破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
いただいた感想で初めて、
「あ、こいつはこんな側面も」
「実はこんなだったのか」
と、気づかされることも多いです
いつもありがとうございます
突風がふいて、消えた。
ナーサが認識できたのは、そこが限界。
後は――
バラバラになったモンスターの死体が散乱しているだけ。
「やるもんだなあ、あのあんちゃん」
頭の後ろで組み、マコネが言った。
「プッツンしたオウルベアだの、レッサードラゴンだの。かなり厄介なはずだぜ?」
「やっぱ、すごいんですよね?」
「そりゃな。姐さんといれば感覚狂うけど、1匹2匹ならともかく、こう続けざまだとなあ」
バッキーの問いに、マコネは渋い顔。
「けど。話どおり、腹を減らしてプッツンしたって感じだなあ……。餌はそれほど苦労しねーはずだけど」
と、あたりを見る。
よくよく観察すれば――
あちこちに、食い散らかされたモンスターや動物の死体。
否。
残骸か。
「まあ? ともかく、先に進んでみないとどうにもならないわ」
カーシャの一言。
それで、臨時パーティーはさらに進みだした。
「ところでメガネのねーちゃん」
「……私は、ナーサ・ビーという名前があります」
マコネの声に、ナーサはムッとした顔で振り返る。
「おっと、そりゃあ失礼。育ちが悪いもんでね、カンベンしてくれよ」
「そ、そうですか」
素直に頭を下げるマコネ。
これに、ナーサは逆に面食らった顔。
「そんで、さっきの続きだけどな。怪しいとこを調べるって、使い魔とかはどうだったんだい? あれなら、もうちょい安全に偵察できるんじゃねーの?」
「それは、真っ先に試しましたが……」
何らかの要因。
それによって、使い魔と術者の視覚共有がうまくいかず――
使い魔も帰ってこなかった。
「ありゃまあ……。そりゃどう考えたっておかしいじゃねーか。もっと人数そろえて準備をして、そんで調べるべきじゃないんかねえ? こんなもん、とっくにわかってるはずだろ」
「……お金がないんですよ」
どんよりした顔で、ナーサは答えた。
「金がないって、セーヅの街は温泉でもうかってるんじゃねーのか?」
「利益はありますよ、街には……」
ナーサがため息をついた後、
「つまり。ギルドにお金がまわってこない、ということね。つまり、信用がない」
横から――
カーシャは微笑して言った。
「……まあ、そうです」
肩を落とすナーサ。
「3年ほど前、エルフの
こういう次第ね。
カーシャの淡々とした説明。
ナーサは、無言でさらに落ち込む。
「はあ、そんなところもあるんだなあ?」
「冒険者ギルドも、ところどころで差があるようね」
マコネたちがそんな会話をしている横で――
バッキーはジッとテラの背中を見ていた。
何か話すべきなのか。
でも、何を?
どう話すというのだろう。
悶々とした、整理のつかない気持ち。
そんなものを抱えたまま、バッキーは歩き続けていた。
奥へ、奥へ。
進むうちに、周辺の景色が目に見えて変わり出す。
獣やモンスターの死骸も見えなくなって――
あちこちに、枯れた木々や草が目立つようになった。
「こいつぁ……。確かに妙だよな」
マコネはかがんで枯草を見る。
「変な薬、毒薬でもまかれた……?」
周辺を見て、バッキーは不安にかられる。
除草剤。
枯葉剤。
産業廃棄物。
前世の、嫌な単語が頭の中でリフレインしてくる。
「ううっ……」
突然。
ナーサが顔を青くしてうずくまる。
冷や汗。
思考もぼんやりとしているようだ。
「お、おい!?」
叫ぶマコネ。
「…………」
テラも、足を止めて振り返っている。
「うむむ……」
バッキーはナーサを抱きかかえながら、うなっていたが――
「……もしかして」
小さくつぶやき、荷物から水筒を取り出す。
それをナーサにゆっくりと飲ませていった。
「あれ?」
マコネは水筒を見て、首をひねった。
水かと思っていたが……
――甘い匂い?
「うう…………」
やがて。
少しずつ、ナーサは落ち着いてきた様子。
「マコネさん、こっちへ!」
すると。
バッキーはいつになく鋭い声で叫んだ。
「お、おうっ」
一瞬驚くマコネだが、すぐに反応する。
バッキーはマコネが近くによると、
「*****………!」
呪文を唱えて、魔法を発動させた。
「これは」
カーシャは少し目を見開く。
呪いや、それに近い攻撃魔法を防ぐもの。
――
それに感心しながら、
――鬱陶しい……。
ハエでも追い払うように、軽く手を振るう。
次の瞬間。
何かが、散っていく。
テラは片手で帽子のつばを押さえながら、前方を見ていた。
「なんだってんだ? おかしな雰囲気じゃあったけどよ……」
怪訝そうなマコネに、
「エナジードレイン」
カーシャは言った。
「そりゃあ、相手の精気とか魔力を吸い取るっていう、あの?」
「ええ。少なくとも、同じ系統のようね」
フン、と。
小さく鼻息を出しつつ、カーシャは冷たい眼で遠くを睨んだ。
「あなたたちは、さっきの防御魔法で当分は安全だから心配はいらない」
「いや、でも」
姐さんは――
マコネが言いかけると、
「す、すみません……」
ナーサを抱きかかえ、治癒魔法をかけながらバッキーが、
「緊急でしたし、リーダーやテラくんなら平気だと判断して……」
「そう。その判断は正しいわね」
カーシャは上を指した指をクルクル回しながら、
「経験上わかってたけど、私はこういうタイプの魔法には耐性があるから。ま、それはどうでもいいとして」
興味深げに振り返り、
「さっき、妙なことをしてたわね? 砂糖水かしら? そんなもの飲ませなくても、治癒魔法で十分だったんじゃないの?」
「え、ああー……」
質問されたバッキーはちょっと照れながら、
「できたとは思いますけど、こういう場合、回復しても負担が大きくなるので。それと……話を聞いて、もしかしたら、と準備をしてたんですよ」
「準備ってのは、その砂糖水かい?」
「うん」
横からたずねるマコネに、
「倒れたヒトの症状で、ひょっとするとって思ったから。ゴトクさんに聞いたことがあったし」
魔法の訓練。
その中で、
「エナジードレインってのは、相手の精気っつうか、体力を奪う厄介なもんでな?」
ゴトクはついでという感じで説明した。
エナジードレイン。
他のものと異なり、攻撃は受けた自覚はほとんどない。
自覚症状は――
めまいや汗。強烈な疲労感や空腹感。
ついには、倒れて一歩も動けなくなる。
極めて危険なものだという。
「よほど経験や感覚に秀でたヤツじゃなけりゃ、ダメージが出てからやっとわかる。そういうもんだ」
「ははあ……。あ、じゃあ、リーダーとかは」
「ありゃ違う意味で気づきにくいだろうな。喰らってもまず効かねえからな」
「なるほど、そういう……」
「ただ? 余裕と準備があるなら、素人でも応急処置はできる。そうだな、まず砂糖水が一番用意しやすいが、こいつを飲ませる。で、ある程度落ちついたらパンとかイモ類。パンは、麦から作ったもんなら応用はきくだろう。もっとも、あくまで応急処置だからな、戦線復帰はまず無理だ。よほど高レベルの治癒魔法でもかけん限りな」
ということだった。
その後。
「す、すみません……」
回復して立ち上がったナーサは、赤面して恐縮していた。
「完全に足を引っ張ってしまいました……。お恥ずかしい」
「まあそう気に病むなよ、ねーちゃん? あんたが倒れてくれたおかげで、エナジードレインに気づけてんだからよ」
マコネは、ナーサのお尻を軽く叩きながら笑う。
「ナーサですよ、マコネさん……」
ナーサは軽くマコネの手を払いながら、苦笑。
「なんなら、あなたはここで引き返してもいいけど?」
カーシャは淡々と言った。
「いえ。最後までついていきます」
ナーサは強い瞳で応える。
「そ。じゃ、行きましょうか」
こうして。
パーティーはまた動き出した。
「でも、バッキーさんはすごいでね、あんなハイレベルな魔法を……」
「あははは。ま、まあ? 色々あって? あと、先生が良かったから」
「それでも、すごいですよ。私もあんな風にできたらって、ホントに思いました」
ナーサはホッとため息をつき、
「できる範囲のことで、ヒトを助ける。そうすることで、世の中というか、社会は成り立って、動いていく。だから、あなたもできうる限りそうしなさい、と。私はそう言われて育ちました。私自身も、それに納得しています」
「自分でできる範囲なら、別にいーと思うけどね。何も
マコネは気楽な返答。
「そうですね……。でも、その範囲が狭くって小さいことを、実感させられることばかりですけど」
「悩むことかね、それ。身の丈にあわねーことしたって無理だろ? かえって悪くさせるかもしれねーしな」
マコネは不思議そうな顔。
「ホントですね」
ナーサは苦笑して、
「……テラ、さんでしたよね。このあいだは、失礼なことを言ってしまいました。ごめんなさい」
前に行くテラにそう言った。
「ヒトにえらそうなことを言える立場でもないのに……。ほとんど、八つ当たりでした」
頭を下げるナーサ。
それに、
「別に文句を言われるおぼえもないが――」
テラは歩みを止めない。
進み続けながら、
「謝られるおぼえもないよ」
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人