破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
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「こうしてみると……。王都から離れるほど、サキュバス街は多くなっているわけね」
数枚の資料を見比べながら、カーシャは指で額を掻く。
「興味がなかったから無知だったけど、
「その代わり、値段はかなりのもんだがな。貴族や金持ち物持ち、そんな連中が【粋な遊び】を楽しむところさ」
雑貨屋の店内。
ゴトクはナイフの手入れをしながら応える。
言葉には、若干の
「貧乏人相手のヤツらは店を持たずに、一人で勝手にやってる。酒場とか路地裏とかで目立たんようにな」
「ふうん」
「ネビズもそうだが、辺境の街は全部もと開拓地だ。荒れた荒野、モンスターが多くって危ねえ。そういうところを切り開いて、街を作っていったのさ。まあ、どの国も街も起源をたどればそんなもんだけどな」
で。
そういう場所で、仕事だから男所帯だ。
女はいねえ。
「それにサキュバスたちはくっついていった。まさに適材適所で、どっちもお得だってことだな」
「他にも……。古くさかのぼれば、地方は元々ちがう国だった」
カーシャは資料に目を向けたまま、静かに言った。
「おう、そこもあるな。あけすけに言えば侵略して征服して領土を広げていったわけだ」
「
くすり、と。
カーシャは唇を歪めた。
「戦乱をおさめたのも、ホントではある。その時、軍隊にサキュバスたちもくっついてった。で、占領地でも客を取り始めた。ついでなのか、それも目的だったか知らんけど」
「戦争で負けた国ってのは悲惨でな。略奪は付き物だからな、金や物、食い物だけじゃない。女子供だって普通にその対象……ではあるんだが」
そこで。
ゴトクは手を止めて、少し上に視線をやった。
「この場合、むしろ戦勝軍がオンナを連れてきたってことか。占領地でサキュバスが正式に【商売】を始めたのは、わりと落ちついてから……だな、確か」
「つまりは?」
カーシャがゴトクの顔を見る。
「そうとう好き勝手にやってたんだろうな。制約なしでほぼ自由に【食事】ができるんだ。だが、それのおかげで女たちは嬲り者にならずにすんだわけだが……」
「へえ……」
カーシャは音もなく息を吐いて――
「その状況を、敗戦国の女はどういう目で見てたのかしらね」
――あ。コレ夢だ。
目を開いた瞬間、バッキーは思った。
深夜。
マコネとおしゃべりをした後、ベッドに入ったのはおぼえている。
今日も疲れた。
そう思いながら、目を閉じて。
今、バッキーは道を歩いていた。
ネビズの街ではない。
道路。
信号。
電柱。
アスファルトで舗装された。
行きかう自動車。
横断歩道。
コンビニ。
前世の世界。
【現代】の日本。
そして。
バッキーは登校している最中だった。
明晰夢の一種。
こう確信した理由もある。
夢特有の違和感? みたいなもの。
それも要因なのだが、
低空を、フワフワと――
羽のはえた美少女が飛んでいた。
――どー見てもサキュバスです。
街中にチラホラと明らかにファンタジーな異種族がいるのだ。
【普通】の【現実】の【現代日本社会】。
そんなところに、
――あんなもんがいるわけないもんね……。
やがて。
ごく自然に、高校に到着。
夢の中でバッキーは高校生となっている。
――昔、通ってた学校じゃん……。
学校が夢に出てきたことはあった。
なぜか。
30近くで学生生活をフツーに送っている。
そんな夢は何度か見たが、
――さすがは明晰夢。再現度半端ないなあ。サキュバスをのぞけば……。
学校内。
そこにサキュバスの姿はない。
どうやら、彼女らは基本大学より下の学校には行かないようだ。
中高も小学校、さらには幼稚園すら。
こんな【常識】が、ごく自然に頭にある。
学校生活。
それも、過去の経験と大差なかった。
教室内ではちんまり隅っこで存在感を消している。
休み時間などに――
オタク系の友人と、目立たないように
――こういうのまで再現しなくても……。
そう思い、スマホでネットを見ている。
やはりというか。
あちこちでサキュバスの情報があった。
ただ?
色々調べてみると、
――あれ? 前世よりも色々良くなってない。
環境。
住宅。
経済。
出産率
エトセトラ。エトセトラ。エトセトラ……。
日本だけではない。
世界レベルで注目されていた問題が解決しつつある。
たとえば。
性犯罪の高い国や地域など。
そこで犯罪率がどんどん低下している。
成人女性だけではない。
子供への犯罪も。
――ああ、そっか。これって……。
サキュバスの容姿は千差万別。
それは見た目の年齢も同様。
加えて。
――実年齢は、基本どの人間よりもずっと上……。経験値的にも、成人ばっかり……。
すなわち。
見た目は中高生でも、その中身は老練な【魔物】。
こんながウジャウジャいるわけだ。
しかも、
――人間の女性、子供よりもずっと近づきやすいんだよね……。おまけに、いやこれが一番重要なんだけども……。
――ついでに、性病も心配なしで……。これは、現実っていうか? あっちの世界のサキュバスとおんなじ。
そして。
ぶっちゃけ。
身もフタもないことを言えば。
サキュバスにとって、人間との性行為は食事である。
人間と同じ食事での補給も可能だが、効率が悪い。
特に。
彼女らにとって、もっとも重要度が高い魔力の生成。
これが非効率なのは致命的らしい。
―――ようするに、人間とホニャララできないと力が衰えたりするから……。
ウィンーウィンの関係。
あるいは、互いに利用し合う関係。
こういうわけで。
よほどの異常者でなければ――
リスクを冒して犯罪に走る意味などない。
――そこはいいよね。うん。
調べてみれば、
――ああ、やっぱし。さんざんネタにされたり問題にされてたパパ活もほぼゼロだわ。
これもまた、
――良いことではあるよねえ?
一時的に大金を得られるが、同時に色んなものを失う。
あるいは、狂わせてしまう。
――将来的に考えれば、やらないほうが絶対いいし。
サキュバスたちは、基本性行為で金銭のやり取りをしない。
ここは、【現実】とちがっている。
いくら金持ちの男でも、使う金が少ないなら少ないほうが良い。
むしろ。
富裕層であればあるほど、金銭の使い方にはシビアだろう。
ただ。
それは同時に、極めて危険なことだった。
――あ、予想してたけど、これもそうだわ。
サキュバスと関係する中高生も増加傾向にある。
当然とも言えるが。
――あ……。企業経営とかしてるヤツもいるんだ。自分で起業したり、色んな手段で乗っ取ったり……。
「はあ……」
ネット検索に没頭していたバッキーは、ため息をついた。
調べただけで、ものすごい疲労感。
一見社会はよくなりつつある。
……ように思える。
が。
ゆっくりと、しかし確実に世界規模で崩壊に向かっている。
嫌な予想、あるいは確信がバッキーにはあった。
気づけば。
もう放課後になっていた。
「かえろ……」
夢なんだから、とっととさめてほしい。
そう願いながら教室を出た。
すると、
「へ?」
そこは、上も下もない空間だった。
周りには何もない。
グニャグニャと色々が変わっていく。
――あ、やっとさめてくれるの? 助かった……。
バッキーが安堵していると、
「お前らは、いくら……とりつくろったって寄生虫じゃないか!」
誰かの叫び。
中年男性の声。
そう思えた。
「あははは♥ うまいこと言うじゃないの? まったくもってそのとーり♥ でも、
「確かに卑怯な手段で乗っとった! 自分でも感心しちゃうくらいに。だが!? お前よりもずっと会社を大きくしてるし、お前よりもずーっとたくさんの給料や税金を、いーっぱい払ってるぞー?」
「――おい!」
「ひっ……!?」
大声。
体を揺さぶる強い力。
それに、バッキーは叩き起こされた。
起き上がると。
マコネが渋い顔で自分を見ている。
「あ、マコネちゃん……」
つぶやくと、口の中がカサカサした。
――やっとさめた……。
今度こそ。
バッキーは本気で安堵する。
「ふけよ。ひでえ汗だぞ」
マコネがぶっきらぼうに言った。
手元にタオルが投げられる。
「あ、ありがと……」
指摘された通り。
バッキーは全身汗だくになっていた。
着ている服がじめっとしている。
のろのろと汗を拭いていると、
「――飲めよ」
マコネは水を入れたコップを突きだした。
「……うん」
確かに。
喉も渇いていた。
水を飲み干してようやく落ち着きを取り戻す。
「お前どんな夢見てたか知らねーけど、ひどいうなされようだったぞ。ウンウンウンって」
と、マコネは疲れた顔でため息。
「おかげでこっちは嫌でも起きちまった。まだ夜明け前だぞ? 特に仕事も用事もねえのに」
「ごめん……」
バッキーは密かに、目の前に少女に感謝する。
どうにか。
ドンヨリしたものだが、笑みを浮かべてみせた。
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人