――しかし、気配は違うか?

 

 闇に、白い猫が出てくる。

 後ろ足でたち、カバンを肩にかけ、キセルを(くゆ)らせながら。

 

「何だ、お前は」

 

「地獄からの使者――といえば納得する?」

 

 白い雌猫は煙をふうと吐き出す。

 

「……死神が、猫に化けるという話は聞いたことがあったな」

 

「そうだわさ。正確にはちょいとちがうけれども」

 

「で、俺をもう一度地獄送りにするのか?」

 

「いンや」

 

 首を振って、白猫はトントンと後ろ足で地面を叩いた。

 

 すると。

 地面に、闇より黒い穴が広がった。

 そこから、傷だらけの人間が浮き上がってくる。

 

 ガイスト。

 

「こいつは……」

 

「彼は私の担当なんで。こんなんで死んでもらったら困るんだわさ」

 

「そりゃ大変だな」

 

「別に義務じゃないけども? あくまで個人的趣味? だわさ」

 

「あんたら、みんなそんな感じなのか?」

 

「個人で差があるだわさ」

 

「そうかい。で、改めて聞くけど、何か用事か?」

 

 マクニオは、白猫をジロジロ見ながら言った。

 胡散臭い。

 油断ならない。

 そういう気配が非常に濃厚だった。

 

「あると言えばあり、ないと言えばない」

 

「ほう」

 

「あのなあ、お前さん――」

 

 と、白猫はキセルをマクニオに突きつけて、

 

「もうちょっと芝居っ気ってもんがないか?」

 

「は?」

 

 意味の分からない質問。

 マクニオは当惑するしかない。

 

「盛り上がりというか、空気を読むというか。わからん?」

 

「わからんよ」

 

「まいっただわさ……」

 

 白猫はガッカリしたようにタバコを吸いながら、

 

 何が愛だ!

 そんな嘘っぱちのまやかしで、闇の力を得た俺が(たお)せるか!

 

「ぐらい言えだわさ」

 

「いや、ちょっと待てよ」

 

 変なことを言い出す白猫。

 これにマクニオは手を軽く突きだして、

 

「俺は別に愛も、愛の力も否定はしてないぞ。しても意味がないしな」

 

「お前みたいなキャラは、愛を否定してラブラブのリア充にやられるのがセオリーだわさ」

 

 マクニオは抗弁。

 だが――

 白猫はふふんと、鼻で笑った。

 

「それじゃ安い田舎芝居だ」

 

「だから、プロレスをしろと。見てる側はつまんねーだわさ」

 

「ぷろれすって何だよ」

 

 マクニオの疑問。

 これに白猫はしまった、という仕草で、

 

「あー、そっか。つい異世界の言葉使っちまったわさ」

 

 それはそれ、これはこれ。

 

 と、仕切り直す感じで、

 

「まあ~、なんだ? 勇者の渾身の一撃を喰らって……」

 

 

 嗚呼(ああ)

 これが。

 この暖かさ、激しさ、美しさ。

 これが愛なのか。

 愛の力なのか……。

 私も、これが欲しかった……。

 しかし、もう……。

 

 

「こういう感じの台詞を言いながら、死ぬ真似くらいするだわさ」

 

「だわさって、お前」

 

 マクニオはあきれ果てて、

 

「そんなことしてどうなるんだ」

 

「うん。こう良い感じで終わった的な――雰囲気が流れた後に……」

 

 

 いや。

 すまんかった。

 あんまり一生懸命なもんだから、つい意地悪をしたくなった。

 悪かったな。

 じゃあ、そういうことで。

 

「それから、一気にとどめを刺すと。どうだわさ、これ」

 

「悪趣味なこと考えるな。お前、そんなのが好みなのか? 性格歪んでるなあ」

 

「お前だって、元々こういう性格だったんだろ? 資料で読んだわさ」

 

 白猫はきれいな尾を動かしながら、マクニオを見る。

 

「情報の共有までしてるのか」

 

「ま、多少は。そもそも、お前は人間だった頃、ほとんど引きこもりみたいな生活だったわさ。本ばかり読んでたから、どうでもいいことばかり頭に入ってたんだわさ?」

 

 白猫は不服そうに、嫌味たらしく言った。

 

「お前ら、そんなことをさせるために俺たちを地獄へ送ってるのかよ」

 

「そんなわけあるか。仕事だわさ、仕事」

 

 マクニオの質問。

 これに白猫は首を振る。

 

「たまにはそれくらいのストレス解消がないとやってられんのだわさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「財務大臣は辞職されるようですね」

 

 帰国の途中――

 魔導飛行船の席。

 

 タブレットをいじりながら、ユオンは言った。

 

「政治に今いちむいてない硬骨の士。ピントのずれた理想主義者だった大公殿下……の残党。これらがいなくなったのは、結果的に良かったのかもしれませんねえ。長い目で見れば」

 

「ずいぶんと、都合よく運んだものね」

 

 ジロリとカーシャはユオンを見た。

 

「だけどよ、姐さんやあのマクニオがいなかったら大臣さんは死んでたんじゃねえの?」

 

 マコネは顔をあげて言った。

 

「生き死には関係ないと思いますよ。要は退陣して、政事(まつりごと)から離れてくれればいいので」

 

「稚拙なものだけど……誰かさんの描いた()はうまくいったわけかしら――」

 

「さあ?」

 

 カーシャの冷たい目。

 受けるユオンはニコニコと愛想良く笑っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、こういうわけで。ワシローは落ちつくだろうよ」

 

「うん」

 

「だがよ。揉めてたほうが、こっちとしては都合が良いと思うがね?」

 

「そうでもないよ。近場でゴタゴタがあっては迷惑だ。首を突っ込みたがるのが、うちにもいるからね」

 

「ああ、そうだったな」

 

「下手に関わってごらん? 後で統治やら何やらで面倒だし、無駄に金も使うし、人死にも出す。ただでさえ、うちは広いからね。足元がおろそかになりかねない」

 

「何十年付き合っても、面倒なのは変わらないんだな」

 

「そこはずっと大昔から変わらんだろうね、きっと」

 

「あのパーティーの資金を調達するのは面倒だったぜ。だいぶ時間がかかった」

 

「うん。さすがに国庫とか私財で動かすのは難しかったから。助かったよ」

 

「しかし、気の弱いガキが、いっぱしの王様ぶるようになったもんだ」

 

「うん。君との付き合いも長いなあ。出会った時、私は10歳にもなってなかったなあ」

 

 

 ヤオアムト国王は、そう言って――

 

 ウェーブの銀髪をした、傷だらけの顔を持つエルフの女。

 ゴーギャ・キナに言った。

 

 

「途中から、あのババァがやってくるのは意外だったがな」

 

 ゴーギャは鼻を鳴らして、

 

「ま、お前が寿命でくたばるまでは召し使いを続けてやるよ、ご主人様」

 

「君も大変だなあ。エルフヘイムの、通過儀礼というのは」

 

「そういうルールだからな。クリアしなきゃ一人前とは認められねえ。模造品(・・・)連中と違ってな」

 

 儀礼を終えた後も、そのまんまこっちでフラフラしてるのもいるがな。

 

「あのクソババァが良い例だ」

 

 ゴーギャは自分の祖母――

 ユオン・キナの顔を思い出しながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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