短めとなってしまいましたが、楽しんでいただけると幸いです。
「さてニコルさんや、お待ちかねの拷問(笑)のお時間です。はい、ご飯あげるから情報吐いてね~。」
「誰が話すものか!あと全然待ってない!」
「まぁまぁそう言わずに、結構おいしいよ?」
「誰が敵の出すものなんて!」
ニコルを拷問(という名の茶番&食事)しようと熱されて湯気が立つ鍋を持ち、フラガさんとおやっさんを伴って懲罰房へ来たわけだが、案の定というべきか食べてくれる気配はなかった。ただこちらとしても引くわけにはいかないのだ。というのも、ニコルはここ1,2日間、水以外は一切口にしていない。もちろん何も食べ物を与えなかったわけではなく、ちゃんとクルーが食べているものとまったく同じ、ガンダムシリーズおなじみのペーストを与えていたのだが、一口たりとも口をつけなかったのだ。このまま放置すると餓死する恐れもあり、そうなった場合ZAFTからの非難が避けられないのはもちろんのこと、今後起こるだろうエターナル合流などに悪影響が出る可能性がある。そのため、何とかして生存させたいのである。
「ま、そう簡単に食べてくれるわけもないわな。フラガさん!おやっさん!やっておしま~い!」
「おうよ!やったるぜぇ!」
「なんかかわいがってたルーキーが知らんうちにバケモノになってた...」
「なっ、何をする!放せ!」
二人にニコルの両腕を固めてもらい、俺は鍋に箸を突っ込んでつゆが滴る熱々の大根を取り出した。
「おぉ、我ながらに美味そうだな...はい、あ~ん。」
しかしニコルは顔を背け、口を堅く結んでしまった。
しかし体は正直なようで、目の前でおでんを見せつけていると大きな音をたてて腹が鳴った。
そこで徹夜明けのテンション故か変なスイッチがパチリと入り、ニタニタと見たものに恐怖を与えるレベルの笑みを浮かべた。
「おやおやぁ?体は正直なようだなぁニコルよぉ...」
「クッ、殺せ!」
「いやさすがに殺さんぞ?普通に国際法ひっかかるから。」
一旦大根を鍋に戻して詰め寄り、目と鼻の先まで接近して目を覗き込んだ。
「ニコルどうする?話せば楽になるぞ?何も軍機を話せなんて言ってる訳じゃない、何かしらの秘密を話せと言っているんだ。仲間を売れば良いだけだぞぉ?ヒャハハハハハァ!」
「ぐぬぬ...それでも僕は!」
「ま、話さずとも無理やり食わすんですけどねぇ!オォラ口を開けろぉい!」
「えっ?あっ、ちょっ...モガァ!?」
目にも止まらぬ速さで鍋から熱々の具材を引っつかみ、むりやり口を開かせて突っ込むと、少々えずきながらも咀嚼し飲み込んだ。
「ゲホッゴファッ!?いきなり何をするんだ!」
「おでんを口に突っ込んだ。」
「そういうことじゃない!」
「まあ真面目な話をしとくと、飯食わせとかないと国際法上めんどくさくなるってのが1つ目。んで、腹空かせたやつにはたらふく美味いもの食わせたいってのが2つ目。ぶっちゃけ後者が本題だったりする。結構美味かっただろ?」
「それは、確かに美味しかったけど...」
「そんなら良かった。ほれ、残りをお食べ。おかわりもまだまだあるぞ?なんせ8,9人前は作ったんだ。」
「あ、ありがとう...こんなことでいいのだろうか...」
「よし、そんじゃ俺らも晩飯タイムですね。皆々様こちらのちゃぶ台を囲んでもろて。」
「お前それどこから出した?」
「気にしたら負けですぜ大尉、あいつはこういう奴です。」
「おう?ならもうそういうことでいいや(諦め)」
ちゃぶ台に人数分の食器とおでんが満杯に詰まった鍋を置き、使い捨ての食器に具と汁をよそって配り、食べ始めた。
「いや〜、やっぱり久々のおでんは染みますなぁ!」
「こいつぁ日本酒に合いそうだな、前呑んだ『かみころし』とか良さそうじゃないか?」
「あれ出汁使った料理に良く合うんですよねぇ。今度買いだめしとこうかな...」
「これ結構イケるな、おかわり頼む。」
「ぼ、僕もください!」
「OK、2人ともおかわりね。そこにお椀置いといてくださいな。」
和気あいあいと食事を楽しんでいた訳だが、そこに予想外の来訪者が現れる。
「あらあら、皆様楽しそうですわね。わたくしにも頂けますか?」
「ら、ラクス様!何故あなたがこんな所に!?」
「ラクス様の乗ってた船が沈んじまったみたいでな、うちのストライクが救命ポッドを拾ってきたって訳。」
「沈んだ!?お前たち連合軍のせいで...」
「わたくしはこの方々に助けられたのですから、感謝こそすれど恨むことはできませんわ。」
「いや、こればっかりはニコルが正しいです。所属が違うとはいえ、うちの軍の人間がやったことですから。改めて俺の方からも謝罪を、申し訳ありませんでした。」
「いえいえ、貴方達は命の恩人ですから。先程も申しました通り、感謝こそすれど、恨むことは出来ません。」
「そう言って頂けるとありがたいです。さて、お腹も空いたでしょうし、おでんはいかがですか?お好みに合わせてよそいますよ。」
「わたくしおでんというものが初めてでして、オススメのものをお願いします。」
「了解しました、少々お待ちを。」
鍋の中に残っていた具の中から、特に味が染みていそうな大根とちくわ、人参に丸天をチョイスし、汁も器にたっぷりと入れてラクスに手渡した。
「お待たせ致しました、こちらおでんになります。」
「いい匂い...いただきますわ!」
手渡すや否や、ラクスはその目を年相応に少女らしく輝かせ、余程腹が減っていたのか一心不乱に食べ始めた。
「そんでもって、フラガさんとニコルの分ね。」
「サンキュ。」
「ありがとうございます。」
「あいよ、じゃんじゃん食べてな。」
「いい匂いがすると思って来てみれば、やはりお前か。」
背後からの声に振り向いて見れば、そこに居たのはバジルールさん。どうやら部屋から脱走したラクスを探して艦内を走り回っていたところ、ここにたどり着いたらしい。
「バジルールさんも食べます?」
「大根多めの人参少なめ、ちくわマシマシで頼む。」
「いつものですね。そう言うと思いまして、美味そうなのいくつか残しておきましたよ。はいどーぞ。」
「ありがとう。」
そんなこんなで食事をとりつつ雑談していると、話題はラクスのことへと移っていった。ちなみにフラガさんとおやっさんは機体の調整があるとかで先に戻ってしまった。あらかじめメカニック班で仲がいいメンツに押し付けてお願いしといてよかったぜ。
「そういえば、ラクス様に少々お願いがありまして...」
「いかがなさいましたか?」
「俺の母はプラント生まれでして、その影響もあって家族全員あなたのファンなんです!両親に見せたいので、一緒に写真撮っていただけませんか?」
「その程度でしたら、いくらでも構いませんよ。握手やサインもして差し上げましょうか?」
「いいんですか!?やりぃ!」
「お二方も一緒にいかがですか?」
「いえ、私は...」
「バジルールさんも写りましょーよー!せっかくの機会ですから!ニコルもカモーン!さっき開けたまま鍵かけるの忘れてたせいで、鉄格子開けられるからさ!」
「それ言っちゃっていいんですか?すぐそこに上官の方がいますけど...」
「ッスゥー...麗しくて聡明なバジルールさん、めちゃんこ尊敬してます!」
「露骨に媚を売るな!全く...そんなことをせずとも、今回は見逃してやるつもりだったさ。」
「アザァァァァァス!それでは皆さん撮りますよ!集まって、レンズを見てください!」
ポケットから個人用の端末を取り出し、カメラアプリを起動して3人を呼び集めた。
「いきますよー!ハイ、チーズ!」
「どうでしたか?」
「ばっちり全員写ってます。ニコルの表情だけは若干微妙ですけどね。」
「...僕はもうつっこみませんよ。」
「私の部下がすまんな。」
「いつもこんな調子とは、あなたも大変でしょう。」
「まさか敵軍の者に心配されるとは思わなかったが、まあなんだかんだで慣れた。タチバナ、私とラクス様ははそろそろ戻るぞ。」
「了解です、食器は回収しとくんで、そこらへんに置いといてください。」
「わかった。ではラクス様、名残惜しいでしょうが、お時間です。お部屋までご案内します。」
ラクス様がバジルールさんに連れられて部屋に戻った後、俺はそのまま鍋と食器を持って、MSハンガーに向かった。
「ジェイク!約束のブツを持ってきたぞ!」
「もー遅いっすよ!そろそろ戻ろうかと思ってたんすから。」
「ごめんって。ほれ、少ないけどおでん持ってきたぞ。」
「あざす!食い終わったらどうすりゃいいっすか?」
「とりあえず、俺のロッカーのとこにでも置いといてくれ。」
「了解っす。ちなみに、タクミ先輩はこの後どうするんすか?」
「この後?ウィズ回収したら部屋帰って普通に寝るかな。整備はどんな感じ?」
「ばっちり終わらせたっす。今回は損傷も少なかったですし、すぐ終わりましたよ。」
「いつもありがとな。」
「いえいえお気になさらず。これが俺たちメカニックの仕事っすから。そんじゃまた明日~」
「おう、また明日。さてと、ウィズー!起きてるかー!」
【私に睡眠は必要ありません。調整はすべて完了していますので、アサルトから私を取り外しても問題ありません。】
「OK、そしたら帰るか。」
【そろそろ睡眠をとられては?前回の出撃では小規模とはいえ戦闘もありましたし、バイタルサインも少々乱れています。】
「...そうだな、今日は寝るか。」
【声色がいつもと5.24%違いますね、何か気になることでもありましたか?】
「いや?ただ昔の相棒のことを思い出しただけだよ。声も似てるし、徹夜明けに心配してくるのもそっくりだ。」
【もうお忘れになったとは思えませんが、私を作ったのはあなたですよ。私の声を聞いて思い出すとは、その方をモデルに制作されたのですか?】
「まあ、そういうことになるかな。さて、この話はここまでにして、さっさと帰ろう。」
その後は部屋に戻って寝間着に着替え、ベッドに入って一日が終わる。
そのはずだった。
(ゴミ混じりのハーフコーディネーターごときが、艦長である僕に意見するな!)
聞こえてくるのは奴の声。夢に見たのは思い出したくもない記憶。今までの人生の中で、間違いなく一番のトラウマ。
アークエンジェルに来る前、アドミラルに乗艦していた時の記憶。
夢だとわかっていても覚めることはできない。
今夜もまた、長い夜になる。
アンケートの回答期限は次回更新までとさせていただきます。
次回からはオリ主のトラウマを掘り下げる回が2,3話分ほど続く予定です。
本編がなかなか進みませんが、ご承知おきください。
ウェンディ生存ルートのスピンオフ、どうする?
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『始まりの戦士』と同時進行で投稿する
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『始まりの戦士』が完結してから投稿する