破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

92 / 357
その76・5ー2、「そうだ。転生しよう」

 

 

 

 

 

 

 気づけば、真っ暗な場所にいた。

 誰かがいる。

 しかし。

 わかるのは、わずかな気配ばかり。

「お前、消えた。代わりに転生をさせてやろう」

 

 これは、もしや。

 ネットで何度も、色んなものを読んだ……。

 

 ――異世界転生?

 

「さて、それじゃあ……。剣と魔法の世界、〝ねずみのじょうど〟にしておこう」

 

「え?」

 

 妙な名前に、当惑。

 ちっともそれっぽくない。

 

 〝(ねずみ)の浄土〟

 

 とでも書くのか?

 

 ひょっとして――

 いわゆる、和風ファンタジーだろうか。

 

「ねずみの、じょうど?」

 

 聞き返す。

 

「違う」

 

 否定。

 

「ナズミン・ジョルダ。お前の世界で言う、【地球】みたな言葉だと思えばいい」

 

 やっぱり、聞き間違いだったらしい。

 

「それで、何か望むものはあるのか? 身一つで行っても生きていけまい」

 

 これは。

 特典とか、ギフトとか言うものか。

 

「な、なら……」

 

 好きで何度も見返した。

 アニメのシリーズ。

 二次創作も、とにかく(むさぼ)るように読んだ。

 

 あんな世界で。

 あんな女の子たちと。

 一緒に冒険して。

 恋ができたら。

 どれだけ素敵だろう。

 

 夢に見たいと思うほど――

 何度も、何度も思った。

 見たい夢は、何故か見れなかったけれど。

 

 あんな()たちと、一緒に。

 肩を並べて。

 認めてもらって。

 誉められて。

 

 そうなりたい。

 いつも、心の中で思っていた。

 

 剣と魔法と同時に使いこなす、魔法剣士。

 その能力(ちから)を、求めた。

 

「わかった」

 

 声はあっさりと了解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 それから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた、なんなの? 気持ち悪い」

 

「恩を売ったから、返せってのか? だったら返してやるよ。金貨に宝石だ! 好きなだけ持って行って、失せろ!」

 

 

「あんたを誰も愛さないのはね、当たり前のことなんだよ」

 

「誰かを愛するんじゃなく、ただ愛されて、誉められて、肯定されることだけを願うような、クズにはね!」

 

 

「お前が前の世界で、誰にも相手にされなかったのは――周りが、みんなのせいじゃない。お前がどうしようもなクズ野郎だからだ!!」

 

 

「どこに行ったって、周りがどうであれ」

 

「クズはどこへ行ったってクズなのよ!!」

 

 

「お前はホントに情けないヤツだな」

 

「前の世界で、前世で――現実とも戦わずに」

 

「こんなところで、ヒーローごっこみたいな真似をして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回もきつかった……。色んな意味で……」

 

 バッキーは頭を押さえて、横になったままつぶやく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨が降る。

 水を吸い続ける土。

 それが、ゆっくりともり上がった。

 地面の中から、泥まみれの手が突き出る。

 のろのろした動き。

 だが、確実に、乱れもなく――

 土から起き上がってくる。

 

 服も、何もかもボロボロだった。

 ほぼ半裸。

 

 光のない眼。

 希望も、(よろこ)びもない。

 だが、しかし。

 絶望もない。

 憎悪(にくしみ)も、怨恨(うらみ)も、悲哀(かなしみ)も。

 そこには、なかった。

 

 不可思議な眼は、闇の中を通していく。

 

 ぬかるんだ土を踏み、進んだ。

 やがて、一応道らしき道に出る。

 

 それでも。

 おそらくは通る者はほぼいないのだろう。

 整備などまったくされてはいない。

 道の脇。

 木の下に、誰かが寄りかかっている。

 

 死体だった。

 

 半分腐敗しかけている。

 マント。つば広の帽子。

 そして、ほぼ錆びて朽ちかけようという小剣。

 

「…………」

 

 しばらくそれを見つめてから――

 持ち物をはぎ取った。

 はいだものを身に着けると、再び死体を見る。

 

「…………」

 

 死体を担ぎ、林の奥へ。

 少し広い場所で、地面を掘った。

 

 大きく、深い穴。

 2~3メートルはあるのか。

 そこへ死体を放り込み、埋めた。

 

 これを終えてか。

 

 雨の中。

 わき目も振らずに歩き出す。

 目的地など、ない。

 

 ただ、ただ。

 

 風に押されるように歩き続ける。

 それだけ、だった。

 

 

 

 ある国。

 ある地方。

 

 そこでは、死神はつば広帽子に、マントをつけた姿で現れるという。

 

 

 

 何故歩くのか。

 何故進むのか。

 

 わからない。

 

 あるいは。

 習慣のようなものか。

 

 目的どころか、意味もない。

 

 そもそも。

 

 生きていること自体に、意味がない。

 

 かといって。

 死ぬ理由があるわけでもなかった。

 ただ、何となく死にたくはない。

 そういうことかもしれなかった。

 

 あの、死骸の男。

 誰にも看取られず、誰に何を語ることもなく。

 孤独(ひとり)のままで、死んだのか。

 

 それとも。

 誰か待っている者がいたのか。

 わからないし、わかったところでどうだというわけでもない。

 

 わかっているのは、あれが自分の未来(あした)だということ。

 それだけだ。

 

 だからといって。

 

 哀しくもないし、嫌でもない。

 

 ――まあ、そういうもんだ。

 

 雨が降れば濡れる。

 日照りとなれば乾く。

 

 これらと、同じことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……。我ながら、良い仕事をしたでやんすね~~……」

 

 白黒の猫。

 そいつは、嬉しげにつぶやく。

 

「あの晴れ姿を、色んなかたがたに見せてあげたいでやんすよ」

 

 うん、そう。

 色んな……ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 うん。

 妙な、ヤツだったねえ。

 年かい?

 若かったよ。いや、若く見えたよ。

 まだ20にもいってなかったんじゃないかなあ。

 ああ。

 ガキだよ。

 

 でも、なあ。

 ……ああ、うん。

 何て言やあいいのかね。

 こう……なんだ。

 まるで死人みてえでさ。

 若さっていうかのか、青臭さ?

 そういうさ、可愛げのあるもんがまるでねえのよ。

 

 ゾッとするような臭いというか、気配。

 そんなものがあってねえ。

 近くにいると、木枯らしみたいな冷たい風がねえ。

 いやいや。

 本当に吹くわけじゃないよ。

 ただ、そんな感じがね、するんだ。

 

 いやあ。

 別に乱暴とか、えらそうってことはなかったなあ。

 暗くって無口で。

 辛気臭かったけど、むしろおとなしかった。

 

 見ててねえ。

 こいつ、大丈夫かと思ったぜ。

 今にもさ、首でもくくるんじゃないかとねえ。

 

 で。

 そっからだよ。

 

 街道荒らしってのかい?

 野盗?

 呼び方なんかどうでもいいよ。

 

 10人近くいたなあ。

 どいつもこいつも、得物を持ってやがって。

 みんな、殺しをやってそうなツラだったよ。

 

 ああ。

 そりゃ当然だよ。

 馬車は止められるよ。

 

 こりゃ、命はないかなと覚悟しかけたね。

 みんなそうだったんじゃないかな。

 

 うん。

 その時だ。

 

 あの野郎がさ。

 ひょいっと馬車を降りたんだ。

 何事もなかったように……てのかい?

 野盗なんか見えませんてな感じだった。

 

 あんまり普通だったから。

 みんなポカンとしてさ。

 

 いや。

 行くもんか。

 

 すぐに野盗どもは追っかけたよ。

 別にね、あいつは走ってったわけじゃない。

 歩いてただけだ。

 

 んで……。

 

 何か言ってな。

 金なんかねえとか、関係ねえとか。

 

 いや、金がねえのはわかるよ。

 持ってそうなカッコじゃねえもの。

 けどよ。

 関係ねえってことはないだろう。

 

 おう。

 そんな屁理屈通じるわけねえ。

 野盗ども切れ散らかしてさ。

 

 こう、刃物とかをね。

 そう見えたんだよ。

 

 ああ、こりゃ死んだなと思った。

 でも1人で知らん顔して逃げようとしたんだから……。

 正直?

 ちょっとざまぁ見ろと思った。

 仕方がないだろ?

 

 でもな。

 何がどうなったのかわからなかったが。

 

 野盗たちが、だよ。

 いきなり、こう……。

 ズタズタになってね?

 ひでえ有様で転がってた。

 

 目にもとまらぬってやつだ。

 

 それでねえ。

 

 あの野郎はさ。

 いつの間にか抜いて剣を鞘に戻してさ。

 

 おう。

 今から考えりゃさ?

 他人事だけど。

 

 逃げればよかったんだよ。

 

 けど。

 何をどう思ったのかぁ、知らないけどさ。

 

 ぎええええっ。

 

 そんな感じのね、悲鳴なんだか気合なんだかわかんない声をあげて。

 

 うん、そう。

 他の連中はさ、あの野郎に襲いかかってたんだ。

 

 結果?

 いや、そんなもんとっくに知れてるだろうに。

 

 皆殺しだよ、皆殺し。

 ありゃ、ひと呼吸もなかっただろうねえ。

 

 みんながあっけにとられてる間に。

 野郎はとっとといっちまいやがった。

 

 冒険者か、傭兵か知らんけど……。

 世の中にはおっそろしいヤツもいるもんだ。

 

 おかげでこっちは助かったんだけどさ?

 アハハハ。

 むこうも、見捨てようとしてたんだから感謝はいらねえかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。