破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その64・5、もとチーフウォール家メイドの災難

 

 

 

 

 

 

 ――はあ。これからどうしよ……。

 

 空腹と疲労でフラフラしながら、ヤコーは森の中を歩いていた。

 あてはない。

 というか。

 偶然……天災に巻き込まれたようなもので。

 

 ――なんでこんな目に……。

 

 ヤコー・ビマ。

 実年齢はわからない。

 とりあえず18歳ということにしていた。

 

 元は、**国からの流民。

 親とはヤオアムトに来る途中ではぐれた。

 今も消息はわからない。

 

 しばらくは冒険者ギルドで下働きをしていたが、

 

「下手に冒険者やるよりはマシだろう」

 

 ということで、メイドの仕事を斡旋してもらった。

 勤め先は貴族の家。

 

 ただ、

 

 ――かなりハードだった……。

 

 女社会特有のアレコレに加えて、主人が面倒くさい。

 家の当主は、ほぼ屋敷には帰らなかった。

 代わりに、そこの一人娘が女王のごとく振るまっており、

 

 ――女王様というか、アレは独裁者だったな……。

 

 童話に出てくる意地悪な継母みたいなキャラだった。

 年齢は、未婚の乙女だったが。

 絶世とも言える美貌を、内面で全て帳消し――

 それどころか、マイナスにしていた。

 

 で。

 

 従妹にあたる少女を、最下級の使用人のごとく扱っており、

 

 ――ものすごかったな、あれも……。もはや奴隷だよ。

 

 深い事情はよくわからないが、家とか親で色々確執があったらしい。

 従妹を見る彼女の瞳。

 そこには、底暗い憎しみと嫉妬が燃えていた。

 

 ――けどまあ、天罰テキメンというか……。

 

 当主の不正とか何とかで、身分を剥奪されて――

 罪人として、追放されてしまった。

 

 今頃は辺境の街に輸送されている最中だろうか。

 

 結果として、ヤコーは失業してしまったわけで。

 

 令嬢が罪人として拘束された。

 その報せが来た後、屋敷は大混乱。

 

 どさくさに紛れて、お金やら骨董やらをちょろまかす輩が続出。

 まあ。

 それだけ人望がなかったということだ。

 

 ヤコーも、積極的に火事場泥棒はしなかったが、

 

 ――やめときゃ良かった……。

 

 混乱の中、どこからか放り出されてきた小さな箱。

 見た感じ宝石箱みたいだったので、

 

 ――つい、持ってきちゃったんだよなあ……。あ~あ……。

 

 中身は、銀で造られた……ように見える羽根。

 装飾品っぽい。

 だが、どこにどうやってつけるものか、わからない。

 

 ――なんだろ、これ?

 

 不思議に思いながら、触っていると――

 

 ゆっくりと。

 銀の羽根が輝き出して、

 

「えっ?」

 

 気づくと、宙にひっぱり上げられた。

 そして。

 強い力で吹き飛ばされていく。

 多分、こんな感じだったと思う。

 

 

 後はよくわからない。

 

 

 

 

 気づけば――

 どこかに、ふわりと着地していた。

 見たこともない、山の中。

 

 かくして。

 現在に至る。

 

「悪い夢じゃないよね、これ……」

 

 ブツブツ言いながら歩いているうちに、

 

 コツン

 

 と、足に硬いものが当たる。

 見ると、草むらの中に穴のようなモノ。

 石で囲われた、何かの出入り口?

 どうやら、地下に通じているらしい。

 

 ――ダンジョン?

 

 色んな所で、聞いたことがあった。

 

 正体不明の地下迷宮。

 モンスターが棲み、宝物がある。

 時々、ランダムであちこちに発生する謎の場所。

 

 ――でも?

 

 話に聞いたダンジョン。

 それは様々な形状の入り口が、地上に出現しているという。

 だが。

 これは、そうではなさそうだ。

 

 ただ。

 よく見れば、周りは草が踏まれたり、刈られたり。

 誰かが入った形跡がある。

 

 さらには、下のほうに灯りが見えた。

 

 人間。

 あるいは、知性種族がいるらしい。

 

「…………」

 

 考えた末、ヤコーがそこを降りていく。

 

 ――どっちにしたって、こんな森の中じゃいつ獣やモンスターに襲われるかわかったもんじゃない。

 

 恐る恐る降りていくうちに、

 

 灯りはいよいよハッキリしてくる。

 ついには。

 まるで日の下みたいな明るさに。

 

 どうやら、何かの建物。

 ひどく古い。

 大昔の遺跡らしかった。

 

 そして。

 

 遺跡の中に、誰かが座り込んでいた。

 何かを探しているように見える。

 

「誰だい?」

 

 男の声。

 先客は振り返りもせずに言った。

 声はひどく落ちついている。

 

「あ、あの……」

 

「なんだ、あんた?」

 

 先客は、不審そうな顔でヤコーの顔を見てくる。

 

 ――エルフ?

 

 いかにも、エルフらしい美形。

 ややつり目で、外見は青年と少年の中間くらい。

 何となく、親しみやすい雰囲気。

 

「メイドの格好で、何でこんなとこウロついてたんだよ」

 

 もっともな質問。

 

 態度からして、

 

 ――はぐれエルフ……。

 

 ヤコーはそう判断した。

 様々な理由で、エルフ社会と関わりなく生きているタイプ。

 他の種族、当然人間とも様々な交流があるそうだ。

 王宮にすら、魔導士として仕えるエルフがいるという。

 

「え~と……」

 

 実は、コレコレシカジカ。

 ヤコーはわかる範囲のことを説明した。

 

「ああ、そういう……」

 

 エルフは納得したようで、

 

「渡り鳥の羽根か」

 

「え? わたり……?」

 

「遠くへ一瞬で移動するための魔道具だよ。転送門と違って、間をつなぐもんがいらない。それを不用意にいじって、ここに跳ばされたんだな」

 

「えええええ……。じゃ、あの、ここは……」

 

「**だよ」

 

「どこ、それ……」

 

「わからんか。無理もないがね……」

 

 エルフは面倒くさそうに腰を上げて、

 

「いいか。これがこの大陸、つまりジャンブーだ」

 

 壁に指を指す。

 すると。

 台形の大陸地図が映された。

 

「死神山脈が東から西まで、大陸を真ん中あたりから半分にしてる。で」

 

 ヤオアムトがここ。

 

 言いながら、半分にされた大陸の下側。

 西北の端あたりを示す。

 

「で、今いる場所がこのあたりだ」

 

 次に、大陸の一番南、その少し真ん中あたりを示した。

 

「地図で見ると小さく思えるが、ジャンブーの面積は6000万平方キロメートル近くある。とにかく、クソでかいってことだ。要するにお前さんはそんだけ遠くにきちまったんだよ」

 

「そ、そんな……」

 

 あまりの現実に、ヤコーはヘナヘナと座り込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから。

 しばらくして。

 

 ヤコーはエルフの背中を黙って見ていた。

 

 金髪のエルフは、

 

「ゴトクだ。猫のゴトクとも呼ばれるがね」

 

 そう名乗った。

 

 ヤコーが空腹から腹を鳴らしてしまうと、

 

「やれやれ」

 

 ため息をつきながらも、水と食事をくれた。

 そして、フード付きのマントも。

 

 良く見れば、荷物の周辺に3匹の猫。

 どうやら、ゴトクの使い魔らしい。

 

 ――ああ、そこから……。

 

 〝猫のゴトク〟と呼ばれているのか。

 ヤコーは納得する。

 

「あのう、そういえば何をしてるんです、こんなところで」

 

「宝探し……みたいなもんかね」

 

「みたいな?」

 

「あんまり当てにもならんってことさ」

 

「はあ……。それで、ここって」

 

「リエンドの遺跡だな。おおかた、魔法の研究施設跡ってところだ」

 

「それって大昔の?」

 

「ああ。といっても、神話やおとぎ話に残ってるだけだがな。1万年くらい前さ」

 

「うひゃあ……」

 

 驚くヤコーに構わず、

 

「ふうん。やっぱり先客がいるな」

 

 苔だらけのものを調べながら、ゴトクは立ち上がった。

 それから、壁の一部を触っていたが、

 

 ガコン

 

 と。

 

 床に魔法陣らしきものが浮かび上がる。

 

「俺は先に進むが、あんたはどうする? 別れて時間を過ごすも、ついてくるのも勝手だぜ」

 

 ゴトクは荷物を背負い、使い魔と共に魔法陣の上に。

 

「いや、あの、ちょっと待って!」

 

 淡々と言うゴトクを、ヤコーはあわてて追いかけた。

 

 そして。

 魔法陣はゆっくりと輝きを増して、

 

「ひゃあっ」

 

 ヤコーは思わず奇声を発した。

 

 地下に、どんどん沈んでいく感覚。

 気づくと――

 奇妙な場所に到着していた。

 

「おやま~」

 

 のんきそう声。

 長い亜麻色の髪をした、美しい少女がこちらを向いていた。

 どうやら、何かの装置? を触っていた途中らしい。

 長い耳と碧の瞳。

 妙な服装だった。

 白い薄手の外衣をはおっており、下はパンツスタイル。

 

 ――ま、またエルフ!?

 

「こんなところで、同族に会うなんて珍しいわ~~」

 

 おっとりとして――

 というより。

 どこか間延びしたしゃべりかた。

 

 だが。

 ヤコーはすぐに、それどころではなくなる。

 

「なにこれ……」

 

 見たこともない、どうやら魔導技術を用いた施設らしい。

 しかし、そこにあるものは――

 

 透明なガラス瓶みたいな容器。

 その中に、ヒト型の、

 

「し、死体……?」

 

「ええ~~、もうずっと昔に死んじゃってるわね~。でも、まだ設備が動いてるから保存されてるんだわ~~」

 

 エルフの少女は、何でもないことのように言う。

 

「ここは、模造品が造られた施設の1つみたいね~~。同じものをよそで見たわ~」

 

「もぞうひん……?」

 

「う~~ん。エルフをモデルにして~、人間をベースに魔力と寿命に秀でた種族を作ったのね~~」

 

「はい?」

 

「つまり~~、この大陸で現在エルフと呼ばれて、自分たちでもそう認識しているエルフの~~~」

 

 原型、というか祖先にあたる種族ね~~。

 

 と、その【エルフ】は言った。

 

「いや、あの?」

 

 思わず、ゴトクを振り返ると――

 

 あ~あ……。

 

 そんな顔つきで、頭を掻いている。

 特にショックを受けた様子もない。

 

 ハッと、ヤコーはある記憶を思い出した。

 

 メイドとして働き始めた当初のこと。

 家の支配者たる令嬢はヒステリックで厄介だったが――

 反面。

 使用人については、極めて無関心な部分もあった。

 

 なので。

 使用人たちは、屋敷内で捨て置かれた本を好きに読んだりできた。

 といっても――

 大して価値のないものばかりが大半だったけれど。

 

 流民だったヤコーはろくに読み書きができなかった。

 なので、本など読んだことはない。

 

 だが、ギルドで最低限のことを教えてもらったので、

 

 ――どんなもんだろ。

 

 と、読みやすい簡素なものや、子供向けのもの。

 それらを休みや寝る前に読んでいた。

 

 いくつか読んだ本のうち。

 子供向けだが、古い神話など記したもの。

 

 それには――

 

 大昔。

 エルフは大きな力を持ち、今とは比べ物にならない魔法が使えた。

 他の種族からは、神々と呼ばれていた。

 でも。

 時が経つうちに、エルフたちはジャンブー大陸から去っていった。

 

 残ったエルフはどんどん力を弱めていった。

 そして。

 人間たちより衰退していった。

 

 去っていった強いエルフたち。

 彼らは後に、ハイエルフと呼ばれて――

 

 こういったことが書かれていたが……。

 

「あなたたちって、ハイエルフ?」

 

「それは~、他の種族が勝手に言ってるだけで~。そもそも、私たちとこっちのエルフって、ぜんぜん別の種族なのよ~~。あくまで姿かたちは似ているだけよ~~~」

 

 と、亜麻色の髪をしたエルフはとんでもないことを言った。

 

 ヤコーは、もう一度ゴトクを振り返る。

 

「……まあ、今さら嘘言ってもしょうがねえか」

 

 ホントのことだよ

 

 ゴトクは、肯定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







後編に続く……!




カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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