破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その70、呪いの疑い???

 

 

 

 

 

 

 

 

「サキュバス街の規制。というよりは、撤廃ですか」

 

 王宮内の図書館。

 

 そこで資料を探していたトリヤマは国王のほうを見た。

 

「困ったことになったよ」

 

 国王は歴史書の棚で立ち止まり、肩を落として言った。

 

「そういったことは、どこの国や時代でも出てくるんでしょうな。私の故郷でもそうでした」

 

「夫人の意見には、うなずける部分もないではないんだがなあ」

 

 と。

 国王は一冊の歴史書を手に取り、

 

「それでも、ハイ・ワカリマシタと聞き入れるわけにはいかんのだよ」

 

 こっちにも事情があるからね。

 

 そう言ってから、国王はトリヤマを見る。

 

「ふうむ……」

 

 トリヤマは、しばらく無言だった。

 口元に拳を当てて、眉を上げ下げしている。

 

「こちらに来てから、私も色々研究や調査をしてきました。その中で、あっちの世界にないものはたくさんありましたが

……その中に、遺伝子の多様性があります。驚くほどにね」

 

「?」

 

 トリヤマの言いたいことがわからず――

 国王は不思議そうな顔。

 

「あちらで淘汰され、消えていくようなものがこちらでは残り続け、さらに変化していく」

 

 サキュバスを媒介にして。

 

 トリヤマはそう言って顔を上に上げた。

 

「その多様性こそが、この世界の人類最大の武器かもしれません」

 

「ふむ?」

 

 やはり。

 国王にトリヤマの言いたいことはわからない。

 

「調べたところ、この国やその周辺ではサキュバスを親や祖母、あるいは祖先に持つ者はそこら中にいるはず。だが、あまりにもサキュバスの要素が薄すぎる。魔力、身体能力などに恵まれるパターンが多いようですが……絶対ではない。実に不自然ですな」

 

 つぶやくように言って。

 トリヤマはまた黙り込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、あのぅ?」

 

 バッキーはドギマギするばっかりだった。

 

 ゴトクの雑貨屋から戻ったカーシャ。

 おかえりなさい。

 その一言を言ったと同時に、

 

「へっ……?」

 

 形の整った、白くきれいな――

 だが。

 同時に。

 何故か猛禽類をイメージさせる指。

 

 それが、バッキーの頬に触れた。

 

 さらには。

 水色の宝石みたいな瞳が、ジッと顔をのぞきこんでくる。

 

 ――ううう……。

 

 バッキーは抵抗も逃げることもできない。 

 目もそらせない。

 

 ただ。

 

 なすがままになるだけだった。

 

 ――こ、こうして間近で見ると……。やっぱり、ものすごい美人さんだよ……。

 

 前世。

 画面越しに見たアイドルや女優など比較にもならない。

 まさしく。

 絶世の美貌。

 

 ――こんな美人さんをあっさり振るなんて……。噂の王太子様ってトンデモナイ大物だったのかしらん……?

 

 あるいは。

 王族とか上位貴族はこんな美形がたくさんいるのかもしれない。

 または?

 あまりにも内面が悪すぎたのか。

 

 ――本人もそんなこと言ったしなあ……。

 

 そんな――

 大して意味のないことをバッキーが考えていると、

 

「あなた、変な魔法でも使ったのかしら? それとも、呪いでも受けた?」

 

「え?」

 

 いきなり。

 カーシャは突拍子もないことを言い出した。

 

「い、いえ……。特にそんな魔法も呪文を使ってないですし? 呪いも、身におぼえが……」

 

「呪いは本人に自覚がない場合も多い。それに、利害や逆恨みだって普通にありうるのよ」

 

 ようやく。

 カーシャはバッキーから手を放した。

 

「そ、そうですね?」

 

 脱力しかけながら、バッキーは小さくうなずいた。

 

 確かに。

 ゴトクから魔法の訓練を受けた時。

 そんなことを注意された。

 

「言われてみれば、昨夜(ゆうべ)っつーか、朝がた? ひでえうなされようだったな?」

 

 後ろでマコネが指摘する。

 

「そうでした……」

 

 思い出し、げんなりするバッキー。

 夢の記憶。

 それはすぐに消えるものが多いけれど、

 

 ――あの夢、細部までハッキリおぼえてるよ。ホントに体験したみたいに……。いや……。

 

 実体験以上に、明瞭かつ詳細な記憶。

 

「その手のことは、あのはぐれエルフにでも聞いたほうがいいでしょうね」

 

 言いながら、カーシャはバッキーの横を通りすぎていく。

 

「……なんだか、すごい気になってくるんですけど」

 

「実際、魔力に妙な変化が感じ取れたわ。多少魔導に心おぼえがあれば、わかるでしょうね。近くでよく観察すればだけど」

 

 カーシャは首だけ振り返りながら、そう言った。

 

「専門家、ですか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所(ところ)は大きく変わって――

 

 

 エルフヘイム。

 ワソーカの屋敷である。

 

「こうしてみたら、エルフの歴史ってすごい長いんですね」

 

 ヤコー・ビマは棚に本を戻しながら言った。

 

「まあ~? 記録は念入りに残してますからね~~」

 

 空中に浮かぶボード。

 白地の画面に移される無数の文字列。

 エルフの言語で書かれたメモや記録。

 

 ワソーカいわく、

 

「整理してるんですよ~~。前に調査した遺跡のこととか~~」

 

 ということらしかった。

 

「ただ~、長いと言っても歴史自体は人間種のほうが長いようですけど~~~」

 

「え。そうなんですか?」

 

 思わず。

 ヤコーは振り返ってワソーカを見る。

 

「神様って呼ばれてたくらいだから、人間より前に生まれたって思ってました。おとぎ話でも、そんな話があるし……」

 

 創造神話などでは、ごく当たり前のパターン。

 

「そうらしいですね~~。けど、古い記録を調べたことありますが、人間の歴史は何十万年も前のことらしいですよ~~」

 

「まさか。そんな長いんだったら、世の中もっとすごい国とかできてそうです」

 

 ヤコーは素直に疑問を語る。

 

「ん~~~~。いえ~、人間であるあなたに言うのも気が引けるんですが~~」

 

 国や文明が滅んだりする例はけっこうあるんですよ~~。

 わりとざらに~~~。

 

 ワソーカはちょっと遠慮がちな声。

 

「あ。そ、そういうことは、あるかも……」

 

 納得。

 ヤコーはうなずいてしまう。

 

 彼女自身――

 生まれた国が滅んだため、放浪の末にヤオアムトに流れついたのだ。

 両親は、相当に無理をして遠路を旅していたらしい。

 幼い頃の記憶。

 そこから、ヤコーはそう推測している。

 

「そうなんですよ~~。国の寿命はだいたい、数百年ぐらいですね~~。ヤオアムトは2千年近い歴史があるようですが~~、これだって途中途中でかなり綱渡りをクリアしてきた結果ですから~~~。長い目で見れば、血で血を洗うような歴史です~~」

 

「うわあ」

 

「けど、それは~~? どこも同じだったりします~~。エルフたちだって例外じゃないですから~~~。山と海のエルフは定期的に戦争してますし~~~」

 

 ワソーカはウンウンとうなずいて、

 

「これも古い記録ですが~~、人間というのはこの世界で一番古い知性種族なんです~~。いえいえ、もしかすると一番最初に誕生したのかもしれません~~~」

 

「ま、まさか……」

 

「でも~~。これも無根拠じゃなくってですね~~」

 

 ワソーカが指を振る。

 空中に、画像のついた資料が新しく浮かぶ。

 

「先の賢人がよく調べたところ~~、エルフにも、い~え~、この世界の全ての知性種族に人間の因子が確認されてるんです~~」

 

「??? つまり、え? どういうことなんです?? ご存じのとおり、私は学がなくって……」

 

 ヤコーは、ワソーカの話がよく理解できない。

 目をパチクリさせるばかりだ。

 

「だからですね~~。全ての知性種族は、人間から分化した……あるいは、人間をベースに【造られた】のかもしれません~~~」

 

「神様が?」

 

「さ~~~?」

 

 ワソーカはとても困った顔で首をかしげ、

 

生憎(あいにく)~~? 私たちエルフは本物の神様に会ったことはありません~~。今も色んなかたが調査してますが、いまだお話とか概念でしか確認されてませんね~~? いるのかもしれない、いないのかもしれない~~。どっちの答えもまだ出せませんね~~……」

 

「あの、上のほうに住んでるエルフたちもですか?」

 

 ヤコーは上を指さす。

 

「う~ん。空のエルフたちはそうなんですが~~? 闇のエルフはどうなんですかね~? 私たちに言わないだけで、知ってるのかもしれません~~。知ってるとも言えませんが~~」

 

 と。

 ここまでボンヤリとしたことばかり言っていたワソーカだが、

 

「あ~、でも? 誰がエルフを創造したかっていう話は記録にありますね~~」

 

「え? それは神様じゃない、ですか?」

 

 もはや。

 話についていけず、混乱してばかりのヤコー。

 

「記録では、創造者となっていますね~~。ただ、それがどういう存在なのかはよくわかりません~~」

 

「そ、そうなんですか……? けど、ヒトだか神様? は一体どこに……」

 

「生物なら、さすがにもう死んでいるでしょうし~~~。神様なら……よくわかりません~~。」

 

 ワソーカは首を振るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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