DLCに背中を刺されないか今から不安です。
拝啓、ポピーの親父さん。
最近、日中は暖かくなってきましたがいかがお過ごしでしょうか。
頼みたいお仕事の募集条件にパルデアのジムバッチが必須なら先に言ってください。
面接で落とされてしまいました。こっちに来るまでの交通手段を聞かれただけで終わりました。
あと、所持金が511円しかありません。ちょうど今ミックスオレを買ったので残りは161円です。
もうダメポ。
野ざらしで寝ても凍死しない場所があるなら教えてくれると嬉しいです。
あ、ポピーの四天王就任おめでとうございます。
敬具
「はぁ…」
リーグ前のポケモンセンターの近くでミックスオレをちびちび飲みながら手紙風のモノローグを垂れ流す。
朝夕はまだ冷えるそうなのでこのままだとポピーの親父さんを頼るか路上で凍死するかの二択を迫られている。
しかし、このまま無理でしたと親父さんに言えるほど俺の神経は図太くできていないし、俺の数少ないもちものの1つ、プライドを投げ捨てることもできない。
「はぁ…」
なーんで“俺に任せてください”とか“ご期待に沿えるように頑張ります”とか言っちまったんだろうなぁ先週の俺。
「はぁ…」
あーため息が止まらない。
ミックスオレの残りを一気飲みして、空き缶をゴミ箱に投げ捨てる。
ひとまず小金稼ぎにポケモンバトル吹っ掛けてくるかなぁ
バトルシャトーみたいに金持ちがたむろしてそうな場所、無いかなぁ。
踵を返してテーブルシティを目的地に歩き出す。
さようならパルデアポケモンリーグ。ジムバッジを集めて出直すよ。
「あー!アンタムくん!どこにいくつもりですの!」
感傷に浸りながら去ろうとする俺を呼び止めたのは他でもない、プリプリと怒るポピーだった。
「スマン!こっちのミスでチャンピオン検定の方の面接受けさせてもうた!」
あぁんね、成る程そーゆーことね完璧に理解した。
ひとまずジムバッジが必須ではなかったことで一安心。
不機嫌なポピーにぶち込まれたリーグ本部の一室でさっきの顔面600族の人、チリちゃんさん(四天王の1人だった。それを聞いたときは椅子からひっくり返って、心配されてしまった。)から事情の説明と謝罪を受け取りながら履歴書と個人証のコピーを提出する。
聞いたところによるとリーグ本部の出入口はチャンピオン検定の受験者用と職員用の出入口が同じだったから起こったミスだそうだ。
まぁ俺も「(採用)試験を受けに来ました。」としか言ってなかったから起こるべくして起きたハプニングだろう。報・連・相は大事だと言うことを身に沁みて実感した。
今度からちゃんと言おう。
「えーっと、何々…アンタム、カロス地方のコウジンダウン出身。15歳…んんん?
……ちょーっと待っててもらってええか?」
「はい。大丈夫です。」
チリちゃんさんが少し驚いた様子で部屋を出ていった。
バカ正直に2年ニートやってたことを履歴書に書いたのが駄目だったんだろうか?
「アーンタっムくん!チリちゃんはどうでしたの?」
俺が1人で悶々と悩んでいると、チリちゃんさんが出ていったドアから小さい人影が飛び込んできた。
「んおっ!?
なんだポピーか。チリちゃんさんか?
コガネ弁もあってか話しやすい人だったな。
あと、ファンクラブとかありそう。」
チリちゃんさんへの率直な感想を俺の膝の上で聞くポピーはどこか嬉しそうだ。
「はわぁ~なかよしになれそうでよかったですの~」
今世のお袋が俺のポケモンスクールでの話を聞いた時のような反応をされた。
ピエン。
「そうだ!アンタムくん!チリちゃんとのおはなしがすんだらアンタムくんのポケモンをつかまえにいきましょう!
ここからちょっとにしのところにアンタムくんのすきそうないわタイプのポケモンがすんでいますの!」
「うーん、でももう手持ちは3匹いるし、大丈夫だよ。」
今のメンツの面倒を見るので正直手一杯なのだ。
今世でのポケモンは当然生きている存在だ。
生きている以上、健康維持の為に毎日のバランスの摂れた食事に十分な睡眠、適度な運動は欠かせないし、特性や性格、特長を把握することも必要だ。
だからこそ、多くのトレーナーはタイプで統一したり似た傾向のポケモンで手持ちを固め、必要なケアを近しい系統に揃えることで手間を軽減し、バトルの指示もやりやすいようにしている訳だ。
ゆえに、タイプや傾向を散らしたメンバーを用意できるのはよっぽどの金持ちか
つまりは、
主人公やチャンピオンってスゲーよな!マジ才能の塊だぜ!
それに比べて俺はクソザコナメクジだからメンバーを増やせないし幅も持たせられないぜ!
ということだ。
「でもアンタムくんのポケモン、パルデアのせーげんにひっかかってるからリーグトレーナーといっしょにいないとバトルにつかえないのです。」
「…マジで?」
「マジですの。」
現在ほとんどの地方ではよその地方から持ち込まれるポケモンに入国制限が掛けている。
極端な例を挙げるとすると、アローラコラッタ。
彼らはなんでも食べる雑食性なうえ、繁殖力がとんでもなく強い。
そのため、多くの地方が環境保護の名目で持ち込みを制限しているのだ。
ガラルではそもそも持ち込めないし、大体の地方でポケモンリーグの発行した許可証が必要だったり、その地方のポケモン博士に預けることになったりする。
ちなみにアローラコラッタの入国制限が1番緩いのはカントーだ。
理由は現地で繁殖した結果生まれる群れに属さないコラッタは繁殖する前に野生のポケモンとの生存競争ですぐ全滅するからだとか。
そのせいで修羅の国カントーとか言われてたりする。
「俺の手持ち、全員化石から復元したポケモンなんだけど…」
化石から復元したポケモンはその特殊な出自故に繁殖力が総じて低く逃げ出した場合も見つけやすいため、規制は緩めな場合が多いのだ。
「ここじゃ、かせきはほとんどでないのですよ。
だからせーたいけーにおよぼすえーきょーがみちすーです。つまりとーぜんのきけつなのです。」
「うそぉ…」
「おしごとのおはなしがおわったら、チリちゃんにそのおはなしをしないとですね!」
なんでポピーはこんなにテンションが高いんだろうか。
ほっぺたムニムニしてやる!おらぁ!
俺が膝の上のポピーを撫でくりまわしながら現状に打ちしひがれていると再び部屋のドアが開いた。
「待たせたなアンタム、無事合格や。」
入ってきたのはどこか吹っ切れた様子のチリちゃんさん。
「おぉ!」
「ふふんっ!やっぱりポピーのしんびがんはばっちりかんぺき!でしたの!」
「なんでポピーが一番得意気になっとるんや?
まぁエエわ。アンタム、ちょいと面貸しいや。
うちらのトップがバトルの腕前を見たいそうや。
せっかくやしポピーも着いてきい。」
返事をしながらポピーを膝の上から脇に下ろして席を立ち、ポピーと並んで後についていく。
チリちゃんさんに案内された屋内型のバトルコートに居たのはこう、モジャンボですか?って聞きたくなるようなボリュームの髪をした女性だった。
「はじめまして。私はオモダカ。パルデアポケモンリーグのトップチャンピオンを務めています。」
なんと言うか言葉遣いや所作の端々から超然とした、どこか人間離れした雰囲気を纏っている人だ。
「はっはじめまして。アンタムです。
カロス地方から来ました。」
「よろしくお願いしますね、アンタムさん。
さて、単刀直入に今回あなたに任せたい仕事について話してしまいましょう。」
オモダカさんは軟らかな物腰を崩さず淡々と続ける。
「あなたにお願いする仕事は、四天王が執り行う職務の補佐…所謂、秘書ということになります。」
「秘書ですか?」
「ええ。ですが四天王にお鉢が回るような仕事はポケモンバトルの実力が無ければ務まらないものもあります。
ですのでチリから聞いた通り、今からあなたのポケモンバトルの適性を計るため、ここでチリとポケモンバトルしてもらいます。」
オモダカさんの目をスッと細めてこちらを見つめる。
人の根っこの部分を探るような視線だ。
彼女は俺を視界に捉えたまま口を開く。
「チリ。使うポケモンはチャンピオン試験と同じものにしてもらいますが、試験のようにしなくても構いません。
もしもの時に背中を預ける相手になるかもしれませんからね。」
あまりにも自然な本気を出して構わない宣言。
俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「りょーかいやトップ。
さ、アンタム。早速やろうや。」
「…っはい!」
「エー返事やな」
「2人とも頑張ってですのー!」
ポピーの声援を受けながらバトルコートに立つ。
小さく揺れる腰に提げた3つのモンスターボールの内1つを左手に握りしめ構える。
「それでは、チリ対アンタムのポケモンバトル…開始ッ!」
「いくでッ!ナマズン!」
「頼むぞ!ユレイドル!」
さあパルデアに来て初となるポケモンバトルだ。気張っていこう。
・アンタム
転生者だが特にチートも無かったので前世の知識(fromポケ徹)で頑張ってる。
化石ポケモン縛りをしているのはポケモンの捕獲が苦手だから。
感想、評価など、ぜひお願いします。