破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
気づけば、真っ暗な場所にいた。
誰かがいる。
しかし。
わかるのは、わずかな気配ばかり。
「お前、消えた。代わりに転生をさせてやろう」
これは、もしや。
ネットで何度も、色んなものを読んだ……。
――異世界転生?
「さて、それじゃあ……。剣と魔法の世界、〝ねずみのじょうど〟にしておこう」
「え?」
妙な名前に、当惑。
ちっともそれっぽくない。
〝
とでも書くのか?
ひょっとして――
いわゆる、和風ファンタジーだろうか。
「ねずみの、じょうど?」
聞き返す。
「違う」
否定。
「ナズミン・ジョルダ。お前の世界で言う、【地球】みたな言葉だと思えばいい」
やっぱり、聞き間違いだったらしい。
「それで、何か望むものはあるのか? 身一つで行っても生きていけまい」
これは。
特典とか、ギフトとか言うものか。
「な、なら……」
好きで何度も見返した。
アニメのシリーズ。
二次創作も、とにかく
あんな世界で。
あんな女の子たちと。
一緒に冒険して。
恋ができたら。
どれだけ素敵だろう。
夢に見たいと思うほど――
何度も、何度も思った。
見たい夢は、何故か見れなかったけれど。
あんな
肩を並べて。
認めてもらって。
誉められて。
そうなりたい。
いつも、心の中で思っていた。
剣と魔法と同時に使いこなす、魔法剣士。
その
「わかった」
声はあっさりと了解した。
そして。
それから。
「あんた、なんなの? 気持ち悪い」
「恩を売ったから、返せってのか? だったら返してやるよ。金貨に宝石だ! 好きなだけ持って行って、失せろ!」
「あんたを誰も愛さないのはね、当たり前のことなんだよ」
「誰かを愛するんじゃなく、ただ愛されて、誉められて、肯定されることだけを願うような、クズにはね!」
「お前が前の世界で、誰にも相手にされなかったのは――周りが、みんなのせいじゃない。お前がどうしようもなクズ野郎だからだ!!」
「どこに行ったって、周りがどうであれ」
「クズはどこへ行ったってクズなのよ!!」
「お前はホントに情けないヤツだな」
「前の世界で、前世で――現実とも戦わずに」
「こんなところで、ヒーローごっこみたいな真似をして」
「今回もきつかった……。色んな意味で……」
バッキーは頭を押さえて、横になったままつぶやく。
雨が降る。
水を吸い続ける土。
それが、ゆっくりともり上がった。
地面の中から、泥まみれの手が突き出る。
のろのろした動き。
だが、確実に、乱れもなく――
土から起き上がってくる。
服も、何もかもボロボロだった。
ほぼ半裸。
光のない眼。
希望も、
だが、しかし。
絶望もない。
そこには、なかった。
不可思議な眼は、闇の中を通していく。
ぬかるんだ土を踏み、進んだ。
やがて、一応道らしき道に出る。
それでも。
おそらくは通る者はほぼいないのだろう。
整備などまったくされてはいない。
道の脇。
木の下に、誰かが寄りかかっている。
死体だった。
半分腐敗しかけている。
マント。つば広の帽子。
そして、ほぼ錆びて朽ちかけようという小剣。
「…………」
しばらくそれを見つめてから――
持ち物をはぎ取った。
はいだものを身に着けると、再び死体を見る。
「…………」
死体を担ぎ、林の奥へ。
少し広い場所で、地面を掘った。
大きく、深い穴。
2~3メートルはあるのか。
そこへ死体を放り込み、埋めた。
これを終えてか。
雨の中。
わき目も振らずに歩き出す。
目的地など、ない。
ただ、ただ。
風に押されるように歩き続ける。
それだけ、だった。
ある国。
ある地方。
そこでは、死神はつば広帽子に、マントをつけた姿で現れるという。
何故歩くのか。
何故進むのか。
わからない。
あるいは。
習慣のようなものか。
目的どころか、意味もない。
そもそも。
生きていること自体に、意味がない。
かといって。
死ぬ理由があるわけでもなかった。
ただ、何となく死にたくはない。
そういうことかもしれなかった。
あの、死骸の男。
誰にも看取られず、誰に何を語ることもなく。
それとも。
誰か待っている者がいたのか。
わからないし、わかったところでどうだというわけでもない。
わかっているのは、あれが自分の
それだけだ。
だからといって。
哀しくもないし、嫌でもない。
――まあ、そういうもんだ。
雨が降れば濡れる。
日照りとなれば乾く。
これらと、同じことだった。
…………。
「うーん……。我ながら、良い仕事をしたでやんすね~~……」
白黒の猫。
そいつは、嬉しげにつぶやく。
「あの晴れ姿を、色んなかたがたに見せてあげたいでやんすよ」
うん、そう。
色んな……ね。
…………。
うん。
妙な、ヤツだったねえ。
年かい?
若かったよ。いや、若く見えたよ。
まだ20にもいってなかったんじゃないかなあ。
ああ。
ガキだよ。
でも、なあ。
……ああ、うん。
何て言やあいいのかね。
こう……なんだ。
まるで死人みてえでさ。
若さっていうかのか、青臭さ?
そういうさ、可愛げのあるもんがまるでねえのよ。
ゾッとするような臭いというか、気配。
そんなものがあってねえ。
近くにいると、木枯らしみたいな冷たい風がねえ。
いやいや。
本当に吹くわけじゃないよ。
ただ、そんな感じがね、するんだ。
いやあ。
別に乱暴とか、えらそうってことはなかったなあ。
暗くって無口で。
辛気臭かったけど、むしろおとなしかった。
見ててねえ。
こいつ、大丈夫かと思ったぜ。
今にもさ、首でもくくるんじゃないかとねえ。
で。
そっからだよ。
街道荒らしってのかい?
野盗?
呼び方なんかどうでもいいよ。
10人近くいたなあ。
どいつもこいつも、得物を持ってやがって。
みんな、殺しをやってそうなツラだったよ。
ああ。
そりゃ当然だよ。
馬車は止められるよ。
こりゃ、命はないかなと覚悟しかけたね。
みんなそうだったんじゃないかな。
うん。
その時だ。
あの野郎がさ。
ひょいっと馬車を降りたんだ。
何事もなかったように……てのかい?
野盗なんか見えませんてな感じだった。
あんまり普通だったから。
みんなポカンとしてさ。
いや。
行くもんか。
すぐに野盗どもは追っかけたよ。
別にね、あいつは走ってったわけじゃない。
歩いてただけだ。
んで……。
何か言ってな。
金なんかねえとか、関係ねえとか。
いや、金がねえのはわかるよ。
持ってそうなカッコじゃねえもの。
けどよ。
関係ねえってことはないだろう。
おう。
そんな屁理屈通じるわけねえ。
野盗ども切れ散らかしてさ。
こう、刃物とかをね。
そう見えたんだよ。
ああ、こりゃ死んだなと思った。
でも1人で知らん顔して逃げようとしたんだから……。
正直?
ちょっとざまぁ見ろと思った。
仕方がないだろ?
でもな。
何がどうなったのかわからなかったが。
野盗たちが、だよ。
いきなり、こう……。
ズタズタになってね?
ひでえ有様で転がってた。
目にもとまらぬってやつだ。
それでねえ。
あの野郎はさ。
いつの間にか抜いて剣を鞘に戻してさ。
おう。
今から考えりゃさ?
他人事だけど。
逃げればよかったんだよ。
けど。
何をどう思ったのかぁ、知らないけどさ。
ぎええええっ。
そんな感じのね、悲鳴なんだか気合なんだかわかんない声をあげて。
うん、そう。
他の連中はさ、あの野郎に襲いかかってたんだ。
結果?
いや、そんなもんとっくに知れてるだろうに。
皆殺しだよ、皆殺し。
ありゃ、ひと呼吸もなかっただろうねえ。
みんながあっけにとられてる間に。
野郎はとっとといっちまいやがった。
冒険者か、傭兵か知らんけど……。
世の中にはおっそろしいヤツもいるもんだ。
おかげでこっちは助かったんだけどさ?
アハハハ。
むこうも、見捨てようとしてたんだから感謝はいらねえかな?
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人