破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
ちょっと書いてない部分があることに気づきましたが……
半端な量なので、番外編で間にさしこむことになるかと
「いましたぜ?」
「おう」
手下の声に、ヒマムシはうなずいた。
街道。
といっても。
魔導馬車などが通らない、古い道。
一応今も使われてはいる。
しかし。
その分危険も大きいため、使う者は少ない。
はそれを追い続ける。
「お前らは、前。そっちは右、お前らは左だ」
ヒマムシは手下に指示を飛ばす。
前後左右の退路を断つ作戦だった。
少し前――
ある安宿。
そこが、イオを
ヒマムシたちは、街の浮浪児から情報を得た。
いくらか下調べをして、間違いなさそうだと判断。
それから。
手下を引き連れて宿にねじこんだ。
が。
「その
宿の者は怒鳴った。
すぐに、
「西の街道に、それらしい女が逃げるように出て行った」
という情報も。
そして――
今に至る。
やがて。
ヒマムシたちは作戦通りに、獲物を捕らえることに成功。
「……手間をかけさせやがったな!」
男と女。
2人を捕らえ、手下に押さえつけさせたヒマムシは、
「その分、きっちり落とし前はつけてもらうぜ!」
怒鳴って、自分を睨みつけるナディゾを殴りつけた。
「おい、イオ――おめえ、ずいぶんなことをしてくれたもんだな? 殺しはしねえが、覚悟はしてもらうぜ」
ヒマムシは興奮に目を血走らせ、女を睨む。
女はうつむきかげん。
そこから。
恨みがましい眼でヒマムシを見ている。
「上等な態度をとるんじゃあねえ!」
ヒマムシは、女に手のひらを振りかざす。
その、時。
バムッ
何か、巨大なモノが――
手下たちをなぎ倒した。
青白い燐光に包まれた、骨の手。
それが、女の頭上に浮いていた。
近づいてみるとわかるが……。
骨の手。
それは、無数のドクロが集まって形づくられたもの。
「死霊魔術ってのは、使い方によっちゃあこういうこともできる」
わけがわからない。
ひっくり返ったヒマムシは、混乱するばかりだった。
「こっちの色男はすぐに見極めたが、お前はダメなようだねえ?」
女はヘラヘラと言いながら、
「スケベ根性だけでお尻を追っかけたんじゃあ、仕方がないか――」
「て、てめえ……!?」
「カカカカカ」
あわてふためくヒマムシ。
それを、女が
笑いながら、フードを取って顔を露わに――
その口。
耳まで大きく裂けて、蛇のような二股の舌が――
ペロペロと。
「ば、バケモノ……!?」
ヒマムシは、
「そいつぁ、ごアイサツだね。獣だトカゲだ吸血鬼だと色んな連中がいる世の中だ。今さらこの程度で驚いてちゃあ、渡世稼業はつとまらないよ?」
「なんだ、この……!」
それでも。
さすがに、暴力沙汰には慣れ切った男。
すぐに起き上がって、刃物をぬいた。
「おい、お前ら! いつまでも寝っ転がっているんじゃねえ!!」
手下たちに叫んだ。
でも、反応はない。
代わりに、
ガッ
ゴッ
ブチ……
嫌な音。
臭い立つ、血と臓物の香り。
あちこちに――
真っ赤な肉塊が血だまりの中に転がっていた。
「なっ……」
絶句する。
肉塊の1つを踏みつぶしながら、女がヒマムシを見ていた。
青い髪に水色の瞳。
人形みたいに整った顔の美人。
しかし、その顔は氷でできた仮面のごとし。
情も何もない、得体のしれない生き物。
そうとしか思えなかった。
「予想はしていたけれど」
それ以下だったわね。
女――
カーシャはそんなことを思いながら、ヒマムシを見ていた。
絶体絶命。
予想もしていなかった状況。
ヒマムシは、完全に冷静さを失いつつあった。
「街中なら、面倒だけど。ここらならどうとでもなるねえ」
イオそっくりの女――
ミゾイ・シーダは肩をすくめる。
「
「て、てめえ……」
残忍なミゾイの笑みに、ヒマムシは顔を青くしながらも、
「勝手の違う旅先だ……! 用心はしているぜ!!」
何かを、地面に叩きつけた。
――こいつは……。
それが、何か。
ある程度の見当がついたミゾイは、少し顔をしかめ、
お願いしますよ。
そんなニュアンスのこもった眼で、カーシャを見た。
「………」
この間に――
ヒマムシが何かを叩きつけた個所。
そこから。
地面が盛り上がり、どんどん膨れ上げって。
高く、高く。
「ゴーレム・ボール」
カーシャは、使用されたであろうアイテムの名前をつぶやく。
名前の通り。
即席でゴーレムを造り出す魔道具。
――それなりの値段はするはずだけど……。小金を持っていたようね。
「ぶっ潰せ!!」
ヒマムシはゴーレムに命じる。
同時に。
自分は大急ぎで逃げ出した。
「なるほど。なかなか賢い手だねぇ」
ミゾイはつぶやく。
と。
ボゴッ
ゴーレムは斜め横に吹き飛ぶ。
粉々に、粉砕されて。
カーシャはそれをやった後。
一足飛びに、ヒマムシの背後へ。
ミシリ
あっさりと
グリ、ブチ
首を引きちぎった。
「やれやれ。片がついたね」
戻ってくるカーシャを見た後、
「もういいよ」
ピュー。
と。
指笛を吹いた。
すると。
木々をぬうように、何かが飛んでくる。
青い燐光をまとった、骸骨の鳥。
巨大だった。
人間を1人乗せている。
「ナディゾ、さん……!」
鳥が地面に降りる。
同時に、乗っていた人物は感極まった声で叫んだ。
そして、ナディゾのほうに駆け寄っていく。
イオだった。
「ずいぶんと、手の込んだことをしたものね?」
抱き合っている男女を横目に、カーシャは言った。
「私は、必要だったかしら?」
あなた1人で、十分だったじゃないの?
この問いに、
「どっちかと言えば、個人的な行動だったもんでね? 大っぴらにギルドメンバーとして動くのは避けたかったのさ」
ミゾイは苦笑。
「あんたを頼んだのは、まあ念のためさ。相手がどういう隠し玉を持ってるかすぐにはわからんからねえ?」
「用心深いこと」
「まあね?」
ミゾイは答えた後、
――しかし、他人の空似……か。
イオを見ながら、あることを思い出す。
いつか。
祖母より聞いたことがある。
一族の中に――
マホーラガであることを隠して。
姿を変えて。
人間の男と夫婦になった娘がいた、と。
――あるいは……。
イオという女には、マホーラガの血が流れているかもしれない。
――私の、遠い親類かもしれんってことか……。不思議な縁だ。
「まあ、そういうことになったようだわさ?」
夜。
窓もドアも締め切った宿の部屋。
音もなく入り込んできた白猫。
ガイストと少年はそれの語ることを聞いていた。
「だからね、多少時間はかかるだろうが――」
「ここの領主様も、そう長くはないか」
因業因果ってやつかね。
ガイストは笑う。
「……どうなるんでしょうね、この後」
少年はガイストを見る。
「さてね、てめえの領地でヤクザ者を飼ってるだけなら、まあどうってこともなかろうさ。少なくとも、もっとえらい貴族や王族からすればな。平民にすりゃたまったもんじゃないが……」
ガイストは疲れたような顔で首を振り、
「子飼いの連中が、外国で揉め事起こしちゃ、仕方がないではすまされねえさ」
「あ……」
「まして、相手は大国のヤオアムトだぜ? 船の行き来があるってことは、国同士の付き合いも当然あるってことだ」
ガイストの言葉。
それに少年は深刻な顔になる。
「……そうか。当然ヤオアムトは、抗議……いえ、侵略の理由にするかも」
「さすがに戦争はないだわさ」
と。
白猫はタバコの煙を吐き出して、
「今のヤオアムトは国内の整備を第一にしてるんだわさ。わざわざ他の国までどうこうして手間をかけはしないわさ」
しかし……?
「こいつを口実に、相当不利な注文をつけると思うだわさ? つまり、この国は地方の山猿のせいで、とんだ損害をこうむるんだわさ」
ケラケラ笑う白猫を嫌そうに見てから、
「――そんな厄ネタを使ったバカを、誰が無罪放免にするもんか。本人だけがこうなれば良し、下手すると関係者みんなさらし首だな」
「うわっ……」
少年はその現場を想像して、首をすくめる。
「だが……」
ガイストは頭を掻いて、
「こいつは知れると、厄介なことになるかもな。沈みかけた船だってんで、逃げ出せば良し……。しかし、国から賞金首にされたら、ヤケクソで何をしですか……」
チン
小さな音をたてて、剣が鞘におさまる。
あちこちに、死体が散乱していた。
ヴァイパー団、これに所属している騎士――
いや、無頼漢の集まり。
ついさっきまで、威勢よく吠えていた連中だが……。
今はもう死体となって何もしゃべらない。
「あ、あ……」
殺戮場面を見ていた、宿の主人はへたりこんでいる。
周辺の、現場に居合わせた者たち。
これも似たような反応だ。
「仲間割れだ」
ガイストは、主人に言った。
「え?」
「こっちもお尋ね者にはなりたくねえし、あんたらだって役人に痛くもない腹を探られたくないだろう」
「え、いや……」
「酒に酔った連中は、どうでもいいことで仲間割れ、ついには殺し合って死んだ――」
そういうことにしておくんだな。
ガイストは一方的に言って、少年と共に去った。
その
ヴァイパー団の新しいボスは、ヤオアムトで揉め事・罪を犯して手下と共に極刑になる。
この報せが届き、その【飼い主】であった領主は――
ガイストが予想したような運命をたどった。
こんな――
おかしな事件のあいだ。
「うううう…………」
バッキーはもはや持病となりつつある【夢】で苦労していた。
次回は番外編
とりあえず副題は、
その76・5、あるいは77への布石
となります。
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
-
親族(父方)
-
親族(母方)
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とりまき
-
使用人