治安が終わってる世界に転生した話。   作:はない人

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第九話 ロボット工場

「おーい飯できたぞー。流石に休憩しようぜ」

「いいえ、だめです。せっかく良いデータが集まったんです!アンチクショウ共を倒すためにも鍛え直さなきゃ!」

 

そう言ってツバキはまたよくわからない機械をいじくり回し始めた。昨日からぶっ続けで12時間ほどやっている。

 

「期待しててくださいね!これができればねじれなんて簡単にぶっ殺……失礼。もう少し作業を続けます、朝食は部屋の前に置いててください」

 

最近は魂工房の武器を使ってもダメージが与えられないことが多く、プライドを刺激されたのだろう。

俺が武器を活かしきれていないせいでもあるし気持ちはわかるのだが自分の身体も大切にしてほしいものだ。

 

「まあ本人が大丈夫って言ってるし大丈夫かな?自己管理ができないタイプではないし」

 

「あっつぅ!?間違えたぁ!」

 

ガシャンという音と共にツバキの悲鳴が聞こえた。

 

「……本当に大丈夫かな」

 

 

 

「ビリオンさーん依頼きてますよー」

 

「サンキュ」

 

ツバキから封筒を受け取る。封筒のマークからしてセブン協会からの依頼のようだ。留め具を取り書類を見る

 

「さてと、依頼の内容は…フム?」

「どうしたんですか?なにか問題が…うーん」

 

書類を覗き込んできたツバキは俺と同じような反応をした

 

「都市悪夢ですか」

 

都市災害レベルは危険度ではなくそれにどれだけ金を払えるかで決まる。だから都市悪夢の依頼と言っても全てが危険であるとは限らないのだが…

 

「行きたくねえな、痛い目あったばっかだし」

「断りますか?これ任意の依頼ですし」

 

コーヒーをすすりながらツバキは言う。俺も断りたいところだが…

 

「流石に金がね…無いんだ。治療費とかその他諸々で」

 

K社は他の巣と比べて比較的治安が良い。そのため多くの人が住んでいる、勿論フィクサーも。そのためこの地区にも俺以外のフィクサー事務所はまぁまぁある。

さて、そんな中でフィクサーが一人しかいない事務所に選べるほどの量の依頼が来るだろうか?いいや、来ない、運が悪いと一週間は来ないこともある。むしろこっちから依頼を取りに行きたいくらいだ。

都市の星ならともかく、都市悪夢で断ってはダメだ。

 

「私の貯金使います?大体ごひゃ…」

「言わんでいい言わんでいい。お前に払ってもらうのはまじでやばい」

 

そんなこと言える立場じゃないのだが雇った年下の女性に変わりに払って貰うというのはあまりにも情けなさすぎるので勘弁してほしい。

 

「それは良いとしてと…」

 

会話をやめ、書類を見る。内容としてはK社の巣に突然工場のようなものが出現し、中からロボットがでてきた。近くにいた住民数人がロボットに殺害された。これ以上被害が広がる前に元凶を殺害、もしくは捕獲してこいというものだ。

ねじれが発生してからは偶に発生する程度のもので驚くようなことはない。だが一つだけ気になることがある。それは…

 

「工場の発生した場所はL社支部の跡地…ねぇ」

 

白夜、黒昼が発生してからは連鎖的に崩壊していったL社支部、そこから突然出現した工場。

怪しい匂いしかしない。

 

「……まっ悩んでも仕方ない。さっさと準備して行こう」

「了解です!あっでも無茶はしないでくださいね‥ビリオンさん毎回怪我してるんですから」

 

耳が痛い…

 

「へいへい」

 

 

 

目茶苦茶面倒くさい手続きを行い、K社の巣に入る。

依頼場所に行ってみると他に建物が建っていない場所にぽつんと工場だけがあった。巣には似つかわしくない錆だらけでボロボロの工場だ。

 

『地面に血痕がありますよ、結構激しくやったみたいですね』

「K社は巣の住民が被害にあったのに何もしなかったのかね。それはそれとして、行くぞ」

 

規制線をまたぎ工場に近づく。すると…

 

『侵入者ヲ確認シマシタ、命令二従イブッ殺殺殺』

 

どこからともなく物騒な音声を鳴らしながら60cmほどのミニカーが爆走してきた。

 

「それは予想できねぇよ!?」

『ブッ殺シマス!』

 

ミニカーのライトの部分から発射された針を避け、距離を詰める。追撃を弾き、針を装填している隙にミニカーを蹴り上げた。ミニカーは以外に軽く俺の首辺りまで飛んだ。

 

ギギィッ

 

金属の軋む音が鳴り響く。ミニカーがこちらに照準を向けるが、これなら俺のほうが圧倒的に早い。

 

『ブッ殺シマス』

「それしか言えんのかこのポンコツ!」

 

力まかせに刀を振り下ろしミニカーを両断する。断面を見てみると中はスカスカでネジの一本もなかった。ミニカーは空中で緑色に輝き、そのまま塵となって崩壊した。

 

「ツバキ、他にいるか?」

『いませんね、でも突然出てくるかもしれません』

「その時はまた返り討ちにしてやるだけだ」

 

刀を収め、工場の扉に触れる。おそらく鍵はかかっていない。

 

「行くぞ!」

 

手に力を込め、扉を押す。開いたと同時にバックステップをして様子を伺う。

 

「…何もないか?」

 

数秒待ってみたが奥からなにか出てくる様子はない。

 

『あれ?中が感知できなくなりました』

「どういうことだ?」

『扉の奥を見てみてください』

 

言われるがままに扉の奥を見る。あぁ…そういうことか

扉の先は真っ黒な空間だった。ライトで照らしてみても中は見えない。異空間を発生させるタイプなようだ。

 

「厄介なやつ引いたなぁ…」

 

愚痴りながら黒い空間に足を突っ込む。良かった、床はちゃんとある。

そのまま黒い空間の中に入る。一瞬だけ水中にいるような感覚がする。急なことで咄嗟に目をつぶった。

 

「ん…ん?これは…」

 

少しして目を開けてみるとそこは、割れた鏡を無理やり繋げたかのような、奇妙であり神秘的な空間だった。

鏡のようなものにはカニの腕が映えた芋虫、何処かのホテルで食事をしている人々、人差し指と戦っているフィクサーなど様々な物が写っている。

 

「変な空間だなこれ、ツバキは何かわかるか?」

『すいません、さっぱりです。…あれ?奥に扉がありますよ!』

 

そう言われて奥を見てみるとツバキがいった通り、扉が2つあった。工場のとは違う、赤い扉だ。

 

「ふぅむ」

 

2つの扉に違いはなく、全く同じだ。どっちに何があるのかわからないので適当に左に進む。本当はもっと慎重に選ぶべきだろうがこんなところにじっとしているわけにも行かない。

 

扉を開けるとまたも黒い空間が広がっていた。構わず進んでいく。

 

黒い空間をしばらく歩いていると周りが光りだした。光が収まると同時、視界に映り込んだのは赤く熱された鉄球だった。随分なお出迎えだ。

 

刀をバット代わりに鉄球を打ち返す。鉄球は近くにいた犬型のロボットに当たり、吹き飛ばした。

 

『バウッ!』

 

犬は素早く体制を立て直し、口から鉄球を吐いた。刀でもう一度打ち返す。直撃すればやばいがスピードはない。

 

俺が鉄球を防いだのを見ると、すぐさま犬は俺の方を向き口を開けた。鉄球を吐き出される前に接近して口を握りつぶす。メカメカしい見た目の割に脆い。

 

鉄球が体内で暴発したのか犬は腹部が焼けた鉄の匂いとともに膨れ、パァンと音を立てて破裂した。

 

『この部屋には他にはなにもないですね』

「そうみたいだな」

 

部屋を見渡してそう言う。戦闘に夢中で気づかなかったがこの空間も鏡のようなもので作られている。

 

「扉もないし、ハズレだったか」

 

もう一つの方行くか、そう思い後ろを振り向くと扉のデザインが変わっており、また黒ではなく銀色の不透明な空間が広がっていた。

 

『さっきとは違うエネルギーを放出してます。多分違う空間に繋がってますね』

「戻れねえじゃん……」

 

面倒くさいことになった。こんな訳わからんところに閉じ込められたとか冗談じゃない。早く元凶を見つけなければ。

 

さっさと銀色の空間に入り込む。銀色の空間を走っていると同じように空間が光りだす。

さて、次は何が出るか…

 

 

その空間はさっきまでとは違い古い油と埃、そして血の匂いがするモノクロの空間だった。中央には箱に望遠鏡が溶接されたような機械が置かれている。箱に一つだけある穴からはベタついた視線を感じる。

 

それを認識した瞬間、頭がこの機械から目を逸らせという考えで埋め尽くされた。凄まじい不快感だ、胃がムカムカして冷や汗が止まらない。

だが俺の勘は目を絶対にそらしてはいけないと言っている。

どうすれば良いのだろうか…

 

一瞬だけ悩んだあと、その機械を見つめ続けた。目を逸らせばこの苦しみはなくなるだろう。だがそれはあとから何倍にもなって帰ってくるだろうから。

 

身体から紫の煙のようなものが抜け、機械の穴に入っていった。

機械が震え、まるで中に人がいるかのように絶叫した。悲しみや憎しみ、怒りなど様々な感情がぐちゃぐちゃに混ざったような声だ。

 

機械は穴からどす黒い液がついたペンダントが吐き出し、それだけを残してまるで最初から存在しなかったかのように消え去った。

 

「…ッハァハァ…終わったか」

 

体から力が抜ける。冷や汗を拭い息を整える。キツかった、精神がごっそり削られたみたいだ。

 

「ツバキは大丈夫だったか?」

『私のことより自分を心配してください!精神汚染度がやばいことになってますよ」

 

ツバキが慌てた様子で言ってきた。どうやら本当に精神が削られてたみたいだ。急いでポーチからMP薬を取り出し、噛み砕いく。体の痛みが消え、視界が鮮明になった。

 

「ふぅ…よしっ回復した。次行こう」

 

ポーチに残りのMP薬を収め、扉を見る。今度は紫色の空間が広がっていた。

 

「先はまだ長そうだな…」

 

目茶苦茶不安だ。精神攻撃をしてくるようなやつがまた現れなきゃ良いが。

 

本当にひどい依頼だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ペンダントはいつの間にかポーチに瞬間移動してます。

銀の弾丸の外伝とか見たい?

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