破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その64・5-3、6種のエルフたち

 

 

 

 

 

 ヤコー・ビマ。

 ひょんなことから――

 紆余曲折あってエルフヘイムに行くことになったわけだが、

 

 

「じゃあ、今日はこれからにしときましょうか~~?」

 

 ワソーカにあれこれ身の振り方を相談した結果。

 魔法の訓練をすることとなった。

 今までは、そんなものは全くしたことのないヤコーだったが、

 

「ひぃひぃ……」

 

 ワソーカの指導が良いのか、日々基本をかためていった。

 といっても。

 まだ日が浅いため、初歩の初歩ができるようになった。

 その程度ではある。

 

 だが。

 

 魔導ゴマなどの遊びを通して、幼少時から基礎を育てているヤオアムト人とは違う――

 本当に、それと関わってこなかった人間。

 その彼女が短期間でここまでできるのは……。

 少なくとも、ジャンブー大陸の常識では、

 

「異常」

 

 とも言えることだった。

 特に、別にヤコーでは天才でもなんでもない。

 才能面で言えば、むしろ凡人に届くかどうか、である。

 

 

「そういえば……。こっちのエルフって、わりと騒がしかったり、陽気なところがあるんですね?」

 

 食事の用意を手伝いながら、ヤコーは言った。

 ここで暮らしてまだ日は浅い。

 しかし。

 あちこちでエルフヘイムの民を見る限り、人間などと大して変わりない。

 いや。

 他の文化への関心はむしろ強い。

 おまけに――

 全般的な印象は、やや【享楽的】とさえ言えた。

 

 

 ・菜食主義。

 ・排他的で頑迷。

 ・良くも悪くも保守的。

 

 これらが、模造品と言われるジャンブー大陸のエルフの特徴。

 ヤコーも話で聞いただけで、どの程度当てはめるのかはわからない。

 だが排他的、保守的というのはあっているのだろう。

 

 

「そうですね~~、まあ先代の王様からして色々やらかしたことでも有名なかたですし~~。見方によっては、無神経なところもあるかただったようですね~~」

 

「へえ……」

 

「まあ、だからうちは海のエルフなんかと折り合いというか、ぶっちゃけ仲が悪いんですねえ~~」

 

 海のエルフ。

 

「どういう感じなんですが、その見た目とか」

 

「ん~~。エルフ自体が容姿の個人差が大きいですから~~、あんまりそこに変わりはないです。ちがうのは、その生活スタイルといいますか~~……」

 

 ワソーカの語るところによれば、

 

 ・海底に巨大都市を建造し、そこを国としている。

 ・全体的な数は、エルフヘイムに比べると少ない。

 ・ルールに厳格であり、また実力主義が強い。

 ・戦闘技術や魔法を常に鍛えている。

 ・一度争いとなれば情け容赦ない。

 

「まあ~~? 武力と個人レベルの戦闘能力では、圧倒的に向こうが上ですね~~。というか~~、きっついふるいにかけられるので~~」

 

 その段階で死んじゃうのが大勢いるようです~~。

 

 と、ワソーカは言った。

 

「ふるい?」

 

「人間さん的に言うと~~、成人式みたいなもんですかね~~。通過儀礼と言いますか~~、それはこちらにもあるんですけど……。海のエルフは、それこそ大半が死んじゃうようなレベルで~~~。だから数が少ないんですね~~……。でも、だから数の上でこっちが常に有利でもあります~~~」

 

 首を振りつつ、エルフの少女は語る。

 

「こ、怖いですね?」

 

「でも~~、他の種族も似たようなことはしてるとこはありますよ~~? あそこまで極端ではないですが~~~」

 

「それは、知りませんでした……」

 

 どこかうすら寒いものを感じて、ヤコーは引きつった笑い。

 

「姿は、参考としてはこんなですね~~~」

 

 と、ワソーカは指を振って空中に画像を映し出す。

 

 武装をした、美しいが鍛え抜かれたエルフたち。

 戦士。

 武人。

 そんな印象で、いずれも厳しい顔。

 仲良くなったり、冗談が通じそうな雰囲気はゼロだった。

 

 

 

 

「さっき、海のエルフについてお話ししましたけど~~……」

 

 食事を終えてお茶を飲んでいる中、

 

「ついでなので、他のエルフについてもお話ししましょう~~」

 

 ワソーカはお茶をおかわりをしながら言った。

 

「えーと、後は……丘に、空? 地下と闇、でしたっけ?」

 

「はい。よくおぼえてますね~~。花丸さんです。まず、丘のエルフですか~~……他の大陸、つまりあなたの生まれたジャンブー大陸にもいますよ~~。一応国というか、首都にあたるものは、北方大陸(クル)にありますね~~」

 

「いるんですか?」

 

「はい~~。丘陵地帯に特殊な結界を張った異空間に住んでることが多いですね~~、別に丘だけにいるわけじゃないんですけど。あと、エルフだと認識されてないみたいです~~、たちの悪い妖精とか魔物とか、そんな感じで~~~」

 

「敵対的、なんですか?」

 

 ヤコーは模造品と呼ばれた、あのエルフたちを連想した。

 

「いえ~。むしろ逆ですよ~~。彼女たちは~~」

 

「彼女?」

 

「あ、丘のエルフは原初に分化したタイプで~~、女性しかいないんです~~。あと髪の毛はみんな緑色。女性だけなので」

 

 他種族の男性を連れてきて、結婚するんですよ~~。

 

 と、言った後、

 

「誘拐とか、神隠し~~みたいに思われることも多いですけど~~~」

 

「誘拐って……」

 

 これまた。

 物騒な言葉に、ヤコーは身を乗り出してしまった。

 

「彼女たちは~~、気に入った男性や困ってる男性を自分たちの国に連れてっちゃうことが多いんですよ~~。いいところなので、男性はほぼ帰らないですね~~。後、小さな子供を連れてくことも多いです~~。むしろこっちで知られてる場合が多いですね~~~? こっちは男女問わずですから~~」

 

 ヤコーはその説明で、ふとあることを思い出す。

 それは。

 小さい頃大人たちから何度も聞かされた話、

 

 1人で森に行くな。丘に行くな。

 夜中に出歩くな。

 そんなことをしてると――

 

 荒くれベルタにさらわれるぞ。

 

「荒くれ、ベルタ?」

 

「あ~、そういう風に呼ばれたりもするようですね~~。他にも野生の女(ヴィルデ・フラウ)とか~~」

 

「話だけだと、そんなに怖いこともないような……」

 

「でもね~~?」

 

 と、ワソーカは困った顔で、

 

「半面彼女たちは、おせっかいというか、独善的というか~~……。なまじ悪意がないからたち悪いと思いますよ~~~? 既婚者男性を連れてく場合もあるんですから~~」

 

「それはさすがに……」

 

「ええ。よろしくないというか、まずいですよね~~。おまけに、彼女たちは魔力というか基礎的な部分は山や海のエルフよりも数段上ですか~~。あんまり関わりたくないんですよ~、疲れるので~~」

 

 なんか、すごい話を聞いてしまった。

 ヤコーはそう思いながら、内心戦慄する。

 いくら善意で好意的といっても――

 神のようなエルフたちの中でも、さらに上位となれば……。

 

 ――いや、深く考えるのやめよ。

 

 参考にと見せられた画像。

 説明通りの緑の髪をした美しい女性や少女のエルフたち。

 みんな柔らかで優しい雰囲気だ。

 しかし。

 詳細を聞いてしまったヤコーには、その長所がひどく恐ろしくも感じられた。

 

 

 

「ま、まあなるほど? 丘のエルフはそんな風なんですね。じゃあ、空のエルフっていうのは?」

 

 ヤコーは気を取り直すように、質問した。

 

「このエルフヘイムよりずっと上、つまり高い空に住んでます~。こんな場所ですね~~」

 

 ワソーカが出した映像。

 

 それは、霧のようなものが足元にうっすら漂っている。

 どこか神秘的で、家屋も少ない。

 やや閑散とした気配さえあった。

 そんな場所に、

 

「て、天使?」

 

 うっすら輝く翼を持ったエルフが映っていた。

 

「いえ。そういう風に誤解されるかもしれませんが~、あくまでエルフですよ~~? 地上にほぼ介入も接触もしないですね~~、高齢になったり求道心的なものが芽生えたエルフが、鍛錬や修業を重ねてああいった形に変化したものです~~。中には生まれついての者もいますけど~~。他にも~~、あそこには他種族の魔導士や修行者もいたりしますよ~~。ふむ、あそこに行くようなかたを異国の言葉では仙人(シエンレン)とか言ったりするそうで~~」

 

「天国、みたいですね?」

 

「これもそういう誤解をされたりするようですが~~、あくまでああいう場所にああいうタイプのエルフが住んでるだけで、死後の世界でも天国でもありません~~」

 

 ――なんか、夢のない話かも……。

 

「ただ、それだけに能力というか力は丘のエルフ以上です~~。強大です~~。ほぼ下界に介入しないのはいいことかもしれませんね~~」

 

 そうかもしれない。

 丘のエルフ以上の力。

 恐ろしいほどの強大な力の持ち主。

 これが善意にしろ悪意にしろ、他種族と関わっては、

 

 ――悪くはこんだ時の危険が大きすぎるよ、ゼッタイ……。

 

 

 

 

「こほん……。じゃあ、次は……闇のエルフでしたよね?」

 

「あ、そうですね~~。あちらは、そのエルフよりもずっとずっと上の天高く~~~、暗黒空間と呼ばれる場所に住んでます~~。」

 

「へ……? いや、太陽にずっと近いはずなのに、真っ暗なんですか!?」

 

「え~。私は資料とかでしか見たことないですけど~~、そうみたいですよ~~。闇のエルフはそこで、大きなお空みたいなお城に住んでいるそうで~~。あ、そのお城もたくさんあるそうです~~。」

 

「空の上が……」

 

 あの、太陽で明るい空が高みに行けば――

 暗黒の世界。

 ひどく、リアリティのない話。

 ヤコーにはそう感じられた。

 

「もしかすると、その闇のエルフも……」

 

「はい。というか……私の知る限りこの世界で最強の種族じゃないですかね~~? 基本的に破壊行為とかをやらないですけど~~。ただ~~……」

 

「た、ただ?」

 

 困ったようになったワソーカの顔。

 これに、ヤコーは嫌な予感をおぼえる。

 

「なんというか~~、他の種族をからかったり、変な問答を仕掛けて混乱させたり~~。他にも、イタズラでその社会を混乱させたりもしますね~~。時々ですけど~~……」

 

「あの、その闇のエルフって、めっちゃ強いんですよね?」

 

「はい~~。下界の種族、1人で複数の国を滅ぼすのも簡単でしょうね~~。力だけじゃなくって、嫌な意味で裏工作とか罠を仕掛けるのが好きなようですから~~」

 

 最悪である。

 

「あ、でも~~。最近は、あまり関わることはないようですよ~? 関わってもごく小規模であまり力も振るわないかと~~」

 

 ヤコーの青くなった顔を見て、ワソーカはフォローするように言った。

 困った感じの笑顔で。

 

「……あ、それで、その、闇のエルフというのは」

 

「そうですね~。こういう姿です~~……」

 

 と、ワソーカが出した映像。

 そこに映る闇のエルフ。

 最強だという種族の姿は――

 

「………?!」

 

 見た途端、ヤコーは絶句した。

 

 長い耳と美貌。

 それは他のエルフと同じ。

 

 だが。

 

 黒い髪。

 青い肌。

 黒い眼の奥で輝く赤い瞳。

 赤い角。

 

 そして。

 

 やはり黒いコウモリに似た翼。

 獣毛も鱗もない黒く細い尾。

 尾の先は、(やじり)……否、ハート型に近い形になっている。

 ほぼ半裸。

 サキュバスのような服装をした妖艶な美女。

 

「……あ、悪魔?」

 

「いえ。エルフです。闇のエルフ」

 

 呆然とつぶやくヤコー。

 それに訂正の言葉を送るワソーカ。

 

「だ、だって、この姿……。まるで……」

 

「あ~~。そう言えば? 闇のエルフはそう呼ばれることも多いそうですね~。悪魔(デビル)とか魔族(デーモン)とか~~。他にも、天魔(マーラ)っていうのもありましたか~~」

 

「は、はあ……。なんか、ちょっとサキュバスみたいだなって……」

 

 ヤコーはとまどいながら言った。

 実際。

 角がなければ、サキュバスだと言っても通じるだろう。

 ただ。

 

 ――サキュバスって、姿がすごい個人差あったっけ。髪とか目の色とか、あと肌も……。

 

「サキュバスは元々、闇のエルフの眷属だったんですよ~~。このエルフヘイムにもいますし~~」

 

「見たことありますね、言われてみれば……」

 

「ただ、ある時期から下界に大勢降りていったと記録にありましたね~~……。闇エルフの首領格が命令したんでしょうか~~?」

 

 自分で言いながら、ワソーカは不思議そうな顔になる。

 ワソーカもよく知らない。

 あるいは、疑問に思っていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後も――

 

 ヤコーはワソーカの指導で魔法を学びながら、エルフヘイムでの生活を続けていく。

 

 雇い主だったカーシャ・チーフウォール。

 彼女がその後どうなったのか。

 ヤコーがそれを知るのは、しばらく後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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