治安が終わってる世界に転生した話。   作:はない人

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第十二話 模倣破片

事件報告書:リウ協会南部1課◯◯◯

 

事件名:模倣破片

 

シリアル番号:DN00192

 

ランク:未分類

 

事件発生日:☓☓☓☓-☓☓-04

 

説明:当該文章は都市南部で発生した模倣破片についての情報を整備したものです。(現在この報告書は未完成です。新たな情報が分かり次第随時追記を行ってください)

 

事件:模倣破片による襲撃は☓☓日、都市南部で43地点で同時に起こりました。すべての事例に共通して2ヶ月以内に行方不明となった者で構成されており無力化、殺害をしてから数分立つと対象の体全体に亀裂が生まれ、表面が砕け消滅しました。

破片模倣による被害者(これ以降破片人と呼称する)には表面が砕けた事による目立ったダメージや後遺症はありませんでした。

破片人は協会フィクサーやフィクサーではない者もいたにも関わらず全員が複数の協会の技術を巧みに扱い戦闘を行ってました。

このことから首謀者はN社の特異点に酷似した技術を保有していると推測されます。

 

被害状況:(把握ができ次第追記を行ってください)

 

 

 

 

 

 

 

「はい、報告書と、あとこれ、ハナ協会からの命令書です。ビリィだけに渡したわけじゃないですからね」

「クソが」

 

カーナの持っている紙を見てそう吐き捨てる。ハナ協会からの命令書、それはつまり絶対に断れない依頼ということだ。

いやいや何でだよ何で俺に来るんだよもっといるだろ俺より高位のフィクサー。

 

「んで…俺にもそのクソ紙が来る理由は? 一つの区だけで起こったならともかく南部全体が被害に合ってるなら1課とか特色が出張って来るはずだろ。仮に人手不足でも俺より上のフィクサーは結構いるはずだ」

 

今ここでグチグチ言ってても命令は取り消されないので意味はないがそう言わずにはいられない。

 

「ん〜まあ私も同じように考えてたんですよねぇ。でも色々あってですねぇ」

 

カーナは申し訳無さそうな顔でそう言った。ああもう事件が起こった日から本当に不幸だ、帰りにJ社の幸運のお守りでも買って帰ろうか。

 

「説明してくれカーナ」

「ハイハイ分かってますよぉ。まずシ協会に任せようと思ったんですけどシ協会は先月からアホみたいな量の依頼を受けまくってて依頼できませんでした。ツヴァイ協会は全滅した6課の穴埋めとL社が折れてから激増した保護依頼、セブン協会は昨日の約束やブレーメンの音楽隊とかの調査中で手を貸してもらえませんでした。他の協会も似たような感じでダメでしたねぇ」

 

だいぶ酷いな…この感じだとリウ協会だけで対処してそうだ。大規模なものはセブンが調べてリウとシが戦う事が多いんだが…無理そうだな。

 

「リウ協会と特色は?」

「こっちは指と揉めてて1・2課の大半が手が借りれないんですよねぇ。特色は銀の弾丸と桃の旋風が空いてたんですけどどっちも3日前から都市の星案件受けちゃっててぇ…」

「もう後回しにしたほうがよくねぇか? 南部ボロボロじゃねえか」

「皆そう思ってるんですけどN社から依頼が来てて無視する訳にもいかないんですよねぇ」

 

N社か…まぁ経験缶詰とかを売ってるあっちからしたら模倣破片は邪魔でしかないからな。他の翼が模倣破片の能力を手に入れる可能性もあるからその前に潰しておきたいんだろう。

 

翼から直接の依頼ともなればかなりの金が発生する、翼の信用を失ってまで依頼を断ることは流石にしなかったか。で、受けた所で人手が足りなかったから俺レベルの外部のフィクサーにも依頼してわざわざハナ協会から命令書も発行してもらったと…

 

「大変だなそっちも。それでいつどこへ行きゃいいんだ?」

「2日後ですねぇ。場所は報告書に書いてあるので見といてください。じゃあ私は戻りますねぇ」

「はいよ」

 

カーナが部屋から出るのを見送ったあとベットに飛び込む。まだ依頼も始まってないのにひどく疲れた気分だ。ツバキに説明したらすぐに休もう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビリィいいですか?」

「ん、もう行ける」

 

予備のナイフ、鎮痛剤、MP薬その他諸々を次元ポーチに押し込み刀を腰に差す。持っているものは刀と次元ポーチ、そしてポーチの中にあったものを除いて周りにある店やヂェーヴィチ協会の運送サービスで急いで揃えたものだ。

W社に頼めば事務所の物をそのままホテルに転送できるが報酬の数倍も金がかかるのでツバキのパソコンだけにしておいた。

 

「じゃ、まずこれ見てください」

 

カーナがポケットから地図を取り出し机の上に広げた。

 

「私達はこの地図のバツが付いている場所を探します。バツが付いている場所は破片人の出入りが確認された場所です。確認されている場所は10区だけでも数十か所、全部回る必要はないけど怠いですねぇ」

「早く行ったほうが良いなこれ…まあまあ離れてるぞ一箇所一箇所」

「ですねぇ。早く行きましょう」

 

地図のコピーをもらい早歩きで一番近い場所に向かう。今は午前8時半。途中で戦闘すると仮定すれば時間はかなりかかる。なるべく急いで行ったほうがいいだろう。

 

「…………逆ですよぉ…」

「えっ」

『ビリオンさん…』

 

急ぎ過ぎも良くないが…

 

 

 

 

薄汚い裏路地を歩き、目的地に向かう。10区の裏路地も11区や12区とはそう変わらない。違うところといえばパチンコ屋が多いところだろうか。それと23区レベルではないが治安は悪い。まぁ11区が(比較的)安全で感覚が麻痺してるせいもあるが。

 

「本当に10区の奴らはギャンブル好きだな。さっきので7件目だぞパチンコ屋」

「それがここの文化ですからねぇ。同僚も結構休憩中やってますよぉ、オンオフはしっかりしてるから不満はないですけどねぇ」

 

そうこう話している間に目的地についた。見た目は裏路地によくあるビルだ。

 

「ここか。なんの会社だ?」

「廃ビルです。3年前から放置されてて指やネズミが利用してた形跡もありませんでした。まあありふれてるやつですね」

 

裏路地の大規模な事件はこれが厄介だ。裏路地には廃ビルや特異点の影響で認知されていない場所は腐る程存在する。単純に探す場所が多い。

都市全体で人を殺しまくったとある吸血鬼だって発見されてから殺されるまで何年もかかった。特色や多数の1級フィクサーが担当していたにもかかわらずだ。

 

「廃ビルって言っても入口も窓もないですねぇ。不自然な接合跡もないですし…U社の特異点でも使ったんでしょうか?」

 

そう、カーナの言う通りこの廃ビルには入口や窓が存在しない。一見すると灰色の柱が立っているようだ。

 

「どうする? これじゃ妖精も使えねえぞ」

「うーん…ぶっ壊しますかぁ」

「は?」

 

いきなり何言ってんだこいつ

 

「もうちょっと慎重にいかんのか。相手のエリアだぞ」

「でも他の手段もないですよねぇ? W社の血清とかあったら別ですけど。ならこれが一番ですよぉっ!」

 

そう言い終わると同時、カーナがビルの壁をぶん殴った。空気がビリビリと振動し、火花とともに煙が舞った。何も知らない人が見れば爆弾が爆発したと思うだろう。

力任せにぶん殴ったかのように見えたが、ちゃんと考えて殴ったらしく人が二人ちょうど通れるような穴が開通されているが、そこ以外はヒビ一つない。

 

『リウ協会が脳筋扱いされてるのってこれが原因なんですね…』

「いやリウ協会は全面戦争メインだから勘違いされてるだけだ。…まぁカーナはなぁ」

 

あいつこうすれば早いって分かったら秒でするからな…

 

「ささ行きましょう。ハリーハリー」

「はいはい」

カーナを追いビルの中に入る。ビルには家具や置物はなく、殺風景だ。床に鉄板が貼り付けられ、ネジで固定されているということを除けば新築に見えるだろう。

 

「雑ですねぇこれ。罠ですよって言ってるようなもんです」

「どうする、行くか?」

「行きましょうか。本部に連絡を入れて…よし。じゃあちょっと離れててください」

 

カーナはそう言うと腰を深く落とし手を握りしめる。俺が数歩後ろに下がったと同時、拳を振り下ろし鉄板を貫いた。

 

「よい…しょお…!」

 

もう片方の手を穴に突っ込み力任せにこじ開け、引きちぎる。

 

「当たりですねぇ、階段がありますよぉ」

「見た感じ一本道だな…俺が先行くよ」

 

刀を抜きながら階段を飛び降りる。上と同じ何も無い殺風景な一本道だ。仕掛けなどがある可能性もあるがそっち方面の知識は皆無と言っても言い。ツバキかカーナに聞いたほうが良いだろう。

 

「カーナ、お前は何かわかんねえかぁっ!?」

 

カーナに聞こうとした次の瞬間、俺の体はふわりと浮かび上がる感触に襲われていた。しかしそれも一瞬、続いて下に落ちるような感触が体を襲った。全身に風が叩きつけられる。

 

『うわわわ!? 位置情報がバグってる!?』

「ビリオォォォン何処にいますかぁぁぁ」

 

ツバキとカーナの声が聞こえるが焦りまくっていて耳に入らない。

 

目を開けて下を見れば灰色の、コンクリートの床が急速に近づいていた。

 

「くっそ…こんなことで死んで…たまるかぁ!」

 

地面にぶつかる寸前、刀を振るい、その風圧で衝撃を緩和させる。

 

「くそぅ…死ぬかと思った」

『外傷はないですね…よかった。心拍数は凄まじく上がってますが』

「ビリィ…立ってください。休んでる暇はないみたいですよ。ツバキちゃんはサポートしてやってください」

 

ツバキがそう言いながら構えた。俺も遅れて立ち、周りを見ながら刀を構える。

待ち構えていたのか3人の模倣人がこちらに向かってきている。服装的にツヴァイとセブン、そして中指の末弟か。

 

「上が予想してた通り、模倣できるのはフィクサーだけじゃなかったってことですか」

 

火花が散る。ツヴァイヘンダーによる重い一撃をカーナが弾き、すかさず腹に拳を叩き込んだ。模倣人が吹っ飛び壁にぶつかる。

 

「指と戦ったことないんだよな!」

 

ツバキの戦闘をゆっくり見ている暇はない。中指の姿の模倣人がこちらに向かってくる。

すぐさま紫の入れ墨が光る拳に刀を振り下ろす、が予想通り簡単に掴まれそのまま模倣人が手を捻り刀を折ろうとする。

 

「ツバキッ!」

『待ってました!』

 

刀が水のように変形して模倣人の手をすり抜け、俺の拳に纏まり固まった。

 

 

すまん、顎の骨砕くかもしれない。

 

心の中で謝罪をしながら拳を振り上げ、顎を思いっきりぶん殴る。模倣人は空中で一回転した後地面に打ち付けられて気絶した。

 

「…うーん弱いですねぇ…デコイでしたか…」

 

カーナは服に付いた血を落としながらつぶやいた。足元にはセブン協会の服装の模倣人が倒れている。

 

カーナが言ったことについては俺も思っていた。協会フィクサーはどちらも服装から見ても5課、中指の方は刻まれている入れ墨が少ない。

 

 

「ビルの上の階調べたら戻りましょう、ビリィ」

「いいけど…戻れんのか? だいぶ高いところから落ちた気がするんだが…」

「それは上見ればわかりますよぉ」

「上? …あれ?」

 

…どういうことだろうか、上を見てみるとポッカリと穴が空いており穴の奥にはコンクリートの天井が見える。高さはおよそ5mほど。跳べば普通に行けるほどしかなかった。

 

「全く同じ経験をつい最近しましたねぇ。あの時は…そう、昨日の約束が関与していた依頼でした。ビリィ、急いで戻りましょう。もしかしたら青い…」

「正解、ご褒美やるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチュッという音、直後にやってきた風、そして目の前の光景、いきなりの出来事に頭がついていけず頭が真っ白になる。

だってそうだろう、何で…

 

…どうしてカーナが全身を貫かれて倒れている?

 

「この破片は使い捨てだな…まぁこれより高性能なやつが目の前に出来たし…やろうか」

 

腕に無数の鏡を刺した男が、身に纏っていたセブン協会の服を破り捨てながらそう言った。

銀の弾丸の外伝とか見たい?

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