言い訳できないくらい多発で申し訳ございません!
目的地まで向かうトレーラーに積まれたフェニックスの中で、フレイヤはくつろいでいた。他の団員達はそれぞれ作戦のイメージトレーニングをしたり、緊張した顔で武器を磨いていたりと様々である。
「たかがメカニック1人に、それも飛び抜けて優秀というわけでないのにここまでやるとはねぇ……ん?」
フレイヤが半ば呆れた様な表情でめんどくさそうにシートに肘をついてくつろいでいると、モニターに“SOUND ONLY”と表示され、通信が入る。下には“HOD”という文字。
「おや?おやおやおや?キミも地上に降りてるのかい?」
『いや、宇宙だ。戦艦から直接フェニックスへと飛ばしている』
「へぇ、自分の劣情を抱く少女のために組織の技術を濫用とは、キミの部下達も報われないね?」
『そういうわけではない!
しかし……まさかお前が出てきてるとはな』
「嫌かい?まぁ、そうだろう
あっちがよかったかな?」
『そういう問題ではない。お前達がいないことがあの子の幸せだからだ』
フレイヤは心底バカにした様にくつくつと笑う。
「素晴らしい騎士様だね。実に感動的だ、おかしくて涙が出てくるよ」
『なんだと?』
「くっくっくっ、そう怒らないでくれよ。バカにするつもりはなかった」
『フン、本題だが……ティファレトがまた動き出した。やつ自身まだ動けないらしいが、宇宙に上がった時に迎え撃つ気らしい。』
「これはこれはご忠告ありがとう。しかしそれだけの為にこんなことをやってるのかい?こんな通信、組織の技術でも相当に大掛かりだろう?」
『フレイヤのためだ。もちろんお前は消えていいフレイヤだ、蛇女。
そろそろ時間だ、じゃあな』
ホドからの通信はプツリと音を立てて切断された。彼が残した最後の言葉、フレイヤに対する嫌がらせとしては最大に効果を発揮した様で、常に涼しげな表情だったフレイヤは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「実に……不快な言葉だよ」
目が覚めると三畳ほどの狭く薄暗い部屋だった。ひんやりとした室内と自分の体の形に温まった床、悍ましい臭いに吐き気を覚えながら起きあがろうとするが、体は諦めているかの様に力が入らなかった。
静寂の室内、自分の呼吸する音だけが頭の中で木霊する。この部屋にいた男達が大慌てで部屋を飛び出していき、扉の向こうの廊下でバタバタと行き来している音を聞いてから何の気配も感じない。
「たすけて……フレイヤはん……」
その微かな声は誰に届くこともなく、闇に吸い込まれた。
とある山の中、自然に囲まれ長閑な場所。天気は良く、清々しい雰囲気醸し出し……てはおらず、金属と金属のぶつかり合う轟音が響き、鳥は飛び上がり、鹿は走り出す。
「こいつらただの盗賊じゃないの!?数多すぎでしょ!!」
フレイヤ、三日月、アジー、ラフタ、ライドの5人は4機を葬り、残り14機のモビルスーツに囲まれていた。それぞれはあまり練度が良くない様で、数さえいなければ早々に全て鉄塊へと変わっていたであろう。
「それにしてもこいつら、モビルスーツに乗り始めて半年も経ってないんじゃないか?弱すぎる!」
アジーは冷静に相手の攻撃をいなし、反撃しようとするが別の敵が攻撃してきて上手く戦えない。
「チッ……持ってくればよかった……!」
山岳の勾配が多く、木々が生い茂っているこの場所では、どうやらバルバトス・ファーヴニルに搭載されている武装はかなり相性が悪い上に、まだ武装への三日月の理解が及んでいない為にうまく戦えない。
そして全員が薄々違和感を感じ取っていた。おそらくこの敵達はまともにこちらを倒す気はない様で、まるで何か時間を稼いでいる様に思えていた。
「まぁ、時間を稼がれるのはこちらも好都合だけどね。突入組が上手くやってくれるさ」
三日月達が上で暴れている間に、オルガを含めた歩兵が制圧しようというのである。これは鉄華団の得意戦術の一つであり、想定した訓練を幾度と重ねてきた為、半分が十代後半程度でもまるで特殊部隊の様な動きをしていた。もちろん本職の者達と同等というわけにもいかないのであるが。
「この体で言うのもあれだが、少年兵というのは実に……グッ!?」
余裕綽々としていたフレイヤは突然の頭痛に顔を歪める。
「まさかっ……!冗談……だろう!?
今キミが出る気かい……!?」
動きが止まったフェニックスに対し、敵のモビルスーツが剣を振るう。しかしまるで見切ったかの様な動きでそれを鉈で受け止めた。コックピットの中のフレイヤの目つきが変わる。余裕を持たない少女の瞳、ただ冷酷に言葉を告げる。
「……邪魔しないで」
接触回線を通じて聞こえたその言葉が盗賊が最後に聞いた声だった。轟音を立ててコックピットが潰れる、鉈による一撃で。
「待ってて……ツカサちゃん!」
そう呟くと、作戦を無視してフェニックスが高く飛び上がり、突入組が向かっている場所へと飛び立った。
「ちょ、フレイヤ!」
「あの嫌なフレイヤの予想通りだ、落ち着くんだよライド!」
オルガ達はフレイヤが捕まえてきた男を拷問して得た情報をもとに侵入経路として最も適しているとおもわれる洞窟の入り口の方へとモビルワーカーで向かっていた。
「ん……?おあぁあ!?」
大きな影が横切ったかと思えば轟音を立ててフェニックスが舞い降りた。唖然としていると、コックピットが開きフレイヤが出てきた。虚に見下ろすその眼は美しく、まるで宝石が埋め込まれてる様に無機質であった。
「ツカサちゃんのとこいくんでしょ」
「…………」
「乗せて」
「…………わかった、乗れ!」
時間もなく、この状況でフレイヤが素直に言うことを聞くはずもないので望み通りにする事にした。気休め程度にフェニックスに木々でカモフラージュを施し、フレイヤはオルガと同じモビルワーカーに乗り込んだ。
数分進むと、直径約5mほどの洞窟が見えてきた。拷問に掛けた男によると、本丸から少し離れた場所にあるこの穴は見張りが手薄で、もし大きな騒ぎが起これば比較的簡単に入り込めるとの事らしい。
「……嘘じゃねぇみてぇだな」
万が一の事があった場合、倉庫に残った団員によるノンストップで足の指全てを同じ様にすると脅しておいたおかげか本当のことを言っていたらしい。
(まぁ、やらせれねェけどな……)
入り口から少し進むと岩肌はコンクリートの壁にかわり、扉が点々としている。中を開けてみても空部屋だったり、適当なものが置かれてるだけなどを繰り返すだけで埒が開かない。
「この辺りはあんまり需要な区画じゃなさそうだな」
という事で一旦扉は開けずに奥へと進む事にした。長い廊下をすすむと曲がり角に差し掛かる。変わり映えのない景色と、敵が全く居ない事に退屈と油断をしていた16歳程の団員が隊より少し前に出た。
「オイ、逸るのはわかっけど列を……」
曲がる寸前にオルガの呼び止めに振り向いた瞬間、その団員は側頭部に何か衝撃を受けて倒れ込んだ。そして横向きに寝転がったその目は半開きで焦点があっておらず、頭部付近から何やら黒い液体が床に溜りを作っていた。
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