治安が終わってる世界に転生した話。   作:はない人

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第十一話 旅行と襲撃

「美味いなこれ、何使ってるんだ?」

「フェルドンっていう豆ですね。猫のウ◯コから取り出したものらしいです」

「……」

 

珈琲を机に置いて口元を拭く。いや前世にも似たようなのあったしちゃんと処理されたものなんだろうが…

 

「んん、それは良いとして、次はどこ行く?まだ4時間は遊べるが」

 

俺達は現在10区で旅行中だ。このために2週間で都市伝説4件、都市疾病1件を少し無茶して片付けた。フィクサーという危なっかしい仕事をしているのだ、少しはリラックスしなきゃハゲるかねじれてしまう。

 

「それならあそこ行きませんか、サバン館。センク協会とリウ協会がそこで戦闘交流会するらしいですよ」

「良いなそれ! 見に行こう」

 

戦闘狂ではないし痛いのは本当に嫌だが戦っているのを見るのは好きだ。特にリウ協会は炎が映えてカッコいい。

珈琲を一気に飲み干してサバン館へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

センク協会のフィクサーが岩を容易に破壊する炎の拳をレイピアで捌いた。狙った場所にレイピアを突き、軌道をずらしたのだ。

リウ協会も負けてはいない。カウンターを咄嗟に足で防ぎ、投げ飛ばした。

 

お互い実力はほぼ互角だ。先程から惜しい、という場面もあるもののどちらも傷一つ負っていない。

 

やっぱり協会のフィクサーは強い。技術によって弱点をカバーしている。

 

「やっぱ戦ってるのを見るのは楽しいなぁ、思うだろカーナ?」

「最初に言う言葉がそれですかぁ、久しぶりに一言くらいはあっても良いんじゃないですかねぇビリィ?」

 

ポニーテールを揺らし、丸メガネを直しながらカーナが此方を向いた。

 

相変わらずの話し方にホッとする。リウ協会に入ってもこいつは変わらない。

 

「ごめんって、久しぶり。元気してたか?」

「ええ、元気ですよぉ。お前はどうなんですかぁ? 見たところ彼女でも出来たようですがぁ」

 

「え…えっと…」

 

ツバキがカーナを見て困惑する。まぁ説明もせずに俺等だけで話していたから当然の反応だが。

 

「彼女じゃねえ、うちのたった一人従業員のだよ。ツバキ、こいつはカーナ、俺がフィクサー始めたばっかだった頃の同僚だ」

 

大抵のフィクサーはまず他の事務所に入り、そこから残り続けるか独立して事務所を立ち上げるかに分かれる。俺は後者だった。

独立するまでの間所属していた事務所で俺とほぼ同じタイミングで入ってきたのがカーナだった。

 

「ふぅむ? 部下ですかぁお前もようやくボッチから抜け出せたんですねぇ。お姉ちゃん嬉しいです」

「ボッチじゃねえ、普通に友達おるわ!」

 

ボッチではない…ボッチではないが従業員はずっといなかった。そこは結構気にしてたのだ。ツバキが来た日は少しはしゃいでた。

 

「えぇ本当ですかぁ? 昼いっつも隅で食べてましたよねぇ」

「…そろそろカーナの番だろ、はよ行け」

 

カーナを押して無理やり行かせる。このまま話され続けたら溜まったもんじゃない

 

 

 

 

 

「ほっと、なかなかやりますねぇ。ではこちらも!」

 

レイピアを器用に弾き、カーナが掌底を繰り出す。掌底が相手の腹にクリーンヒットして火花と共に吹き飛ばした。

 

「カーナさん強いですね、余波がここまで来ましたよ」

「リウ協会で7年も戦い続けてたからな。パワーは完全にあっちが上だ」

 

リウ協会は受け持つ依頼の性質上あらゆる協会の中で最も戦闘を得意としている。それはそれとしてタイマンに特化しているセンク協会相手に優勢なのは凄いが。

 

「次はリウ協会の武術も習ってもいいかも…」

 

ボゴォッ!

 

会館の壁が突然破壊され、破片が飛び散った。

穴の奥から何十人ものリウ・センク協会のフィクサー達が入ってきた。

 

「…ツバキ、動くなよ」

「あっ、はい?」

 

フリーズしていたツバキにそう言い刀を取る。念の為持ってきたこれを振るうことになるかもしれない。

 

「おい、お前ら何やってるかわかってんのか? アァ!?」

 

破壊された場所の近くにいた男が苛立った様子で近寄る。しかしフィクサー達は何も反応を示さず男を見ようともしない。

 

「何とか言ったら[グジャ]…は?」

 

火花とはまた違った赤が飛び散り、男は倒れた。その赤は血液だった。男はリウ協会のフィクサー、同僚に腹を貫かれたのだ。

 

それを皮切りにそいつ等は一斉にこちらに武器を振るってきた。

 

クソッ、一番最悪なことが起こった!

 

刀を抜いてツバキを後ろに下がらせる。武器の変形や魂の解析は無いがやるしかない。幸い数はこっちのほうが多い。

 

「来たか!」

 

リウ協会のフィクサーの一人がこちらに向かってくる。顔には何の感情もこもっておらず目の焦点もあってないので不気味だ。

空気を裂く音と共に赤い光が胸に向かって放たれる。蹴りで炎を纏った拳を弾き、刀で肩を刺す。

 

「仲間割れ…起こしてんじゃねぇ!」

 

肩の肉を抉り、怯んだ隙に脳天を全力で殴る。ボコッという鈍い音が鳴りフィクサーは崩れ落ちた。

殺すことはしない、洗脳されている可能性だってあるし何よりこいつ等の処分は向こうがやることだ。

 

「手をかそうと思いましたが余裕でしたねぇ」

 

視界の端からにゅっとカーナが出てきた。顔と拳には血が張り付いている。

 

「そっちは大丈夫なのか?」

「はい、数も多いし副部長もいますので、私一人が抜けたところで負けることはないですよぉ」

 

血を拭いながらまだ余裕のある様子でカーナが言う。

周りを見てみればカーナのいった通りこちらが押している。一人一人の実力はほぼ互角のようだがチームワークは圧倒的に勝っているようだ。

 

リウ協会が相手を孤立させ、そこをセンク協会が叩く。この方法で十数秒しか経っていないにも関わらず既に何人も相手を倒している。

 

「しっかし…何でお前ら仲間割れしてんだ? 死者も出てるし…冗談じゃ済まねえぞ」

「私もわかりませんねぇ、センク協会の事情は知りませんが私達以外は今別の依頼受けてるはずですしぃ…何より誰一人知らないんですよねぇ」

「あん? どういうことだ?」

「言葉通りですよぉ。私が忘れてたり他の区所属っていう可能性もありますけど今戦ってる奴らウチには所属してなかったはずです」

 

…仲間割れとか裏切りの可能性は低くなったな。わざわざ他の区に来てまでここを攻めるとは考えにくい、だがあの戦闘技術から他の協会や組織の奴らとも思えない。

 

「わかることが少なすぎるな…よっと!」

 

答えが出ないのにじっとしているのは時間の無駄だ。

刺したままだった刀を抜き、構える。

 

「今日の予定は…無くなるかも知んねえな…はぁ」

 

旅行中に起こるとか運が悪すぎる。もう1ヶ月は金を貯めて巣でやればよかった。

 

「ひとまず…悪いが憂晴らしさせてもらうぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ビリィ…ひとまず事務所…ああ旅行中でしたねぇ、ホテルに戻ってください。後日話を聞く必要がありますしもしかしたらこちらから依頼をするかもしれません。嫌だと思いますけどこの規模ですからねぇ」

 

カーナが肩で息をしながらそう言った。相当疲れているようだ。まあ俺もヘトヘトだが。時間にしてみれば30分もかかってないが相手も協会フィクサー、こちらのほうが数が多くても無傷とはいかない。

 

「…分かってるよ。しっかしアイツ等なんだったんだ…」

「それはすぐ分かるかもしれません」

「そう…って早いな!?」

「はい、あそこで倒れている人がいますよね?」

 

カーナが指を指した場所には白目を向いて倒れている40代ほどの男がいた。顔面を思いっきりぶん殴られたようで前歯が折れ鼻が潰れている。

 

「あの人は香水工房所属のトラベル。そしてあそこの女性は棘薔薇事務所代表スズ、他にも私の知っている方が何人かいました。

全員今から2ヶ月以内に行方不明届が出されています。そして都市南部では2ヶ月前から行方不明者が激増している…何か関係があると思いませんかぁ?」

 

単なる偶然と言い切れない…行方不明者の増加と今回のことが繋がっている可能性は低くはなさそうだ。

 

「面倒くさい事になりそうだな…ひとまずホテルにいればいいんだろ? お前も気をつけろよ」

「私達これからセブン協会と一緒に調査にいかないといけないんで気をつけるもクソもないんですけどねぇ」

「それもそうだな、じゃ」

 

話を終わらせツバキのところへ戻る。

 

「ツバキ帰るぞ。怪我しなかったか?」

「はい、おかげさまで」

「よかった、それとホテルに戻ったらW社の転送サービス頼んどいてくれ。お前の補助が必要になるかもしれない」

「あー…そうなっちゃいましたか。旅行は中止ですね…」

 

ツバキが残念そうにつぶやいた。俺も本当に残念だ。出来るんだったらW列車乗って帰りたいがそうはいかない。

 

何も起こりませんようにと祈りながらホテルへ帰った。




ビリオンの強さは都市悪夢一段目のモブくらい
カーナは都市悪夢一段目のネームド〜二段目のモブくらいの強さです

銀の弾丸の外伝とか見たい?

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