鉄華団と不死鳥の少女   作:こーくへぃ

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02:悪魔と名前

「こいつぁ……驚いた……」

 

 オルガ達が拾ってきたというガンダムフレームを調べていた雪之丞はつい独り言を言ってしまった。この機体、調べれば調べるほどに優れた改修が施されており、300年前の骨董品ということさえ忘れてしまうほどである。

 

「何よりこの武装の数……何を想定してるんだ?」

 

 この機体はほぼ全身に武装が施され、手持ちの武器もかなり用意されており一言で言うなら“殺意の塊”とさえ表現できるモノであった。

 ふと、コクピットの方を見るとダンテが乗り込もうとしていた。

 

「お、おい!勝手に……」

 

「大丈夫だって!これで俺も念願のガンダム乗りだ」

 

 勝手に起動させ、背中に阿頼耶識を接続する。モニターに文字が表示されリアクターに火が灯った。

 

「なになに、こいつの名前は……フェニックス か!

 ……ガハッッッ!!!」

 

 突如ダンテが白目を剥き失神寸前の状態になる。それを見た雪之丞は「またか……」とため息をついた。

 

「懲りない奴だなお前は……おいチビども!ダンテを降ろしてやれ!

 まったく、この武装の数とあのよくわからんユニットみりゃ専用の調整がされてるに決まってるってのに、それに……」

 

 この機体はどうやらOSからして特定の人物が乗らないと拒絶し、負荷をかけるようにプログラムされているようだ。

 

「チェッ!俺も無理かなぁ?」

 

 ライドが残念そうに肩を落とす。それを見た雪之丞はライドの頭をワシワシと撫でる。

 

「まだこんなにチビなのに無理しようとすんじゃねぇ。お前らはまだまだ食って走って寝るのが先だよ」

 

 戦う少年たちを見た時のメリビットの悲痛な声と、涙と、震えを思い出し、深いため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、アトラは例の少女が眠っている病室でリンゴの皮をむいていた。

 

(まだ目が覚めてないけど、話を聞くにお腹が減ってるだろうし)

 

「様子はどうだ?」

 

「あ、オルガ…………ユージン」

 

「な、なんだよ!文句あっかよ!」

 

「ユージン、お触りは厳禁だぞ」

 

「お、俺をなんだと思ってるんだよ!?」

 

「はっはっはっ……ところで、様子はどうだ?」

 

 冗談をひとしきり言い終わった後で本題に入る。この少女には聞くべきことが山ほどあるので出来れば早く目覚めてほしいというのが本音である。

 

「眠り姫ってとこかぁ」

 

「……だからってキスなんてしたらフライパンでお尻引っ叩くからねユージン」

 

「お、お前なぁ……」

 

「あの」

 

 全員が聞き覚えのない声に一瞬かたまり、眠っているはずの少女の方へと視線を向けた。

 少女はオドオドしていて、どうやらこちらを警戒しているようだ。

 

「目が覚めたか、あんたには聞きたいことが山ほどあるんだが」

 

「お、オルガ、そんなにグイッと行ったら体もおっきいしコワモテだし怖がっちゃうよ!」

 

「俺、ユージンって言います!よかったら友達からいっだぁ!?」

 

 オルガとアトラから両膝の裏に蹴りを入れられたユージンが床に倒れ込む。わちゃわちゃしている3人を少女は困惑したような表情で見つめていた。そして一言、か細い声を吐き出した。

 

「あ、あの……ここは……?わ、わたしは……だれ……なんでしょうか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「記憶喪失ゥ!?」

 

 顧問医師が到着して診察をしたところ、どうやら襲われてた際の衝撃で頭を強く打ち、そうなった可能性が高いとの事であった。

 

「薬とか手術とかで治るもんじゃないからねぇ……回復を待つしかないよ。何か記憶がある頃によく関わってた物とかに触れたりすると回復する例もあるみたいだし、色々試してみなさいな」

 

 そういうと診察を終えた医師はペコリと会釈をし、部屋から出て行った。

 

「関わりがある物ねぇ……いや、ガンダムフレームくらいしか浮かばないな」

 

「でも流石に病み上がりからモビルスーツに触らせるのはちょっとな」

 

「お前、えぇと……名前もわかんないんだったな」

 

「あ、名前ならこれかも!」

 

 そう言ってタカキがベッド横のテーブルに置いてあった青紫と白の金属製のドッグタグをさしだす。そこにはフレイヤ・レジーナと彫られていた。

 

「なんだよこれ?」

 

「最初救助した時にこの子が握ってたんだ」

 

 タカキは少女にドッグタグを手渡した。

 

「まぁ、一応それでいいか」

 

「フレイヤちゃんね、へへっ」

 

「ユージンデレデレしすぎ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、ここが食堂!私がご飯作ってるんだ〜」

 

 アトラは記憶喪失なことと、阿頼耶識があるということで流石に一般の施設に預けるということもできず、しばらく身を寄せる事になったフレイヤに鉄華団本社の案内をしていた。

 

「んーと、他に何か紹介する場所あったかなぁ」

 

「あの……」

 

「どうしたの?」

 

 遠慮しているのか人見知りなのかオドオドとしているフレイヤにアトラはニコリと笑いかける。

 

「か、体……洗いたい……です」

 

「あ、そっかぁ。そういや救助されてから一回もお風呂入ってないんだっけ。案内もしてかったし、ちょうどいいかも!」

 

 急遽フレイヤを入浴させる事になったのだが、流石にまだ体に怪我が残ってる子を1人で入らせるわけにはいかないので、ついでにアトラも一緒に入る事にした。

 

「どう?結構広いでしょ!女浴場はほとんど私しか使ってないからピカピカなんだよね〜」

 

「あったかい……です。ちょっと痛いけど……」

 

「よかったぁ〜」

 

(……そこまで大きくはないけど、何あの超整ったものは!?)

 

 クーデリアとは違う負け方をし、自分の胸を押さえて敗北感に打ちひしがれるアトラはフレイヤのことをまじまじと見つめた。怪我の跡がまだ残ってるものの、雪のように白い肌に美しい銀髪、恐ろしいほど整った顔をしていて同性の自分でもつい見惚れてしまう。

 

(でも、なんだろう……美しいけど、すっごい可愛いけど……なんだか美術品?って感じ……)

 

 フレイヤを見つめていると、なんだな本当に同じ人間なのか?と不安にさえなって来てしまう。こちらの視線に気づいたのか、少しおどつきながらもニコリと笑顔を返してくれた。

 

「わ、私の顔……へんですか?」

 

「ううん!むしろすごい可愛いかなぁ」

 

 少しだけ打ち解けた気がしたので、アトラは深く考えない事にした。

 一方その頃、オルガ達にガンダム・フェニックスの事について名瀬より連絡が入っていた。

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