破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
ナーサ・ビー。
眼鏡に黒髪。
そして。
ちょっとだけだが顔にソバカス有り。
大地の女神を信仰する教会。
そこへ所属するシスター。
同時に、ギルドに所属する冒険者、ヒーラーでもある。
その日――
彼女はギルドの要請で、調査班の1人として同行した。
色々不可解な現象が見られる地域。
一応は、そこの調査……ということなのだが。
「まあ、本質的には救出任務だよ」
と、班員の冒険者は語った。
「ギルドで何回か調査班を送ってるが、大半が帰ってこなくってなあ……」
そういうことらしかった。
戻ってきた――
というよりは、発見されて救護を受けた冒険者は、
「急に力が抜けて、倒れるヤツが出て……。それにとにかく凶暴になったモンスターが襲ってきて……」
前回送った調査班も入念な準備はしていたが、
「まだ1人も帰ってこない……」
こうして向かった先。
数年前から使われなくなった、古く狭い道。
そこで。
傷だらけで地面をはっている冒険者が発見された。
「お、奥には行くな……。モンスターが何匹も、それにいきなり力が……」
冒険者が必死で何かを伝えようとしていた時、
ボオオォ……ッッ!!
木々をなぎ倒し、オウルベアが飛び出してきた。
それゆえに、恐ろしく凶暴だった。
ほぼ奇襲だったこともあり――
1人が死に、2人が重傷。
残った者は、後衛とケガ人を守るので精いっぱいだった。
もはや。
これまでか。
そうとしか言えない状況。
この時。
向こうの道から、それは歩いてきた。
つばがかなり広い帽子。
ちょっと三角っぽい。
すすけて、あちこち千切れているマント。
そんな服装をした、旅人。
が。
旅人の行動は予想外のもので。
「…………」
襲われている冒険者たち。
襲っているオウルベア。
その横を何の反応も示さず、通り過ぎていく。
「え? ……えっ?」
ナーサはひどくマヌケな声を出した。
それを、何故だかよくおぼえている。
オウルベアも反応した。
旅人は背中を見せて歩いている。
足早だが、走ってはいない。
襲ってくださいと言っているも同じ。
ボオッッ!!
オウルベアはまったく無警戒の旅人に襲いかかる。
直後。
オウルベアは前のめりに倒れた。
と、いうより。
その巨体が4分割となり、転がった。
どうやら……。
上から下。そして横。
十文字に斬られたらしい。
恐ろしい手腕。
しかし。
それをやった相手。
旅人は、抜いた剣を血もぬぐわずに鞘に納めながら――
何事もなかったような態度。
そのまま歩き続け、見えなくなった。
「なんだ、アレ……」
誰かが、呆然とつぶやく。
ナーサも同じ心境だった。
それから。
時は少しだけ進んで――現在。
「一体どういうつもりなの?」
怒りを込めた瞳と、声。
ナーサは食事中の旅人を睨みつける。
「誰かがモンスターに襲われてて、下手に助けようとすれば自分もやられる。そういう理屈も心境はわかります」
でも!
「あなたは逃げも隠れもしなかったし、簡単にオウルベアを倒せる
バンバンバン!!
ナーサはしゃべっているうちに、怒りが増してきた。
何度もテーブルを叩く。
しかし?
旅人は、ナーサの存在を完全に無視している。
声も聞こえない。姿も見えない。
そんな態度。
まるで動じていない。
平然と食事を続けている。
このおかしな様子に、店内の視線は集中していた。
当然である。
「なんとか言ったらどうです! 聞こえているんでしょう!?」
ナーサは、今まで以上の大声で叫ぶ。
と。
不意に、旅人は立ち上がった。
「……!」
一瞬、ナーサは警戒をするが、
「ここに置くよ」
値段分の硬貨を置いて、店員にそう言った。
「あ、はい」
ハラハラしていた店員は、ホッとした顔。
そこに――
「それは、私に奢らせてくれないかしら?」
ピィン
音が鳴り、店員の手に銀貨が1枚落ちた。
「え、どなた……?」
「ちょっとどきなさい」
驚くナーサを軽く押しのけ、旅人の前に立った女。
青い髪。水色の瞳。
カーシャだった。
「あなた、なかなかの腕利きのようねえ?」
「…………」
「それを見込んで、ひとつ頼まれてほしいんだけど。いかが?」
「あんたに〝腕〟を見せたおぼえはないけど」
旅人は不愛想に言った。
平坦な、抑揚のない無機質な声。
「色々と話は流れるモノよ」
カーシャは微笑する。
――あ……。
ナーサは思い当たるものがあった。
考えてみれば。
あの時、ナーサ以外にも冒険者は数人いたのだ。
そこから、この旅人の情報がもれてもおかしくはない。
「まあ、頼みたい
カーシャは、ナーサも調査に参加した、
「不可解な現象・事件」
これについて説明をした。
「調べて、できれば原因を片づけてほしいの。前金でこれだけ出すわ」
説明を終えると同時に、カーシャは重たい革袋を旅人に押しつけた。
「別に怪しいお金ではなくってよ。金庫で腐りかけてた一部だから」
私、これでもお金持ちなのよね。
カーシャはクスクスと笑う。
「前金で250万ジュラ。後金も同じく250万ジュラ。合わせて500万、悪くはないでしょう?」
――ごっ……。
横で聞いているナーサはギョッとした。
1ジュラが日本円でおよそ1円。
つまり、500万の仕事ということになる。
「…………」
「あら、金額が不服? よほど自信があるのかしら?」
「この金を持って、そのまま消えるってこともあるが?」
挑発するようなカーシャの問い。
旅人は、それに平坦な声で返す。
「ふうん。そういう可能性もあるかしら? でも、まあ」
それなら、それでも良いわ。
カーシャはケラケラと笑う。
「どうせ大した重みのない、そう
でも?
「お金はあって困るものじゃない。そうではなくって?」
カーシャは目を細め、ニィと微笑む。
「じゃ、私はこれこれの宿にいるから。そこで詳しい打ち合わせをしましょう」
一方的に言って――
カーシャは返事も聞かずに背を向けた。
と。
途中で足を止め、少しだけ振り返り、
「そういえば、お互いに名前を聞いてなかったかしら」
水色の瞳に、暗い気配の旅人が映る。
「私はカーシャ。ただの、カーシャ。あなたは?」
「――テラオ」
少し間をおいて、旅人は答えた。
「てら・お。少し言いにくいわ、テラと呼んでもよろしい?」
「お好きなように」
「じゃ、待っているわね」
店内でそんなやり取りがされている間。
「お前さん、なにしてんだ? こんなとこで……」
「えーっと。ちょっと道に迷っちゃって……」
マコネに聞かれたバッキーは、そう言って誤魔化す。
「ほーん?」
バッキーの頼りない返事に、マコネは首をひねったが、
「まあ、いいか。とりあえず、宿に戻ろうや」
「あ、はい」
そういうわけで。
マコネに引っ張られるように宿に戻る途中、
――テラオ……。
さっき、旅人……少年の口から出た名前。
それを頭の中で何度も繰り返す。
あの少年の名前。
名前も容姿も、前世と同じ。
つまり、
――転生っていっても……。私と同じか、近いタイプ?
これが、連鎖反応みたいになり――
できれば思い出したくも、考えたくもない夢の内容。
それをバッキーに思い出させる。
都筑寺生。
彼にとって、祖父母も好ましい存在ではなかった。
母方の祖母は、妹が生まれるとすぐそっちに愛情を移す。
かといって。
特別厳しくされたわけでもない。
半分空気みたいな扱いではあったが、マシだと言える。
父方の祖父は、怖かった。
厳格で正義感が強い。
よく言えば、そういうタイプだったのだろう。
幼少期から、小学生あたり。
寺生はよく虫を殺したり、犬や猫をいじめた。
虫のそれだってほめられた行為ではない。
ただ。
未熟な子供なら、やってしまうものでもある。
犬や猫はかなり
当然、それは祖父の怒りを買う。
「猫みたいな弱いものをいたぶるヤツはクズだ!」
怒鳴り、何度も平手打ちをされた。
その叱責はいかにもその通り。
もっともな意見である。
だが、寺生にとっては世の理不尽を学習するだけのこと。
反省の念など、あるわけがなかった。
「情けない、情けない」
祖母の場合。
直接的な暴力はなかったが、やたらにその言葉を繰り返した。
ただの口癖か、意図して言っているのか。
どっちにしろ、不快以外の何物でもない。
「姐さん」
マコネの声。
バッキーはそれに反応して顔を上げた。
店から出てくるカーシャの姿。
「なんであんな注文出したんだ?」
たずねるマコネ。
カーシャの行動が、今ひとつ理解できないでいた。
「興味がわいたから」
そう言って、カーシャは先に歩き出した。
「けど、あいつ来るのかね? バカ正直に」
「来るでしょう、たぶん」
カーシャは肩をすくめてから、
「来ないなら来ないで、別にいいけど」
おそらく。
あいつは確実に来る。
そういう確信が、カーシャにはあった。
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人