治安が終わってる世界に転生した話。   作:はない人

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第四話 ねじれもどき/魂工房

「あそこがL社の本社があった場所か…」

 

霧に包まれ、時折銃声や悲鳴などが聞こえる場所を見る。

 

ここは12区、L社が崩壊した場所。現在は親指や人差し指など、様々な組織が土地を奪い合っている。その12区の端に俺はいる。

 

今回は協会から直接依頼された。最初は断ろうと思ったが報酬がかなり高かったのと移動用のw列車のチケットも手配すると書いてあったので受けた。

 

軽い気持ちで受けなきゃよかったと今は後悔している。駅からここに来るまでに4回も襲われた。どの組織でどの指と繋がっているかもわからないので下手に戦うこともできず逃げ回った。

 

「はぁ、面倒くさい…っとここか。」

 

30分程歩くと目的地についた。何の変哲もない廃ビルだ。ビルの前にはセブン協会の服を着たフィクサーが何人か立っている。

依頼文書とフィクサー免許証を提示し中に入った。ビルの中にも4人いる。そのうちの一人に今回の目標が地下の倉庫にいると説明された。

 

今回の依頼はビルに逃げ込んだねじれもどきを無力化することだ。

ねじれもどき、L社の近くでのみ発見されるそれはねじれに似た生物?だ。どいつも共通して死なない。切り刻もうがぐちゃぐちゃに潰そうが再生して元通りになる。

基本的に話も通じず物理的に大人しくされるしかない。

 

地下の道は所々ハンマーか何かで叩きつけられたような跡がそこら中にできている。跡を辿っていくと大きな部屋があった。

中にはポツンと1人男が座っている。

 

目を凝らして男の姿を見た。

 

全身に鎖がぐるぐるに巻かれていること以外は普通の人間と変わりはない。事前に説明されていなかったらどこか囚人が逃げ出してきたのかと思うだろう。

 

音を立てないようにゆっくりと近づく。

男は下を向きなにかぶつぶつと呟いている。

 

残り5mほどのところで男が急に振り返った。

男と目が合う。

 

すぐさま剣を振るう。頭を切り落とすはずだった一撃はキンッと音を立てて防がれた。

 

男の頭を見る。これは…頭から鉄が生えているのか?

 

後ろへ飛び一旦距離をとった。

 

男は全身を鎖で縛られているとは思えないスピードでこちらへ近づいてくる。棘付きの鉄球のような頭を振るってくる。左に避け剣で胴を切りつける。傷口からはドロッとした緑色の血が垂れた。動きに引っ張られ男が体制を崩した隙に頭に飛び乗り、背中を刺した。体をねじり振り落とそうとするがその前に飛び降りた。頭部ほどではないが体も硬い。

 

「話も通じないから弱体化もさせようがないし、面倒だな。」

 

そうつぶやきながら剣を振り回す。

 

避ける、男が体制を崩す、その間に切る。それを何十回も繰り返した。

男は至る所から血を流し、床に緑色の水溜りをいくつも作っている、だが全く痛がる素振りを見せない。

ダメージは確実に与えているはずなのに全く弱っていない。

このままじゃこっちが先に限界が来る。

 

これが効くことを祈るしかないな。ポーチから毒を出して剣に塗りたくる。

 

大きく息を吸い、勢いよく駆ける。男の頭を蹴っ飛ばし、体のうちに入る。傷口に剣を突き刺し抉っていく。ゴリゴリと音を鳴らしながら傷を広げる。

刃が3分の2ほど刺さったところで抜き、下がった。

 

毒の影響で刺した場所の周辺が紫色に変色している。常人なら激痛が体中に走りまともに動くことができなくなる。しかし男は少しも遅くならない。さっきのことが気に障ったのかさらに動きを早くした。

 

「クソっ毒にも耐性持ってんのか!?」

血を撒き散らしながら振るわれた二撃目を倒れるようにして回避した。

 

間髪入れずに振るわれる頭を剣で咄嗟に防ぐ。剣が根本からへし折れ、後ろに吹き飛ばされる。

 

床に叩きつけられ、その衝撃で吐きそうになりながら、なんとか体を起こす。

体力はほとんど残ってない上に剣の予備も持ってない。

 

「無理に倒そうとせずにさっさと撤退するべきだったな…」

 

男が頭を振り上げた。

 

(フィクサーになったときから覚悟していたけど、あまりにあっけない最後だったな。)

 

頭が当たる直前、突然男が横に吹っ飛んだ。

 

「これ使ってくださーい!」

 

そう言われ、何かを投げられたのでキャッチする。それは刀身が薄い青色に光る刀だった。誰かは分からないが、本気で助かった。ありがたく使わせて貰おう。

 

柄を強く握ると驚くほど馴染んだ。まるでこれを何年も使ってきたのだと錯覚するほどしっくりくる。これならいける。

 

男に向かい走る。男が頭を振るってきたので刀で受け止める。先と違い今度は男が弾かれる。すかさず胸に刀を振るった。刃はまるでバターのように体を切り裂いた。男は刀に何かを吸われ、そのまま倒れた。

 

さっきまでのが何だったのかと思うほどあっさり終わった。

 

「は?これ…何処の工房のだ?」

 

刀のあまりの性能に困惑していると後ろから声をかけられた。

 

「すいませーん、ちょっといいですか?」

 

「あ…ああ、すまん。」

 

振り返ると活発そうな少女が立っていた。

 

「こんにちはビリオンさん、あなたに用があって来ました。魂工房のツバキです!」

 

そう言い彼女はニカッと笑った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「すいません、コーヒを一つ。」

 

落ち着いた間接照明の明かりに照らされた店内、素人目でもわかる高価な木で作られたような椅子や机、ここはカフェ[Luna caldo]ツヴァイ2課によって守られている数少ないL社の区の安全な場所だ。

 

目の前で1個2万アンもする角砂糖を何個もコーヒーにぶち込んでいる少女、ツバキにつれてこさされた。

 

あのあと、「じゃあ場所変えましょうか。」と言われ無理矢理歩かされた。

一応休憩はさせてもらったが酷い。

 

「で、色々聞きたいことはあるが、まず何のようがあって俺についてきたんだ?あんたにあったことはないぞ。」

 

「それはですね、私を雇ってほしいんです。」

 

「雇う?俺があんたを?事務所間違ってんじゃないのか?」

 

「いえいえ、間違えてませんよ。」

 

嘘はついてなさそうだし特になにか企んでるわけでもなさそうだが、意味不明だ。彼女なら俺より遥かに良い条件で雇ってもらえる事務所がそれこそ掃いて捨てるほどあるのに。

 

「なんであなたに雇ってほしいのか説明しないとですね、ちょっと私の目を見てくれませんか?」

 

ツバキはそう言い、前髪で隠していた右目を見せてきた。

 

「虹色か、珍しいな、何の義眼だ?」

 

「義眼じゃありませんよ、この目は生物の魂を見ることができるんです。」

 

魂…いやこんな世界なんだ、妄言とは言い切れない。

 

「私は今まで何千、何万もの魂を見てきました。これまでも珍しい魂を見てきたけどその中でもあなたは特に珍しい魂なんです。今までとは全くの別物。」

 

「…どんな魂だったんだ?」

 

「肉体と魂が別人のものなのに拒絶反応が少しも起こってないんです。普通なら今すぐに体が崩壊してもおかしくないのに。それと、これがメインなんですけどあなたの魂は私達と根本から作りが違うんです。まるでここに存在していないような、そんな雰囲気がするんです。」

 

これは…ほぼ間違いなく俺が転生者なのが原因だろう。

 

「なんでそんなことになっているのかは心当たりがある。でもすまないが、面倒なことになりそうだし説明するつもりはないぞ。」

 

「深く詮索するつもりはありません、それはわかってます。」

 

言うと真剣な表情でこちらを見た。

 

「もう一度聞きます、私を雇ってくれませんか?私はあなたの魂がどんなものなのかもっと知りたい。工房の武器も提供します。」

 

「…わかった、あんたをうちで雇おう。」

 

「本当ですか!ありがとうございます!」

 

これからさらに忙しくなりそうだ

 




魂工房:武器や防具の制作だけでなく、魂の研究も行っている。
すべての物をオーダーメイドで作っており体だけでなく魂にもあった装備を作ってくれるため最初から100%使いこなすことができる。

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