破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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登場キャラクターたちですが
いただいた感想で初めて、

「あ、こいつはこんな側面も」

「実はこんなだったのか」

と、気づかされることも多いです

いつもありがとうございます


その79、無縁墓に灯はともった-4

 

 

 

 

 

 

 

 突風がふいて、消えた。

 ナーサが認識できたのは、そこが限界。

 後は――

 バラバラになったモンスターの死体が散乱しているだけ。

 

「やるもんだなあ、あのあんちゃん」

 

 頭の後ろで組み、マコネが言った。

 

「プッツンしたオウルベアだの、レッサードラゴンだの。かなり厄介なはずだぜ?」

 

「やっぱ、すごいんですよね?」

 

「そりゃな。姐さんといれば感覚狂うけど、1匹2匹ならともかく、こう続けざまだとなあ」

 

 バッキーの問いに、マコネは渋い顔。

 

「けど。話どおり、腹を減らしてプッツンしたって感じだなあ……。餌はそれほど苦労しねーはずだけど」

 

 と、あたりを見る。

 

 よくよく観察すれば――

 あちこちに、食い散らかされたモンスターや動物の死体。

 否。

 残骸か。

 

「まあ? ともかく、先に進んでみないとどうにもならないわ」

 

 カーシャの一言。

 それで、臨時パーティーはさらに進みだした。

 

「ところでメガネのねーちゃん」

 

「……私は、ナーサ・ビーという名前があります」

 

 マコネの声に、ナーサはムッとした顔で振り返る。

 

「おっと、そりゃあ失礼。育ちが悪いもんでね、カンベンしてくれよ」

 

「そ、そうですか」

 

 素直に頭を下げるマコネ。 

 これに、ナーサは逆に面食らった顔。

 

「そんで、さっきの続きだけどな。怪しいとこを調べるって、使い魔とかはどうだったんだい? あれなら、もうちょい安全に偵察できるんじゃねーの?」

 

「それは、真っ先に試しましたが……」

 

 何らかの要因。

 それによって、使い魔と術者の視覚共有がうまくいかず――

 使い魔も帰ってこなかった。

 

「ありゃまあ……。そりゃどう考えたっておかしいじゃねーか。もっと人数そろえて準備をして、そんで調べるべきじゃないんかねえ? こんなもん、とっくにわかってるはずだろ」

 

「……お金がないんですよ」

 

 どんよりした顔で、ナーサは答えた。

 

「金がないって、セーヅの街は温泉でもうかってるんじゃねーのか?」

 

「利益はありますよ、街には……」

 

 ナーサがため息をついた後、

 

「つまり。ギルドにお金がまわってこない、ということね。つまり、信用がない」

 

 横から――

 カーシャは微笑して言った。

 

「……まあ、そうです」

 

 肩を落とすナーサ。

 

「3年ほど前、エルフの死霊魔術師(ネクロマンサー)が起こしたアンデッドの大量発生。これの始末が実にお粗末だった。それ以降、街は自分たちで護衛を雇い、領主に陳情と資金を出して、領主の騎士団……の、協力を仰いだと」

 

 こういう次第ね。

 

 カーシャの淡々とした説明。

 ナーサは、無言でさらに落ち込む。

 

「はあ、そんなところもあるんだなあ?」

 

「冒険者ギルドも、ところどころで差があるようね」

 

 

 

 

 マコネたちがそんな会話をしている横で――

 

 バッキーはジッとテラの背中を見ていた。

 

 何か話すべきなのか。

 でも、何を?

 どう話すというのだろう。

 

 悶々とした、整理のつかない気持ち。

 そんなものを抱えたまま、バッキーは歩き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 奥へ、奥へ。

 

 進むうちに、周辺の景色が目に見えて変わり出す。

 獣やモンスターの死骸も見えなくなって――

 あちこちに、枯れた木々や草が目立つようになった。

 

「こいつぁ……。確かに妙だよな」

 

 マコネはかがんで枯草を見る。

 

「変な薬、毒薬でもまかれた……?」

 

 周辺を見て、バッキーは不安にかられる。

 

 除草剤。

 枯葉剤。

 産業廃棄物。

 

 前世の、嫌な単語が頭の中でリフレインしてくる。

 

「ううっ……」

 

 突然。

 ナーサが顔を青くしてうずくまる。

 冷や汗。動悸(どうき)の乱れ。

 思考もぼんやりとしているようだ。

 

「お、おい!?」

 

 叫ぶマコネ。

 

「…………」

 

 テラも、足を止めて振り返っている。

 

「うむむ……」

 

 バッキーはナーサを抱きかかえながら、うなっていたが――

 

「……もしかして」

 

 小さくつぶやき、荷物から水筒を取り出す。

 それをナーサにゆっくりと飲ませていった。

 

「あれ?」

 

 マコネは水筒を見て、首をひねった。

 水かと思っていたが……

 

 ――甘い匂い?

 

「うう…………」

 

 やがて。

 少しずつ、ナーサは落ち着いてきた様子。

 

「マコネさん、こっちへ!」

 

 すると。

 バッキーはいつになく鋭い声で叫んだ。

 

「お、おうっ」

 

 一瞬驚くマコネだが、すぐに反応する。

 

 バッキーはマコネが近くによると、

 

「*****………!」

 

 呪文を唱えて、魔法を発動させた。

 

「これは」

 

 カーシャは少し目を見開く。

 

 呪いや、それに近い攻撃魔法を防ぐもの。

 

 ――聖光防壁(ホーリー・ウォール)……。なるほど、ゴトクに教わったわけねえ?

 

 それに感心しながら、

 

 ――鬱陶しい……。

 

 ハエでも追い払うように、軽く手を振るう。

 

 次の瞬間。

 何かが、散っていく。

 

 テラは片手で帽子のつばを押さえながら、前方を見ていた。

 

「なんだってんだ? おかしな雰囲気じゃあったけどよ……」

 

 怪訝そうなマコネに、

 

「エナジードレイン」

 

 カーシャは言った。

 

「そりゃあ、相手の精気とか魔力を吸い取るっていう、あの?」

 

「ええ。少なくとも、同じ系統のようね」

 

 フン、と。

 小さく鼻息を出しつつ、カーシャは冷たい眼で遠くを睨んだ。

 

「あなたたちは、さっきの防御魔法で当分は安全だから心配はいらない」

 

「いや、でも」

 

 姐さんは――

 

 マコネが言いかけると、

 

「す、すみません……」

 

 ナーサを抱きかかえ、治癒魔法をかけながらバッキーが、

 

「緊急でしたし、リーダーやテラくんなら平気だと判断して……」

 

「そう。その判断は正しいわね」

 

 カーシャは上を指した指をクルクル回しながら、

 

「経験上わかってたけど、私はこういうタイプの魔法には耐性があるから。ま、それはどうでもいいとして」

 

 興味深げに振り返り、

 

「さっき、妙なことをしてたわね? 砂糖水かしら? そんなもの飲ませなくても、治癒魔法で十分だったんじゃないの?」

 

「え、ああー……」

 

 質問されたバッキーはちょっと照れながら、

 

「できたとは思いますけど、こういう場合、回復しても負担が大きくなるので。それと……話を聞いて、もしかしたら、と準備をしてたんですよ」

 

「準備ってのは、その砂糖水かい?」

 

「うん」

 

 横からたずねるマコネに、

 

「倒れたヒトの症状で、ひょっとするとって思ったから。ゴトクさんに聞いたことがあったし」

 

 

 魔法の訓練。

 その中で、

 

「エナジードレインってのは、相手の精気っつうか、体力を奪う厄介なもんでな?」

 

 ゴトクはついでという感じで説明した。

 

 エナジードレイン。

 他のものと異なり、攻撃は受けた自覚はほとんどない。

 

 自覚症状は――

 めまいや汗。強烈な疲労感や空腹感。

 ついには、倒れて一歩も動けなくなる。

 極めて危険なものだという。

 

「よほど経験や感覚に秀でたヤツじゃなけりゃ、ダメージが出てからやっとわかる。そういうもんだ」

 

「ははあ……。あ、じゃあ、リーダーとかは」

 

「ありゃ違う意味で気づきにくいだろうな。喰らってもまず効かねえからな」

 

「なるほど、そういう……」

 

「ただ? 余裕と準備があるなら、素人でも応急処置はできる。そうだな、まず砂糖水が一番用意しやすいが、こいつを飲ませる。で、ある程度落ちついたらパンとかイモ類。パンは、麦から作ったもんなら応用はきくだろう。もっとも、あくまで応急処置だからな、戦線復帰はまず無理だ。よほど高レベルの治癒魔法でもかけん限りな」

 

 

 ということだった。

 

 

 

 

 その後。

 

「す、すみません……」

 

 回復して立ち上がったナーサは、赤面して恐縮していた。

 

「完全に足を引っ張ってしまいました……。お恥ずかしい」

 

「まあそう気に病むなよ、ねーちゃん? あんたが倒れてくれたおかげで、エナジードレインに気づけてんだからよ」

 

 マコネは、ナーサのお尻を軽く叩きながら笑う。

 

「ナーサですよ、マコネさん……」

 

 ナーサは軽くマコネの手を払いながら、苦笑。

 

「なんなら、あなたはここで引き返してもいいけど?」

 

 カーシャは淡々と言った。

 

「いえ。最後までついていきます」

 

 ナーサは強い瞳で応える。

 

「そ。じゃ、行きましょうか」

 

 

 こうして。

 パーティーはまた動き出した。

 

 

「でも、バッキーさんはすごいでね、あんなハイレベルな魔法を……」

 

「あははは。ま、まあ? 色々あって? あと、先生が良かったから」

 

「それでも、すごいですよ。私もあんな風にできたらって、ホントに思いました」

 

 ナーサはホッとため息をつき、

 

「できる範囲のことで、ヒトを助ける。そうすることで、世の中というか、社会は成り立って、動いていく。だから、あなたもできうる限りそうしなさい、と。私はそう言われて育ちました。私自身も、それに納得しています」

 

「自分でできる範囲なら、別にいーと思うけどね。何も生贄(いけにえ)になるわけでもなし」

 

 マコネは気楽な返答。

 

「そうですね……。でも、その範囲が狭くって小さいことを、実感させられることばかりですけど」

 

「悩むことかね、それ。身の丈にあわねーことしたって無理だろ? かえって悪くさせるかもしれねーしな」

 

 マコネは不思議そうな顔。

 

「ホントですね」

 

 ナーサは苦笑して、

 

「……テラ、さんでしたよね。このあいだは、失礼なことを言ってしまいました。ごめんなさい」

 

 前に行くテラにそう言った。

 

「ヒトにえらそうなことを言える立場でもないのに……。ほとんど、八つ当たりでした」

 

 頭を下げるナーサ。

 それに、

 

「別に文句を言われるおぼえもないが――」

 

 テラは歩みを止めない。

 進み続けながら、

 

「謝られるおぼえもないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら

  • 親族(父方)
  • 親族(母方)
  • とりまき
  • 使用人
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