「souda.wareratogoutougatigauyouni,konomonotoROWDYmotigaunokamosirenai」
「kougekisaretara?」
「yawohanattenigeru.dokuhatukauna.nanikaareba,hyousiwoute」
早朝・辺境の村にて
目覚めは、カンカンと聞き慣れない音でもたらされた。
古ぼけた机から身を起こし、今の状況を考える。
「………ああ、寝落ちか」
この体は、かなり疲れが溜まっていたらしい。休憩のつもりだったが、一晩寝過ごしてしまった。雨戸の隙間から、日の光が差し込んでいる。窓を開ければ、すぐに早朝の冷気が部屋を満たした。
風邪を引かなくて良かった。今日のサイコロの出目は良いらしい。
背中を伸ばし、凝り固まった筋を伸ばす。
____________ゴリッと嫌な音が聞こえた。どこが鳴ったのかは考えたくない。俺も歳だというのか。まだまだ元気なつもりだったのだが。
「動かしても……大丈夫か。って、水がめが空じゃないか。おいっ、朝の水汲み担当は……………今は居なかったな」
顔を洗いたかったが仕方ない。水桶を肩に担ぎ、村の中心にある井戸に向かう。腰が壊れなくて良かった。
_____________ゴブリンに娘が拐われてから、もう7日だ。帰ってくる兆しはない。
奴らの巣窟へと何人か鋼鉄等級の冒険者が向ったが、村を出発して以降、何の音沙汰もない。制圧に失敗したのだろう。
だというのに、1日は変わらず巡っている。
朝の水汲みを俺がするようになった。拾える薪の量が減った。後は妻の生活習慣が少し狂った。それぐらいだ。
ほとんど代わり映えしない日常では、これらの変化は大きなものだ。だが、せいぜいその程度だ。日常という範疇に収まってしまっている。
この程度なのか。娘1人失って、たったこれしか変わらないのか?
こんなものでは、あっという間に慣れてしまいそうだ。
………だめだ。いま考えても仕方ない。
井戸の傍らで上着を脱ぎ、頭から水をかぶる。井戸水は痛いほど冷たく、思わず息を呑む。全身の皮が縮んだようだ。
そして少し後悔する。体を拭く物がない。乾いた布といえば、さっき脱ぎ捨てた上着しかない。寒い。
「何やってんだ炭焼き。そらっ」
「っと、ああ、猟師か」
振り返れば、猟師が手ぬぐいを投げつけて来た。弓と矢筒を背負っているのを見るに、これから山に入るのだろうか?
「助かる。このままじゃ凍えるところだった」
「気をつけろよ。しばらくは元気でいて貰わなきゃ困る」
「あ?どういうことだ」
カンカン、と、山から音がしてくる。
鐘の音ではない。この村に鐘はない。
それは不規則なようで規則的なリズムを刻み、よく乾いた硬い木材同士か、あるいは金属同士を叩き合わせているような音だった。
「……この音だ。お前は昨日何してた?」
「ずっと窯にへばりついてたな」
「なら知らないか。山奥で昨日から鳴ってるんだ。それも複数の方向からカンカンとね。うちの犬が興奮しっぱなしだったよ」
「自然の音、じゃないよな?」
「たまにだが笛の音も聞こえた。明らかに誰かが鳴らしている」
音が聞こえてきた方向に村はない。冒険者ならば村に降りてくればいい。
「………ゴブリンか?」
「さあ?ゴブリンが笛を吹くなんて聞いたことがない。もしもゴブリンだったら、よっぽど頭が良い個体だろうね」
ゴブリンの存在を思い出せば、自然と手が拳を握る。怒りがふつふつと湧き上がる。
娘が連れ去られる光景は、しっかりと脳裏に焼き付いている。
家の裏山で目を離した隙に、投石で娘が気絶させられていたこと。娘の首筋にナイフを当てられ、下手に動けなかったこと。群れでゲラゲラと笑いながら、娘を引きずって立ち去るあの姿!
「……ゴブリンか盗賊の類か。正体は分からないが、敵だと思っていい。友好的な存在だったら、村に降りて話かけるだけでいいからね」
猟師は皮袋を手に取り、井戸水を詰めた。ふくらんだ皮袋を腰に結え、ついでに小物を整理する。
「この村では、お前が1番力が強い。俺は山に入って状況を見てくる。村になにかあったら頼む」
「……娘一人すら、助けに行けない男にか?」
「なら守れよ。お前が強いことに変わりはない。後は妻と小さい息子だったか?もう家族を失いたくないだろ?」
………妻の体調は、あまりよくない。娘を拐われたショックと不安から夜遅くまで眠れず、昼前にベットから起きてくる。息子の前では何とか笑っているが、いつまで持つか分からない。息子も何かを悟ったのか、ここ数日は口数が少ない。
もしも息子までいなくなったら?あるいは妻が拐われたら?
「ひとまずゴブリンは、斧で叩き割ってやる」
「その意気だ………ん?」
犬が激しく吠え立てるのが聞こえた。かなり興奮しているのか、一向になきやまない。
これには聞き覚えがある。猟師の犬だ。
「____________来たか。炭焼き、戸を叩いて村長を起こしてくれ」
「わかった。ついでに斧を取ってくる」
急いで上着を着て走り出す。その勢いのまま戸を叩き、声を張る。
「村長っ、起きてくれ!」
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村長に事情を説明したあと、すぐに家に向かった。
何事もない様子に安心するのも束の間、寝ている妻を起こして、壁に立て掛けてある斧を持つ。
「なにかが村に来たようだ。恐らく良い相手じゃない。俺は村外れに行く。猟師の家の方だ。息子を頼む」
「………っ!大丈夫なの!?」
「何とかする。戸締まりをしっかりしとけ。くれぐれも拐われるなよ!」
それだけ伝えると、すぐに家を出る。
村外れにつけば、すでに村の男共が集まっているのが見えた。ピッチフォークや斧、鉈を手に取っている。
「遅くなった。豚飼い、状況はどうなっている?」
「炭焼きか。それがわからねえんだ」
「は?」
「何かいるのは違えねえんだが、姿が見えねえ。ただカンカン鳴ってるだけ__________」
「ゴブリンだ!キャベツ畑の方にいるぞ!」
その声が響くやいなや、皆の目が一斉にキャベツ畑に向く。
それを見たとき、まずは困惑した。
畑と雑木林の合間を歩く群れを、何かと見間違えたのかと思った。
どこかまとまりを感じる動きに、鉄帽を被り、布と毛皮を全身に纏った姿を見て、圃人の集団が迷い込んできたのかと思った。
だが、鉄帽の鍔の下から覗かせる顔は、間違いなくゴブリンで、
何匹かで肩に担いでいるのは、どう見ても人だった。
「人質かっ!」
「炭焼きの娘と同じだ」
「俺が弓で仕留める。この距離なら外さない。脅迫する暇なんて与えない」
「頼む。俺は回り込んで襲う」
「よし、炭焼きに続くぞ!」
ブンッと矢を放つ音が聞こえた。斧を握りしめ、奴らの元へと駆け出す。
だが、ゴブリン共を血祭りに上げることは出来なかった。
猟師の弓は、確かにゴブリンの胸に命中した。しかし、そのゴブリンはうずくまりはしたが、倒れなかった。胸に何か仕込んでいたらしい。
問題はその後のことだった。
奴らは驚くほど素早く動き、木々を盾にした。猟師の弓の射線を切ったのだ。
更にその直後、カンカンとあの音が響くやいなや、森のあちこちから矢が飛んでくる。
「矢だっ!」
「ぃぎっ、痛ってえ!」
「隠れろ!的にされるぞっ!」
その声を聞いた各々が、急いで家や荷車の影に隠れる。
矢の雨はすぐに止んだ。恐る恐る顔を出せば、ゴブリンは一匹残らず消えていた。
まんまと逃げられた。
「………豚飼い、大丈夫か?」
「痛え……腕が」
見れば、二の腕に矢が突き刺さっている。
傷口あたりの布を裂いてみれば、あまり深くは刺さっていないようだ。
所詮はゴブリンだ。弓を引く力は貧弱らしい。
「矢は浅いところで止まっている。良かったな豚飼い。お前の筋肉が矢を止めたぞ」
「ハッ……言ってくれる」
「村長から解毒剤をもらえ。毒が塗られれたら事だ」
応急処置は他の人に頼み、自分は猟師の方へ向かう。
猟師はゴブリンが去ったというのに、弓を片手に油断なく辺りを見回していた。
「猟師、いい弓の腕前だな」
「皮肉はよしてくれ。人質が肩に担がれていた以上、胴を狙うしかなかった」
「皮肉じゃない。防がれたのはともかく、矢は吸い込まれるように当たっただろう。防がれたのだって、しっかりと胸の中心にある板か何かを捉えたと言うことだしな」
実際、あの場で当てられる人間は多くないだろう。人質に当てないように、動いているゴブリンの体の中心に当てるのだ。称賛に値する腕前だ。
いや、まずはそれより聞くことがある。
「猟師、人質の顔は見えたか?」
「………ああ。いつぞやの冒険者だった。酷い顔だったが、死体じゃないと思う」
「そうか……」
「炭焼き、もう時間が経ち過ぎている。お前の娘が生きているかすら」
「わかっている。だが夢を見させてくれ」
ゴブリンは女を捕まえると、繁殖のためにはらみ袋にする。
無事ではないだろう。だが、まだ生きている可能性がある。
「まずは村の皆で話し合うんだ。奴らは村の手に負えない。冒険者を雇うのもタダじゃない」
「………そうだな」
____________山から、カンカンと音が聞こえる。その後、かすかに笛のような音も聞こえた。
首を洗って待っていろ。
何時になるかは分からないが、絶対に皆殺しにしてやる。
「oi!nazeonnnawooitekonakatta?」
「yaturamo,yawotobasitekita.nagareyagaatarukamosirenakatta」
「……mazuina.tekitositemiraretakamo」
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