異世界行ったら最強の魔術師だった。でも本当は……。 作:nyaooooooon
――ついに、この日が来た。
気の遠くなるような年月をかけて。
ようやく、準備が整った。
ここは西の大陸の西端。
魔王は部隊から離れ、星を眺める。
ヴィルガイアを滅ぼしてから、1000年以上。
ひたすら、この時を待ち続けた。
彼の国が滅んでからは。
ヒトとの交戦をさらに減らし、こちらから攻めることは、全くしなくなった。
王の最期の魔術で、戦力を消耗したためだ。
さらに、ヴィルガイアを滅ぼしたことにより、時間が魔族に有利に働くと考えていたため。
その作戦は、望外の利益をもたらした。
愚かなヒト共は、こちらが攻めずにいると、同士討ちを始めたのだ。
偵察部隊を通して観察していると、明らかに防衛の練度が下がっていった。
特に魔術に関しては、明らかに衰退した。
習得が難しいものも多いのだろう。
魔術の多くは、少しずつ伝承が途切れ、使える者がいなくなっていったようだ。
攻め入るには、明らかな好機であった。
しかし、彼は慎重を喫した。
まだ、同胞の数が十分ではない。
そう判断した。
魔族の数が増えるのは、膨大な時間がかかる。
ひと組のつがいから、子が生まれるのに50年。
戦力として育つのに10年はかかる。
育たない子は、魔物に襲われて死ぬこともある。
求める数を揃えるには、まだ時間が必要だった。
100年経ち、200年経ち、500年経ち。
少しずつ、少しずつ、魔族はその数を増やしていった。
……そしてついに。
ヴィルガイアが滅んで、1000年が経った今。
彼が目標とした頭数が、揃った。
その数――100万。
100万の軍勢をもって、ヒト共を全て殺し尽くす。
それは全ての魔族にとって、これ以上ない愉悦であった。
「クックックッ……」
作戦を検討した結果。
かつて森で魔物と争っていた際に、最も有効だった方法をとることにした。
それは、挟撃。
戦力を2つに割り、半分を以前ヴィルガイアへ侵攻したルートで東の大陸へと向かわせる。
つまり、西の大陸の西端から、イカダで東の大陸の東端に送り込むのだ。
予期しない方向から50万もの魔族が攻めてくれば、ヒト共は大混乱だろう。
そちらの部隊で、ある程度の戦果を挙げたのち。
背後を脅かされた前線に、残りの半数で侵攻する。
今の戦力差なら、真正面から攻めても滅ぼせる自信はあった。
しかし彼は、ヒト共をもっと混乱させたかった。
襲来を予期していないヒトを狩るのは、魔族にとって極上の遊びだ。
ヴィルガイアと同じことを、大陸中で起こす。
今まで我慢させた分、部下たちを大いに楽しませてやろう。
これが、最後なのだから。
さぁ、楽しい宴の始まりだ。
魔王は、部隊の前へと歩み出て。
命令を下した。
星の瞬くその夜。
50万の魔族の軍勢が、東の大陸へ向けて出発した。