言い訳はできません……ただ6月からは少しスピードは上がれると思います!
鉄華団は補給も兼ねて、倒した山賊達のMSを売る為にスギミノと呼ばれる町に立ち寄っていた。町そのものはそこそこの規模なのだが、流通の要所の一つらしく人が多い。建物も町に立ち寄る様な者のニーズに応えて工房や倉庫が多く、そこに簡易的な宿泊施設が備わっているようだ。その内の一つの工房を借りることになった。
「とりあえず寝る場所は豪華じゃねぇが……テントよりはマシだな。とりあえず明日は売り払うMS査定があるから、出発は明後日だ。支部の方はあれから特に襲撃もねぇみてーだし、知らぬ土地だ、安全に行くぞ」
団長の元に集まっての簡単な話が終わったあと、各自自由行動ということになった。殆どの団員は飲食店や居酒屋が立ち並ぶ繁華街へと向かったみたいだが、フレイヤとアトラとツカサはちょっとした食材だけ買い出しに行って簡単な料理を作って食べることにした。
「これ、うちの大好物ですねん。肉じゃがって言うんですけど」
「わぁっ……」
「美味しそうだねぇ」
初めて見る料理、しかも大量のそれを見てフレイヤは目を輝かせる。流石は地球、肉が形成タンパクではないのだ。
「ふっふっふっ……そしてこれ!」
「なにそれ」
「ビールですわ!焼酎もありますよ!楽しくいきましょ、楽しく!
……あれ、2人ともあんまお酒得意やないんですか?」
「私飲んだことない」
「わ、私もかな……」
「んふふ、2人とも子供じゃないんですから知っとくべきですよ!特にフレイヤはん、あんたこの中で1番年上でしょ!」
「んん……確かに年齢はそうだけど……」
「ほら!」
勧められるがままに一口、慣れないアルコールの味を我慢しながら胃に流し込む。体が熱くなって少しずつぼんやりとしてくる感覚はフレイヤの知らないものだった。
「……これがおいしいのぉ?」
「びーるっちゅうもんは、喉で飲むもんです!爽やかさがいいんですよ!」
「よくわかんないなぁ」
しばらくたって、フレイヤは慣れないアルコールの熱を冷ます為にベランダの柵に体を預けてボンヤリと空を見上げていた。
「月……おっきいなぁ……」
何やら懐かしさを感じる満月をただぼーっと眺めていると、カラカラと後ろからはきだし窓が開く音が聞こえた。
「アトラはんはもう潰れてまいましたわ。
そんなとこで黄昏てたら蚊に刺されまっせ〜」
ツカサはサンダルを履くと少しふらつきながらフレイヤの隣に、同じように柵に体を預ける体勢になる。
「大丈夫、私の血なんて汚れてくるから」
「…………?フレイヤはん、時々変なコト言いますよね」
「そう?」
「時々、誰と喋ってるかわからんようになる時があるんです。子供っぽい時もあればやけに落ち着いた雰囲気の時もありますし」
「そんなコトないけどなあ……」
「…………」
「…………」
数分間の沈黙が流れる。
「ウチ、拾い子ですねん」
「いきなりどうしたの」
「昔話したくなる時ありますやん?」
「……記憶ないし」
「私はありますから!」
「強引」
ツカサは口に当てた缶を傾けてビールを一口流し込んだ。
「3歳の時に麟燕会に拾われたらしいんですわ。そんで、みんなに可愛いがられて、心がピリピリしてたんですわ」
「ピリピリ?」
「姐さんにおんぶされて夕暮れを散歩した時とか、お布団で絵本読んでもらってる時とか、とにかく幸せな時に心がピリピリするんです」
「よくわからないけど…………」
「友達とかにはピリピリしないんです。でも、フレイヤはんと初めて会った時、ピリピリしたんです」
ツカサは話の合間にも一口、また一口と缶を傾ける。
「初めて、他人なのにピリピリしたんです。えへへ、なんなんでしょうねコレ」
「実は姉妹だったりして?」
「……多分、本当にフレイヤはんが好きなんです」
「私もツカサちゃんは大好きだよ?」
「……そういうのじゃなくて……はぁ、良いですもん、ふん」
不機嫌そうにフレイヤの胸に顔を埋める。フレイヤは困惑するも特に抵抗はせずに背中をさすってあげた。
「ツカサちゃん、飲み過ぎなんじゃ……」
「んん……あったかい……フレイヤはん」
少しずつ抱きしめる力が弱くなっていく。そしてツカサの体を支える力も弱くなっていき、そのままフレイヤに寄りかかるように体を預けてゆく。
「変な子だなぁ」
“……難儀だな。そして今のお前は鈍すぎる。……まぁ、自分の人格の変化に気づけと言うのが難題だけど”
「どう言う意味?」
“そのうち分かるさ、「フレイヤ」さん”
晴れ渡る空、1日の自由時間として商店街に出たフレイヤとツカサは二日酔いの気が残っているものの、なんとも清々しい朝である。こんな日には美味しいものを食べようとレストランへと向かっていた。
「良い朝だねぇ」
「フレイヤはん、お酒強いんですねぇ。アトラはんなんかまだダウンしてましたわ。
そ、そういえばウチなんか昨日恥ずかしいこと言ってた気がするんですけど……」
「そうだっけ?」
「んん……」
「なんかすごい可愛かったよ!」
「酔っ払うと別人なんです、忘れてくださいよ」
「あはは、よくわかんないけど……あ、ここ通ると近道みたいだよ」
フレイヤが指差したのは裏路地、2人はそこへと入っていく。人気がなく、表通りから少しずれているため比較的静かである。
「そういやツカサちゃんって良い匂いするよね」
「そうですか?」
「うん、アレだね。雅な匂いがする!」
「……私の匂い嗅いだんですか?」
「うん、昨日抱きつかれた時匂いがしたよ!」
「う、ウチそんなことしてたん……」
「うん!好きって言われたから私も好きだよーって!」
「…………」
笑顔のフレイヤの顔を赤くして俯くツカサは裏路地を進んでゆく。表通りからさらに離れて人気はもはやなく、街中だというのに静寂に包まれていた。
“オイ!後ろだ!”
瞬時に振り返るフレイヤ、2人の男がこちらに飛びかかってきているところだった。
「く……!ぬぁ!!!」
驚異的な反射神経で体を倒し、地面に背中がくっつく。男の体が上を通り過ぎてゆき、倒れた体を数秒もかからずに体勢を立て直した。
男がこちらを振り返り再度飛びかかってくる。次は避けられないのは確実である。
「ふん、バカが!」
起き上がる際に砂を掴んでいたフレイヤは男の顔面にそれを投げつけていた。男が低い悲鳴をあげて目をおさえている時に、フレイヤの全体重を乗せた飛び蹴りがガラ空きの胴体に炸裂した。男はうずくまってうめきながら腹を押さえている。数秒後、腹を弄って何かを探しているそぶりを見せる。
「探してるのはこれかな?」
“わ、いつの間に取ったの!?”
涙でぐしゃぐしゃの赤くなった目でこちらを見ながら狼狽える男は、片手で目を押さえながら片手を上げていた。
「フン、大の男が情けないね」
“……もう1人いなかった?”
「そう言えば…………あれ、ツカサちゃんは!?」
ツカサと男は既に居なくなっていた。フレイヤから汗が噴き出す。
「くそっ!」
男の肩に蹴りを入れると、男は簡単に倒れ込んだ。
「くそ……!クソッッッ!また油断した……!」
百合はよくわかんないんですが、なんか良い匂いしそうですね。
個人的には汗臭い男の絡みも好きですし、ヤマギとシノみたいななんか……なんというか……ちょっと上手く形容できないんですけど、ああ言うの好きです!
そう言えばツカサちゃんですが、元々アトラにやらせたかった役回りをやってもらってるんですねぇ。キャラが酷い目に遭うのが個人的なフェチズム(ティファレトの顔に裂傷が走るとか!)なんですが、流石に原作キャラにやるのは恐れ多いので、ほぼスケープゴートですね!なのでツカサちゃんがいると、自動的にアトラの存在がうすーくなっちゃいます……流石に原作キャラの腕が飛ぶとか、死ぬとかを描くのはかなり難しい……
次回以降ペース上げていけるかなぁ、と思います!