鉄華団と不死鳥の少女   作:こーくへぃ

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すみませんどんどん書くペースが遅くなってますね(^_^;)


28:憎悪の淵に

 倒れた団員が作った血溜まりは広がってオルガの靴を汚す。オルガは溢れ出さんとする感情を歯軋りして抑え込んだ。

 

「くそッ!逸るから……!

 てめぇら!気をつけろ!待ち伏せしてやがる!」

 

 しかしオルガの言葉を無視してフレイヤは曲がり角に近づき、何かを投げた。

 

 その瞬間、凄まじい閃光と爆音が響き渡る。おそらく部屋を漁ってるうちに見つけたスタングレネードという奴であろう。

 

「うぉあああ……!?」

 

 閃光は壁に阻まれて軽減されたものの、窓のないコンクリートの廊下では音はこちらまで襲ってきた。

 

 耳鳴りでうまく聞こえなかったが、おそらく4発の発砲音がして、独特な酸化臭が鼻を刺激する。

 

 フレイヤの方を見ると、銃を下ろして佇んでいた。恐る恐る曲がり角の先を覗いてみると約10m強離れた場所で男が3人いた。しかし、脳天を撃ち抜かれて動かない者、首元から大量の血が流れて痙攣してる者、肩の付け根をを抑えて苦痛に顔を歪ませている者と状態は三者三様である。

 

(……瞬時にこの距離で撃って4発中3発当てるのかよ)

 

 

 フレイヤがさらにもう1発撃ち込むと、生き残っていた男から力が抜け、骨がぶつかる鈍い音がして動かなくなった。

 しかしフレイヤも反撃を受けたようで、太もも部分を銃弾が掠めて膝丈のパンツごと浅く抉られて皮膚の内側がのぞいている。

 

 しかし自分の怪我すら意に介さずに歩き出した彼女の肩をオルガが掴んで止める。

 

「焦る気持ちわかるけど、せめて止血しろ」

 

 しかしフレイヤは振り向いてオルガを見上げて睨みつける。

 

「離してください、少しでも早く助けたいんです」

 

「フレイヤ、落ち着けよ……!」

 

「やめてください……!早くいかないと!」

 

 勝手に先に進もうとするその肩を掴んでいるオルガだが、フレイヤの馬鹿力に少しずつ引っ張られていく。

 

「この……!!」

 

 体重をかけて後ろに引っ張ると、フレイヤの体が反転して目が合う。

 

「いい加減にしろ!!」

 

 そう叫ぶと同時に鈍い音が鳴りフレイヤの小柄な体が壁に打ち付けられた。

 

「だ、団長!流石に女の子にパンチは……」

 

「フレイヤ!お前本当にいい加減にしろよ……!

 ……テメェ、まさかツカサが助かれば他のやつなんてどうでも良いと思ってんじゃないだろうな?」

 

 その言葉にあひる座りで鼻血を垂らしながらオルガを睨みつけていた表情が強張る。

 

「ち……ちが……わたし、そんな……」

 

「……だったら、なんでミカ達をほっぽり出してここに来てんだよ」

 

「…………それは」

 

「今そこに倒れてる奴だって、お前にとっちゃツカサよりも印象が薄いやつかもしれねぇ。けどな、俺は団長だ。全員を守る義務がある」

 

 フレイヤは黙りこくって俯き、少し震えているように見える。オルガは頭に手を置いて優しい口調で語りかけた。

 

「もう少し、俺を信じちゃくれねぇか?」

 

 数秒間、お互いが沈黙する。そして沈黙を破ったのはフレイヤの弱々しい「……はい」という返事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この辺りは山賊どもの寝床みてぇだな」

 

 あの後特に山賊とも遭遇せず、さらに奥に進むと扉が連なっていて中は薄い毛布やしわくちゃのシーツなどが雑に散らばっていた。おそらく鉄華団の襲撃に対して大慌てで出て行ったのであろう。

 

 特に何もなさそうなので隣の部屋に移ることにした。ドアノブに手をかけて捻ろうとした瞬間、ふと少し離れた場所にある扉に注意が向いた。

 

(…………)

 

 うまく説明はできないが、何か嫌な予感を感じたのだ。フレイヤはドアノブから手を離し、恐る恐るその扉に近づく。オルガ達もフレイヤの動きをみて、その扉へと注意を注いだ。

 

 そのドアノブを握って恐る恐るとびらをひらく。少し錆びているのか、この静寂の中喧しく感じる音を立てて扉が開いてゆく。胸にざわめく嫌な予感を飲み込んでゆっくりと覗き込んだ。

 

「ウッ……!」

 

 まず吐き気を催す生臭さに顔を背け、一瞬呼吸を整える。そしてその臭いを吸い込む覚悟を決めてもう一度中を見る。

 

「……!!」

 

 そこには裸の人間がいて、こちらに背を向ける様に横向きに寝転がっていた。小柄な体と柔な線からして少女である。

 

 ゆっくりと近づいて手を振るわせながら肩に手を置いた。

 

「……ツ、ツカサちゃん」

 

「ヒッ……」

 

 自分の鼓動にもかき消されそうなほど小さな声、そして何かボソボソと言っている様に聞こえる。

 

「も、もう……ていこう……しませんからぁ……」

 

 ツカサはノソノソと体を動かして受け入れる様な体勢を取る。

 

「もう、いたいのは……い、いやです……」

 

「______ッッッ!!!」

 

 顔を見た瞬間、鼓動の音が強まって体が熱くなるのを感じた。強く握りしめる拳は震え、こめかみに青筋が浮き出る。

 

 遅れて入ってきたオルガが異変に気づいて駆け寄る。

 

「うっ!?」

 

 オルガでさえ口を押さえて目を背ける。そしてすぐに扉の外で警戒している団員に対して「急いで2-3枚毛布を持ってこい」と指示を出した。

 

「……フ、フレイヤはん……?ゲホ……フレイヤはんやぁ……」

 

 ツカサの目に涙が滲む。

 

 声……これ程に枯れるのはどれだけ泣き叫んだのだろう。赤く腫れた目元と、滲むだけの目……どれだけの涙を流したのだろう。

 

「フレイヤ、急ぐぞ」

 

 オルガは急いでツカサを毛布で包み、抱え上げる。オルガの声や表情から自分と同じ様に怒りを感じている様だ。

 

(どうしてこうなったの?)

 

“クククッ……ボク達が原因なのはまず間違い無いだろうね”

 

 オルガを追って廊下へと出る。

(わたしのせい……?わたしがいたから……?)

 

“落ち着いて!そんなに怒ったら危ないよ!”

 

 体が熱くなって頭痛が走り、ふらつきながらもオルガ達に追いついた。

 

(わたしはなにをすればいいの……?)

 

“解放しろ!怒りは戦いの糧だよ!”

 

 

 

 

 

「4……!」

 

 バルバトスの腕がMSのコックピットを握りつぶし、手を開いて金属片やオイル、肉塊の混じった形容し難い物を振り払う。

 

「マジでなんなのこいつら!?どんだけ出てくんのよ!!!

 下手したらタービンズ(ウチ)よりMS持ってるじゃん!!」

 

 フレイヤが抜けてから7機のMSをラフタ達は屠っていた。相手が弱いからこそどうにかなっているが、明らかにただの山賊ではあり得ないMSの所有数に少しずつ疲労が蓄積していく。

 

「もぉっ、オルガ達まだなの!?」

 

 突如、爆音と共に土煙が舞う。その砂塵に浮かぶ黒いシルエットと赤い点の光。それが晴れると同時に禍々しいMSが佇んでいた。

 

『……アァン!?フェニックスはいねーのかよォ!?せっかくこのカクエンを持ち出したってのになぁ!?』

 

 カクエンのモノアイが有機的に動いていて、状況を把握しようとしている様だ。

 

『オイてめェら!無理に倒さなくていいから押さえとけよォ!?俺がタイマンで1匹ずつぶっ殺してくからなぁ!

 ……まずはテメェだぁ!!』

 

 ラフタの駆る漏影に青龍刀の様な武器を振り上げて飛び掛かるカクエン。三日月が割って入ろうとするも、ラフタに付いていたMSがこちらに回った様で、1人で6機に囲まれてしまい手が出せない。それに相変わらず戦わずにその場に抑えつける為に動いてる様で相手の攻撃を防いだり避けるだけでもなかなかに体力を使ってしまうのだ。

 

 

 漏影はクラブで迎え撃つ様に構えるも、まるで生物の様にそれをすり抜けて胴体へと攻撃が迫った。

 

『バカがッッッ!!ネズミですらねェ奴がが俺見てーなモルモットに勝てるかよォ!!」

 

「うぐっ!あぁあああ!!!」

 

 何とか無理やり防御し、青龍刀をいなした。しかし、完全に威力を殺せたわけでなく、左腕と左足に負荷がかかって動きが鈍った。

 

「ラフタ!」

 

 アジーが援護に向かおうとするも、やはり三日月と同じ様にまるで鳥籠の様に囲まれて身動きができない。

 

『ほら、これでもう1匹目だ』

 

 勝利確信したシャオはおおきく振りかぶって振り下ろす。ラフタの命が散る寸前、シャオは後方からきたそれに対し武器を振り迎え撃った。鉈と青龍刀がぶつかり合って火花が散る。

 

『来たかッッッ!!ケセドォ!!!』

 

「お前かッ!!!お前だなァァア!!」

 

 フェニックスのツインアイが激しく点滅した。




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