オレの部屋には、おにころを飲んで出来上がった酔いどれ女が1人。
パック一本でもこうなってしまうのか。
味を楽しむというよりは酔えれば良いお姉さんのことだ。
おにころは結構強い酒なんだろう。
居酒屋で酒の種類やカクテルの作り方は覚えたが。
味や、何がどれくらい強いアルコールなのかには詳しくはない。
こうしてお姉さんを見ていると、わざわざ飲みたいとも思えないしな。
酔ったお姉さんは背中に絡みついてちゅっちゅっとリップ音を響かせている。舌打ちかな?
絡み酒なのは知っていたが。こんな事、他の人にもやってるんじゃないだろうな。
オレが妙な気を起こしてしまう前にやめてほしい。
……が、それを直接伝えてしまうとより激しくなる事は目に見えている。
こういう時は放っておけばいつの間にか満足して寝ているので無視だ無視。
話の流れで今日はいつも以上に甘えて来そうだなとは思ってはいたが。酒は飲ませるべきではなかったか。
しかし愛情表現が直接的すぎる。
「ねえねえ〜おしおくん耳かきして〜」
「……しょうがないですね」
こうやって甘やかしてしまうからダメなんだろうか。
でも、お姉さんが元気ないのをみるとどうしても甘やかしてしまう。
中途半端なのはいけないと思うのだが。甘え上手なんだよな。
「あ゛〜〜」
オレは腰に抱きついているお姉さんを引き剥がして綿棒を取り、一本台所で水を出し水分を含ませてる。
後ろで何やらぶーぶー言っているが無視だ無視。
準備が整えば、オレは正座を少し崩した体勢で座る。正座は痺れるからな。
オレが座ったのを見て、意気揚々と膝に頭を乗せてくるお姉さん。
嬉しそうで何よりです。
濡らした綿棒をティッシュで拭いて余分な水分を拭き取る。
濡らしすぎていると耳の中に水が入ってしまう。少し湿ったくらいで充分だ。
綿棒が良い感じの湿り具合になったら、まずは拭いたティッシュで耳の凹凸を掃除する。
一番汚れているのは勿論耳の穴だが、この外の部分にも汚れはある。
力を入れて傷つけないようにこしゅこしゅと擦り落とす。
「絶対に動かないでくださいね。鼓膜無くなりますから」
「わかってるよ〜」
酔っ払いほど信用のおけないものはない。
動いても耳の中を傷つけてしまわないよう綿棒を軽〜く握る。
これなら奥に刺さることも、ましてや鼓膜を破ることもないだろう。
綿を持つように優しく握り、水気の含んだ綿棒を耳穴に侵入させる。
垢がたまりやすいのは浅い部分。深いところまでする必要はない。
奥で発生した垢も、手前に落ちてくる構造になっている。
むしろ、奥まで入れると垢を押し込んでしまう事になるため良くないのだ。
綿棒を穴の壁に擦り付けて小さく前後に動かす。勿論優しくだ。
綿棒に含ませた水で汚れをふやかして擦り落とす。
落ちた汚れはそのまま水で濡れた綿棒にくっつく。
それをゆっくり360°一周させる。
あらかた綺麗にできたら綿棒をもう一本出し、乾いた綿棒で水分を簡単に拭き取る。
汚れは落ちているが、取りきれなかったものもここで掃除する。
こっちはほとんど汚れていない。
「はい。じゃあ反対向いてください」
膝の上に乗った頭を押して、お姉さんをコロコロと転がす。
再び乗ってきたお姉さん、今度は反対側の耳を同じ要領で掃除する。
定期的に掃除している今でこそこんなものだが、初めてお願いされた時はもうゴッソリだった。
グロ注意と忠告しなければ怒られるくらいには酷かった。
お姉さんの部屋には耳かきが存在しない。それが全てだ。
「終わりましたよ〜降りてください」
「ん……」
終わった合図に頭をポンポンと叩く。
しかし名残惜しいのか動こうとはしない。まったく……
仕方なくそのままの体勢で休ませてやる。
暫くぼーっとしていたら、お姉さんはそのまま寝息を立て始めた。
これでは動くに動けないな。まったく。食べた直後に寝たら胃を悪くするというのに。
オレは膝の上で無防備に眠りこけるお姉さんの髪を撫でる。
こうしてみると、本当に膝の上で寝てしまった猫を撫でているようだ。
それにしても、お姉さんが恋人か。
ちょっとキツイが、これまでとあまり関係が変わらないのなら。
恋人という言葉1つでお姉さんが喜ぶなら、一度付き合ってみるのもアリか?
……いや。大人が高校生と恋愛とか通報待った無しだろ。
お姉さんが秘密にできるとも思えないし。やっぱ無しだな。
それにやっぱ合わないってなっても滅茶苦茶粘着してきそうだし。
軽い気持ちで言うと後悔する。もし言うなら、それは一生連れ添う覚悟ができた時だ。
ただ付き合うだけでなんて重い女なんだ。
……全部オレの偏見であり妄想だが。
もし。オレが20を超えて、どちらにも恋人ができてないようだったら……
責任、取ってあげても良いかなあ。
オレはお姉さんの髪を撫でながら、物思いに耽った。
しかし、
妙な事を考えたり、スマホで時間を潰していたが。そろそろ良い時間だ。
風呂に入ったり歯磨いたりしたいんだが。
ここにいつまでも寝かせる訳にもいかないが。お姉さんの幸せそうな寝顔が起こすのを躊躇わせる。
とはいえずっとこのままでいる訳にもいかず。
オレは起きないようにそっとお姉さんの頭を降ろす。
邪魔だったとはいえ、膝に残るお姉さんの温もりは名残惜しかった。
そろそろシャワーを浴びようと服を脱ぐ。上を脱いだところで、ふとお姉さんの方を見る。
……今のところ起きる様子はないが。シャワーの音で起こしても悪いな。
それに、このアパートには脱衣所なんてスペースはないので。
服を着る時は一度シャワールームから出て着替えを取らなければならない。
流石に裸は見られたくはない。申し訳ないがお姉さんの部屋にお邪魔しよう。
お湯を使ったことは後で謝ろう。
とりあえず着替えとタオルを用意して部屋を出る。
シャワーを浴びて。ほかほかになったまま、湯冷めしないうちに部屋に戻る。
不用心とは思うが、鍵を閉めていなかった玄関を開ける。
ワンルームであるこの部屋は、玄関を開けると遮る物なく部屋全てを見渡すことができる。
勿論、それはベッドの上もそうだ。今更、なぜそんな説明をしたのかというと。
オレの服を掴んでいるお姉さんがそのままの姿勢で固まっていた。
「何やってんスか」
「あひゅっ……」
変な断末魔を残してお姉さんは気絶した。
人間、気絶って本当にするんだ。本当に何やってるんだこの人は……
死に顔が結構安らかで腹立つ。というか、何気にベッド取られたし。
オレはお姉さんが抱き抱えていたシャツを奪い取る。
ふむ。イタズラはされていないようだが。
明日朝イチで共同の洗濯機で洗って干してから行こうと思っていたのだが。
予定に反して、何だか今すぐ洗いたくなってきた。
もうきくりお姉さんで
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良いや
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良くない